「のう、横島くん。頼まれてくれんかのう?」 少し焦りを見せながら、この麻帆良学園の理事長を務める近衛近右衛門が横島に懇願する。 話はそう難しい事では無かった。 現在、ここ麻帆良学園の在る日本は、関東を中心に凶悪犯罪や魑魅魍魎による凄惨な事件が増加し、治安が悪化の一途を辿っている。 それを鎮圧し、叶う事なら原因の調査及び今後の為の対策。 そして、英雄の息子の来訪前に、何とか平和で平穏な日常を取り戻しておきたい。 究極的には、修行の為に訪れるネギ・スプリングフィールドの安全の為と言っても過言では無いだろう。 横島はちょっとだけ考える素振りを見せると、すぐに「まあ、いっか」と承諾した。 近右衛門と、横島を説得する様に言われていたタカミチはホッと胸を撫で下ろす。 これで戦力は整った。 後は一気に攻勢に出て、素早くこの事象を収束させるのみ。 一般人による凶悪犯罪は警察に任せ、自分達は裏の人間や魑魅魍魎の鎮圧。 学園長は勢い良く立ち上がると、この場に居た全ての魔法関係者に指示を出す。 命令を受け、決意と正義に酔った表情を浮かべながら学園長室を飛び出して行く人達を斜め見ながら、横島は考え込んだ。 ここ最近の不自然なまでの事件の発生の事……ではない。 そんなモノは横島にとっては所詮他人事だから。 ネギ・スプリングフィールドの事だ。 ジクジクと胸が軋む様な痛みを感じる。 心の古傷を抉られた、あの、大戦の時の出来事を思い浮かべていた。 この世界に落ちてから自分の世界に戻るまでの10年間、唯の一度も女と良い関係になる事はなかった。 愛子とそういう関係になった時、どれだけラッキーと思った事か。 現在の横島周辺の女性事情を見ても分かる様に、決して彼がモテナイ訳では無いと言うのに。 実際、彼はその『汚点』と言う不名誉な二つ名は別としても、そこそこモテてはいたのだ。 ただ、常に彼の傍に居た男が問題だった。 件のネギ・スプリングフィールドの実父。 千の魔法を使いこなす最強の魔法使い、悠久の風、赤い翼、サウザンド・マスター、英雄『ナギ・スプリングフィールド』「セラスちゃーん、この後ええやろ? デートしよ、な、なっ!」「はあ、もう仕方ないわね~。ちょっとだけよ?」 気の無い素振りを見せるも、どこか嬉しげな表情を浮かべる彼女。「イィーーーッヤッホォーーーーーーッ!!」「まったく、本当にアナタって人は……」 呆れた様子を見せながらも、彼の手を引き歩き出すセラス。 横島は、2人だけで過ごす夜に想いを馳せ、喜色満面の笑みを浮かべた。 心が沸き立ち、煩悩がもう止まらない。 だが、そんな横島にとっての幸せな時間は一瞬で終わりを告げる。「おっ! タダオ捜したぜ! これからメシでも食いに行こうぜ。」「はっはっはー。わりぃーな、ナギ。俺はこれから」「ナナナナナナ、ナギ殿!」「ん? アリアドネー総長じゃん。お前も一緒に行くか?」「は、はいっ!!」 万事常にこの調子。 いつもいつも良い所で現れるナギ。 この日、セラスは横島との事など無かったかのように、ナギにべったりで……「むがぁあああああああああああああっ!!」 両手を上げ咆哮を上げる横島。 周囲の人間は何事かと思い彼の方を見るも、「おんのれぃナギィィィイイイイイイイイイッ!!」 懐から取り出した藁人形を、血の涙を流しながらカァーン、カァーンと打ち続ける。 残っていた魔法使い達は余りの気迫に恐れ戦くも、タカミチの「いつも事だから気にしないで」との言葉に、出来るだけ関わらない様に三々五々に散っていく。 