毎日ドラゴラムでドラゴンになって、「背中に人を乗せながら飛ぶのって、結構大変だよねー」等と視線でラーミアと意思疎通ができるようになってきたんじゃないかと思えるようになってきた。
穢れを経験値にしてレベルアップするのもすでに『作業』となってきて、そろそろ何かしらの変化が欲しいと思っていた頃…
「おお… うっすらとだけど、ヴァラモスの城が見える。」
「ラーミアに乗れるようになって一ヶ月… やっと最終目標が見えてきたな。」
長かった。
本当に長かった…
「この調子でレベルアップを続ければ、お前以外にも何人か接近職に転職できるだろうから…」
「ああ。」
ニフラム娘は魔法使いに転職したばかりだけど今回でルーラを覚えられるだろうし…
ザオラルがステータス異常防止でザオリクが治癒能力の上昇っていうのが意外で、なおかつ微妙だったけど。
「今回で元僧侶だった人を除いた全員がイオナズンを使えるようになるから…」
「いや、この調子ならイオナズンを使えないのはニフラムだけじゃないか?」
ちなみに、非戦闘メンバーの引篭もりとゲーマー娘と永遠のレベル1の3人はダァマで待機しているので『全員』から除外。
「もう少し穢れを浄化したら、あの城をイオナズンだね。」
「ヴァラモスと直接対決なんてやってられないからな。」
それが精霊達とも話し合った上でだした作戦…
題して『城ごとヴァラモスを潰しちゃおう作戦』だ。
…「作戦名がそのまま」「ださい」などのツッコミを期待して俺が名づけたのだが、後で聞いたら「ツッコミしたら負けかと思った。」そうだ。 …チクショウ。 慣れない事はしないほうが良いんだな。
「地下に居たとしても、瓦礫の除去もお前のイオナズン一発でできるだろうし。」
「ああ、まかせてくれ。」
やっと自分の『力』を活かす事ができるようになったのが嬉しいのか、最近こいつは調子に乗っていると思う。
「エルフさんの協力で高所恐怖症を抑える事ができて良かったな?」
「本当に… この世界に来て一番の収穫だと思うよ。」
完全に克服したわけではないけど、暴れたり気絶したりしないですむ様になって、特にラーミアに乗れたときはすごく喜んでいたものなぁ…
みんなに追いつこうとして穢れを体に溜めすぎて真っ黒になったりもしていたし…
あの姿を見て、エルフさんが「どんな副作用があるかわからんがな?」と言っていた事を秘密のままにする事にしたんだよなぁ… 墓場まで持って行くよ、うん。
「元の世界に戻れたら一緒に絶叫マシーンに乗りましょう!」
「それは断る。」
男2人の会話に突然割り込んできた。
…女の子の誘いを断るのはどうかと思うが、気持ちは理解できる。
高い所が好きになったわけでもなければ、そもそも高所恐怖症が治ったわけでもないんだから。
「じゃあ、私がぶん投げます!」
「ちょっ!」
あ、そうか…
元の世界に戻っても『力』はそのままなのか聞いておく必要があるな。
「女性2人に囲まれて… 幸せ者ですね。」
「異世界で三角関係って、ありきたりかなぁ。」
はぁ…
リーダーと怪力とニフラムと腐女子の4人が、このバーンモドキといちゃいちゃする関係になるとは思ってもみなかったなぁ…
顔は普通で、この4人にかっこいい所を見せた覚えも無いらしいのに、四股だなんて羨ましい事だ。
…これが副作用かもしれないと思ったりもするけど。
「ハーレムという状況は羨ましいけど、あの4人じゃなぁ…」
「はっはっは。 そういう事は思っても口に出してはいけないぞ!」
おっさん、声でかいよ。
童顔が言っている事もわかるけどな。
「師匠!」
「気持ちはわからないでも無い。
だが、俺達は誓ったはずだろう? 僧侶になって回復の魔法を覚えたら、怪我を恐れることなく武の道を進む事ができるんだ。
武の道を進み続ければ、そのうち女性の気を引こうとも思わないようになるさ。」
「ぅぅぅ…
それはなんか違うと思います…」
弟子よ、君よりも先に僧侶になった師匠も泣いているように見えるのは気のせいなのか?
「泣くなよ。 俺もプロ野球を見たいのを我慢してるんだぜ?」
「あっちに帰ればきっと彼女ができるさ。 こっちに来たばかりの頃よりも体が引き締まっているって言っていたじゃないか? な?」
二組の師弟がいつの間にか仲良しグループを作っている…
あれ?
童顔も俊足のおっさんとコンビだし…
俺ってもしかして、そういうグループに入り損ねた?
