それは、誰にとっての自業自得だったのだろう? エヴァンジェリンのネギ襲撃から翌々日のこと。 エヴァ&茶々丸主従が、横島家へとやって来た。 とは言っても、茶々丸の主たるエヴァンジェリンの意識はなく、ただ彼女に運ばれているだけの存在ではあったが。 そのぐったりと意識のないエヴァを大切に抱きかかえている茶々丸は、横島の顔を見るなり、キッと強い視線で睨みつける。 「ひぃっ!?」 思わず仰け反り逃げ腰になる横島。 今の茶々丸、0.8美神級の威圧感である! 「ど、どうしたの茶々丸さん?」 ちょっと怖々だけど、彼女のレズ友……もとい親友だと自認しているアスナが問いかける。 だって、茶々丸さんは忠夫が好きなはず。 なのに、どうしてこんなに怒ってるんだろう? ……まあ、原因は……なんだろうけど。 案の定その通りで、茶々丸は怒りの籠もった視線を横島に向けながら話し始めた。 「横島さんがマスターを襲撃し、ニンニク塗れにしたのです」 「はあ、それは大変やったなぁ」 「しかもそのニンニクが腐っていまして、襲撃の現場である我が家は腐海を越えた別の何かに……」 ジトッとした視線が、家族の筈のアスナや木乃香から向けられる。 いやいや、お前ら事情は知ってるだろう? そう言いたげな横島に、2人の目は、やりすぎよっ! と言わんばかり。 まあ、そう思うのも仕方ない。 被害者であるエヴァンジェリンは酷く具合が悪そうに唸り続けてるし、茶々丸まで疲れ切った表情を隠せないでいる。 なんせ横島の襲撃を受けてからこっち、家中に蔓延するニンニク臭を消す為に、丸一日以上、掃除し続けたのだ。 なのにその間、ただの一度も魔力の回復が行われておらず、少しでも気を抜けば省エネモードに入って眠りについてしまいそう。 魔力さえ回復出来れば、24時間休み無しでの活動が可能な茶々丸だったが、マスターであるエヴァは真っ青な顔でダウンしたまま。 当然、魔力の回復なんて出来やしない。 横島は、彼女の機嫌を取る為にも魔力を回復しようか? と言いかけるも、茶々丸も横島がどう反応するのか分かっていたのだろう。 「結構です」 先制攻撃! 横島には無表情でキッパリ断る一方、 「アスナさん、お願いできますか?」 アスナに対してわざとらしく頬を赤らめて、そうお願いした。 アスナを見つめる今の茶々丸は、誰が見ても可愛い恋する女の子。 横島に対する怒りの見せ方といい、アスナに対しての恋する女の子みたいな対応といい。 本当に、人間みたい。 アスナは優しい笑みを浮かべると、茶々丸に素気無い態度を取られてへこむ横島を見る。 茶々丸を【人間】にしたのも、自分を【人】に近付けたのも、みんなみんな、アナタ。 「それと、家の脱臭が終わるまで、こちらに泊めて頂きたいのですが……」 「ええよええよー」 「そうそう、困った時はお互いさま、ってね」 「ありがとうございます、このかさん、アスナさん」 「部屋は……茶々丸さんは忠夫の書室に。ダウンしてるエヴァンジェリンは客間かな?」 「ウチ、部屋の用意してくるな」 「私も手伝わせてください」 「そうやなー。じゃあ、いっしょにしよな?」 これより数時間後、環境が良くなったおかげだろう。 意識を取り戻したエヴァンジェリンは、茶々丸のこの行動を非難するも、すぐに納得。 客間から横島の部屋に移動し、巨大なベッドのある彼の部屋を強奪を慣行。 「確かキサマには貸しがあったよなぁ。なぁ、横島忠夫?」 などと言って横島を部屋から追い出すことに成功する。 自分の女を連れ込んで、色々とエロエロなことをする部屋だ。 当然、彼にとって最も過ごしやすい環境が整えられている。 もちろん、色々と大切な物もあるし、なにより客間のベッドは狭かった。 それに…… 大声で、実に楽しそうに笑いながら、 「私がここに居る間は、エロイ行為は禁止だっ」 うす~い胸を大げさにまで反らし、そう言ってのけるエヴァンジェリン。 「まあ、仕方ないわね」 「そうやなぁ」 アスナと木乃香は、何故かこれに従い。 茶々丸は、やはりツンとした態度を崩さない。 後からエヴァンジェリンとの同居を知ったネギも、 「……よく分かりませんけど、いいんじゃないですか?」 とすぐにこれに同意。 半泣きになった横島は、「幼女(偽)がワイの部屋をとったぁーっ」と負け犬の如く泣き叫んで家を飛び出した。 