心地好い眠りの中、柔らかい感触を唇や頬に感じる。 なんだ……? 不思議に思い、心地好いまどろみを捨て、うっすらと目を開けた。 すると、目の前で一心不乱にキスの雨を降らす木乃香の顔がある。 目線を下に向けると、可愛い胸のポッチがゆらゆらと踊る。 その淡い膨らみとポッチに、誘われるように両手を伸ばした。 ふにゅっと暖かく柔らかい感触。コリっと摘むようにポッチを捏ねくり回した。 それは横島がとても大好きな感触だ。「ひゃんっ!?」 可愛い声をあげ、恥ずかしそうに身を僅かに引いて胸を覆い隠す。「えっと……な? 気持ち良さそうに寝てる横島さん見とったら、こう胸がキュンキュンして……、あう……」 顔を真っ赤に目をキョロキョロ忙しなく、無意識なのだろうが、お尻をフリフリして劣情を誘う。 昨日、散々に嬲った白い肢体に少女特有の甘い香りが、4分立ちの欲望に身体中の血を集めた。 横島は湧き上がる欲情に、我慢出来ないしする必要もないと、木乃香の腕を掴んで自分の胸に引き寄せる。 お尻に手を回して数回撫でると、おもむろに尻肉を鷲掴んで腰を浮かせた。 朝一の屹立を、昨日の行為で腫れあがって痛々しい彼女の女淫にピタリと押しつける。 チュ……ク……、顔へのキスだけで濡れたのだろう、僅かにだが粘った水音を響かせた。「イツっ……!」「まだ痛い? 止めとくか?」「大丈夫やもん……」 ちょっとだけ苦痛の声を上げるも、拗ねたように唇を尖らせ、自分から腰を落として横島を迎え入れる。 ニュグっ、入口に彼の先端が飲み込まれると、ひりつく様な痛みが彼女を襲った。「あん……くっ、ぐぅ……っ、いたない、いたないよ、ウチ……」「落ち着いて、俺の名前を呼びながら、ゆっくり腰を下ろすんだ。そしたらスグによくなるさ」「う、うん……よこしま、さん! よこしまさんっ! あ……んっふぁ……しまさん……ぁあん、やあっ!」 彼の名前を叫ぶたびに、ヌメル液体が身体の奥から滲み出て、彼女の苦行の手伝いをする。 先端が最も狭い部分を抜けたのか、そこからは一気にグプンと奥まで飲み込んだ。 「んんんぅ……ふぁぁあああああっ!! う、ウチんなか、横島さんで……いっぱいや……あんっ」 口を大きく開き、背筋がぞくりとする程に淫らな女の声を漏らす。 小刻みに震える熱い屹立を胎内で感じ、傷口を捻じり込む痛みが官能に変わった。 熱く湿った木乃香の膣肉が、横島の肉棒を柔らかく包み込み、頭が痺れる程の快感。 それほどまでに木乃香の中は気持ちが良いのだ。 「く、ぅん……はぁっ、はぁっ……ンンッ、ンゥッ!!」 木乃香は呼吸を荒げつつも、身体の力を抜いてゆっくりと、ぎこちなく腰を揺らし始めた。 ここで少し話が変わる。 近衛木乃香の外見は、日本人形の様な京美人、もとい京美少女。可憐な大和撫子の見本と言っても良い、可愛らしく儚げな少女だ。 そんな彼女ではあるが、図書館探検部なんて謎な部活に所属しているせいだろう、見かけによらず体力を始めとした運動系の能力にも優れていたりする。 だから昨夜の横島との抜かず5回戦、見事にヤリきっても不思議ではない。 とは言え、例えどんなに体力や運動能力に長けていようが所詮は経験が全くない処女。 緊張していただろう。当然、無駄に力を使っただろう。体力だって限界突破していたのだし。 そんな過酷な処女喪失を経験してから半日も経たない内での性行為。 ……騎乗位で、例えゆっくりでも自分から腰を動かすのは、致命的だった。「よこしま、さん……きもち、ええ? もっと、ウチから動いた方が、え゛?っい゛ぃィッ!!!」 コキン、と彼女の背中から、確かにそんな音が聞こえた。 