この世界において、神と人間の接点のひとつ。 そこが妙神山と呼ばれる修行場である。 管理人を勤める、竜神・小竜姫。 その師である、神界屈指の実力者、猿神・斉天大聖。 強力な2柱の神を擁するこの地は、世界でも有数の霊格を誇る山だ。 そんな場所に初めて来たアスナ。 彼女は思う。「ここ、本当に日本なの?」 GS日記 第5巻 妙神山 この門をくぐる者 汝一切の望みを捨てよ 管理人「……なにコレ?」 私は忠夫の方を見ると、胡散臭い物でも見たかのように、って実際胡散臭いけどね、思わずボソッと呟いちゃった。 だってさ、すっごい岩山越えて、やっと辿り着いた先には大きな門があって、その扉には鬼の面。 両端を護るように、首なし仁王像(?)が2体。 そして、この門~の一文に、管理人。 管理人って…… 迫力に欠けるってかさ、力抜けるわ……「ん? コイツ等はな、鬼門だな」「鬼門?」「そ、ここの番人だよ」 私の頭をナデナデしながら、忠夫はそう言った。 うにゃー、私もう小6だよー。 私は必殺奥義、両手グルグルパンチを忠夫にポカポカ喰らわせるも、彼は楽しそうに私を抱き上げる。 もう身長だって150cm近いのに、いつまでたっても子供扱い。 いや、分かってるわよ? やってる事が子供っぽいって事ぐらい。 でもね、彼の中の私は、今だ幼女なのよ。 だからこうしてあげると、すっごく喜んでくれる。 まあ、それも今年一杯なんだけどね。 来年、私は中学生になる。 そしたら、タマモ姉さんに言われている通り、私は…… って、色々と想像しちゃったら、顔が熱くなってきちゃった。 そのまま彼に抱っこされながら、私は至福の思いで彼の胸に顔を埋める。 エッチな妄想をしつつ。 でもそれは続かなかった。「いつまでそうしておるか愚か者共ーーーッ!!」「わっ、喋ったわよ、この鬼の面」 私は大して驚きもせずに、彼の胸からヒョコッと顔を出すと、興味深げに鬼の面、鬼門を見る。 鬼門は顔に青筋を浮かべながら、私達に怒りの声を上げた。「我らはこの門を守る鬼。許可なき者、我らをくぐることまかりならん!」「この右の鬼門!」「そしてこの左の鬼門がある限り、お主のようなロリコン風情には決してこの門をくぐらせはせん!」「誰がロリコンじゃーーーーーーーっ!?」 忠夫は、鬼門の口上が終わると同時に、右手に霊気を纏わせて左の鬼門の顔を、思いっきり殴り飛ばす。「げぶぉっ!?」 変な声を上げて、左の鬼門の体が、何もしてないのにドシャーンと倒れた。 どうでもいいけど、私たちから見て左側が、左の鬼門なんだ…… 普通、逆じゃないの?「なっ、貴様、我らの口上が終わる前に攻撃するとは、卑怯千万なりっ! ますます門を開く訳にはいかん!!」 あれ? まだ口上、終わってなかったの? そんな事を考えてたら、忠夫は抱き上げてた私を降ろし、右の鬼門の前に行く。 そしてどこからともなく取り出したハリセンで、バシィーンと叩いた。「俺のことを忘れたばかりか、ロリコン扱いたぁー、どーゆーことじゃーーーっ!!」 忠夫の言葉に、2人?の鬼門が注意深く忠夫を見つめる。 5秒経過、10秒経過、30秒経過……、3分経過。「いつまで考えとるんじゃ、本気でボケたのかお前らっ!」「お、おおっ! もしや横島かっ!?」「ようやくわかったんか……。まったく、鬼がボケるなんて初めて聞いたわっ!」「いやいや、お主は次元の狭間に落ちたと聞いたぞ?」「で、あれば、貴様の事を忘れても仕方あるまい」「そうじゃ、右の鬼門の言う通り!」「何より、あの横島がロリコンに堕ちていたとは」「想像の域を超えると言うもの」「うむ、我らの目は誤魔化せん」「横島がそこな少女の尻を、撫でようかどうしようか」「迷っていたのを、しっかりと見ておるわっ!」 そうじゃ、そうじゃと互いに頷き合う鬼門。 えっ、そうなの? だったら嬉しいんだけど。 そう思って、私は上目遣いで彼を見上げる。 でも、そんな私に気づかず、忠夫は怒りの声を上げた。「俺はロリコンじゃねぇーーーーーーーーーーーっ!」 叫びながら両手にサイキックソーサーを出すと、そのまま鬼門に向けて放った。 