「ここがランシーラの村です。」
「カンタダさん、わざわざありがとうございました。」
「いえ、僧侶様のお役に立てたのならそれでいいのです。」
『へそ』で有名なランシーラの村に行った事があるというカンタダにキメラの翼を渡して童顔チビと一緒に送ってもらった。
これで、ランシーラにはルーラで移動できるようになった。
後はリーダーと怪力娘を連れてきて、ラーミアの居るほこらの場所を確認した後、晴れている日に… 初めて世界樹の場所に飛ばされた時と同じように…
想像するだけで鬱になるが、仕方ない。
「村に人がいませんね?」
「『へそ』と『神殿』があるだけで、他には特に何も無い村ですから。 ロマルアにも10名ほどキメラの翼で避難した者がいるはずです。」
ふーん。
「きえさり草がないらしいから、村人が居ても居なくてもどうでもいい。」
「そうですね。 それに、きえさり草を使うエジンバも、もう…」
カンタダはエジンバにも行った事があるので、少し前にこのパーティーで確認しに行ったのだ。
城門は固く閉ざされいたので上空から侵入しようとしたら… 城壁内は海水で一杯で、そこかしこにどざえ…
「ぅぇ… 思い出してしまったじゃないか…」
「ぐ… すいません…」
とにかく、リーダーと怪力娘を連れてこよう。
――――――――――
「ここがラーミアのいる島…」
「寒いな。」
あらかじめ靴に布を巻いておいていなかったら、地面が氷なので滑って転んで大変だっただろうな。
「さっさ中に入ろう。 凍えてしまう。」
「そうですね。」
空を飛んでいる(飛ばされている?)時も滅茶苦茶寒かったし…
「モンスターに姿を見られちゃったしな。」
ほこらの中は広く、天井も高かった。
中心には巨大な卵が巨大な台の上に置かれている。
「おっきい卵ですね?」
「だな。」
あれだけでかいと、何人分の卵料理ができるのやら…
でも、入り口はそんなに大きくなかったな… ラーミアはどうやってここに入ってこれたんだ?
「ドラクエ8でラーミアは3と8の世界を行き来できるって設定だったと思うんですけど、この世界でもそうなんでしょうか?」
「すまん。」
「え?」
本当にすまん。
「8はやってないからわからん。 8でラーミアでるの?」
「8やってないんですか?」
「ああ。」
「そうなんですか…」
そうなんです。
…でも、そこまで残念そうな顔をしなくてもいいと思うんだが?
「違う名前で呼ばれているんですけど、出るんですよ。」
へー… って!
「危ない!!」
「え?」
童顔を蹴り飛ばし、エルフ達から貰ったオリハルコン製の剣で振り下ろされた二本の杖を受ける。
ガガキィィィン!!
「私達は」
「私達は」
おお…
攻撃してきたのは例の双子さんでしたか…
「卵を守っています。」
「卵を守っています。」
ぅぇ…
「侵入者は排除します。」
「侵入者は排除します。」
向かって右側が杖を振り上げ… 左側は構えから考えて横薙ぎに攻撃をするつもりか?
「ちっ スクルトスクルトスクルト!」
パーティーの防御を固める。
くそ! この島は氷だらけで植物が無いから連絡が届かなかったのか?
「ピオリム」
お! ありがたい。 なら
「ボミオス」
これで速度の差がかなりあるはず。 袋を開けて中からあれうぉっ!
ブゥン! ガゴォォン!
横薙ぎの攻撃を何とか回避、振り下ろされた杖がさっきまで立っていた床にヒビを入れた。
「ボミオスしているのに速い!?」
ボミオスが無効なのか? それとも効いていてこの速さなのか?
どちらにせよ、たった2人でラーミアの卵を守っているだけの事はあ
「るっ!!」
がんっぶぉん!!
振り下ろされて地面に刺さった杖に、横薙ぎにされた杖が当たり、その反動を利用して追撃をしたのか?
「ヒャド」
「メラミ」
氷を炎で砕いて霧みたいにして俺の視界を!
何なんだ、このコンビネーション。 羨まし過ぎる。
くそっ
とりあえず袋の中身を全部ばらまい
「てい。」
ばらばら … …よし!
