それは、横島が京に行く、少し前の話…… 走る、走る、走る…… 息を切らせ、恐怖から目に涙を溜めて、走る。 後ろは決して振り返らない。 ナニかが、とても怖いナニかが、私を追いかけているから。 ついさっきまでは、あんなに楽しかったのに…… ネギと、最近仲良くなったハルナと千雨の4人で、あんなに楽しい時間を過ごしていたのに。 こんなコトなら、ネギ君と一緒に帰れば良かった。 そしたらこんな怖い目には遭わなかったのに…… でも、後悔してももう遅い。 今の彼女はただの憐れな獲物に過ぎない。 「ひ……っ!?」 背後から暗い影が全身を覆い、彼女は恐怖で体勢を崩した。 走った勢いそのままに、咲き誇る一本の桜の木の根元に、ズサササッ! と倒れ込むように転んだ。 すりむき、ヒリヒリ痛む肘や膝。 でも、そんなの気にしている場合ではないと、少女は震える脚に力を込めて立ち上がろうとする。 だけど、立ち上がれない。 影が、彼女の目の前で、嗤ったから。 「い、いやぁ────────っ!!」 暗い影がまき絵を覆い、チクリとした痛みを首筋に感じたと同時に、彼女の意識は霧散した。 ジュ……ジュルルルル…… 思う存分処女の生き血をすすり、満足そうに目を細める。 「思った通り、中々の血中魔力じゃないか」 暗い影の正体、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが楽しげに嗤う。 「クックックッ……クハァーッハッハッハッハッハッー」 「マスター、楽しそうですね」 「ああ、分かるだろ? この娘を使って奴の息子を誘き出す。ようやく、ようやく私の身に架せられた呪いを解く事が出来るのだ!」 「ネギ先生はまだ子供です。程々に……」 「分かっているさ。だがな、茶々丸。死にさえしなけりゃ問題ない。後は横島忠夫が何とでもするだろう。そう、死にさえしなければ、な……」 それは横島への信頼からか? それとも、彼に対する当て付けか。 「でしたら、今の内に横島さんにお詫びの品を送らないといけませんね」 「はぁ? そんな必要はない。これも協定の一つだ」 本人が聞いたら、そんなコトまで含まれておらん! そう言うに決まってるだろうコトを、平然と言ってのける。 でも、そんなエヴァに、茶々丸はちょっとだけ嬉しそうにこう言った。 「どのような下着を身に着けていきましょう……、マスター、新しく可愛い下着……いえ、少し大人びた色気のあるのを作って下さい。今すぐ」 「お、おい、聞いてるのか、茶々丸?」 主の声をまったく聞かず、それどころかトンデモない発言をしだす茶々丸に、驚き目を大きく見開くエヴァ。 「いえ、やはり定番はリボンを全身に巻いて、私がお詫びの品です。どうかご賞味下さい。こんな感じの方が良いでしょうか?」 もしかして? ああ、もしかしてもしかして…… 「茶々丸、もしかしてお前?」 「ああ、いけません! そう言えば明日から京へと出張なさると……マスター、やっぱり下着はゆっくりでいいです」 「いや、だからな? お前と横島忠夫の関係なんだが……」 「……? 言ってませんでしたか? 私はあの方の恋人……の一人です」 言うなりポポっと頬を赤らめる。 機械を越え、『人』となった証。 その仕草は正に恋する乙女その物で。 でも、エヴァはそんな茶々丸に納得出来ない。出来るはずがない。 「ちょっと待て! 恋人と言う所もそうだがな、一人ってどういう意味だ、オイ!」 「横島さんは私が知る限り、 アスナさん、雪広あやかさん、村上夏美さん、那波千鶴さん、大河内アキラさん、 宮崎のどかさん、綾瀬夕映さん、近衛木乃香さん、佐倉愛衣さん、明石裕奈さん。 それにシスターシャークティとも大人のお付き合いをなされているようです。 後は、最近のコトですが、和泉亜子さんも怪しいですね。 あっ、つい先頃、春日美空さん、ココネ・ファティマ・ロザさんも落ちたようです。 ついでに言いますと、アスナさんは私の初めてのお友達で、想い人でもあります」 「なんだその数は……頭が、痛い……ってオイ! 神楽坂明日菜は女だろうが!!」 「頭が痛い……風邪ですね。 早く帰りましょう。封印された状態のマスターは、ただの10才の少女のそれと変わりありませんから」 「あ、ああ、そうだ、な。きっと疲れているのだ。