まほらのほほん記 第15巻 あやか、夏美、アキラの……、『ただいま修行中!!』 初めて行われる実戦形式の修行。 あやかは横島の出した式神の攻撃をかわし、神通棍の一撃で逆に弾き飛ばす。 距離が開いた所で符を額に、力を増幅しつつ呪を唱える。 呪の力が全身を満たして行き、「陰陽五行、汝を調伏する、鋭っ!」 式神に向けて符を持った腕を振り下ろすと、攻撃的な霊力があやかから放たれる。 ズガンッ!! 彼女の目の前に居た式神が呪の力で内側から弾け飛んだ。 式神が人型の紙切れに戻ったのを見て、あやかは大きく息を吐く。 一瞬の間を置き、満面の笑みを浮かべる。「やりましたわっ!」「おお~っ!!」 周囲から一斉に感嘆の唸り声と、パチパチパチっと拍手が巻き起こる。 あやかがこの3ヶ月の間やり続けていた事が、遂に目に見える形で実ったのだ。 横島が思うに、あやかには霊能力者としての才能は余り無い。 こうして霊能を使えるのも横島との性魔術のお陰で、一から習得しようとすれば50年経っても霊力には目覚めなかっただろう。 その彼女がまだまだとは言え、六道女学院レベルにはなったと思えるのは結構凄い事だ。 事実、あやかを称賛している子達から少し離れた場所で、アスナが両手を地につけてブツブツ何か言いながら落ち込んでいる。 そんなアスナに苦笑しつつ、横島は思うのだ。 平和だな、と。 会社をクビになったのは痛恨事だったが、自分に恨みを持って狙っているっポイ女が居る以上、辞めるのは時間の問題だった。 ぶっちゃけ、今の平和は嵐の前の静けさ。 事実、この件とは関係ないが明らかに嵐と思われる件がある。 あの馬鹿の息子、ネギ・スプリングフィールド。 小学低学年程度の年齢のこの子が、年明けに魔法学校を卒業し、麻帆良に修行の名目でやってくるのだ。 間違いなく起こる、面倒事が。 あの馬鹿と彼女の息子だ。 そりゃー、色々とトラブルが起きまくるに決まっている。 自分の事を棚に上げ、横島は何度もウンウンと頷く。「どうしたですか、横島さん」 深刻な顔をしていた横島を心配したようだ。 気づけば彼の周囲には、さっきまであやかを称賛し、羨ましがってた娘達が集まって来ていた。「うん? なんでもねーよ。そんじゃ、次っ、夏美っ!」「へっ? あっ、はいっ!」 横島は夏美を呼ぶと、あやかの時と同じように、元の世界から持ち込んでいた式神ケント紙を取り出す。 ハサミで人型に切り抜くと、ポイッと彼女の前に放り投げた。 夏美の目の前で、横島が放り投げた紙切れが存在感を増して行く。 バシュッ! 現れるのは日曜朝のテレビに出てきそうな戦闘員っぽいなにか。「イーッ!」 右手を高々と上げて、自らの主たる横島に最敬礼をした。 レベルは50。先程あやかが倒したのと同じレベルのケント紙で作られた式神。「んじゃ、怪我しない様に気をつけて……、始めっ!」 夏美は右手に霊力を集中させる。と言えば聞こえは良いが、実はそれ以外の事が出来ない。 彼女の右手は霊力で出来ている。 いや、むしろ質量を持った霊体と言ってもいい。 そんな彼女の右腕を構成したのは横島の霊力である。 即ち、彼女の霊能とは、「出てっ! H・O・G!!」 横島のハンズ・オブ・グローリー(劣化版)なのだ。 横島に比べると流石に出力は低い物の、彼女の作る霊波刀はそれなりに威力が有り、魔に属する者にとっては天敵と言っても良いほど。 ただしっ! 当れば、だが……「えいっ! えいっ! えーーいっ!!」 何処か気の抜ける気合の声を上げながら、必死に式神戦闘員に攻撃を仕掛ける夏美。 あやかとは違い、彼女の攻撃は一切当らない、掠らない。 まがりなりにも武術を収めていた彼女とは違い、唯の素人なのだから仕方ないっちゃー仕方ない。 コレは横島も分かっていた事だったのだが、妙に自信有り気だったので試してみたのだ。 結果は、言うまでもあるまい。 