「まあ、最近ちょっと調子にのりすぎだから……」 そう言った明日菜の脳裏に過ぎるのは、ここ最近急速に増えている彼の女の顔。 知ってる限りでも片手の数を優に越え、その殆ど……ってか全員が彼女のクラスメイトだった。 当然、明日菜にとっては面白くないし、自分のクラスメイトに手を出すな!なんて思うのも当然だろう。 それに何より、何かゾクッと背筋が凍ったのだ。 このまま元の世界に帰ったならば、愛子だけじゃなく、姉であるタマモにまで折檻されてしまうと…… セックスするのが悪いとは、アスナは思わない。 そのこと自体は、とても自然な行為だと思っているから。 それはタマモの間違った性教育による物だったけど。 嫉妬するなら混ぜて貰えばいいのよ。 どこかしら、こういう考えがあるのがアスナであった。 だけども、流石に今の状況は面白くない。 亜子に裕奈と、女を増やした横島に。 そう、面白くない。 だからエヴァンジェリンにベッドを奪われ、茶々丸にすげない態度をとられて悲しむのを見ても、ざまぁ、としか思わなかった。 これで少しは反省しなさいっ。 そう…… だけど、これこそが間違いだった。 あくまで結果論ではあったけど。 でも、確かに間違いだったのだ。 だって、うぉーんと泣きながらどっか行った彼は、自分のクラスメイトをナンパしやがったのだ! 閑話の3 柿崎美砂の、ナ・イ・ショ♪ 「ねーねー、あれっ、あれっ!」 桜子が彼の存在に気付いたのは、明後日から始まる修学旅行で着る服を買いに出かけた先だった。 彼……それはクラスメイトである那波千鶴の彼氏である。 私、柿崎美砂は、その彼にちょっとした逆恨みをしていた。 その那波さんの彼氏のせいで、自分の彼氏との仲が微妙になってしまったのだ! 「ちょっとそこの君ぃっ、可愛いね! 僕とちょっとだけイイことしない?」 やはぁ! と元気良く手を上げて道行く女性をナンパしている彼に、イラッとする。 そう、この男だ。この男の……アレ、のせいで、私は……っ!! あれは、4日前のこと…… 私は、付き合ってる彼氏とちょっと好い雰囲気になった。 彼は大学生。まあ、私と比べれば、十分に大人である。 いつかはそうなるだろう。そう思っていたし、何よりどうも最近の私は欲求不満らしく、いやらしい夢までみてしまう。 だから私は、素直に唇を彼に捧げると、盛り上がった気分のまんま、彼の部屋に行った。 彼の部屋でシャワーを浴び汗を流す。 そうして脱衣場から出ると、彼は裸で腰にタオルの状態で私を待っていた。 緊張と、何より恐怖なのだろう。 身体が強張って思う様に動かない。 この時の私は、本当に【あんなモノ】が入るの? そう恐怖していた。 あんなモノ。 それは、あの日見た、那波さんの彼氏の アレ だ。 太く、長い、アレ。 あんな凄いモノが、……に入るとは思えない。 でも、彼女には入ったのだ。 だったら私にだって入るはず。 それに夢の中ではズボズボ入ったし…… そう時折見てしまう、那波さんの彼とシテしまう夢を思い出した。 あ、まずい。こんなの思い出しちゃダメよね…… 私はブンブン勢いよく首を振って、この光景を脳裏から叩きだす。 そうだ。 ここで彼に抱かれれば、この先夢を見る時は、彼に抱かれる夢になるだろう。 そうすれば、もうあんな夢は見なくなる。 あの人に抱かれて嬉しそうに喘いでしまう夢を見てしまうのは、あの日、那波さんと彼のセックスする姿が、あまりにもインパクトがあったせいだ。 どうしたの美砂? そう言って心配そうに私を見る彼に、 ううん、何でもない。ちょっと、その怖いだけだから。そう返すと、彼は立ちあがった。 たぶん、私を抱きしめて安心させようとでも思ったのだ。 その、時だっ! そう、その時。 彼の腰に巻いていたタオルが、ハラリと落ちた。 彼のアレが露わになる。 そそり勃つアレが。 その時私は、思わず口にしてしまった。 運命の言葉を…… 「ちっちゃっ!」 ……那波さんの彼氏のアレが特別大きかったのか。 それとも彼のアレが特別小さかったのか。 私には分からない。 私が知るアレは、彼と、そして那波さんの彼氏のモノだけだったから。 ただ、ひとつだけ…… その日、彼のモノは更に小さくなってしまった。 気まずい空気が2人の間を流れる。 自信を失くしてしまった彼は、ただ、もう帰ってくれ。