まほらのほほん記 第10巻 ゆえとのどか「ん……くぅっ……」 じわじわとくる快感の波で、思わず喘ぎ声を上げてしまいそうになるのを必死で堪える。 正直な所、混乱の極みとはこの事です。 朝、目を覚ましたら彼の腕の中に居たのですから。 それはもう、すっぽりと。 私は寝ぼけていたのでしょうね。 最初は夢の続きかと、彼の胸にスリスリと頬ずりしてしまったです。 ええ、そうですとも。 私は彼の夢を見ていたですよ。 夢の中で私は、彼に愛の告白を受け、嬉しさの余りに彼の胸に飛び込んだのです。 彼の匂いを胸一杯に吸い込んで、うっとりと陶けていた所で目が冷めたのです。 夢では無かったのですね。 実際にむせかえる程に濃い彼の体臭が、私の頭を呆けさせてしまう。 そのせいか、空前絶後のアホな行為を行ってしまったのですよ。 胸へのスリスリでは飽き足らず、私は彼の頬にスリスリし始めてしまったのです。 そして、頭がはっきりとした頃には手遅れでした。 私の体はクルンと180度回転させられ、仰向けになった私の体を、彼は左手でお腹の辺りからギュっと抱きしめてきます。 横を向けば彼の顔が間近で見えます。 見えるどころか、頬が容易に擦り合う距離です。 彼の規則正しい寝息が耳にかかるです。 それだけでゾクッとイッテしまそうになるのですよ。 とは言え、いつまでもこうしている訳にはいきません。 なんで彼の腕の中に居るのかは後で考えるとして、私は彼の腕の中から這い出ようとしました。 ですが、私の身体はしっかりと彼の腕で固定されており、逃げ出す事が叶わなかったのです。 モゾモゾと動いたのが悪かったのでしょうか? 気づけば彼は私の耳朶をハムハムと甘噛みし始めました。 その上、彼の右手が私のパジャマのズボンの内側に入り込み、今では下着の上から私のアソコの割れ目をゆっくりとなぞっています。 初めて感じる性的な快感で、私の頭は混乱の極みに。 いえ、本当は一度だけ、興味本位で自慰と言う物をした事はありますが。 その時に感じたモノとは比べ物にはなりません。 これが好きな人に可愛がって貰うと言う事なのでしょうね。 ……って違うですよ!? このままでは、私はどうにかなってしまいそうです! ですが彼の手は段々と私の下着の内側へと入り込み、くちゅ、くちゃ、ぬちゅ……、いやらしい水音を立てるです。「は……あ……はぁ……」 意識が飛んでしまいそうです…… 声を上げるのを必死で堪えながら、私は何とかこの天に昇るような地獄から抜け出そうと足掻くのですが…… それにしても、どうして私は彼に? 状況から察するに、此処は彼の部屋で、そして私は彼の部屋に居る訳でして。 昨夜遅くに帰って来たであろう彼。 そんな彼の部屋に忍び込んだ、という訳ですか、私はっ!? 不味いです。物凄く不味いです。 今が何時頃なのかは分かりませんが、このままでは皆が起き出して見つかってしまいます。 そうしたら私は……、昨日会ったばかりの男性の部屋に忍び込み、夜這いをかける破廉恥な女にされてしまうですよ!! いえ、恐らくですが、それに間違いは無いのでしょうけど。 ですが言い訳をさせて貰えるなら、決して私の本意では無くてですね、気付いたらここにいた訳でして。 ああ、もう本当にどうしたらいいのでしょう? そんな時、「ひぐっ!」 私は思わず悲鳴を上げてしまいます。 彼の指先が、私の膣内へと潜りこんで来たのです。 そこはまだ誰も入った事の無い場所。 自分でさえも知らない未知の場所。 そんな処女地を彼の指が…… 何度も浅く抽送を繰り返し、私の快感を高めていきます。 このままでは、私の初めてが彼の指になってしまう。 それは何と言う恐怖なのでしょう。 恐ろしいまでの絶望感。 初めてが指だなんて……「横島さん……、お願いです、指が初めてなんて嫌なのです。許して……ください……」 涙を浮かべながらの私の訴えが彼に届いたのか、彼の指先は私の胎内から這い出ていきます。 そしてそのままパジャマの上を捲り上げると、私の平たい胸を両手で揉み上げてきました。「あ、あんっ、ふぁっ、うんっ、ん、んんっ、んんぁ……」 恐怖から解放されたせいでしょうね。 先程までとは違い、素直に快感に身を委ねる私。 熱い吐息を吐き出し、艶めいた声を上げ、そして彼の求めに答えていく。 彼の首筋に舌を這わせ、彼の味を感じ、そして濡れていく。 ああ、このまま私を奪って下さい。 指なんかではなく、あなたの大きなモノで、私を犯して下さい。 そして、私はあなたの、あなただけの…… 私はそう思いながら少しづつ体勢を変え、そして彼の唇に自分の唇を合わせようとしたその時、「……っちゃい。」 