最近、少し興奮気味であまり寝れてないからな……」 「そうですね。お眠りになる前にお飲みになるのは、ホットココアとホットポー、どちらになさいますか?」 「ホットポーで頼む。甘い蜂蜜たっぷりでな」 「了解しました、マスター」 やや疲れ気味のエヴァと、話題が横島から逸れた時から、無表情で淡々とする茶々丸。 そんな2人がこの場を離れ家路に着くと、残されたのは死んだように眠るまき絵だけ。 彼女の存在はキレイさっぱり忘れられ、翌日心配して捜し歩いた亜子に発見されるまで、桜の木の下で眠り続けた。 春になったからとは言え、まだまだ寒い夜空の下で一晩中眠り続けた彼女は、だがしかし、風邪の一つもひかなかったとか何とか…… ようするに、バカは風邪ひかない。 俺が為に鐘よ鳴れ 第2巻 親の心、このちゃん知らず 3年一学期の始業式。 なのに教室には2人分の席が空いたまま。 口角を吊り上げ、挑発的な目で自分を見ているエヴァンジェリンに、アスナは嫌な予感がしてたまらない。 そして、それは息せき切って現れた亜子によって明らかになる。 人気の無い保健室で、ネギが難しい顔して出て行くのを無言で見送るアスナ。 その彼女の目の前には、まき絵が静かな寝息を立てていた。 「あんのロリばばあ……っ!!」 口汚く罵り、苛立たしげに床をダン!と蹴っ飛ばす。 アレだけ私の血を啜っておいて、マダ足りないって言うのっ! しかもだ、ただ血を吸っただけでもないみたい。 エヴァンジェリンは間違いなくまき絵に支配の魔術を仕掛けている。 だけど未だ魔力を封じられている今のエヴァには、彼女を支配して操るなんて出来ないはずなのに。 でもわざわざこんな仕掛けを施しているのだから、間違いなく『半吸血鬼』となり、エヴァの下僕として発病するのだろう。 本当はスグにでも吸血鬼化を防ぐ為の治療をしなきゃ、なんだけど…… 「これも、協定違反になるのかしら」 安易に行動出来やしない。 下手に動いて難癖付けられるのはゴメンだ。 だとしても、何らかの嫌がらせ位はしてやりたいけど…… 頬に手を当て、ふう……、と大げさなまでに大きな溜息。 どうせネギの命は保障されるのだし、まき絵に対してもそう酷いコトはしないだろう。 アスナは、それぐらいならエヴァンジェリンを信じていた。 例え数日間と言えども、共に過ごした相手だ。 エッチぃことされたりと、まあイヤな思いは沢山したが、非道に堕ちず、外道になり切れない甘さのあるヒトだとは解っている。 「ま、こんな場所でウダウダしてても、どうにもならない、よね……」 後は、ネギの頑張りに期待するしかない。 敏いあの子のコトだから、まき絵が魔法関係のトラブルに巻き込まれたコトには気づいているはず。 ハルナが傍に居る以上、桜通りの吸血鬼の噂も耳にしているだろうし。 アスナはもう一度大きく溜息を吐くと、何も気づかなかった振りして教室へと戻った。 成り行きを見守るコトしか出来ないってのは、ちょっとキツイわね…… 今の彼女はタダの傍観者。 だけども、やれるコトはやっておこう。 教室に戻るなり、最近修行して実力がみるみる上がっている長瀬楓に声をかけるアスナだった。 そして、時間は戻る。 横島が京都へと出張した4日目の早朝。 夜明け間もない時間、闇が白ずみ、段々と青くなっていく中、眩しそうに空を見上げる。 眼の奥が押し潰されるような痛みに、僅かに顔を歪めるものの、どことなく満足気に微笑んだ。 「太陽が黄色いぜ……!」 横島にとって、一度は言ってみたかったセリフ。 超絶古臭いモノではあるが、実年齢で考えてみたら爺さんも良いトコなんで、こんなものだろう。 そんなコトよりも、鼻の穴をピスピスさせて得意げな顔……いわゆるドヤ顔してるのが凄くウザイ。 眠気覚ましに「ううーん」と唸りながら大きく伸びをし、身体のコリをほぐす。 そしてヘロヘロに成りながらも気丈に立つシャークティを抱きよせ、見送りに来ていた詠春に軽く手を上げた。 「んじゃな」 「ええ、また会いましょう、友よ」 「……なに気取った言い方してんだか。サブイボ立ったわ」 横島の口の悪さに、でもアハハと楽しそう笑う詠春。 詠春にとって、横島は最も熱い時代を共に駆け抜けた友の一人。 その友の変わらぬ姿と態度に、何だか自分まで若返った気さえした。 