音羽の滝の延命水は、古くは源義経・弁慶主従も飲んだと伝えられる日本十大名水の筆頭である。三筋に流れ落ちる滝の清水は、飲んだり打たれたりすることでご利益があるとされていた。打たれるのはともかくとして、観光として人気なのは、もちろん飲む事である。三筋の右から、健康・美容・出世のご利益があるとされ、観光用には、健康・学業・縁結びとなっていた。ただ、3種類全てを飲むと、その欲深さからご利益は失せてしまうとも伝えられている。「松風や 音羽の滝の清水を むすぶ心は すゞしかるらん」遠く、それらを見下ろしながら、だらしなくも煽情的に狩衣を着崩した女がボソリと呟いた。それを聞いた学生服にニット帽の少年は、「なんやそら?」と小首を傾げた。女は優しく眼を細めると、「花山法皇が詠んだ歌やな。清水寺の拝観券の裏に書いてあってな、まあ簡単にいうたら、観音さまを褒め称える歌や」「へ~」と適当に相槌を打つ少年の頭を、ポカリと叩く。「あいたっ!?」やや大げさに痛がるフリをする少年に対し、女は首を横に振って諭し始めた。「んな昔の歌を諳んじろなんて言うつもりはありませんえ? でもな、今の小太郎はんみたく、武、だけでよしとするのはダメやな」そう、力だけでは、『自分』のように堕ちてしまう。文を学ぶということは、心に余裕を持つのに繋がるだろう。少年の血気盛んな在り方は、いずれ命を縮めてしまうかもしれないのだ。その時、自分がこう言っていたことを思い出し、少しでも踏み留まってくれたなら……と、そこまで考えた所で、女は、ふふふ、と楽しげに笑った。「いや、今のはやっぱなしや。小太郎はんは、今のまんまが一番だしなぁ」(そう、犬上小太郎いう少年は、私、天ヶ崎千草とは器が違う。んな小さく纏まる必要はないんや)「……ええんか?」「ええよ。小太郎はんは、小太郎はんらしゅうしとるんがええよ」「そ、そか……?」小太郎は、少し照れ臭そうにポリポリと頬をかいた。その仕草があまりに愛おしく思えた千草は、思わず抱きしめたくなる衝動に襲われるもグッと我慢をし、視線を元に戻した。すなわち、音羽の滝、である。より正確には、音羽の滝の周囲にいる中学生……西の長の娘である近衛木乃香が千草の目的なのだ。ついでと言えば、横島忠夫と繋がってるらしい少女達にもちょっかいかけたい。天ヶ崎千草と犬上小太郎にとって、横島忠夫ならともかく、眼下にいる中学生など遊び相手にもならん。……はずだったのだが。「にしても、凄まじい警戒やなぁ」2人の、というか千草の想定を超える警戒の密度に、流石の彼女も苦く笑った。件の女子中学生ときたら、ふわりと吹く風にすら反応し、しかも自分達の仲間以外が傍によることすら許さない。そんな鬼気迫る様子である。正直、尋常じゃない。「千草姉ちゃん」「なんや?」「ここは引いた方がええんちゃうか?」「ふ、ふふふ……」小太郎の提案に、思わず千草は笑ってしまう。千草は嬉しかったのだ。前へ出ることしか知らなかった小太郎が、こうして後ろへ引く提案を出来るようになったことが。だけども小太郎は、そんな千草に唇を尖らせた。「なんで笑っとるんやっ!」「ごめんごめん、馬鹿にしとるんやないよ?」「ほんまかぁ?」「ほんまほんま」千草は笑いの衝動を堪えたまま小太郎に謝ると、サァっと身を翻す。ここは下手に手を出して警戒を深くさせるよりも、じっくり機会を覗うのが上策だ。「帰りましょか、小太郎はん」「おうっ!」元気良く返事を返した小太郎を微笑ましく思いながら、千草は最後にチラリと後ろを振り返る。これからの目的に必要な贄として相応しい少女、近衛木乃香と、憎い男の女である少女たち。(しかし、あれが横島忠夫の女……弟子達か。流石やな)あそこまで出来るのならば、最早遠慮はいらない。敵地とはいえ、修学旅行などという浮かれてもしょうがないイベントの最中で、あれだけの警戒をし続けられるというのは、中々大したものだ。