どんな夢を見ているのでしょうね? ちっちゃいなんて。 私の胸がそんなに小さいとでも言うですかっ! 分かってますよ、私の胸が小さいどころか、何もない平坦だって事ぐらい。 今まで気にした事など無かったですが、好きな男性に言われると流石の私も傷つくですよ? 彼の言葉にプチンと来た私は、彼の額に自らの広いオデコをガツン! とぶつけてやりました。「うぐあっ!?」 突然の攻撃に額を押さえる彼。 私は自分を押さえ込んでいた手が無くなると同時に、素早く彼の傍から離れ、そのまま部屋の外へと逃げ出しました。 完全に寝ぼけている今ならば、私の事には気づかないでしょう、きっと。 きっと、ええ、きっと、お願いですから気づかないで下さい…… そう願いながら私はトイレに飛び込む。 便座に座り込み、濡れた下着を下ろすと、ホッと胸を撫で下ろします。 助かった…… そう思いながらも、どこか残念がってる自分がいるです。 私はそんな考えを振り払いながら、いやらしい体液で濡れるそこを、トイレットペーパーで拭きました。 ビク、ビクン! 性的な快感で、身体が何度も跳ね上がります。 ついさっきまで、彼の指で可愛がって貰っていたアソコ。 気づくと私は、今だ舌先に残る彼の味を何度も味わいながら、徐々に胸の先端とそして股間の割れ目に指が……「ゆ~え~、大丈夫~?」 扉の向こうから聞こえるハルナの声に、ビクッと指を引っ込めてしまうです。 私はすぐさま、「どうしたですか、ハルナ?」と内心の動揺を隠して声を返します。「いや~、起きたら何処にも居ないからさ、心配したんだよ」「すみませんでした。少しお腹の調子が悪かったですよ」 言いながら水をジャーと流し、濡れた下着を履きます。 気持ち悪いですが仕方ないですね。 素早く立ち上がると、そのままリビングへと足を向けました。 そこには委員長さん達だけでなく、横島さんまでいました。 私はどれだけの長い時間、トイレに篭っていたのでしょう。 変な子だと思われなかったでしょうか? 不安で仕方ないですよ……「大丈夫か、綾瀬さん。どっか具合でも悪いのか?」「い、いえ、大丈夫です。それよりも……」 そう、それよりも、先程から横島さんの話に耳を傾けると、「私の事は名前で呼んでくれていいですよ。私達だけ苗字で呼ばれるのは、何だか疎外感を感じるです」 そう! そうなんです!! アスナ、あやか、夏美ちゃん、千鶴ちゃん、木乃香ちゃん。 それに対して、綾瀬さん、宮崎さん、これじゃあ何だか距離を感じるです。 これは直して貰わねば!!「あ、私ものどかって呼んで欲しいかもー」 のどかは素早く私の提案に乗り、「私はどっちでも良いんだけどねぇ」 ハルナはいやらしい目でニヤニヤと此方を見るです。 まったく、ハルナときたらっ!「うし! じゃ、夕映ちゃんとのどかちゃん。そんでハルナちゃんでいいか?」「「はいっ!」」 私とのどかは声を揃えて返事をしたです。「うっしっしっしっし」 ハルナはアホな笑いを私達に向けるですが。 その後は、「もうちょっと寝るわ」そう言って再び寝室に戻ってしまった横島さん。 それでもその日は私にとって、色々と思い出深い一日になりました。 祖父を亡くしてからは、世界の全てがくだらない。 そう思っていた私が、今ではのどかやハルナやこのかと言った友達に恵まれ。 そして、恋をして。 更に、アスナさんを始め、委員長さん、夏美さん、千鶴さんと言った恋敵兼友人も出来ました。「ねえ、ゆえー」「なんです、のどか」「がんばろうねっ!」「ええ、負けられません!」 世界は、とても光輝いているのだと。 これで危険と冒険に満ちた幻想的な世界に行ければ言う事ないんですが、そこまでは贅沢と言うものですね。 10時近くになって、夏美さん達は部活に行ってしまいました。 みなさんは眠っている横島さんの部屋に一人づつ入ると、満足した笑みを浮かべて帰って行きます。 何をしていたんだろうー? ハルナは原稿あるからって言って帰り、私と夕映は一緒に夕食を食べてから帰るつもり。 私達はゲームをして遊んだり、色んなお話をしたり。 後はお昼や夕食のお買い物。そして家事のお手伝い。 アスナさんはちょっとだけ眉を顰めてたけど、すぐに気を取り直して私達を受け入れてくれました。 お昼頃には横島さんも起きてきたから、昼食を食べた後はお話をして過ごせるんだと思っていたんだけど、横島さんは沢山の荷物を抱えて書斎に篭っちゃった。 残念だなー。 