ダァマにはアーリハーンの他にもたくさんの村や町から避難民が押し寄せている。
ドラクエ3で黒胡椒イベントのあるバハラタの町に相当するバーラタの町から三百人近く。
オルテガがポパなんとか?と呼ばれていたムオルの村に相当するモールからは百人ほど。
そんな避難民と元から住んでいる神官、そして俺達を合わせて千人ほどがダァマで生活しているわけだが…
「はぁぁぁっ!」
ずばぁっ
どう見ても『ビキニアーマー』としか言えない格好をしたバーラタの町出身のダニアさんという女戦士がいる。
彼女はカンタダと同じレベルアップできる体質らしく、カンタダが持っている様なのと似た形の斧でモンスターをばっさばっさと…
「というか、どう見てもカンタダの関係者だよね?」
「腹違いの妹らしいよ?」
高所恐怖症の彼は神殿に住む事を嫌がって志願兵達の宿舎に寝泊りしているからいろいろ知っているみたいだな。
でも、腹違いねぇ…
あの日、王に「オヤジの事は言うな」みたいな事を叫んでいたのはそこら辺の事情か?
「詳しい事は言えないけどね。」
「いや、面倒な事情とかはどうでもいいんだ。」
そこら辺は姫様がカンタダを説き伏せれば言いだけの事。
「へえ。 結構ドライなん」
「それよりも気になる事がある。」
「なんだい?」
「露出狂の家系なのか?」
「は?」
「『はっ?』じゃない。 レベルアップできる体質イコール露出狂なのかどうか…」
「いやいやいや、それこそどうでもいい事じゃな」
「はぁ…」
結構重要な事なのに…
「なにさ、その溜息は?」
今度レベルアップする時にルヴィスに聞いてみるかな…
「お前、1人だけレベルが高いからっていい気になってるんj」
「今度ルーラで世界樹まで飛ぼうか?」
「すいませんでした。」
見事だが、戦闘中に土下座はやめとけ。 命に関わるぞ?
「高所恐怖症は仕方ないけどさ、おんぶして貰ってアーリハーンまで行けば良かったのに…」
そうしたら高レベルな武道家と魔法使いのコンビが出来て、もっと攻略できていたはずなんだぞ?
「冗談はやめてくれ。」
残念ながら、冗談を言った覚えは無い。
「ダァマからロマルアまでピオリム無しだと四日だよ?
アーリハーンまで行ったら一週間おんぶされっぱなしって事になるじゃないか」
そこは我慢しろよ。
「レベルアップするために経験値を溜めている状態であの揺れに一週間とか、俺に死ねと言うのか?」
「ルーラやキメラの翼よりはいいんじゃないの?」
「どっちも嫌だ!」
わがままだなぁ。
だったらロマルアに住んで、経験値溜まったらアーリハーンに行くとか、色々考えればよかっただろうが…
どうせ十日に一回は浄化のためにあの2人が来るんだから、不可能な事ではないぞ?
「はあ… 言いたい事はいろいろあるけど、とりあえず大声を出すのはやめておけ? モンスターが寄ってくるじゃないか。」
『モンスター討伐』兼『キメラの翼作り』のためにダァマの外で狩りをしているのを忘れるなよ?
「出させているのは誰だよ…」
知らん。
それにしても暇だなぁ。
「なあ、MP切れの魔法使いを守るMP切れていない魔法使いってどうなんだろ?」
「レベル低くてすいませんねー。」
まったくね。
「俺は剣でも戦えるのに…」
「へーへー」
「お前の我慢が足りないから、戦力を無駄にすることになる。」
もったいない。
「そんな事言っているけどさ… お前、ただ単に切りたいだけだろ?」
「酷い。 人を精神異常者のように言うなんて… この鬼畜!」
「鬼畜て…」
どっちかというと魔法をガンガン使いたい。
――――――――――
キメラの翼を量産して、レベル15の腐女子と空手家を魔法使いに転職させた。
「これで私も魔法少女か…」
腐女子だと思ったらそっち系もいけるのか。
「魔法かぁ… 別に殴ってもいいんだろう?」
別に構わんが、MP切れてからにしろ。
「キメラの翼も2人がルーラを覚えるまでは余裕であるから、頑張ってレベルを上げるといいよ。」
さっきまで経験値が溜まり過ぎて気分悪いとか言っていた2人にそう告げる。
「はーい。」
「ああ、わかっている。」
ムカツクくらいいい返事だな。
「先に帰ってくれ。 俺は服が乾くまで世界樹と雑談しとく。」
着地と同時に吐きやがって…
2人を運ぶために軽装で良かった… 皮の鎧とか着ていなくて本当に良かった…
「えー? 節約しようってリーダーが言っていたじゃない。」
「そうだぞ? 節約は大事だ。 キメラの翼が要らなくなったら売って活動資金にすると言っていたじゃないか。」
「てめぇらのゲロで汚れたのは誰だ?」
「すいませんでした。」
「申し訳ない。」
帰れ。 もう帰ってくれ。
帰ったな?