「アレを見ろ! 俺は怪しい者じゃない!」
俺はそう叫んで、袋からばらまかれて床に落ちた世界樹からもらった紋章を指差した。
「怖かった…」
「…ああ。」
双子強すぎ、たった2人でこんな辺境にいるだけの事はある…
でもまあ、今はそんな事よりも卵を孵すのが先だ。
「お2人さん。」
「なんでしょう?」
「なんでしょう?」
「ラーミアの卵を孵すのって、これで良いって聞いたんだけど?」
エルフの隠れ里で精霊から貰ったマナの結晶を6つ、袋から取り出して聞く。
「これは、オーブと同じ力を感じます。」
「これも、オーブと同じ力を感じます。」
よし! 大丈夫そうだ。
アフロに作らせただけの事はある。
「じゃあ、僕はあっち側の3つを」
「OK、俺はこっち側の3つをやる。」
マナの結晶を台座に納めていく。
「私達は」
「私達は」
「この日をどんなに」
「待ち望んでいたことでしょう。」
オーブ探しというイベントをスルーした甲斐があったかな?
「さあ 祈りましょう。」
「さあ 祈りましょう。」
OK
「時は来たれり。」
卵から孵れ~。
「今こそ目覚める時。」
卵から孵れ~。
「大空はお前のもの。」
卵から孵れ~。
「舞い上がれ 空高く!」
…
「何も起きないね?」
双子の祈りが終わったみたいなのに、変化が無い。
もしかして、双子の台詞を追うようにして祈らないといけなかっ
ピカー
なんという輝き!!
まさかフェイントとは!!
「私達は」
「私達は」
「卵を守っていました。」
「卵を守っていました。」
そうですか、それは良かったですね?
卵を見ていたせいで、まだ目がチカチカする…
「おっきい…」
くそう…
お前は卵を見ていなかったのか?
おお、本当にでかい…
目のチカチカしている間も大きい生き物の気配を感じてはいたけれど…
「伝説の不死鳥ラーミアは甦りました。」
「ラーミアはカミのしもべ。」
「ですが、特別に心正しき者だけが」
「その背中に乗れるそうです。」
でかいなぁ…
この大きさなら4人… いや、無理したら6人くらい乗れるか?
でも、心正しい自信がないなぁ…
「背に乗れなくても、籠みたいなのを作って持たせて、それに乗ればいいんじゃないですか?」
う~ん。
『背に乗れない』って言うのはそれで解決できるようなものなのか?
あ、あの双子はルーラで飛んでった。 たぶんエルフの隠れ里に帰ったんだと思う。
――――――――――
ダァマに行く前に、ヴァラモスの城を包んでいる穢れに触れに行ってみる。
童顔はラーミアに乗ったまま、その様子を見ている。
「近づいても、触ってもモンスターにならない。 むしろ経験値として溜まっていくぞ?」
「へぇ…」
俺の言葉に安心してか、ラーミアから降りて穢れに触れる。
「本当だ。」
「『闇の衣』みたいな物なのかもと思っていたんだけど、ただの穢れみたいだな。」
とりあえず気分が悪くなるまで経験値を溜めていく事にする。
「これならレベルアップが楽だね。」
「ルーラで来れる場所じゃないから… アイツは気絶させないといけないけどな。」
「はは、そうだね。」
しかし、光り輝くラーミアを見つけたのか、その数十分後に地獄の鎧と思われるモンスターが複数やってきたので慌ててラーミアに乗って逃げる。
「モンスターはいないはずだったんだけどな…」
まぁ、世界樹もルヴィスやアフロと同じ精霊だからなぁ…
「見て、僕達が離れたら鎧がくずれたよ。」
おお… なら、あの鎧を粉々にしたらいいのか?
それとも
「普段は穢れのままで、人間が近づいたら適当な物に穢れが集まって… って事なのか?」
「たぶん…」
鎧の足は遅かったから、なんとかなるだろう。
「他のモンスターも出るのか調査の必要があるが、モンスターを見つけたら即離脱ってやり方はできそうだな。」
「そうだね。」
しかし…
あれが本当にただの穢れだったという事は…
091028/初投稿