でもね、トイレに行った帰りに少しだけ覗いて見たら…… 本を開いたまま眠る横島さんがいてー、私はこっそりと中へ入ってみました。 ……沢山のえっちな本にDVD。 男の人ってこういうのが好きなんだ…… 私は横島さんが開いている本を特に注意して見ました。 猫耳。 裸の女の子に猫耳。そして尻尾。 尻尾はどうやってつけてるんだろう? そんな事を考えていると、机の上に大事そうに猫耳と尻尾が置いてあるのに気づきます。 私は猫耳を装着して、そして尻尾を手に取ります。 尻尾の根元には数珠状の物がついていて、ソコには『←in』 いん? どこにインするのかなー? 私が頭の中を?で一杯にしていると、「のぉぉおおおおおぉぉおおっ!?」 横島さんの雄叫び。 私は驚いて「ひゃぁっ!?」と悲鳴を上げてしまいます。「ワイの清純なイメージがぁーーーーっ!」 必死でえっちな本を隠そうとする横島さん。 私はそんなの全然平気なのに……「大丈夫ですー。男の人は、みんなエッチな本を持ってるって聞いた事がありますからーー」「毛虫の様に見られるよか、こうやって生暖かく見つめられる方がきつい……」 そんなつもりはなかったんだけど…… 横島さんは一通り嘆き悲しむと、気を取り直したのか私の方を見て微笑みかけます。「猫耳似合ってんな、のどかちゃん」 あっ!? すっかり忘れていたかもー。 私は両手をわたわたさせると、恥かしさの余り、顔を真っ赤にして俯いてしまいます。 そんな私の両頬を手の平で包み込む横島さん。 彼は私の髪を掻き分けると、「のどかちゃん、すっげー可愛いぞ。顔、隠すの勿体ねーな」「はわわわわ……」 ただでさえ赤かった顔が、更に赤く染まっていくのが分かります。 横島さんは、そんな私の顔をジッと見つめてきます。 これは、攻めるべきなのかなー? 私は心の中でゆえに、ごめんね、って謝ると、「にゃ、にゃん」 世界の時間を止めちゃった…… ダメだ、恥かしい。 チラッと横島さんを見てみると、何だかぷるぷる震えている。 笑ってるのかなー。 ふえーん、やっちゃったよーー。 「き……キタァーーーーーーーーーーーッ!!」 バンザイするような様で立ち上がる横島さん。 その後は横島さんに言われるままに。 横島さんが、どこからともなく持ってきた真っ白いレオタードを着て、そしてネコさんのポーズ。 フンッフンッと、鼻息を荒くする横島さん。 ごめんね、ゆえー。 一緒にがんばろーって言ったその日の内に、私は親友を裏切ってしまった。 ちょっとエッチなポーズとかとっていると、横島さんが嬉しそうにデジカメで私を撮ります。 本当に子供みたいに楽しそう…… 昨日見た悲しそうな顔じゃなくって、とっても楽しそうで、私はそんな横島さんに見られているんだーって思うと、胸がドキドキしてー。 頭がぽ~っとしてきてー。 もしも今、着ている物を脱いでみようかなんて言われたら、脱いじゃいそうなくらい……「じゃ、少し脱いでみようか?」「えっ!?」 私が混乱していると、横島さんは私の両肩から滑り落ちる様に、少しづつ着ている物を下ろして行きます。 胸が露になった所で一旦止まると、再び言われるままに色んなポーズを取ります。 それをデジカメで何枚も激写していく横島さん。 フラッシュの光を浴びている内に、私は身体中が火照ってどうしようもなくって。 ふと気づけば私の目の前に彼が居て、段々と唇が近づいて……「のどかちゃん! のどかちゃん!! 大丈夫か、のどかちゃん!?」「あ、どうしたんですかー。続きをしてくださいーー」「へっ? 続きって、なに?」 どうやら私は、横島さんのいる書斎に入るなり滑って転んで気絶していたみたいで。 と言う事は、さっきのは全部、ゆめ? 何てはしたない夢を~~~っ。 しかも、あっさりとゆえを裏切るなんて、わたしぃー!? 私は顔を真っ赤にして横島さんにお礼を言うと、逃げ出すようにみんなの所に戻りました。 夕映が私を見て笑いかけます。 ズキンと胸が痛む。「ごめんね、ゆえ~~~」「どうしたです、のどか」「ううん、なんでもー。でも、謝りたかったの」「そうですか……。それは兎も角、頭の猫耳は一体どうしたですか?」「えっ!?」 両手を頭にやると、確かにソコには猫耳が。 だとしたら、さっきのは本当に、ゆめ? それとも、げんじつ? 胸のドキドキが止まらない。私は今来た方を見ると、その先に居るはずの彼に向ってこう言った。「今度は尻尾の付け方を教えてくださいね?」「やれやれ、ようやく瘴気が晴れたわい」「では?」「うむ。念の為に数日様子を見たら、封鎖を解いてもええじゃろ」「ではその様に」