式神戦闘員の明らかに手加減した攻撃で、あっさりと投げ飛ばされる夏美。「あうあうあう~~~」 目を回したように地面に突っ伏したまま立ちあがれない。 ちょっと調子に乗ってたみたいだな。 横島はちょっとだけ苦笑した。 自分の時は常に実戦で、増長する暇なんてなかったが。 周りが凄かったせいもあるし、何より自分に自信を持った事なんて終ぞ無かったから。 とは言え調子に乗るのも仕方ない。 あの右手。アレの表面上の威力だけはアスナの魔装拳に匹敵するモノが有る。 周りから煽てられその気になっちゃったんだろう。 自分もその経験なら有るし。「目が覚めたか?」 ちょっとだけ意地悪な笑みを浮かべて言った。 夏美はバツが悪そうに顔を背けると、「うん……」 と、素直に頷く。 可愛いなぁ、と横島は夏美を立たせながらそう思う。 土や埃をパタパタと払ってあげると、先ほどまで自分が居た場所まで導き、そこに座らせた。「夏美ちゃんに必要なんは体術だな。アスナかあやかにでも教わっとけ。んじゃ、次っ、アキラっ!」「はいっ!」「落ち着いて行動するように……、始めっ!」 横島が合図したと同時、アキラはズドンッ! 地面を蹴り上げあっという間に式神戦闘員の眼前に現れる。 気を込めた手で顔を掴むと、そのまま地面に叩き付けた。 バシュンっと軽く爆発音が鳴ると、式神戦闘員は紙切れに戻る。「おお~っ!!」 湧き上がるどよめき。 目を丸くするアスナ。 無理も無い。 アキラの最初の一歩は、瞬動に他ならない。 いや、鍛え上げれば縮地にすら届くレベル。 横島もコレには本気で驚いた。 かつての自分よりも遥かに強い。 少なくとも、香港でメドーサとやりあった時の数倍は強い。 後は実戦経験かな? そう思う。「お疲れ様や~~」 アスナが落ち込み、他の少女達がアキラを称賛し、横島がその光景を見ながら何やら考えていたその時、木乃香がおしぼりとドリンクを持ってやってくる。 木乃香に修行風景を見られても平然とする面々。「ありがとうございますわ、このかさん」 この手の事に一番煩いあやかでさえ、普通に受け入れている。 もちろん木乃香には魔法関連は秘密だ。 だが、いい加減隠すのが面倒なのと、木乃香だけ秘密なのは家族としてどうかと思った横島が、遂にやった。やってしまった。「木乃香ちゃん。俺は、霊能力者なんだ!」 魔法関係は秘密だ。だが、霊能は魔法関係じゃない。 そんな詭弁を考え、学園長と相談した上で木乃香に話した。 モチ! 詠春には内緒で。 その上で木乃香には、外ではこの話はしてはいけない。そう、しっかりと注意して。 この家の中なら大丈夫。 例えしょっちゅうウチの前でうろちょろしてる神鳴流の娘でも、中を伺う事は出来ない。 横島が念入りに結界を施しているから。 こんな感じで、この間の夏美の腕斬られちゃった事件は霊障があったんだと、学園長と2人して木乃香に嘘を言って誤魔化したのだ。 木乃香は当然の様に、自分も霊能を身に着けたいと願ったのだが、「木乃香ちゃんには霊能の才能は無いわ」 との横島の言葉で泣く泣く諦めた。 木乃香に霊能の才能が無い、と言う訳では無い。 詠春が怖い……、と言う理由だけでも無い。 それ以上に魔法の才能が突出しているので、その才能を潰すのが惜しいと横島は思ったからだ。 それからと言うもの、木乃香は影に日向にアスナ達の面倒を今まで以上に見る事になった。 とても羨ましそうにしながら。 そんな木乃香を見て、横島は決めた事がある。 いつか詠春を闇討ちして、この娘に魔法の力を授けてやりたいと。 それがいつの日になるかは不明だが。 それは兎も角として、おしぼりで汗を拭い、ドリンクを飲んで咽を潤す少女達の意識を、手を叩いて自分に向けさせる。「あやかと夏美ちゃん、それにアキラちゃんの3人で、一つ仕事をしてきて貰う」「えっ、まだ早いんじゃない?」