ピピピピ ピピピピ
「ふぁ?
はいはい。 今起きますよ。」
目覚ましの耳障りな電子音で目を覚ます。
ベッドから出て台所へ行き、冷凍庫から冷凍食品を取り出して中身をレンジに突っ込む。
ジジジ
もうすぐ寿命のくるレンジがちょっと怖い音を出しているが、それを無視してパソコンの電源を入れてメールとニュースサイトを確認する。
「メールは無し。 ニュースは…」
『謎の金属バット2人組、また暴力団支部を壊滅させる。』
『17人の被害者は全員氷漬け!?』
「うげぇ…
あれだけ目立つ事はするなと言っておいたのに、何してくれてるんだこいつら。」
前に燃やしたり(ギラ系)爆発させたり(イオ系)するなと叱ったけれど、氷漬け(ヒャド系)ならOKと思ったのか?
まったく…
カタカタカタ
ちなみに、記事の横に
『武術を極めろ! 究極の一冊!』
などという広告(良く知る顔が2つ載っている)があるが無視する。
「よし。 今日の日課終わり。」
ニュースサイトを閉じて、ゲーマー娘に勧められたオンラインゲームを起動する。
あっちで手に入れた金貨を下に、ちょっと人に言えない方法で作ったお金があるので、お店にある中で一番性能高いパソコンを買ったのだ。
チーン!
「お、できたできた。」
レンジも買い替えるかなぁ…
――――――――――
システム :おはようございます。
システム :日曜日はモンスターの出現率がアップします。
カレンちゃん :ノ
ルヴィス :ノ
カレンちゃん :おはよー
ルヴィス :朝飯食ってるから狩りはもう少し待って
カレンちゃん :わかってるよ
カレンちゃん :いつもだもんね
ルヴィス :旦那はどうした?
カレンちゃん :JAで集まりだって
ルヴィス :何気に働き者だよな
ルヴィス :あっちに居る時は働かなかったくせに
カレンちゃん :それは言わないで
カレンちゃん :あ
カレンちゃん :社長と社員がまた暴れたっぽいよ
ルヴィス :ああ
ルヴィス :あの2人のこはあきらめた
カレンちゃん :のこ?
ルヴィス :あの2人のことはあきらめた
カレンちゃん :あはは
ルヴィス :ほかのやつらは?
カレンちゃん :さあ?
ルヴィス :休日は集まるって約束だったのに
カレンちゃん :確かに集まり悪いね
カレンちゃん :ネカマが精霊の名前を騙るくらい悪いね
ルヴィス :うるせー
ステータス変化 :攻撃力が上昇しました。
ステータス変化 :防御力が上昇しました。
ステータス変化 :素早さが上昇しました。
カレンちゃん :ノ
ルヴィス :ノ
アフロ :ノ
カレンちゃん :おはよー
アフロ :俺なんて精霊の名前どころか
アフロ :髪型を名前にしているんだが?
カレンちゃん :いつから聞いていたの?
ルヴィス :四股お疲れ様です
アフロ :今INしたばかり
アフロ :うるせー
カレンちゃん :大丈夫なの?
カレンちゃん :城攻略中に背中を刺されたりしない?
ルヴィス :ww
アフロ :なにが
アフロ :www
アフロ :大丈夫
アフロ :新居の場所は誰にも教えていない
カレンちゃん :あーあ
ルヴィス :あーあ
アフロ :なんだ?
カレンちゃん :いざというときに誰も助けにいけないよ
ルヴィス :だな
ルヴィス :そういえば、Lv1と連絡はとってる?
カレンちゃん :うん
カレンちゃん :暫くINできないって
カレンちゃん :忙しいみたいだね
ルヴィス :そうか
カレンちゃん :空と陸は?
ルヴィス :昨日メールが来た
ルヴィス :休日出勤だとさ
カレンちゃん :じゃあ、今日は3人だけ?
ルヴィス :そうなるな
カレンちゃん :狩り場が限られるね
ルヴィス :回復2と魔法1で行ける場所か
カレンちゃん :旦那が居ればバランス良かったんだけど
ルヴィス :仕事じゃ仕方ないさ
ルヴィス :アフロは何か狩りたいのあるか?
ルヴィス :おーい?