ドゴーンと大きな音を上げて爆裂するサイキックソーサー。 辺りは土煙に覆わるが、鬼門の門は無事に佇んでいる。 鬼門の体はピクピクと痙攣しているけどね。 「さっ、中に入ろっかアスナ」 私の手を引くと、そのまま中に入ろうとする忠夫。 でも、流石に不味いと思った私は、「ね、この人?達、放っておくの不味いんじゃない?」 って聞くも、彼は問題なしと簡単に答えながら門を叩く。「しょーりゅーきさまーーーーーっ! 貴女の横島忠夫が来ましたよーーーーーーーーーーっ!!」 ぎーーっと、音を立てながら開く門。 そこには、見かけ姉さん達と同じ位のわりと小振りな女性が。 この人が小竜姫さまね。 彼女は忠夫を一目見ると、とても懐かしそうな表情を浮かべる。「横島さん、お久ぶりですね」 xx月xx日 ヒャクメって神様はいなかった。 元々ここに居る神様じゃないんだって。 一応、呼んで欲しいみたいな事言ってみたら、ヒャクメさまのスケジュールが空いたら呼んでくれるって。 いつになる事やら…… 忠夫は小竜姫様に連れられて、無理矢理修行を受けさせられてるみたい。 いつまで経っても帰ってこないところを見ると、やっちゃってるんだろーなー。 ちょっとムカムカするわね。 私は老師様とゲーム。 ただのゲーム猿にしか見えないんだけど、すっごく強いんでしょうね。 忠夫が化け物って言ってたし。 雪じいちゃんも、喧嘩売ったら死ぬから気をつけろって言ってたわね。 私の事、何だと思ってるのかしら? xx月xx日 忠夫が老師様にお願いをしていた。 こちらが主目的だったみたい。 あの世界に行く時に使う場は、ここにするんだって。 老師様は、上が許可を出したらだって。 どうなるんだろうね。 そうそう、私の身体、老師様に視てもらった。 完全に使いこなす事が出来たら、中級神魔までなら何とか出来る可能性がある力だって。 中級ったら、小竜姫さま? 無理だわ。 なに、あの超加速って! 一時的に時間を遅くするとか、チートにも程があると思うの。 老師様が言うには、その時間を元に戻す事が出来るじゃろ、だって。 元に戻すも何も、使われた時点でアボーンな気がするわ。 要するに、修行しろって事よね。 忠夫が、まだアスナには早いって何もさせてくれなかったけどね。 一応は老師様から、神通棍の実戦的な使い方を学んだけど。 明日は筋肉痛だ。 ちなみに朝、小竜姫さまはちょっとがに股歩きでヒョコヒョコしてたよ。 やっちゃったんだね、竜神様と……。 老師様が、小竜姫もようやく大人になったか、だって。 まあ、忠夫が明らかにパワーアップしてるから、あんまり文句は言えないのよねー。 未来の使徒である私としては。 2泊3日の妙神山滞在が終わり、私達は下界へと帰る。 下界……、ここにいると、何かその言葉が妙にしっくりくるわね。 私と忠夫、そして小竜姫さまは、ゆっくりとした足取りでここの入り口へと向う。 何度も足を止め、名残惜しそうに話をする二人を、私は必死に急かす。 嫉妬とかじゃなくって、急がないと今日中に家に帰れないよー。 そんな私の焦りなんて、知ったもんかと小竜姫さま。「横島さん、行ってしまうんですね……」 ちょっとぉっ! なに雰囲気作ってんのよっ!! いい加減にしないと、いくら温厚な私でも、ぷっちーんってきちゃうわよ!「いやー、また来ますって小竜姫さま。今度来る時は、ヒャクメやパピリオがいると嬉しいっすね」 嬉しいって、そのヒャクメって神様に用があって来たんでしょうがっ! 大体、パピリオって誰よっ!「パピリオですか……。彼女はしばらく妙神山には帰って来ませんよ? 一応あれでも私の弟子なんですけど、今は魔界の常識を知るって名目で、魔界に滞在中なんです」「えっ、そうなんすか?」「ええ、今頃べスパと一緒にいるんじゃないかしら」 そのまま足を止めて話し込む二人。 あーもー、好きにして……。 頬を膨らませて二人を睨みつける私。 そんな私にようやく気づいた忠夫は、「ゴメンゴメン」って謝りながら私の頭を数回撫でた。 