「で、バブルスライムの居場所はわかったのか?」
「うむ。」
ルヴィス経由で頼んでおいて良かった。
「プートガでエジンバから逃げてきた人間の遺体を見つけたようだ。」
「うん?」
どういう事だ?
「エジンバはプートガからの避難民を拒否したらしい。」
「なんでだ?」
いざという時の避難協定があるんじゃないのか?
「それはわからないようだ。」
「それじゃあ、エジンバのある島に生えてる植物達から情報を集めて」
「できぬ。」
人が話している時は最後まで聞こうね?
「あなたに頼まれてから、ずっとバブルスライムの事を探っていた私が、その事を調べなかったと思うのか?」
「これから調べるんじゃないのか?」
世界樹はルヴィスと違って常識を知っているから、俺が提案しなくても調べるとは思っていたけど?
「エジンバに生きている植物がおらんのだ。」
は?
「そんな事ができるのか?」
「できるのだろうな。」
「例えばどうやって?」
エジンバのある島は結構でかいぞ?
「火の魔物が焼き尽くしたのか、海の魔物が大津波でも起こして島を塩だらけにしてしまったのか…」
そんな事ができるモンスターがいるのかよ…
「あるいは、飢えた人間が食い尽くしたか。」
「なんだそりゃ?」
「あの島はそれほど実り豊かな地ではないのでな? ありえない事ではない。」
救いがねぇ…
「エジンバが協定を破ってまでプートガの民を追い返したのだ。 食料の問題があったと考えたほうが自然なのかもしれんな?」
「なんなんだか…」
でも、モンスターにやられたと考えるよりもそっちのほうがいいかな?
ヴァラモスを倒す事だけでも大変なのに、それ以外の強いモンスターも倒せとか言われたらキレる自信がある。
「あの者は渇きの壷を手に入れようと考えているようだぞ?」
「はぁ? なんでそんな物を?」
大量の水を持ち運ぶくらいにしか使い道がないぞ?
「あ! まさか、最後の鍵を手に入れるのに必要だと思っているのか?」
アーリハーンの島からロマルアへの旅の扉を利用した時、迷路みたいな通路ではなく馬車が3台は通れるくらいの一本道だと知って
「下手に迷路を作ってモンスターの姿が隠れるよりも便利かもしれないな?」
「そうだね?」
と話し合った事もあるのに… でも
「俺もダァマに行く道で魔法の鍵が必要な扉が無い事を知るまでは、鍵が必要な扉はイオで壊そうと思っていたからな…」
「なかなかに過激だな?」
「そうか?」
過激と言われるほどではないと思うんだが?
「だが、あの者はもっと過激なようだ。」
「うん?」
「『ヴァラモスが城の地下にいるなら、渇きの壷で海の水を汲んでおくのもありだよね!?』と叫んでおる。」
まさかの水攻め!?
「ヴァラモスが海の水の中でも生きていられる魔物だったらどうする気なのだろうな?」
「まったくだ。」
肉体改造とレベルアップで強くなっているといっても海中で息を止めながら戦える自信はない。 呪文を唱えられないから魔法も使えないし。
「これをお前に託そう。」
「ん?」
どこかで見たような気がs!
これってロトの紋章じゃないか!?
「こ、こ、これは?」
レアアイテムか!?
「それを持っていればエルフの隠れ里に入る事ができる。」
…
どーせその程度のアイテムだと思ったよ!!
「どうした?」
「なんでもない。」
俺は何も期待していない。 期待していないんだ…
「話は通してあるからエルフとドワーフが作った武具を貰ってくるといい。」
武具!? って駄目だ。 期待してはいけない。
この中途半端にファンタジーな世界で何かを期待しても裏切られるだけだ。
「他の誰かではなく俺に渡すって事は、俺が『無駄にしない』からか?」
「そうだ。」
「わかった。」
091019/初投稿