「いや、今の内に経験しといた方がいいだろう。この先も、この世界に関わっていくか如何か決めるのにちょうど良いしな」 アスナは頷く。でも、心配だ。 彼女たち、特にあやかとアキラは化け物に襲われた経験がある。 夏美は夏美で人間とは言え、斬撃で右手を欠損する程の重症を負った。 事、相手を目の前にして冷静でいられるかどうか判らない。 何より、これは命のやり取りだと言う事だ。 彼女達に出来るのだろうか……? 「大丈夫ですわ、アスナさん」「怖いけど、うん、頑張る」 アスナの心配そうな顔に気づいたのだろう。 あやかとアキラはアスナを安心させようと声を掛け、夏美はそれにうん、うんと何度も頷く。「じゃー、そう言う事で今日は終わりっ」 3人とも横島に大きく頷く。 そんな3人を、アスナを始め他の娘達は心配そうに彼女達を見つめ続けた。 △月▲日 学園長のじじいに頼み込んで、難易度の低い仕事をあやか達の為に割り振って貰う。 こっそりついて行くつもりだが、念の為にタカミチも連れて行こう。 イザとなったら、タカミチを生贄にして彼女達を救い出せる様にな。 アイツもイヤだとは言わんだろう。 何せ自分が受け持っているクラスの子なんだからな。 せっかくだから、ついでにタカミチの奴がどの位強くなったかも見てやるとするか。 老け顔、ヒゲ、タバコと、ガトウの物真似ばかりじゃねーってトコを、しっかりと見せて貰わなきゃな。 もしも格好付けだけだったら……、地獄の特訓、猿老師バージョンでもやらせるとしよう。 蟷螂の化け物に襲われ、何も出来ず、ただ逃げ惑う事しか出来なかった。 触手に内臓を犯され、魂を溶かされ、死にかけ、千鶴の心に大きな傷をつけてしまった。 自分を助けようと、化け物に身体を差し出しまでした彼女の心を。 今でも、多分これから先も、何度でも幾等でも思い浮かべる事が出来る。 あの男の顔を。 ラプシィア・ルン。 自分たちを陵辱し、暴虐の彼方を尽くした化け物。 その化け物の召喚主である男。 この学園の教師を何人も殺した男。 今は、もういない男。 もしも今、目の前にこの男が現れたら、自分は取り乱す事無く居られるだろうか? ……取り乱してたまるか。無様な真似を晒してたまるか。二度とあんな思いをしてたまるかっ! かつての何も出来なかった自分と決別するため、あやかは初めての悪霊退治へと挑んだ。 2人の仲間と共に、必ずや横島に良い報告をするのだと張り切って。 そう、張り切っていたのだが…… 現場である屋敷に着き、悪霊の姿を確認した彼女達は、あやかの作った破魔札を手に持ち3方から取り囲む。 そして、タイミングを合わせて一斉に破魔札を投げつけた。 ビシュッ、と閃光が走り、悪霊に衝撃が……、余り伝わらなかった。「ちょっ、効いてないよっ! お札、全然効いてないっ!?」「落ち着きなさい、夏美さんっ!」「委員長も落ち着いて、神通棍が光ってないよ? 霊波が全然出てないんだと思うよっ!?」 あやかお手製の破魔札は、威力自体はそれほどでもないのだが、霊力を通しやすく、彼女と夏美が使うと威力がそこそこ上がる筈なのだ。 だが初めての実戦で緊張し、力が上手く引き出せていないようだ。 それどころか悪霊の怒りを買っただけ。 怒り狂う悪霊の外見は、良くあるホラー映画に出てくる亡霊とゾンビを足して2で割った様な姿で、少女達の嫌悪感と何より恐怖感を掻き立てる。 「ダッシャーーーーーーーッ!」 憎悪と怨念に満ちた霊波を、少女達に向ける悪霊。 ただでさえ萎縮しかかっていた夏美は、その霊波をまともに浴び、硬直する。 彼女の右手に宿る力は既に消え去り、アキラとあやかも精神の集中さえ出来ていない。「シヌェーーーーーーーーッ!!」 目の前の獲物をいたぶる好機と捉えたのだろう。 悪霊はボロボロに崩れた手から伸びる爪をかざし、夏美を切り裂こうと襲い掛かる。「ひぇっ!?」 擦れた悲鳴を上げる夏美。 