残ったのは「フォフォフォ」と横島を見て笑う学園長と、横島のサポートに付くことになったシャークティのみ。「いい加減になさい、横島さん」 横島はシャークティの言葉で我を取り戻すまで、ずっと呪いの人形を打ち続けた。 決して横島がモテ無かった訳じゃない。 ただ、それ以上にナギが凄く凄くモテモテだっただけ。 あえて言うなら、モテランクに100馬身程差をつけられているとでも言おうか。 仕方無いと言えば仕方無い。 人としてのランクが余りにも違い過ぎた。 英雄補正もあったろうし、何より顔の造作が圧倒的に向こうが上だ。 イケメンなのだ、ナギと言う男は。横島の様な平凡な顔の作りでは無いのだっ!! フラレ通しの横島の心の傷は大きく、ナギの「そんなもん、最後は全部脱がしちまうんだから、どうでもいいじゃねーかっ!!」の発言で袂を別ったとしても仕方あるまい。 まあ、袂を別ったと言っても、呼び出しを受ければホイホイ顔を出す程度だったし、それ自体は言い訳めいた切欠に過ぎなかったのだが。 何せ横島忠夫は、ナギ・スプリングフィールドの…… だからこそ横島は警戒するのだ。 ナギの息子が此処に来たその時、自分の楽園が終わりを告げるのでは無いだろうか……と。 学園長と正座でシャークティに怒られながら心底恐怖した。 そんな彼の様子を、こっそり覗いて憤っている者が一人。「やっぱりそうなのね。『偉大な魔法使い』サウザンド・マスターにあの様な暴言を吐くなど……」「お姉さまぁ~、見つかっちゃいますよ! 止めましょうよぉ、覗きなんてぇ」 彼女は思う。 あの男を見張らなければと。 傍を離れず、おかしな行動をさせないようにと。「フフフ……、見てなさい、横島忠夫。アナタの化けの皮を剥がして上げますから。フフフ……アハハ……アーッハッハッハッハッハッ!」 まほらのほほん記 第21巻 真・日々彼是 その5 □月●日 アスナとのどかちゃんが妖怪探しに出かける事に。 見鬼くんを持って行かせようとしたんだが、声を掛ける間もなく行ってしまった。 何か他に上手いやり方でもあるのだろうか。 この世界特有の魔法か何かで捜すんかな? まあ、2人とも頑張れ。 △月○日 アスナがイライラし始めた。 何かすっげーこえーんだけど。 0.8美神程の恐怖を感じる。 ☆月×日 アスナが夜遅くまで帰ってこない所為で、木乃香ちゃんと2人っ切りの時間が大幅に増えた。 あやか達が居る時はそうでも無いんだが、あの娘達は7時前には寮に帰るし、その後10時近くまでは本当に2人だけ。 落ち着かん! 膝枕で耳かきして貰ったり、膝枕でテレビ見たり、お風呂で背中流して貰ったり、背中流して上げたり、 ご飯の時にあーんして貰ったり、あーんして上げたり……etcetc…… 間違いなく近い内に手を出す自信があるぜ。 そろそろ本気で詠春対策を考える時が来たのかもしれん。 悶々とするよりは、俺も木乃香ちゃんも健康的ってもんだ。 うん、そーに違いない。間違いねー。 ◎月▼日 このままじゃ煩悩が爆発して木乃香ちゃんを…… 最低でも詠春対策が出来るまでは手を出す訳にはイカン。 アスナが俺の相手をしてくれるのが一番なんだけど、アスナは帰ってくるなり風呂入ってメシ食ってすぐ寝ちまう。 疲れている所を起す訳にもイカンし、無理にイタしても嫌がられるだけ。 明日にでも修行しに来るあやか達の誰かに、暴れん棒を鎮めてもらうのが一番だな。 