単独行動多かったからなぁ…
ま、いいけ
ぽん
誰かが俺の肩を叩いた。
「僕がいるじゃないか。」
…
「ホイミスライムじゃあなぁ…」
――――――――――
それから数日後
ヴァラモスの居るであろう城がはっきりと見えてきた為か、みんなが最終決戦を意識しているようだ。
なのでもう一度全員の状況を適当にまとめておく。
①ダァマに待機 1人
・『問答無用で経験値を浄化する』永遠のレベル1(僧侶)
戦力外。
ヴァラモスに接触させて浄化させるという案もあるが、それは最終手段。
おそらく… というか、確実に一撃で死ぬだろうし。
②ヴァラモスの城を破壊する時のみ参加 2人
・『世界樹の葉を使って結界を張れる』引篭もり(僧侶レベル38、魔法使いレベル12)
「戦闘しないならレベルを上げる事はやぶさかではない」とか言っていた。
イオナズンで城の瓦礫がこちら側に飛んできた時の為にスクルトを全員にかけてもらう。
・『話しかける事で植物の成長を促進する』ダァマの食料事情を支えるゲーマー娘(武道家レベル15、魔法使いレベル34)
「MP節約の為にアッシーになったげる」とドラゴラムまで覚えてくれた。 当日はこの子に乗せていってもらう。
この2人は城を潰す時のみ参加してもらう予定。
ヴァラモスが地下に居るようならルーラでダァマに戻ってもらう。
地下に潜った俺達が全滅しても、こいつらがダァマに居れば人間が滅ぶ事は無いだろう。
地上に居るようなら引篭もりには後方支援を、ゲーマー娘にはイオラを連発かドラゴン状態で体当たりしてもらったりして、隙を見てダァマに戻ってもらう。
③地下突撃 Aグループ 5人+1
1人目『すごく遠い場所も見える』リーダー(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、戦士レベル10)
リーダーとしての仕事をしろと言っているが全然聞かない。
2人目『影に入ると怪力になる』おかっぱ娘(魔法使いレベル40、僧侶レベル38、武道家レベル20)
たぶん、狭くて広範囲の魔法を使うのを避けるべき地下空間での主力。
3人目『身に着けている武具の強化』腐女子?(魔法使いレベル40、僧侶レベル38、戦士レベル20)
怪力は無いが、地下空間でのもう1人の主力。
最近『力』が判明した。
どちらかと言うと『叩き切る』タイプの鋼鉄の剣で、岩を綺麗に切れ、その断面は曇り一つ無い鏡のようだった。
お前がキメラモドキを… もう遅いけど…
4人目『未だ不明』まだニフラム大好き(魔法使いレベル40、僧侶レベル38、戦士レベル10)
アイツに「ニフラム使うくらいなら…」と言い聞かせてもらったので無駄に使う事はなくなった。
5人目『魔法の威力or効果を増加する』元高所恐怖症(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、戦士レベル10)
このグループのまとめ役兼生贄。
この主力3人を含んだ5人にホイミスライムを入れる事でAグループとする。
『力』の事を考えると、別の組み合わせにしたいが… 女性を敵に回すような事はしない。
あと、武道家や戦士のレベル15で他の職に転職後、また武道家や戦士に戻るとレベルが15から始まると言うのがわかった時は何故か笑えた。
④地下突撃 Bグループ 6人
1人目『日の光に当たると空が飛べる』年齢が皆にばれた童顔チビ(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、戦士レベル10)
2人目『ものすごく速く走れる』うざいおやじ(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、武道家レベル21)
この2人はすごく仲が良い。
おそらく、俺が合流するまでロマルアとイススとダァマを2人で駆け抜けていて、他の誰よりも一緒に居た時間が長かったからだろう。
腐女子がはぁはぁ言っているが、どう見てもせいぜい仲良し親子って所だと思うんだが?
3人目『未だ不明』自称社長(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、戦士レベル20)
4人目『未だ不明』コンビニ店員(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、戦士レベル20)
この2人も仲が良い。 キャッチボールしているのを見かけた事がある。
2人とも『力』が不明のまま。 ヴァラモス戦に有効な『力』だといいんだけど…
5人目『気弾みたいのを出せる』空手家(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、武道家レベル22)
6人目『未だ不明』空手家の弟子(僧侶レベル38、魔法使いレベル40、武道家レベル21)
この師弟も仲が良い。
気弾みたいなのの威力はメラミくらい。
メラミと違って燃えないので、近接攻撃を続けてできるのが強み?
腐女子と空手家が他の人よりレベルが高かったのは『力』が戦闘向きだったからなんだろう。
練習したらあの『日本人なら誰でも知っているだろう漫画』のような技も出せそうだと言っていたが…
この6人をBグループとする。
仲の良い親父3人とその子供達って感じでまとまっているからなぁ…
バランスは悪くないんだけど『力』の事を考えると全体的にAグループより劣るのがなぁ…
⑤地下突撃 AとBの連絡係 1人+α
俺(魔法使いレベル40、僧侶レベル38、戦士レベル42)
レベルが一番高く、エルフから貰った装備もあるので単独行動が可能。 面倒だけど仕方ない。
+αはエジンバに向かったと言う『魔物に狙われる事なく水の上を歩く事ができる』人などの生死不明な人達。
世界樹に探してもらっているが、海の上にいたり、姿を消せたりなどの『力』である可能性があるので期待はできない。
ヴァラモスの城にアタックするまで後二週間くらい、それまでにこの7人を見つける事ができればいいけど…
書いていて悲しくなってきた。
はぁ…
リーダーが色恋沙汰に夢中になってるせいで、こういう仕事が俺のほうに来るようになったのはいつからだっけ…
091103/初投稿