横島も、詠春の言葉にボリボリ全身を掻きむしった後、少しだけ真面目な顔して、もう一度、 「んじゃ、またな。詠春」 『またな』 そう言い加えて、うっすらと口元を緩めた。 詠春が嬉しそうに頷くのを見て、横島は文珠を握り締める。 イメージは……麻帆良学園都市、ダビデ広場前の教会内。 「さー、帰ったら木乃香ちゃんの作った朝飯を、腹一杯食うでー!」 最後に詠春に対し、これ以上ない位に挑発的な言動をして、転移した。 後に残るのは、悔しそうにプルプル震える詠春と、彼の付き添いをしている関西呪術教会の巫女。 「わ、私だって……娘の手料理が……食べたいというのに……あのバカは……っ」 必死に宥める巫女さんの甲斐なく、数瞬後、関西呪術協会本部では、神鳴流の決戦奥義が雨霰と降り注いだとか何とか…… 横島が麻帆良学園都市内にある教会へと転移を果たすと、シャークティは気が抜けたのか、フラ~っと長椅子にヘタった。 昨夜の情事の激しさからか、寝不足の上に足腰に力が入らず、もう立つ事さえも覚束ない。 「大丈夫ッスか?」 「は、はい。大丈夫です」 シャークティは、京都滞在中は浴衣か着物姿だったのだが、今はもう何時ものシスター服に戻っている。 新鮮さの欠片もない姿ではあるが、何故か異常なまでにスカートの裾が短いこのシスター服。 充分以上に横島の目を楽しませていた。 ぐったりと長椅子に身体を横たえ、スラリと長く、エキゾチックな色合いの脚が惜しげもなくスカートから飛び出ている。 疲れている所為だろう、呼吸は長くゆっくりで、シャークティの平均的な胸が、たゆんたゆん、と息を吸うたび小さく揺れていた。 横島は、昨夜存分に触ったり、撫でたり、舐めたり、ピーを擦りつけたりしたものの、まだまだ満足なんかしていない。 だから何気ない風を装いながら、ニョキッと飛び出ている彼女の太腿にスーッと手を伸ばした。 だがシャークティは、そんな横島の手を抓って追い払うと、 「学園長への報告は私がしておきます。お疲れ様でした」 怜悧な魔法先生としての顔で、ピシャリと横島を拒否。 内心は、これ以上されたら頭が可笑しくなっちゃう……なんて年に似合わず可愛い口調でオロオロしてたりするのだが。 ついでに言えば体力的な限界でもある。 関西呪術協会の総本山に宿泊した4夜、その全てで横島と身体を重ねたのだから、疲労困憊なのも仕方無い。 ちなみに横島、気力・体力・精力、全て充実。 朝からギンギン状態。 何より、これを最後にしばらくシャークティとの機会は恵まれないだろう。 アスナ達に比べ、シャークティとの大人同士のセックスは実に良いものだ。 年齢を重ねて得る色気は実にタマラン。 なもんだから、冷たく拒否……その実いっぱいいっぱいで涙目なシャークティの太腿に再び手を伸ばす。 膝からジリジリと昇ってくる指に、ひ~~~っ!?っと悲鳴を上げたいのを堪えながら、大人な態度でもう一度抓ってやろうとするシャークティ。 だけど、 「シャークティ、身体が俺を欲しがってるっスよ」 いやらしく笑う横島。 女の本能なのか? それとも好きな男に求められているせいなのか? シャークティが僅かに身を捩るだけで、くちゅり、濡れた股間から淫音が聞こえる。 それでも、そう! それでも! 「欲しがってません! 早く帰りなさい!」 青筋立てて、更には魔力で編まれた十字架まで浮かび上がらせている彼女の剣幕に恐れ慄いた横島は、スタコラさっさと慌てて逃げた。 後に残されたのは、本気で疲れ切った様子のシャークティただ一人。 肩で息をしながら、「た、助かった……」と呟きながら思うのだ。 あの人を真っ当な人間にするなんて、私には無理な試練なのでしょうか……? 視線の先のマリア像が、ムリです。そうはっきり言ってる様な気がしてならないシャークティであった。 「ちぃっと調子に乗りすぎたか……」 反省めいたコトを口にしながら、でも足取り軽く家路に着く横島。 この四日間、あまりに思い通りにコトが運び、尚且つシャークティとの関係が上手くいってたんで油断した。 好感度、あんま下がってないといいんだがな~、なんて軽くメタッた事を考える。 ついでに、エヴァの件、上手くいってるといいんだが……と出来の良い弟的存在となりつつあるネギの心配をしながら、玄関のドアのノブに手を掛けると、 「アンタが横島忠夫さんですかい? 