だーれにしよーかなー♪ ▲月●日 木乃香ちゃんが千鶴ちゃんを連れて買い物に行っている間にハッスルする事に。 夏美ちゃんとアキラちゃんの冷たい視線にも負けず、あやかを押し倒す事に成功。 仕方ないんじゃー! このままじゃ木乃香ちゃんと間違いを起しちまうんやー! そんな訳で、絶対零度の視線にも負けずにあやかの上着をたくし上げ、ブラジャーを剥ぎ取り、 思う存分にけしからんおっぱいを両手でモミモミしてやった。 最初は抵抗していたものの、スグに大人しく俺を受け入れはじめ、さあ本番と夏美ちゃんとアキラちゃんの手を借りて服を脱ごうとした。 その時だ、アスナが帰って来たのは。 疲れでイライラした感情全てを拳に乗せ、ワイの顔面を抉る様な一撃をかましてきた。 あの一撃は幼い頃のアスナに教えた冗談技、天馬彗星拳。 かつて浪速のペガサスと呼ばれた横島忠夫の必殺拳だ。 成長したな、アスナ。 喰らった瞬間、小宇宙の狭間に飲み込まれる様な錯覚を覚えたぜ。 それにしても、今日に限って早く帰ってくるとは。 神は死んだ…… ●月▼日 今日は中休みのアスナとのどかちゃん。 木乃香ちゃんは夕映ちゃん、ハルナちゃんと部活で図書館島に。 あやかと夏美ちゃんに千鶴ちゃんの3人は、アスナを気遣い今日は来ない。 アキラちゃんはルームメイトの子達と遊びに行くらしい。 そんな訳で朝から夕方まで3P。 全身白濁塗れにしてやったぜ! ちとやり過ぎかと思ったが、2人ともまだまだイケそう。 俺もここ最近溜めに溜めた煩悩発散出来てスッキリ爽やか。 それにしてもこの娘等、知らん内になんちゅー耐久力になっとんじゃ。 まあ、のどかちゃんは何度も気絶しとったが。 だがアスナは……、その内、俺が食われる側になるかもしれん。 本当に久しぶりに、裕奈や亜子やまき絵と街へ遊びに出たアキラ。 ウインドウショッピングに食べ歩き、そして今はカラオケと、思う存分に普通の女子中学生として羽を伸ばす。 まき絵が熱唱している中、裕奈と亜子は最近のアキラの様子を身を乗り出して聞きだしていた。 何故なら、最近のアキラはちょっとおかしい。 悪い意味で無く、とても良い意味で。 生き生きとして輝いているとでも言うべきか。 その一方、部活を辞めたり(本当は休部だが)そのクセ毎日の様に何処かに出かけたりと行動がとても怪しい。「んで、いっつもそこで何やってんのさ、アキラ」「うん? 何って色々だよ、裕奈」「そんなんじゃわからへんって」 アキラの曖昧な答えに、イライラを募らせる裕奈と亜子。 だがアキラとしても、特殊な能力を鍛えてますとは言えないし。 困ったのか曲表に顔を突っ込んで、必死に裕奈達の追及をかわす。 丁度その時、まき絵の歌が終わり彼女も話しに加わってきた。「じゃーさ、その横島さん宅に私達も行ってみよーよ」「おー。それはええ考えやな」「それじゃ決定って事で、良いよね、アキラ?」「えっ!?」 ピクピクと頬を引き攣らせ始めるアキラ。 魔法の隠匿と言った問題もある。 だがそれ以上に問題なのは横島なのだから。 自分にとって大切な存在だとは言え、普通に考えれば社会的な常識の斜め上をダッシュで走り抜ける男だ。 気軽に会わせて良い存在ではない。 アキラはそう考えると、来るのを止めようと口を開きかけるも既に遅し。「じゃーじゃー、いつ行こっか?」「うーん……、明日でいいんじゃない?」「アスナや木乃香がお世話になっとる家なんやろ? 2人にも話を通した方がええんとちゃう?」 