千草は感心したように嗤う。小太郎に向けた笑みとは違い、どこまでも凄惨で、残酷に、嗤ったのだ。時刻は丑三つ時。普段なら寝静まっているこの時間でも、修学旅行と言う一大イベント中の女子中学生にとってみたら、まだまだ宵の口と言ってもいいだろう。ただでさえ普段から騒がしいので有名な3-Aの生徒である。当然と言えば当然の話で、いつも以上に、ワイワイ、ガヤガヤ、大騒ぎ。むろん、教師にとってみたらとんでもない。見敵必殺とばかりに、騒いでる生徒を発見次第に怒号を飛ばしていた。そんな最中、入浴時間などとうに過ぎたはずだというのに、こっそり大浴場を使っている一団がいた。彼女達は総勢8名。3・3・2のグループに分かれ、こそこそ入浴を済ましていく。どうしてそんなにこそこそと? と思うかもしれない。ヘソの辺りや太ももの裏側にお尻といった彼女達の身体の至る所に、横島忠夫専用マンコだの、横島のみinだの、他人に見られたら恥ずかしいではすまされない、なんとも卑猥な落書きがしてあるからだ。もしもこんなん見られたらと思うと……冗談ではない。階段昇りゃ、下から覗かれないか心配で。風吹きゃ、スカートめくれないか心配で。着替えとか入浴なんざ、クラスメイトと一緒になんか当然むりむり。でも、一番ヤバいのは……3-Aの担任、ネギ・スプリングフィールドだ!アスナなんて、今日までに2度は公衆の面前で全裸の露出ショーをさせられた位、あのガキは脱がし魔だっ!!というか、くしゃみすると魔力が暴走して武装解除が発動するとかどこのエロゲですか?アスナは心の底からツッコミたい。というか、ツッコンで教育した。主に拳で。こう、身体で覚えこませたのだ。大丈夫だろうとは思う。思うのだが、それでも2度脱がされたのは事実。到底安心なんて出来やしない。そんな訳で、アスナは新幹線を降りてからというもの、折角の修学旅行だというのに、警戒し通しで楽しむ所ではなく。こうして宿に着いてからも、着替えやなんやで警戒を解けず。入浴時間もクラスメイトと一緒なんて当然無理で。時間をずらして入るのはいいけど、それでも危ないからアスナはひとり警戒、警戒、常時警戒。なんせラッキースケベの申し子、ネギが来たら厄介だ。最初の組、木乃香・のどか・夕映が入浴をすませ……「ごめんなぁ」「ネギ先生の見張りは任せてくださいー」「すみません、この借りはいつか必ず……」申し訳なさそうに頭を下げる彼女達を見送り。次の組、千鶴・夏美・アキラが入浴をすませ……「うふふ、お布団暖めておくわね」「あ~いいお湯だったぁ……」「のどかから連絡。ネギ先生、寝たみたいだってさ」なんだか約一名、やたらと色気振りまいて不穏なセリフを吐いてたが……まあ、脅威のひとつは消え去った。アスナはホッと胸を撫で下ろす。「あとは、私たちだけですわね……」疲れた切った声色のあやかに、「……そうね」と同じく疲れた声で返事を返す。とは言え、これで少しは気が抜ける。アスナには、自分一人なら大抵のトラブルを何とか出来る自信があった。まあ、足手まといになりそうなあやかも居るには居るが、彼女ひとりぐらいなら、連れて逃げることも出来るだろう。何より、彼女は同じ使徒である。使徒となってそろそろ一年、いい加減自分のことは自分で出来るはず。分かっていますわ。とあやかは答えたい。のだが……(その問題の大本を作ったのが主様とか、少し納得がいかないですわ)ツンと唇を尖らせ……すぐに首を横に振った。ですけど、まあ……横島忠夫というトラブルメイカーのしもべとして、確かにこれくらいの危機は自分で何とかしないといけませんわよね普段滅多に入れない広いお風呂。実の所、アスナは結構楽しみだった。これが他のクラスメイト達ならば、寮の大浴場がここの風呂よりももっと広いため、そうでもないのであろうが。しかしアスナは自宅(?)通い。大浴場も楽しみだったし、他のクラスメイト同様、露天風呂も楽しみだ。