だが、ここ数日真面目に取り組んだ体術が身を結んだのか、身体を半身横にずらし何とかかわす。 夏美に爪をかわされ、それでも勢いを減じず彼女の背後に居たあやかに体当たりをしてくる悪霊。 それを神通棍で正面から受け止めるあやか。 ギリッ……ギッギッギッギッギッ…… 神通棍の軋む音が辺りに響く。 神通棍は悪霊や妖怪退治に使われる霊具。 頑丈で耐久力も高い霊具とは言え、霊気を通さなければ唯の棒。 ビッ、ギギギギギギギッ! このままでは折れてしまう。 そう判断したあやかは、何とか霊力を搾り出そうとするも、空回りするだけ。 目の端に涙を溜めて、叫びだし恐慌に到る寸前。 アキラは何とかあやかを助けようと、拳に気を溜めて殴りかかる。「委員長を、放せぇっ!」 バシュンッ! 悪霊の身体に叩き込まれる拳。 だが、練習時の半分に満たない力しか込められず、然程効いた様には見えない。 いや、事実効いてはいないのだろう。 神通棍をいなし、逆撃で切り裂いてやろうと爪をアキラに向けた。 突然神通棍にかかる力がなくなり、「きゃあっ!?」と前のめりになるあやか。「あっ」「ええっ!?」 夏美とアキラの驚きの声が上がる。 前のめりになったあやかは体勢を崩すと、悪霊を巻き込みスッテンゴロリン。 そのままぐるぐると床を転がり、気づけば悪霊に押し倒される形となった。 腹の上に乗られ、恐らく転がった時に爪で服をギザギザに切り裂かれたのだろう。 女性の象徴たる大きな胸を外気に晒され、悪霊の両手がその膨らみを押し潰す。「………………」 気不味い沈黙に包まれる。 そんな感情など残っていない筈の悪霊までもが、どこか気まずげな様子だ。 プチン 何かが切れる音が聞こえる。 もしも悪霊に弁解が許されるなら、こう言っただろう。 事故だっ!? だが、怒りに支配された乙女(?)にその言い訳は通用しない。「……のにぃっ!」 ボソボソと空気を震わせ、あやかが何事かを囁く。 悪霊はあやかの声を、しっかりと聞きたいのだろうか? 首を少し傾け耳をあやかに向けた。「そこを触って良いのは……、あの人だけですのにぃっ……!」 あやかから凄まじいプレッシャーが生じる。 バチッバチッ、彼女の手元にあった神通棍がスパークする。 彼女の長い髪が、まるで生きているかの様に、ゆらゆらと揺れ動く。 屋敷がガタガタと鳴り、そして…… 悪霊が恐怖からか、あやかの上から飛びのいた。 後ろに跳び、そのまま逃げようと屋敷の中央へと飛び、そこで……「逃がさないっ!」 アキラの右の回し蹴りを入れられた。 それは気が充分に篭った一撃。「ガァァアアアアアッ!?」 今来た道を、そのまま戻る様に吹き飛ぶ。 そこで待つ、鬼気を発するあやか。 右手に神通棍。左手に破魔札。美しい金の髪を霊気の風でなびかせる。 ビリビリに裂かれ、その隙間からわずかに覗く膨らみと桜色の突起。 その姿は戦女神と言っても過言では無い。 悪霊は尻餅をついた格好で、呆然とその姿を拝む。「誰が見ても良いとおっしゃいました。私を見ても良いのは、あの人だけですわ」 怒りの篭った声に恐怖する。 何とか目の前の存在から逃げ出そうと、周囲を伺うも、「逃げられると思ってるんだ」 右斜め後ろからポニーテールの少女の声。「逃がすわけないのにねー」 左斜め後ろから、右手を霊気で包まれた少女の声。 えっ? 貴女方には何もしてませんよね? と、言わんばかりにイヤイヤと首を左右に振る。 少女達にとっては、セクハラ野郎は殲滅するに値する存在だ。 特にアキラにとっては他人事ではない。 化け物に胸を嬲られるのが、どんなに気色悪くおぞましいのか実感しているのだから。 3人から立ち昇る霊力と気の波動は、悪霊に最期を覚悟させた。 ああ、俺は天の彼方へと逝くのだな……、さらば青春の日々、さらば、おっぱい…… 最期の瞬間に、果てない恐怖から自我を取り戻した彼は、そう呟きながら、 3人にボコられた。 