そう言うだけで。 それから私は彼と連絡を取れてない。 携帯に電話しても、メールをしても、返事は、ない。 私が悪かったのだろう。 でもだ! 那波さんの彼氏を苛立たしく思ってしまうのは仕方のないことだろうと私は思う。 彼のアレさえ見なければ、こんな気まずい状況にはならなかった筈だ。 八つ当たりなんだって、分かってる。 那波さんとの情事を覗き見た私こそが一番悪いんだって分かってる。 それでもっ、それでも私は……っ! アンタを恨まずにはいられないのよーっ!! ふと気づけば、那波さんの彼氏と桜子が、実に楽しそうに話をしていた。 そういや、桜子は彼に興味津々だったっけ。 ただ、もう一人の友人である釘宮円は、そんな桜子に「ダメだってっ!」と止めに入ってる。 それもそのはず。 桜子は、彼にナンパされていたのだ。 私は、男のその行為に頬がピクピクとひきつった。 アンタ、那波さんの彼氏でしょうがっ!? それは桜子も知っているはず。 だって、あの日、彼と那波さんの睦み合いを覗き見たのは、私と、円と、そして桜子の3人でなんだから。 あの時見た那波さんは、学校での彼女とは違って、凄く可愛く、幸せそうで。 この世全ての幸福の象徴にすら見えたものだ。 そこまで想ってくれる彼女を持っておきながら、この男は……!! だけど私は、唇を吊り上げ、意地悪く笑う。 そう、そうなのよ。 目の前の男は、彼女が居る分際でナンパする最低野郎。 この浮気の証拠を那波さんに送ってやれば…… 私は写メでこの男が桜子にいいよる光景を那波さんに送る。 すぐさま、しゃららら~んと返信メールが届き、私はそれを彼に見せつけてやろうと思ったけど、その前に文面を見て絶句した。 ≪(^ー^* )フフ♪ 明日はアスナの誕生日ですので、キチンと誕生日プレゼントを用意しておくように伝えておいてください('-'*)ヨロシク♪≫ へ……? この反応、本気で意味がわかんないんだけど? 私は驚きに目を見開くも、必死にそれを押さえようと、胸に手をやり、大きく深呼吸をする。 すぅー、はぁー、すぅー、はぁー。 そうしていると、楽しげな声が聞こえてきた。 「やっほーっ。だったら早速カラオケ行くよ~っ!」 「こらっ桜子っ! 今日は修学旅行で着る服買いに来たんでしょ」 「え~!? だってぇ……」 「んじゃさ、パパっと用事終わらせて、それからカラオケ行こうぜ!」 「う~んもう、仕方ないなぁ」 ……なになに何なのっ!? ちょっと見ない間に、あのナンパ男が大嫌いな円がっ! 難しい顔してるけど、口元が何かすっごい楽しそうになってる!? 桜子は……もう何も言うまい。 彼の腕に胸を押し付ける様に自分の腕をからめて笑ってた。 男は男で、 「……この俺がナンパを成功させただと!? フラレまくりだった過去の俺よ! 数多の失敗は無駄ではなかったのだ! わーはっはっはっはっはっー」 とやたらとテンション高いし。 ぶっちゃけ引くわ。 なのに桜子と円も楽しそう。 なんで? そう思った私は、円に何があったのか問いただす。 円もこの直前まで、確かに不快感しか感じなかったそうだ。 でも、彼の声を聞いている内に、まるで夢の中にいるみたいな気分に変わっていった。 私もそうだけど、桜子も円も、彼に抱かれる夢を何度か見ていたのだ。 その夢の中で私達は、彼を蕩けるような瞳で見つめ、彼の声に一喜一憂する。 彼のぬくもりにうっとりと身体を預け、そして彼を身奥に迎えて悦び喘いだ。 それは、頭がどうにかなってしまいそうな程の、凄まじい快楽。 夢から覚めると、下着はぬっとりとした粘液に濡れ、まだ誰も、何も迎え入れたことのない筈の膣奥に、彼のモノがまだいるみたいに…… 眠りながら何度もイってしまったのだろう。 身体はビクビク痙攣が止まらず、息はとても荒いまま。 頬はこれ以上ないくらいに上気し、思わず、彼の名前を呼んでしまう。 ────さんっ。 彼氏の名前ではなく、彼の名前を…… ただそれだけで、心が、身体が、痺れたみたいに震えてしまう。 しばらくすると、不思議とその名前は思い出せず、でも、彼の…… ヤバっ!? ぶんぶん首を振って、今考えていたのを脳裏から振り払う。 私には付き合ってる彼がいて、彼には付き合ってる彼女がいる。 このままナンパされてしまっては、どちらにとっても不幸にしかならない。 