ルヴィス :3分以上動きがないぞ?
カレンちゃん :トイレかな?
ルヴィス :せめて朝飯かな?にしとけ
ルヴィス :というか、話の途中で何も言わずに居なくなるか?
カレンちゃん :う~ん
アフロ :おひさしぶりです。
カレンちゃん :?
ルヴィス :?
アフロ :りーだーです。
システム :ログアウトまで後10秒
アフロ :まさかこんなふうにれんらくをとっているとは
システム :ログアウトまで後5秒
システム :ログアウトまで後4秒
システム :ログアウトまで後3秒
システム :ログアウトまで後2秒
アフロ :おもいませんでした。
システム :ログアウトまで後1秒
システム :お疲れ様でした。
――――――――――
「びびった…」
思わずログアウトしたけど、アイツ無事かな?
まさか本当に、背中から刺されていたりしないだろうな?
リーダーだけなのか? 他の3人も一緒なのか?
回復魔法があるから、喉を潰されたり即死じゃなければなんとかなると思うけど…
「新居がわからないから、こっそり様子を見に行くこともできないしな…」
どうしよう?
♪♪ダッダッダー♪♪
お!
ピ
「もしもし!」
『ょぅ』
「大丈夫か?」
『リレミトで脱出、ルーラで逃げた』
ほっ
「お疲れ。」
血みどろにはなっていないんだな。 良かった。
『なんでばれたんだろ?』
なんで?
んー
「あ」
『なんだ?』
「携帯じゃないか?」
『ん?』
「さっき、着信音が変わってなかった。 って事は、携帯変えて無いんだろう?」
『あ』
「GPSだな。
次は気をつけろ。」
『GPS…
俺、4人にそんなデータを渡した覚えはないんだけど』
4人全員で突撃したのか…
「アイツ等を過小評価しちゃいけないって、何度も言ってるだろ?」
『…そうだな。』
「とりあえず、携帯の電源を今すぐ落とせ。」
『わかった。 ネカフェでメールする。』
「ああ。」
プツ
「ゲーマーにメールしておこう。」
あいつもログアウトしただろうし、さっきの俺と同じように四股の心配をしているだろうしな。
ピピピ ピ ピピピピポ… … …
送信
これでいいだろう。
「まったく。
ハーレムOKって言われているんだから、いっそ乗っちゃえばいいのに…」
痛い子ばかりなのが残念だけどな。
「何の事?」
「四股男の事だ。」
「ああ。」
あいつも馬鹿だよな…
こっちの世界に帰る時に携帯番号を教えたりしなければ今みたいな事には
「って! なんで!?」
「探すのに苦労したよ。」
「だからなんで?」
なんでここにいるんだよ?
「あっちの世界、精霊がモンスターや穢れをどんどん排除しちゃってね?」
排除?
「あ! アフロが別の世界に管理できないマナを放出するとか言っていたな。」
「そうそれ。」
「それで?」
「生き物の居ない世界にモンスターを捨てるのは仕方ないと思うけど」
おい
「マナどころか、モンスターごと捨ててるのか?」
「うん。」
それっていいのか?
ドラクエ3と違って、あの世界のモンスターって穢れが溜って変質した生き物だろ?
生態系に影響とかでないか?
!
「まさか…」
「『どうする?』って聞かれてさ。
世界に1匹の魔物になっても居心地が悪いし、元人間の僕としては魔物だらけの世界にも行きたくないしで…」
…なるほど。
「だいたいわかった。」
あの糞精霊どもめ…
こいつの事はよろしく頼むと言っておいたのに…
「ねえ。」
「なんだ?」
「邪魔にならないようにするからさ、一緒に暮らしちゃ駄目かい?」
はぁ…
「お前には色々と世話に… 世話に?」
なってないな?
「見捨てないでおくれよー。」
なんで棒読み
「まあ、いいさ。」
「お!」
「ホイミスライムのままだったら困ったが、『はぐれメタル』なら最悪『置物』として扱えるし。」
「うわぁ…」
嫌なら出て行ってもいいぞ?
「色々と複雑だけど、ありがとー!!と叫んでおくよ。」
「まったく…」
「ははは。」
まあ、これからよろしくな。
091114/初投稿