これで変なイタズラ書きがなければ、心行くまで堪能出来たろうに。帰ったらあのバカ、タダじゃおかない。と、この場に居ない、あの男に怒りを感じる今日この頃。もっとも、書かれた時は夢心地でもあったのだが。(あ、ああマズイわね。身体にイタズラ書きされて夢心地とか変態じゃないのよ)ブンブン首を振って、開きかけたヤバい扉を慌てて閉じる。そんなアスナを変な物を見る目で見てくるあやかに、「なによ!」とキツメの口調で牽制し、何事もなかったかのように露天風呂へと続く戸を、カラカラと横に引いた。湯気がむわっとする。温泉特有の匂いが鼻につく。露天風呂は思ってたよりも断然広く、実に風流だった。アスナはかけ湯をして軽く汚れを流すと、熱い湯船に足を入れる。肩まで湯に浸かりながら、ふぃ~、と何とも気の抜けた声を漏らした。「ごくらく、ごくらくぅ」「ババ臭いですわよ?」「……しょうがないじゃない。疲れたんだもんっ! だいたい、そういうアンタだって随分と気の抜けた顔してるわよ?」やや熱めの温泉の湯は、とても気持ちがいい。身体の芯から疲れが取れる気がする。疲れが澱の様に溜まっているあやかは、おほほほ、とお嬢笑いで誤魔化しつつも、アスナと同じく全身を湯に浸らせくつろぐのを止めはせず、両手を組んで、うんっ、て伸ばすと、そのまま肩までどころか顔の下半分までブクブク湯に沈めた。「ったく、人のこと言えないじゃないのよ……」呆れた口調でそう言いながら、アスナも縁に頭をのせると、同じようにブクブク沈んだ。2人の視線は自然と空へ。湯気で霞んで見える満天の星空は、どこまでも深く。なんだかとってもロマンチック。これで隣があやかじゃなくって、大好きな男の人だったらな~。アスナは、えへへ、とにやけた。顔が赤いのは、湯にあたってるだけではないだろう。今朝方の激しい情事を思い浮かべる。うん、やっぱり皆一緒よりも2人っきりでアレコレしたい。もちろん、イタズラ書きはナシの方向だ。周囲の視線が気になるし。警戒し続けんの疲れるし。そんなことを考えていると、自分の膝に、こつん、とあやかの膝がぶつかった。しかも何度も、こつん、こつん、とぶつかってくる。(なによ?)と横を見れば、ナニを妄想しているのやら。あやかはいやん、いやん、と身体をくねらせている。人の振り見て我が振り直せとは良く言ったものだ。今の彼女の痴態は、まさに数瞬前の自分そのもの。アスナはヒクリと頬を引くつかせると、いけないいけないと、ぱしゃぱしゃお湯を顔にかける。(うん、気持ちいい)湯で濡れたせいか、風が冷たく感じられ、火照った頬をひんやりしてくれた。とても心地が好い。ただ、隣でいまだ、いやん、いやん、してる色ボケが鬱陶しくて仕方ない。そろそろ止めるべきだろうか?チラリと横を見れば、初めて彼女と出会った時から然程成長していない胸が飛び込んできた。それでも大きさで言えば、アスナと大概変わりがないのだから、使徒とならずに自然と成長していれば、どれだけ巨乳になったか分からない。釣鐘状の形が美麗なおっぱいは、同性のアスナから見ても魅力的だ。これがこのまま大きくなったなら……横島も多分そう思っているから、魔力だか霊力による身体的成長に積極的になっているのだろう。にしても、なにを妄想して興奮してるのか。満天の星空を目指すかのようにツンと尖った乳首が、やたらとアスナの腕に当たってくる。そろそろいい加減にして欲しい。というか、(コイツほっぽいて、さっさと身体を洗っちゃおうかしら?)心底そう思う。だって、時刻はもう深夜。さっさと寝ないと美容に悪い。まあ、いつもはこの時間も起きていたりはするのだが。主に、今現在あやかが妄想している様なことをしてて。と、そこでハッと気づく。茶々丸さんだの、性魔術の練習台だので、いつもいつも襲われる。茶々丸さんは……まあ、結構好きだけど、それでも自分は百合じゃないのだ。性魔術の練習と称して襲ってくるのは本当にやめて欲しい。