娼婦の様に男を惑わせる淫らな表情をしていたのが、ひきつった苦痛に変わる。 顔色を赤から青に変化させ、快感からではない痙攣で身体を震わせ、激しい苦痛で背を弓なりに硬直した。 彼女にとって幸運だったのは、激しい腰の痛みのせいで膣圧が強烈になり、横島の肉棒をこれでもかっ! と締め上げたことだろう。 横島が急に来た締め付けに耐えられず、「うっ!?」と唸ってあえなく限界に達して終了しちゃったのだから。 最奥に浴びせられる熱い精液の感触に、昨日と打って変わって陶然とする余裕もない。「あだっ!? いだ、だだだだだ……っ?!」 「木乃香? 大丈夫かっ!?」 悶絶する彼女の中から慎重に肉棒を抜き出すと、痛そうにする腰に優しく霊力を流してヒーリングする。「い、痛くて、動けへん……」 注ぎ込まれた精液をダラダラ垂れ流し、でもちっとも煽情的になれない雰囲気。 この日、2人は教訓を得た。 ヤリすぎはアカン、ご利用は計画的に、等々…… ネギま!のほほん記 第19巻 性長……もとい成長 木乃香が登校したのは、2時間目の授業の終了間際だった。 がに股で、尚且つ腰を痛そうに曲げて歩くその姿は、とても尋常ではない。 ネギ行方不明でざわめく教室の雰囲気も、木乃香はそれどころでは無かった。「ちょっとこのか、大丈夫なの?」 ツインテールの少女、アスナが心配そうに声をかけた。 木乃香は「だいじょぶ、だいじょぶ」と笑うが、次の瞬間、腰に手を当て「い゛い゛い゛……」涙目で喘いだ。 傍にある机で身体を支えながら、右手で腰を押さえてうずくまる。 はっきり言って、この状態の木乃香を見て大丈夫だと思う奴はいない。「このかさん大丈夫ですのっ!?」 慌てて駆けよってくるあやか。 彼女はネギ行方不明をネタに騒ぐクラスメイト達を宥めながら、遠目で木乃香の様子を心配そうに見ていたのだ。 その木乃香が苦痛の声を上げたのだから、心配して駆けよるのは当たり前だ。 なんせあやかは、横島の周囲に居る女性陣のまとめ役を自認しているのだから。「も、もう、ダメ……や……、そ、そっとウチを席に……連れて、って……」 苦痛で悶絶する木乃香を、そ~っと彼女の席まで連れて行く。 木乃香は苦痛に震える声で「あ、あんがと、いいんちょ……」と礼を述べると、そのまま机の上でぐだ~っとなった。 そんな木乃香をジッと見つめる千鶴。数秒何事か考えた後、ふぁっと柔らかい笑みを木乃香に見せた。「……あら? ようやくあの人に抱いてもらったのね?」「なんの……ことですの?」 あやかが不思議そうに千鶴の方を見た。 それこそ、今更なにを言っているのと言わんばかり。 ようやくも何も、一緒に暮しているのだから、それはもうしょっちゅう抱かれてるのでしょう? こう思ってる。 それはあやかだけでなく、アスナ、夏美、アキラもやっぱりおんなじ。「ふふふ。このかはね……」 顔をアスナ達に近づけ、関係のないクラスメイト達には決して聞こえない小さな声で、「昨日の放課後までは……バージンだったのよ? ね、このか?」「「「「……はい?」」」」 4人の首が同時に右に傾むいた。 机の上でぐだ~っとしていた木乃香が、バッと顔を隠し耳がまっかっかになったのを見て、少女達は千鶴の言葉の意味を次第に理解し始めた。 5秒経ち、10秒経つ。だがマダ完全に意味を理解出来ない。 15秒経ち、30秒経つ頃になると、イヤ~な汗をダラダラ流し始める。 そして、1分が経過し……「「「「ええええーーーーーーーっっっ!!!!」」」」 爆発した。「あーもうっ! 『違う』って知ってたら2人だけになんかしなかったのに!!」「じゃあ性魔術の研究の時とか……、バージンだったの?」「すっかり騙されちゃったね……」「そんなことより、千鶴さん! 