口を挟む間もなく、裕奈が木乃香に電話して許可を取ってしまい、成す術もない。 やや呆然とした面持ちで3人がキャイキャイと騒ぐ所を見ながら、アキラは明日の事を思い気が重くなっていく。 なんせ横島の第一印象は余り人好きのするものではない。 好きな人だ、悪く見られるのはイヤだ。 でも、自重してくれるかな、横島さん……「はぁ~……」 アキラは気が重くなる様な溜息を吐くと、手元にあったリモコンを手馴れた様子でピピッと操作する。 流れ出すイントロに合わせて立ち上がると、重い気を吹き飛ばす勢いで熱唱した。 もう、成る様になれ! そんな気持ちで。 その後、歌いまくって気分転換をすると、寮に帰るなりあやかの元へと走った。 明日、裕奈達が横島邸に行くのなら、色々とやっておかねばならない。 魔法の隠匿、横島の行動を自重させる等、etcetc…… あやかに全て話し、後の事を彼女に一任すると漸く落ち着きを取り戻し部屋に帰る。 それでも不安は拭えない。 寝る時間となり、ベットに横になってもまだ胸が重く感じる。 なんだろう、この湧き上がるどうしようも無い不安は? アキラは無理矢理にでも眠ってしまおうと、頭から布団を被った。 いつもは気にしない、微かに聞こえてくる甘く喘ぐ声を耳に入れない様に。 □月■日 アキラちゃんがお友達を連れて来た。 裕奈ちゃんにまき絵ちゃんに亜子ちゃん。 正直な話、前2人のテンション高くて疲れたぜ。 俺ももう年だな。 あと裕奈ちゃん、あの子魔法使いの才能あるな。 って思ってたら魔法関係者の娘さんか。 魔法、内緒にしてんのかよ。 それはともかく、あやかとアキラちゃんに、 「お願いだから大人しくしてください」って言われたんだがどうよ? そんなに俺は恥かしい存在だと言うんかっ!? 久々にグサッときたぜ。 これはアレだな。 2人の身体で償って貰うしかねーな。 何て思ってたのに、アスナが帰ってくる前に逃げるようにして帰ってしまった。 でもな、その気持ち、痛い程良く分かる。 あの子、今スッゲー機嫌わりぃーかんなぁー。 今もギスギスした空気を撒き散らしながら部屋に帰っちまったよ。 また始まるんだな、俺の禁欲性活が…… 早く妖怪変化だかが見つかれば良いのに。 その日の深夜、裕奈は高ぶる気持ちを抑える事が出来ずに眠れず、気分転換にと大浴場に。 消灯の時間が過ぎた今、ここに来る者など誰も居なく、彼女は一人湯船に浸かると目を瞑る。 ピチョン……ピチョン…… 水滴が落ちる音がやけに響き、その音すらも彼女が落ち着くのを阻害させる。 今日見た男性、横島忠夫。 十人並みの容姿。教養の無さそうな顔。アキラと大差ない身長。スケベ。 褒められるところが有るとすれば、明るく明け透けな性格ぐらいなモノだ。 自分の父親の足元にも到底及ばない。そんなつまらない男。 そう、そんな人。 でも、初めて部屋で自慰をする様になったあの日、公園で幻の様に見えたアキラの情事。 その相手……の様に思える。 その情事自体が現実にあった事なのかどうか分からず、きっと自分の欲求不満から見えたモノだとずっと思っていた。 でもだ、今日見た男は間違いなく、その時に見えた人の様な気がして…… 無意識の内に、指がそっと自分の胸の先端を弄くり始める。 浴槽の淵に、顔が仰向けに成る様に首を掛けると、身体から力を抜き、湯船に浮かせて痺れる様な快感に浸っていく。 甘い声を微かに上げながら、あの日チラリと見えたアキラのアソコを貫く肉杭を思い浮かべる。 