だからだ、ここはいっちょ反対に襲ってやろう! 一度襲われれば、どれだけ嫌なのか解るというものだ。アスナは気づかない。嫌だと言う百合的行為に、然程嫌悪を感じなくなっているからこそ、こんな考えが浮かぶのだ。百合じゃない、百合じゃない。そう言いながら、茶々丸との関係に疑問を持たず、安易にこういう行動を取る時点で、既にいけない扉を開いているのだと、いい加減気づいた方がいいだろう。だから、ちょっと待って、なにかおかしい……と思った時にはもう遅い。半ば妄想の世界にトリップしているあやかの状態は、崩しかけの砂山のように、軽いひと押しだけで……「ひゃんっ!? ア、アスナ……さん? いったいなにを……って、あふっ!?」容易く堕ちる。あやかとアスナは、同じひとりの男の手により開発された肢体を持つ、いわば姉妹みたいなものである。互いの弱い部分など当然の様に知っており、アスナが攻めればあやかも負けじと攻めに入った。弱点を攻撃し合う2人は、唯でさえ妄想により火の点きかかって身体に燃料をブチ込む事と同意だ。気づけば感じるまま、身をくねらせ、絡み合い、深夜の露天風呂に、────は……ぁぁ、ぃ……ぅんっ、はぁ、はぁ……あ、あぁ、あ、あん……2人の少女の悩ましい息遣いが静かに響く。これだけ燃え上がった心と体を鎮めるには、もはや人肌の温もりが必要だ。2人は潤んだ瞳を見せ合うと、自然と距離を近づけていく。アスナはあやかとキスをするのは初めてじゃなかった。間に主である横島を挟んでの3Pをする時は、大概しているものなのだ。だけども、こうして2人きりでするのは初めてである。なんか違くない? とは思ったけれど、唇と唇を近づけるのを止めようとは思わなかった。なのに、唇がぶつかり合う寸前に不自然なまでにピタリと止め、アスナはぺろっと舌を出した。あっかんべー、と言うよりは、何かの合図の様である。あやかはそれを見るなり、少し嬉しそうにしながら同じように舌を出し、アスナの舌を、ツン、と自分の舌先で突き、次に唇をペロリと舐める。慣れ親しんだ筈のアスナの味は、なんだかいつもよりも甘く感じた。あやかはもっと甘さを感じたいと、アスナの舌を絡め取る。互いの息が感じる距離で、ぴちゃぴちゃ音を立てて舐め合う2人。(もうダメ、すんごく気持ちいい)(なんか頭がぽ~っとしてきましたわ……)アスナとあやかの思考は桃色吐息。2人とも、もう完全に周りは見えない。見えるのも、感じるのも、互いだけだ。(あやかの蕩けてる姿をもっと見たい)(アスナさんの甘い唾液をもっと感じたい)舌を絡ませ合いながら、2人の思考の行き先は一致した。これから唇を貪り合うのに、鼻がぶつからないように2人は自然と顔を斜めに傾ける。「はぁ……」と同時に熱い吐息を吐き出すと、2人はぴちゃぴちゃと音を立てながら、夢中になって舌の粘膜を擦り合い、最後の距離を縮めていく。頭がぼぅっとして、思考が正常に働かない。こんな場所で、こんなことしたらダメなのに。僅かに残った理性でそう思っていたはずのに、アスナの手はあやかの背中に回っていた。(これじゃ、まるで恋人同士みたいじゃない……)これはマズイ。でも舌を舐め合うのをやめられない。そしてついには、ヌルリと互いが互いの口腔に舌先を差し込んだ。興奮して体温が上がっているのだろう。あやかの口の中は、温泉よりも熱く感じた。アスナは思わず、「あっ……ふ、ぅ……」と恍惚とした吐息を漏らしてしまう。こういう時、互いの身体を知り尽くしているのは問題である。気持ち良すぎ。「アスナさんの唾……とても、おいしいですわ……」あやかは一旦キスを止めると、うっとりとそう言った。悪い気はしない。クラクラする。「じゃあ、もっと……飲んで……」アスナはそう言うと、濃厚なキスを再開し、背中に回した腕に力を込めた。グッと引き寄せられたあやかの乳房を、自分の乳房で押し潰す。