知ってらしたのなら、どうして!?」 うまいことすりゃ、木乃香というライバルを横島から遠ざける事だって出来たのにっ! そんな4人の心からの声に、だが千鶴は、「そんなの遅いか早いかの違いだけよ?」 ───確かにっ!! 4人はダクダク涙を流し、納得せざるおえなかった。 そう、確かに納得したのだが、心の奥から沸々と沸いてくる黒い何かを完全に止めることは出来なくて。「あーあー。このかったらさ、朝のご奉仕とかぁ? お風呂で一緒に身体を使ってとかぁ? 色々と教えてあげたのに、ずーっと自分がバージンだって黙ってたんだぁ?」 首まで真っ赤にして聞こえないフリをしている木乃香の耳元で、嫌味ったらしくアスナがチクチク。「え~? 処女だったのに、そんなことまでしてたんだぁ」「そうなのよ。でもね、夏美ちゃん。このかは処女って言っても、手で、お口で、胸の谷間で、スマタで、まあ色々とやる事はヤッてたんだけどねー?」「あー、それじゃ経験者だって思っても仕方ないかも……」「でっしょー? アキラもそう思うわよね?」 チクン、チクン、ズザッ、ザクッ アスナと夏美とアキラ。3人の口撃の度に、「あうっ!?」っといたたまれない様な声。 ただ千鶴とあやかだけは一歩離れた感でいたので、木乃香は救いを求めウルウルとした瞳をむける。 だが……「小学生の頃からの付き合いでしたが……、このかさん? アナタが、そんな淫乱娘で腹黒女だったとは知りませんでしたわ」 流石は女達のまとめ役。しっかりと止めを刺した。 アスナ達は横島のハーレム要員と言われても仕方のない立場。 本当だったら、ドロドロとした怨念渦巻く状態でも可笑しくはない。 だが、実際の所は皆仲良しで、それなりに納得済みの間柄。 足の引っ張り合いや貶し合いなんて絶対にない。 無いのだが……、やはり嫉妬なんてものを完全に消し去るのは不可能で、ここぞとばかりにストレス解消。 もちろん冗談半分でやってるし、木乃香もそんなことは分かってる。 分かっているのだ。でも、「ウチな……、腰がこんなんだから今日は横島さんのお世話がキチンと出来そうにないんよ」 ビクンッ! 身体を跳ねさせる少女達。 そう、ここで上手いこと木乃香に取り入ったら、彼女の代わりに横島のお世話が出来る! あ~ん、ってご飯を食べさせてあげたり。 お風呂で背中を流したり、流してもらったり。 夜はもちろん! ベッドで2人仲良く抱きしめ合って。 朝起きたらおはようのキッス。 色んな体液でベタベタの身体を綺麗にしようと、いちゃいちゃしながらシャワーを浴びて。 そしてまたまた、あ~んって朝ごはんを食べさせてあげれる。 いや、ここはいっそ口移しで……って、きゃーっ! 最後に、いってらっしゃ~いのキスで学校にいってきま~す!! なんて桃色未来予想図…… ネギが居候している今、こんな機会は滅多にない! だがアスナは「クッ……!」っと苦い顔。 彼女は明日までエヴァンジェリンの世話をしなきゃならない。 そうなると候補は、あやか、千鶴、夏美、アキラの4人。「このかさん、私がお手伝いしますわ!」「ちょっといんちょ! ここは私がやるってば!」「えっと、私じゃダメかな?」 身を乗り出して立候補するあやかと夏美。 一歩引いた感だが、やっぱり自分がやりたいアキラ。 だけど木乃香はあっさりと、「ちづ姉、手伝ってくれへん?」「ええ、いいわよ」 3人をシカトして、千鶴にお願い。 それはもう、とても良い笑顔で。 つまらなそうに膨れるアスナに、がっくり項垂れるあやか達。 口は災いの元。一時のストレス解消の為に、折角のチャンスを逃してしまった。 る~らららー。 