ソレが自分の胎内に飲み込まれるのを幻想し、ビクンと身体を跳ねさせ軽く絶頂してしまう。 気づけば指が自分のワレメをなぞり、禁断の領域に飲み込まれるように、チュプっと音を立て沈めていく。「はあ……あ、あぅ……狭……ぅん……」 初めてソコに異物を侵入させた裕奈は、軽い恐怖と沢山の好奇心に心が蝕まれていく。 あの日見た、アキラのエッチな顔を思い浮かべ。 そして今日見た、アキラの……いいや、アキラ『達』の想い人を思い浮かべ。 裕奈は何となしに思う。 あの日見たのは幻想何かじゃないって。 アレは現実にあった事で、アキラ達はああやって彼に抱かれているのだろうと。 乳房を乱暴に揉まれ、大きな肉の棒で貫かれ、激しく腰を揺さぶられて犯される。 ルームメイトで親友のアキラが、生真面目な委員長が、目立たない普通の子だった夏美が、大人っぽい千鶴が、清楚で天然な木乃香が、快活な転校生のアスナが。 その場面を何度も脳裏に描き、自らの敏感な部分を弄くり回す指が激しく踊り、そして、「くぅっ……きもち、いい……とろけちゃい、そうかも……あはっ……」 場にそぐわない陽性の笑みを浮かべる。 今日まで何度もこうして自分の身体を慰めてきた裕奈だったが、やはり何とも言えない罪悪感めいた後ろめたさがあった。 それも今日で終わり。 みんな同じだから。えっちだから。自分以上に、もっともっとエッチだったから。 だから、私は、こうして……「ああっ、くるっ!? ふぁっ、はぁっ、いちゃう、やぁっ……ンゥ……ひぃ、っくぅぅううううううううううっ!!」 理性を捨てて、身体全体を襲う快楽の波に流される。 延々と続くような悦楽に身を委ね、目から涙を、口からは涎を垂れ流し、激しく身体を痙攣させた。 そのまま心地良い疲れに眠りを誘われ、段々と瞼が重くなっていく。 このままじゃ、のぼせちゃう…… そう思うものの、体は言う事を聞かず。「裕奈、いるの?」 だが、不意に聞こえたアキラの声で覚醒し、ビクンと身体を跳ね上げる。 アタフタしている内にアキラは裕奈のすぐ横に来る。「もう少ししたら亜子も来るよ」 顔が紅潮していく。 のぼせた訳じゃなく、もしかして見られたかも? そう思って。「……えと、いつから?」 言いながら裕奈は、アキラの肩に自分の頭をのせる。 何も答えないアキラの様子から、自分がしていた事を知っているのだと裕奈は思った。 もしかして、いつものアレも知られてたりして? でもま、もう別にいいや。 そんな感じで裕奈は開き直ると、アキラをそっと伺う。 「ねえアキラー。前さ、公園で見たの、やっぱりアキラ……なのかな?」「うん? 何のこと?」 すっとぼけた調子でアキラは答える。 だが裕奈は確信した。やっぱりアレは現実だったのだと。 あの不思議な現象をどうやって起したのか? 疑問は尽きないが、取り敢えずは……「あのさ、気持ち良いの? アレって……」 アキラが何か言おうと口を開きかけたその時、亜子が入ってきて有耶無耶に。 結局アキラからは明確な答えを聞き出せず。 裕奈は残念に思うものの、同じ部屋だからいつでも聞けるかと、この場では口を閉じた。 代わりに亜子と2人で彼の何処が好きなのか追求する。 とても楽しく、いつもの自分で。「子供っぽいトコとか、凄く優しいトコとかかな」 微笑みながら、とても『女』の表情を浮かべるアキラを見て、裕奈と亜子はどこか羨ましく思うのだ。 特に亜子は、自分も好きな人が居るだけあって、自分もと心からそう思う。 