もしかして、いつでも頭撫でたら機嫌が直る、なんて思われてんのかしら? そう思わないでもないけど、実際のトコ私の機嫌は直る訳で。 横目で小竜姫さまが羨ましそうにしているのを見て、フフンって感じで気分が良い。「忠夫~」 私はポスッと彼の胸に飛び込む。 忠夫はそんな私を抱き上げると、「じゃ、そろそろ行きますね」そう言って、門の外に出てしまう。 それを悲しそうに見つめる小竜姫さま。 勝ったっ!! これ、私の心からの言葉。 大きく手を振って、私達を見送る小竜姫さまを見ながら、内心で高笑い。 もっとも、長くは続かなかったけどね。 この妙神山の山道を、抱っこされて行くのは本当に怖い。 断崖絶壁なんて言葉が良く似合う。親知らず子知らずなんて可愛いものよ? そんな道を平然と踏破する忠夫は、私の恐怖など気づきもせず、最後まで抱っこされながら山を降りた。 体力的にはすっごく楽ちんだったんだけどね。 精神は疲弊しまくりだったわよ。「ん、疲れたんか、アスナ」 優しい言葉で私を気にかけてくれる、忠夫の声。 嬉しい。嬉しいけど、帰ったらどうなるか分かってんのかな? 小竜姫さまとの情事、姉さん達にメールで伝えちゃってんだけど。 xx月xx日 なんとか日付が変わる前に家に辿りついた。 明日が学校だと思うと、気が重い。 忠夫は現在、姉さんたちから折檻中と思われ。 うぎゃーとか、あんぎゃーとか聞こえるわね。 死ななきゃ良いんだけど。 実際、霊的に強化してるから、あんま怒らないとは思うけどね。 忠夫が強くなるって事は、姉さん達も強くなるって事だから…… 妙神山に行ってから、ちょうど半年後。 かの地を用いての世界移動の許可が下りる。 横島は『二つの回廊の終わり』を参考にした、世界移動術の為の準備を本格的に進め始めた。 あの世界に今一度戻り、決着をつけねばならない存在がいる。 自分を取り戻す切欠をくれたセリカの為にも、あの男を滅ぼさねばならない。 それが自分らしくないって事くらい、良く分かっている横島だが、奴の存在自体が許せないのだ。 ラプシィア・ルン。 あいつも、今頃俺を捜して四苦八苦しているに決まってる。 互いが互いを憎しみあってる俺達だ。 奴をあの世界へ連れて来てしまった責任もある。 きっちり決着をつけなきゃな。 横島はそう決意すると、霊力の確保の為に動き出す。 簡単に言っちゃうと、女のトコに行くだけなんだが……「シロ、今日はお前に決めたっ!!」 横島はそんなことを言いながら、フンフーンって感じで鼻歌を歌いながら、彼女の寝室に向う。 結局どこまでいっても、横島はヨコシマという事なのだろう…… おまけ ディル=リフィーナ編最終部簡易概要 1部2部は無印に記載されてますんで、そちらを。 流石にプロットも何も一切作られてない話です。 細かい事はなしで、簡単に。 ラヴィーヌ生存end。 彼女の神核を使う場面で、横島がハイパー文珠(神/核)で開けちゃいます。 んで、ラプシィアとの最終決戦。 セリカは原作に比べると、イオ分の神核が無く、代わりに横島がいる状態です。 負けちゃいました。 二つの回廊の終わりが開き、エクリアの子供を核とした融合が行われます。 が、ハイパー文珠(分/離)により、彼の望みを挫くと、そのまま門の向こうへと蹴りだします。 門を(閉)じようとした瞬間、ラプシィアの力で一緒に門の外側に。 気がついたら、ネギま世界です。 こんな感じ。 難しく考えんなよっ! 話きちんと練って無いんだからなっ!! ご都合、ご都合。 後書き そんな訳で、二つの回廊の終わり(偽)を体感した横島。 彼はこの経験を元に、『想像力』を働かせ、文珠と霊地を使った世界移動を思いついた、って話です。 序の巻でも書きましたが、この話の横島の力は煩悩と想像力です。 想像力さえ満たす事が出来れば、メドーサでさえ、(滅)の文珠一個で倒す事すら可能ですから。 メドーサを滅すイメージが出来た、ってのが私の原作の解釈です。 逆に言えば、イメージさえ出来れば不可能はない。 出来れば、だけど…… 生き返りのイメージなんて、実際見てみないと出来ない。 こういう足かせつけてるんで、ご安心を。