冷たい風が3人の心の隙間にぴゅ~っとふいた。 そして………… クルリ。千鶴が木乃香達に背中をむけた。 自然に、誰にも変に思われないように。 潤んだ瞳の先は窓の外。遠く離れた家の方をジッと見る。 うっすらと桃色に染まった頬を手で隠し、「ふふ、上手くいったわね」誰の耳にも届かない小さな声が、教室の喧騒に紛れ、消えた。 一方その頃、早朝色々あったお陰で、見事朝食を取り損ねて腹を空かせているおバカが一人。 ぐーぐー鳴るお腹、若い頃は1日2日程度の食事抜きなど日常茶飯事だったのに、今の堕落した彼はそれを耐える気がおきない。 久々に牛丼でも食べに行こうか? それともスーパーでインスタントラーメンでも買って来ようか? すきっ腹でそんな事を考えながら教会へと続く道を歩いていると、ふと名案でも思いついたのか、手をポンと叩いて足を反対方向へ向けた。 彼、横島忠夫には面倒を見ている少年が居る。 その少年、ネギ・スプリングフィールドは、周りの大人達から内緒で与えられた試練の為に、昨日から家に帰っていなかった。 ネギの保護者である横島にとってみたら、可也の問題があるはずなのだが、彼自身もこの件に一枚噛んでいるので問題はない。 とは言っても、保護者として何らかの行動は起こさなければ不味いだろう。 横島はそんな言い訳を口にしながら、ネギがいる図書館島は地底図書室を目指すのだ。 まあ、そこに前もって用意されているだろう大量の食材が目当てなのだが。 そこには夕映とのどかも居るだろうから、行けば朝飯どころか昼飯にだってありつけそうだし。 それに何だかんだ言ったって、ネギが心配なのだ。 ってな訳で、えっちらほっちら図書館島へと向う横島。 中に入るなり図書館島深部まで一気に跳び、同士クウネルの秘蔵アイテムを強奪しつつ、ネギ達がいる場所まで跳ばして貰った。 跳んだ先は、ファンタジーなんかよりもある意味不思議な場所。 沢山の本棚が沈む地底湖。 古い中世ヨーロッパな朽ちかけた建物。 高い天井を支える樹木。 その天井といわず壁までもが光輝く幻想的……、と言うよりは滅茶苦茶不自然な光景だ。 この本、思っきし水ん中に沈んでるけど、大丈夫なのか? 横島にしては至極真っ当なツッコミをしつつ、ちょっと離れた場所で勉強会をやってるネギ達に視線を送る。 丁度勉強会が終わるとこだったらしく、「そろそろ休憩しましょうか」ってネギの元気な声が聞こえた。 疲れた~、などと言いながら、三々五々に別れるネギ達。 こんな状況で鼻歌なんか歌ったりしてる、とても呑気な一行だ。 流石の横島も、頭にチューリップでも咲いてんじゃないか? と思えるほどに気の抜けた彼女達に、すこ~しだけ呆れる。 が、よくよく考えてみっと、自分たちも大差なかったよな~って思う。 美神やおキヌと一緒に居た頃も、紅き翼に居た頃も、どっちでもバカばっかやってたんだから。 真面目一辺倒、常時シリアス状態だったのは、神殺しセリカとの冒険の時ぐらいなもんだ。 彼女達のお気楽極楽な所を呆れる資格なんぞ横島にはない。 そんな自分を顧みて、ちょっとだけ苦笑いしつつ、ネギの居る場所まで気配を殺しながら近づいた。 何で気配を消したか? それは少女達の中に、アスナ級の強者がいるからに他ならない。 見つかったら面倒じゃね? どうせご飯を食べさせて貰うのに顔を出さなきゃならないが、その前にネギの様子が見たかった。 そしてその面倒そうなのが、木乃香の護衛兼ストーカーの桜咲刹那と、学園長の資料にあった甲賀中忍長瀬楓だ。 特に楓は横島的に要注意人物。なんせ、忍者だ、忍者。 