旦那の帰りを今か今かと待ち侘びていましたぜ!」 玄関の横、郵便ポストの前に、喋るオコジョが一匹。 何だコリャ? 妖怪変化……か? それに、自分と同じ何かを持っている同属嫌悪に似た不快感。 面倒事になる前に、祓っとくかな。 サイキック・ソーサーを展開すると、ほいっとオコジョに向けて解き放つ。 「みぎゃー!?」 みっともなく泣き喚きながら、ギリギリの所でヒョイッとかわす。 たった今までオコジョが居た場所が、ズガーン!っと土を巻き上げ爆発した。 「イキナリなにするんスか、アンタはー!」 サイキック・ソーサーの爆音と、オコジョの叫び声。 アスナとネギは何だ何だと横島達が居る場所へ。 「あっ! おかえりなさい横島さん」 ネギの明るい声と、そして、 「おかえり、忠夫!」 嬉しそうなアスナの声。 3~4日いないだけだったのに、何だろう? なんか、凄く久しぶりに帰ってきた気がする。 「おう、ただいま、アスナ、おまけでネギ」 「おまけって酷いですよ、横島さーん」 シャークティとの情熱的な日々も悪くは無いが、やっぱり自宅でのんびりが一番だ。 「あー!オレッチを忘れないでー!」 バタンと閉まった扉の向こうから、何か聞こえてくるけれど、もう今の横島の関心が向くことは本当にないみたい。 木乃香の作る朝食の匂いが鼻をくすぐり、お腹をグゥ~っと鳴らせ、ネギとアスナの微笑みを誘う。 「横島さん、朝ごはん終わったら、少し相談したい事が……」 「ん?いいぞー。でもまずは……あっさメシ! あっさメシ!」 エヴァのコトだなと、割かし簡単に返事を返し、それよりも木乃香の作る朝ごはんの方が気になって仕方無い。 写メで詠春の携帯に送って自慢したろう! なんて思っていたから。 「何や何や、さわがしーなー……って横島さんや! おっかえりー」 「ただいま、木乃香ちゃん」 朗らかな笑みを見せてくれる木乃香を、パシャっと一枚。 横島には、詠春の嬉しそうで、そして悔しそうな顔をしている様がありありと脳裏に描かれて。 「何しとるん?」 「可愛い木乃香ちゃんの姿を、永遠にしよう思うてな」 「私はナシかい!」 「えっと、ボクが撮りましょうか?」 「んじゃ、皆一緒の所をとろな?」 横島を中心に、右隣にアスナ、左隣に木乃香、そして膝の上にネギを乗せ、デジカメのタイマー機能を使ってパシャッと2枚目の写真。 写しだされたその一枚。少し歪な感じがしないでもないが、間違いなく幸福を象徴とする家族の一枚であった。 携帯メールではなく、PCの電子メールで送られたその一枚に、詠春は嬉しそうに目を細める。 大きくなった木乃香とアスナ姫、そしてあのバカの息子のネギ。 自分も歳を取るはずだと、懐かしそうに…… もうしばらくしたら、この子達と会えるのだ。 その時には無様な姿は見せられない。 あのバカの盟友として、恥かしい姿など見せられる筈はない。 詠春は久しぶりに木刀を手にすると、庭に出て軽く素振りをする。 思っていた以上に鈍った身体。 長としての仕事柄、仕方ない事では有るけれど。 それでも、ビシュッ!ビシュッ!! 空気を切り裂くその剣尖。 決してそこ等の有象無象には成しえない鋭さを持っている。 ネギが訪れた時には、ナギの話と、ついでに軽く稽古を付けてあげるのも良いだろう。 そして木乃香にも…… いつまでも自分たちが守って上げられる訳では無いのだ。 裏を教え、これから歩む道先を考える切欠を与えよう。 東西の和睦さえ成れば、もう目に見える危険はグッと減るのだ…… これからは手元で育てるのも有りかもしれない。 だが木乃香にも今の生活がある。 大きく求める訳にはいかないか…… でも、今までと違って、これからはちょくちょく顔をあわせることも楽になる。 たくさん娘と会って、いっぱい話をし、いつか娘をかっさらう男が現れるその日まで、大事に大事に見守るのだ。 優しい顔で、だが振り下ろす剣の鋭さは凄まじい。 娘を掻っ攫う男に向けた明らかに殺気混じりの剣閃に、見ていた護衛は背筋を凍らせる。 詠春は知らない。 既に大事な娘はかっさらわれた後だって。 朝食のあと、色々と汚れた身体を洗おうと、横島は脱衣場へと向かい…… 「ネギー、朝風呂入るぞー」 「あ、僕はイイです。