あやかも慣れたモノで、大量に流し込まれる唾液を飲み干しながら、身体をくねらせ、自身の乳首とアスナの乳首の位置を合わせる。硬く屹立した乳首を潰し合った瞬間、ビリリと脳に電気が走った。腰が崩れ落ちてしまいそうだ。しかも喉を通るアスナの唾液が、とても熱い。もう、エッチなことしか考えられない。それもこれも、お腹がいつまでも熱いせいだ。じんわりと熱いお腹の奥には、文珠がある。だからこの熱さは、横島を感じさせる。しかも相手はアスナだ。同じ使徒である。アスナの手が背中をさする。アスナの舌が口腔を蹂躙する。アスナの唾液が喉を犯す。アスナの、アスナの、アスナの……違う、それは全部、横島忠夫……そう、もっとも横島忠夫を感じさせる相手、それがアスナである。むろん、それはアスナにとっても同じだ。彼女にとってもっとも横島忠夫感じさせる相手、それがあやかである。これ以上ないパートナーが相手なのだ。夢中になって当然かもしれない。だから、じーんとした痺れが、お腹から身体全体に広がって、快感に頭が支配されても仕方ない。欲しいのだ、アスナ(あやか)が。ト、クン、と一拍遅れて心臓が激しく高鳴った。身体中が熱く火照る。これじゃ、本当に恋人同士よね。うん、それも、いいかも……(あやか、あやか、あやか、あやか……)(アスナさん、アスナさん、アスナさん……)夢中でキスをしながら、心の中で彼女の名前を何度も呼んだ。すると、文珠に支配されている子宮が勢いよく打ち震え、ヌメル体液がトロリと太ももを伝っていった。アスナは、持て余しそうな熱を何とかしようと、あやかの股間に膝を擦りつける。使徒になったせいで成長が中2で止まり、アスナと同じく無毛の股間は、ツルリと彼女の太ももを滑った。瞬間、あやかの喉が快感に打ち震え、熱い吐息の甘さが増した。まるで媚薬のような熱波の吐息で、頭の中がぐちゃぐちゃになる。これはダメだ、癖になる。熱に浮かされたように、あやかの髪に指を絡ませかき混ぜて、腹を空かした餓狼のように激しく口腔を犯した。……違う、犯しているんじゃなかった。犯されている。あやかの股間を攻めていたはずが、逆に股の間に足を差し込まれ、グイグイと股間を押し上げられてる。髪も同じようにぐちゃぐちゃにされ、しかも歯茎や舌の裏を、あやかの舌が舐め擦っている。ああダメだ、気持ちいい。びくびくってアソコが痙攣しちゃう。まるで鏡のように、互いが互いを犯してる。息が、苦しい……2人は息継ぎをするみたいに一旦唇を離す。ただ、潤んだ瞳で、離れがたい気持ちをこれ以上ないくらいに露わして。「すき、すき、すきよ……」「すき、すき、すきですわ……」アスナとあやか。2人の相性は実に好い。主と使徒という関係がなければ、横島よりもずっと上だ。出会いが違くとも、必ず関係を深めるであろう2人は、いっそ運命だと言ってもいいぐらい。そんな2人が、まるで告白するみたいに想いを伝える。……場に流されての言葉ではあったが、決して嘘ではない。だからこそ、熱が高まった。愛情が深まった。想いが……爆発した。すぐに啄ばむように何度も唇を合わせ、「愛してる、愛してる、愛しているわ……」「愛してます、愛してます、愛していますの……」口を大きく開けて、互いの唇にかぶりついた。重なり合う唇の隙間から、おびただしい量の唾液がこぼれる。自分の唾液を飲ませたいと。アナタの唾液を飲みたいと。舌を絡ませ、送り合い、こぼれ落ち、身体を唾液で汚していった。2人は互いを抱きしめる腕の力を強くした。2人の間には隙間すら許さない。そんな想いだ。唾液で滑る身体を擦り合うのは、とてもとても気持ちが良かった。横島に愛撫されるのとはまた違った快感である。癖になりそう。鼻から出る息が、苦しそうに、切なそうに、激しく熱くなっていく。んんっ……んちゅ、ちゅちゅっ、ちゅく、ちゅぅぅぅぅ……露天風呂ではない、ネットリと粘るようなキスの音と、少女の悩ましい息遣い。いっそ別世界のような空間で、2人は夢中になって相手の唇を貪った。