きっとくのいち的なエッチな技があるに違いない!! なんて興奮して硬くなる股間の一物を宥めながら、2人に気取られぬように細心の注意を払ってネギの背後に回った。 横島の女である夕映は、勉強が終わると同時にデッキチェアに腰を掛けて優雅に読書。 同じく女であるのどかは、ハルナと一緒に朝食ならぬ昼食の準備をしていた。 まき絵と中華娘、古菲は鼻歌混じりにお散歩状態。 刹那はつまらなさそうに時折ネギの方に意識を向けるだけ。 唯一ネギと同じようにあちこち調査しているのが忍者娘、楓である。 こんな感じでネギの周りには誰も居なく、一人でアチラコチラを慎重に調査していた。「う~ん、出口が見つからない……、多分この辺じゃないかと思うんだけどな~」 焦燥混じりの小さな声が、横島の耳に届く。「いざとなったら……、魔法で脱出するしか……、じゃないと試験に間にあわない……」 頭で考えている事が、ボソボソと口から漏れ出す。 魔法を使えば天井の隙間からヒョイっと抜けだすことも可能だろう。 だけど、それは魔法バレを意味する。 立派な魔法使いを目指すネギにとって、それは決してあってはならない事だ。 でも、ネギはソレを覚悟した。 実はネギ、ここに来る前に比べて『立派な魔法使い』に対して『は』、それほど拘りは無くなっていた。 元々ネギが立派な魔法使いを目指すのは、英雄ナギ・スプリングフィールドを追い求めてのことだ。 あの冬の記憶にある父親の背中と、周りの人たちが言う立派な父親の姿から想像した偉大な魔法使いを目指していたのだから。 だけど、それが麻帆良に来てから少し変わった。 周囲の大人達が話す漠然とした父親のイメージが、確固とした人間ナギ・スプリングフィールドになったのだ。 アノ時の父親の姿から想像したナギ・スプリングフィールドではなく、どちらかと言えば、悪ガキ扱いしていたスタンさんの言うナギに。 横島がネギに話すナギの姿は2つあった。 英雄としてのナギと、偉大な魔法使いとしてのナギ。 それは言うならば、まだまだ子供でやんちゃなナギと、大人になって少し落ち着いたナギだ。 英雄だったナギは、ネギが想像した父親の姿そのものだった。 強く、誰よりも強く、悪い奴ら薙ぎ倒す絶対のヒーロー。 あの日、村を襲った魔族を蹴散らした絶対の強者。 そして、立派な魔法使いとしてのナギは、ネギが『建前』で目指していた立派な魔法使いに相応しかった。 でもだ、違う、違ったのだ。 ナギは決してそんな称号を目指して、人々を救って歩いていた訳じゃなかった。 英雄として、沢山の人々を導く資格を放り捨て、目に映る小さな命を救う本当に偉大な男だったのだ。 それはバカな事だったのかも知れない。 英雄としての方が、結果として多くの人を救えたかも知れない。 でもナギは、そんな英雄が救える沢山よりも、万を救うために零れ落ちる一を救うために、戦火に傷ついた世界を歩いた。 英雄となった子供は、大人になって人々を救う偉大な魔法使いになった。 その道程を、ネギは横島から毎日聞いているのだ。 今まで誰も教えてくれなかった、本当の父親の姿を。 ネギは横島の話を聞いて、これまで以上に尊敬の念を父に抱いた。 結果、父親を求める心が更に大きくなった。 会いたい、会って話がしてみたい。 そんな気持ちが、横島のお陰で大きくなった。 代わりに立派な魔法使いに対しての思いは小さくなった。決して目指すのを止めた訳ではないけれど。 まずはそんな事よりも、父に会って、話して、そして、あの日から目を逸らしていた『あの冬の日』の清算をしたい。 強くなるよりも、皆を石化の呪いから解放しなきゃ、自分は何も進めない。 ようやく、ようやく、その事に気付き始めた。 麻帆良に来てから半月足らずで、10歳にもならないネギが、だ。 