そして、そっと背中の傷跡に手をやり……「ハァ~……」 大きく息を吐く。 全てを諦めきった表情で。 それでも諦めない気持ちが自分の背中を押す。 アキラの微笑む姿に自分を重ね、自分もこんな顔で笑いたいと。 自分が想うあの人に告白してみよう。 もしかしたら、全部が上手くいって、脇役なんかじゃない道を歩ける様になるのかも。 アキラの様に自信を持って。 亜子はそう決意すると、お湯をパシャと顔に浴びせ気合を入れると、ザバァーと水飛沫を上げて思い切り良く立ち上がった。「ウチも告白するわっ!!」 手を握り締め、力こぶを作るみたいなポーズを取り雄々しく吠える。 アキラは、私は告白なんてしてないんだけどな。なんて思うものの、亜子の幸せを祈って応援した。「よっしゃー! じゃあ……」 パッパと風呂から上がり亜子の部屋に行くと、既に寝ていたまき絵を起して明け方まで騒ぎ通した。 淡く儚い想いを叶えるために。 △月□日 アホが俺の縄張りに入ってきた。 メンドクセー事に、俺が出張る事に。 ああ、ホンマにメンドイわ。 とりあえず、近場に居るヤツから適当に狩っていくとするか。 殺しは無しだよな、シャークティさんがいるんだから。 ×月×日 9割方は狩り尽くしたんだが、一番厄介っぽいのが逃げ回っていやがる。 俺等の追跡に気づいたんだろう。 目標をあっさり投げ捨て逃げに徹しやがった。 コイツは本物のプロだな。 無理はしねぇー辺りがよ。 仕方無いんで、明日からはお泊りセット持って追跡モード。 でもま、ご褒美の事を考えるとコレもまた試練だ。 ご褒美、それはジジイがくれた箱根無料宿泊券。 シャークティさんと2人っ切りで…… ぐふ……ぐふふふふ…… さあ、悪の犯罪者よ。 この、GS横島忠夫が居る限り、貴様の明日は無いと思え! ○月●日 目標の賞金首が、どうも面倒な事を企んでいる。 ヤツがアジトに逃げ込むか仲間を呼び出すまで、ワザと止めを刺さずに適当に追い詰めていたんだが…… 正義の味方の如く現れて、賞金首の隙を付き、アッと言う間に目標を鎮圧しやがった女の子が一人。 俺とシスターはポカーン。 女の子は勝ち誇った顔して悠然と佇む。 まあ、スグにシャークティさんのカミナリが落ちたけどな。 何せ手間が増えたからなー。 尋問せにゃならんだろう、この賞金首の男をさ。 魔法を使って吐かせ様にも、耐性あるだろうから手間だし。 文珠を使えば一瞬なんだけど、流石に俺の切り札を見せる訳にはいかねーし。 そんな訳で、シスターは怒られてショボーンとしている子と、ボコボコになった賞金首を連れて麻帆良に帰るとよ。 ざけんなぁーーーーーーーーーーーーーッ!! ワイのワクワクしっぽり混浴計画をどうしてくれるんじゃぁーーーーーーーーーーーーーーっ!! しかも、しかもだ、横島さんはごゆっくり温泉に浸かっていってくださいね。だとよ…… 一人で行ってもツマランだろうが。 何て思ってたら、ショボーンとしている子の連れ、俺のファンの佐倉愛衣ちゃん。「せっかくですから、私の代わりにこの子を連れて行ったらどうですか?」 おいおい、自分で言うのも何だが、俺なんかに任せて良いモンなのか? 下手しなくてもアンタを喰う気満々だったんだぞ? それにしても、最初の印象って凄く大切なモンなんだな。 こんなにあっさりと俺みたいな社会不適合者に、可愛い女の子を任せるんだからよ…… まあ、この娘に手を出す気はないけどな。 俺の大切なファンなんだから。