そして不意にアスナの指があやかの内股に伸び、なんの予告もなく膣の中に侵入する。「んっ! んんんぅ~~っ!!」乱暴な行為に、あやかの腰がビクンと跳ねた。快感よりも苦痛が勝り、口がアスナの唇で塞がれていなかったら悲鳴を上げていただろう。だけども、横島忠夫の指や舌、何より肉棒により開発されきったあやかの膣は、アスナの乱暴な指の動きを受け入れるに十分で、すぐにぐちゃぐちゃといやらしい音を奏で始めた。アスナはあやかの身体が受け入れたと知ると、指を一本から二本、そして三本へと増やしていく。横島の太く大きい肉棒を何度も飲み込んでいるにしては狭くキツイあやかの女の部分は、痛いくらいにキュウキュウ指を締めつけてくる。それに負けじと三本の指をぐねぐねいやらしく蠢かせれば、あやかは面白い様にビクビクと腰を痙攣させ始め、んくっ……と喉を反らせた。イキたいのだな、とアスナは思った。(すぐにイかせてあげるわね……)更に指の動きを激しくしようとした瞬間、あやかの細く長い指が、アスナのヴァギナをそっと撫でた。優しい愛撫だ。だが、アスナの体の熱が最高に達した。くちゃ、くちゃ、くちゅ……と自分のアソコから、粘る水音が聞こえたからだろう。こんなにぐちゃぐちゃに濡れてるなんてと、今更ながら恥ずかしくなったのだ。そんなアスナの様子を可愛らしく思いながら、あやかはたっぷりとアスナの愛液を指に塗り込んだ。そしてゆっくり、だが根元までアスナの膣内に挿入していく。「ん゛っ、ん゛~~~っ!!」なんて優しい愛し方。意識が眩みそうなほどの快感だ。キスを続けたいという欲求で堪えたが、背中が仰け反りそうになった。アスナは軽い抗議に睨んでやろうと思ったけれど、(イクなら、一緒ですわ……)あやかの無言の言葉に、胸が苦しくなる。アスナは、うん、うん、とキスをしたまま小さく何度も頷き返し、すぅーっと鼻から大きく息を吸った。(あやか、イキなさい!)(アスナさん、おイキなさい!)2人は身体を歓喜に見悶えながら、愛液まみれでべたつく指を折り曲げた。いや、折り曲げようとした瞬間、「あっ!?」と2人ではない少女の、しまった! と言わんばかりの焦りが混じった声と、ガラガラガシャーンとけたたましい何かが落ちた騒音に、アスナとあやかは、まるで石化したかのように、ピシリと固まった。やば。エッチに夢中で警戒解いちゃった……ヒヤリとした汗が背中に流れる。それでも深く絡み合ったまま、目だけで音のした方を見てみれば……背も小さく、胸も小さく、雪の様に白い肌を持つ、一人の少女。慌てて床に落としたお風呂道具を掻き集めている彼女のことを、アスナは無論、あやかも当然のように知っている。2人が通う麻帆良学園においての要注意人物、桜咲刹那。いつもは凛と孤高を保っている桜咲刹那は、自身を見る2人の視線に気が付くと、全身を真っ赤に染め上げ、あわあわとし始めた。なんだろう? この可愛い生物……ちょっとイメージと違くない?絶体絶命な状況の最中、アスナとあやかは、刹那の焦った様子を見て、なんだか逆に落ちついた。 見られたっぽいの、キスしてるトコだけで、イタズラ書きはセーフみたいね。 みたいですわね。では、この続きは後で…… しないわよっ! わたわたと何か言い訳をし始めた刹那を横目にしながらも、キスをやめずに目と目で会話をする2人であった。一方その頃……初めて見たときから愛してましたー!横島お得意(?)のナンパのセリフである。が、初めて見られたときから愛してましたー!今の彼女の様子を端的に説明するには良いセリフだ。というか、俺ってもしかして取り憑かれた? にっこにこしながら自分の斜め後ろをフワフワ飛びながら憑いてくる……もといついてくる様子に、横島は少女に気づかれないくらい小さく頬を引き攣らせ。でも、「なんか懐かしいよなー」掘り起こされる遠い昔の記憶に、キュッと目を細め、郷愁を感じていた。