誰も教えてくれなかった父の本当。 それをほんのちょっと知っただけで、心の闇が僅かに晴れ、後ろ向きだった心が少しだけ前向きになったのだ。 横島は、そんなネギの姿に、柔らかく目を細めた。 出来の良すぎる弟を見る目で。 これから苦労しまくるだろう少年の未来を案じて。 そして、すぐさま邪悪な顔つきに変わる。 大した苦労もしないで、ガンガン女の子にモテルだろう少年に嫉妬して。 父親に似て、老若男女オールクリア的にモテまくるだろう少年に嫉妬しまくりで。 ネギの憂い焦燥する顔が、まるで一枚の名画のように見えたから。 こんのイケメン予備軍がっ!! 横島は嫉妬に歪んだ顔で、足元不如意にあっちキョロキョロこっちキョロキョロするネギの足を引っかけた。「だっ?!」 横島の足払いは完璧であった。 侵入角、速度、タイミング、全てがだ。 ネギは、ドスン! 受け身も取れず、良い感じで地面に顔から突っ込んだ。 そして横島は、涙目で痛そうに顔を押さえるネギの肩を、ポンと叩く。「どうしたネギ? 大丈夫か?」 素知らぬ顔で、心配そうに。「あうう……、大丈夫です横島さん……って、ええっ!?」「ん? なんかあったんか?」「横島さん! なんでここにっ!!」「なんでも何も、保護者に連絡も無しで無断外泊した悪ガキの様子を見に来たんだろうが」「へうっ!? で、でも、これには訳がありまして……」「まあ、言い訳はメシの後にな」 言いながら転んでいたネギを立たせ、小さい右手をぎゅっと握って歩き出した。 横島の暖かい手の感触に、嬉しそうに顔を綻ばせるネギ。まるで仲の良い兄弟みたいだ。 それに、みんなを連れて脱出しなきゃ、なんて言う重圧からも解放された気になった。 だけども、それは長くは続かない。 のどか達が作った昼ごはんを食べ終え、ここから出る方法を横島から聞こうとした時には、もう彼は居なかった。 最後にポンと優しくネギの頭を叩き、「頑張れよ、ネギ」そう言い残して、キレイさっぱり姿を消した。 走って逃げたわけでもなく、どこかに隠れている様子もない。 転移魔法を使った感じもなく、ドコぞの忍者みたいに、ドロンなんて分かりやすい効果音を立てて消えた訳でもない。 気づいたらソコに居なかった。「何者でござるか、さっきの御仁は……?」 楓が、恐怖を滲ませた声でネギに尋ねる。「えっ? 横島さんは父の友人で、僕の保護者ですけど……?」「そう……でござるか……」「どうしたんですか、長瀬さん?」「いや、なんでも……ないでござるよ。ただ……」「ただ?」 不思議そうに聞くネギに、だが楓は答えることが出来なかった。「いつの間に現れ、そして、消えたんでしょうか?」「修行不足……そう言えれば楽になれる気がするアルよ」 緊張した様子で刹那と古菲が話しているのが聞こえた。 そんな彼女達の戸惑った様子に、夕映とのどかはどこか誇らしげだ。「で、どうやって帰ったの、あの人?」 ハルナの興味津々な問いかけに、うっすーい胸をズンっと突き出し、「さあ? 知りませんですよ、ハルナ」「うんー、さっぱり分かんないよー」「そっかぁ。やっぱ横島さんは凄い!ってことでいいのかにゃ?」「「当たり前です(だよー)!!」」 だがしかし、横島はまだ帰ってなんていなかった。 ここに居るのは思春期真っ只中の美少女達。 空腹を満たせば、気になるのは汗と埃にまみれた自分の身体。 乙女達は清水に身を浸し、その可憐な肢体を清めるのだ。 楓の年にそぐわぬ大きな胸。 古菲の引き締まった腰の窪み。 刹那の雪のように白い肌。 まき絵の未だ花開かぬ恥丘。 どれもこれも甲乙付け難い美少女達の艶姿を、心のHDにしっかりと保存する横島であった。