それよりお風呂から上がったら、キチンと相談にのって下さいね?」 「ネギ君と入らないんだったら、ウチと一緒に入ろな?」 「おー。木乃香ちゃーん、先に入ってるぞー」 「あーい」 しかも、今まさに、艶やかに開発されてしまった肢体を、その開発した男の目に晒しているなどとは、思いもよらず。 父の知らぬ間に、娘は好きな男を見つけてさっさと女になっているなんて…… 「あーん、ダメやって……えちぃコトは、夜にアスナと一緒に、や……っ……ぁ……」 ツンと尖った乳首を摘まれて、感電したみたいに、ビクンと身体を跳ねさせる。 しっとり濡れた唇を塞がれて、目はうっとり蕩けるような眼差し。 ぱしゃっ、ぱしゃっ、ぱしゃっ…… ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ…… あん、あん、あん、あん、あん…… 湯船の中、飛び散る水飛沫と、盛んに上下する女の肢体に、狭い浴室に反響する喘ぎ声。 「ふー、極楽、極楽」 適度に熱い湯船と、火傷すんじゃないかって位に熱い女の胎内。そして耳をくすぐる美少女の甘い吐息。 その全てがとっても心地良くって、思わず出ちゃう唸り声。 こんな感じでいやらしく口元をにやけさせている横島に、娘を奪われているなんて本当にまったく思いもよらない。 「そういや仕事先で詠春の世話になってな~」 「ダメ、や……今は、そんなんよりも、ウチのコトだけを考えて……」 「ったく、この親不孝モンの淫乱娘が……」 「だれ、が……ウチをこんなん……し、たと思っとるん……んぁ……」 しっかりと腰を掴むと、いよいよ横島の腰の動きは激しさを増していく。 はちの字を描くように楕円を描き、それに合わせて木乃香が腰を上下する。 長年連れ添った夫婦でも中々出来ない素晴らしい共同作業。 2人の情欲と興奮は高まるばかりだ。 「なんじゃ、気持ち良さそうな顔しちゃってからに。こんなエロ娘は、俺がしっかり管理せんといかんな!」 「は、い……ウチの、ちっちゃくてエッチなおっぱいも、横島さんが欲しくてヒクヒクするお●んこも……ぁぁ……」 「エッチなおっぱいとお●んこが何だって?」 「あ、あぁん! う、うぁ……横島さんに、しっかり管理してもらわな、ウチぃ、ウチぃ……もう、生きて……いけへんもん……んぁ……」 「いい子だ、木乃香! 褒美にワイのミルクをたっぷりくれてやる!!」 「あ、あん、ウチの胎ん中に、たっぷりミルク注いで、ほ、ほし、ぃ、うぁん、は、はやくせぇへんと、ウチ、も、もうイッちゃう! あっ、ああ────────ッッ!!」 ほぼ同時に、遠く京の空の下。 詠春のまだ見ぬ(と思っている)にっくき男の幻想に向って振る剣もまた、まるで木乃香の絶頂の叫びに合わせる様に激しくなっていた。 「娘と付き合いたいのでしたら、先ずは私を倒した後、交換日記から始めるんDEATHね!!」 鬼気迫るその姿に、関西呪術協会の人々は、サムライマスター健在!っとの認識を新たにしていた。 一方、横島家の外では…… 「オレッちのコトを忘れないでくだせぇー!」 あやかが作った対オコジョ妖精の結界に阻まれ中に入れず、外から必死な声を上げるオコジョが一匹。 主(?)である筈のネギにすら忘れ去られ、こんな筈じゃなかったと…… ここに来てから盗んだ下着に包まり泣いた。 「あら、一枚見当たらないと思いましたら、やっぱりアナタだったんですね……?」 お泊まり用にと、横島宅に置いてあった下着。 定期的に持ち帰り、洗濯していたあやかであったが、その中の一枚……特にお気に入りだった黒のシルクが見当たらない。 もしやと思い来てみたら、エロオコジョの巣になってるではないか! あやかの殺気混じりの視線に、必死に言い訳するオコジョであったが…… だがそれも、神通棍を鞭の様にしならせる女の攻撃により、「みぎゃー!」儚く散った。 「なんか外うっさいわねー」 「あっ、カモ君のこと忘れ……」 ネギは何かを言いかけたが、窓から見える金色夜叉のようなあやかを見て、 「横島さん、早くお風呂から上がらないかなー」 日和った。 後書き 原作時間軸で言えば、ネギが家出する日にあたります。 カモと横島ですか? 横島が、自分以外の下着ドロを許すはずないと思うんだ…… んで、次回はネギVSエヴァ 横島の出番、まるでなしw