その様子をこっそり伺っていた2人。 いや、正確に言うと一人。 もう一人は両目を抑えてゴロゴロと転がっているから。「痛いじゃないですか、忠夫さんっ!?」「アホか! 女の子の柔肌を、お前の様な無精髭に見せるなんて出来るかっ!!」「見ませんよ。キチンと横を向いたじゃないですか……」「念の為や」 もしも何かあったらスグに飛び出せるように待機していたのだ。 彼女達がどうにかこうにか上手くやったのを見て、ホッと息を吐く。 タカミチは横島に目を突かれたが。 「怖いですね、あの子たち……」 悪霊をボッコにしてるのを見て、冷や汗を流すタカミチ。「何言ってやがる。あのくらい普通だ」 最近こそ無いものの、あんなのしょっちょうだった横島。 何処か泰然としている。「あっ、成仏したみたいですよ」「怖かったんだろ?」「……そうですね」 そんな2人の周囲を囲う様に、、沢山のおぞましい影が現れる。「まったく、あのじーさん。調査書の内容が思っきし間違っとるやないかっ!」「ええ、本当に……」 珍しくタカミチも青筋を立て、怒りを堪えているようだ。 何せこの幽霊屋敷。 学園長の話では、低ランクの悪霊が一体いるだけの筈なのだ。 ところが、居たのが悪霊では無く、魔族。 それも周辺の悪霊や怨霊、亡者と言った負の感情を持つ者達を集め、力を蓄えていたのだ。 その全てを横島とタカミチで押さえつけ、その上で一番弱そうなのをあやか達に差し向けたのだ。 もしも、もしもあの娘達だけに行かせていれば、間違いなく殺されていた。 横島やタカミチと言った強者であれば特に問題はない。 だが今回横島が頼んだのは、初めての退魔に相応しい簡単な仕事だ。 それが……!! 麻帆良に戻ったら、学園長に散々たかっても文句は出まい。 普段ならば止め役になるだろうタカミチですらGO! サインを出しているのだから。「それじゃ、そろそろ片付けましょうか、忠夫さん」 タカミチは両手をズボンのポケットに突っ込み、彼なりの戦闘体勢を取る。 彼は嬉しかった。 自分の力を、横島に見てもらえると思ったから。 ワクワクしてくる。 顔が獰猛な笑みになっていく。 だが……、「いや、あの娘達についててやってくれ。この仕事はあの娘達の仕事だ。だからこいつらは、俺が始末する」「えっ? そりゃないですよ、忠夫さんっ!?」「んな訳で、ここは俺に任せてアイツラの事、頼むわ」 そう言って、タカミチの返事も待たずにスタスタと屋敷の奥へと歩いていった。「強くなったな、タカミチ」 最後にポツリ、横島が言葉を零す。 タカミチは喜びで叫びだしたくなるのを抑えるのが精一杯。 さっきの獰猛な笑みではなく、子供の様な笑みを浮かべながら、家路につく少女達を追いかけた。 屋敷を出てしばらくすると、背後から凄まじい力を感じる。 光が溢れ出し、そして暗闇へと戻る。 タカミチはスグに彼だと分かった。 凄まじい力だ。何をやったのかさっぱり分からないけれど。「ハッ……アハハ……ハハハハハハハハ……」 決して気づかれない距離から彼女達を見守りつつ、堪えきれなくなったのか遂に笑い出す。 大声で、とても楽しそうに、嬉しそうに。 おまけでスキル表 雪広 あやか 霊能 E→D 霊的戦闘 E→C 体術 B 柔術 A 神通棍 D→C 符術師 E→B 札製作 E→A 陰陽術 E→B 商売 A→B 性魔術 E→D 奉仕 A→S 床技能 B→A 村上 夏美 霊能 A 霊的戦闘 E 体術 E 剣術 E- 料理 B 掃除 B 洗濯 B 演技 A→B+ 奉仕 E→D 大河内 アキラ 気 B+ 体術 A+ 泳術 S 料理 B 掃除 C 洗濯 C 奉仕 D 露出 B- 後書き 幽体のはずの悪霊が、なんであやかとすってんごろりん出来たかって? きっと全身に微量な霊気を纏ってるんだよ。 そう思っとこうね?