むん! 両の手を、ぎゅっと握って気合を入れる。 そうして、≪このままじゃ、桜子達がナンパされちゃうってばぁっ!?≫っと那波さんに再度のメール。 こうしておけば、流石の彼女も彼氏の不実に動くだろう。 鼻の下を伸ばして、左右に桜子と円を侍らせている男を見て、ふっ、と鼻で笑った。 アンタがそうしていられるのも、あともう少しだけよ! ……そう思ってたんだけどな~。 那波さんからの返事は無く。 そうこうしている内に全ての買い物を終えてしまった。 途中、彼……横島さんから聞いた沢山の話。 彼の同居人は、私達のクラスメイトである神楽坂明日菜と近衛木乃香。 最後に担任の教師である子供先生ネギくん。 その事実にビックリし、気づけば警戒心が薄れ、楽しく、とても楽しい時間を過ごしてしまった。 なんせ気づいたら、私達はきゃーきゃー歓声を上げながら、カラオケしてたんだから。 ……一時間程熱唱し、ようやく我に返った私は、正気を取り戻す為にトイレに行って一息ついた。 すると、そんな私の様子をみてとったのだろう。 横島さんが心配そうに廊下で私を待っていたのだ。 「美砂ちゃん、大丈夫かい?」 「だ、大丈夫です。心配しなくて結構ですっ」 ちょっとキツメに言ってしまい、私は少しだけ後悔する。 なんせ、今のところ彼は何ら悪いことをしていないのだ。 まあ、彼女がいるのにナンパするのはどうかと思うけど、一応は彼女である那波さんの公認(?) むしろ、罪があるのは私だろう。 彼に逆恨みして、色々とキツイことばかり言ってるのだから…… なのに彼は、 「なんか悩みあるだろ? 歌ってた時は楽しそうだったみたいだけど、それ以外の時は、ちょっと、な……」 ……大人な、優しい声色。 下心なんて微塵も感じ取れない。 後に「下心満載だったぞ?」って教えてくれたけど、この時の私にはそう思えた。 だから、ちょっとほろっとしてしまった。 どうやら私は、自分で思っていたより、まいってたみたい。 そういえば、下心なしで、こうして優しくされたことがあったろうか……? などと心の片隅で思いながら、私は彼氏との間にあったことを打ち明けた。 横島さんは、頬を一瞬だけ引き攣らせたけど、ん゛っん゛っと大げさに咳払いし、 「男だったらショックではあるな」 額から汗を一滴流しながら、慎重にそう言った。 声色からは、彼への同情心が見え隠れしているのが分かる。 「……やっぱり、そうなんですか?」 「まあな。ちっちゃいとか、早いとか、ってのは禁句だ」 「そ、っかぁ……」 自嘲めいた呟きに、だけど横島さんはこう言った。 「美砂ちゃんの不用意な言葉が始まりだけどな、そいつはそいつで結構最悪だぞ」 「……えっ?」 「自分の彼女を、こうして不安な気持ちにさせてんだから」 なんてキザったらしい言葉。 私は心配してくれての言葉なのに悪いなって思いながら、プッて小さく笑う。 だけど横島さんは、そんな私に不快になるでもなく、「元気がでたみたいでよかった~」とオーバーアクションで言うだけで。 私は、そんな横島さんの仕草にドキドキする。 「あんま遅くなると、桜子ちゃんと円ちゃんが心配するな」 うん、そうだろうな、とは思うけど、もう少しだけ2人きりでいたいな。 10分……いや、5分でいいっ。 私は立ちあがろうとする彼の腕を急いでつかむ。 「どうかした?」 「ああ……っと、そうそうっ! 話し聞いてくれたお礼……したいなって、思って」 そう言った瞬間、髪がファサっと彼の手に巻き取られた。 顔が、近づいてくる…… どきどき、どきどき、どきどき、どきどき…… 彼の顔は、とても悪い男の顔。 唇の端が、ニヤリと吊り上がる。 やばい。心臓が口から飛び出そうなくらい、激しく高鳴ってる。 だめっ! だめだめだめ…… でも、本当に私はそう思っているの? 声に、出ない。 ダメだと。これ以上近づかないでと。 どんどん、どんどん近付いてくる彼の顔に、近づかないでって。 彼の唇が、私に近づき…… ぎゅっと、私は目をつぶる。 ふるふる震える身体。 まるで、初めてキスした時みたいに……ううん、違う。 もっと、もっと私は…… ちゅっ 私の額に、口づけられる。 ……肩から力が抜けた。 緊張してたのが、バカみたい。 私は両手で額を押さえ、不満からむ~んっと唇を尖らせる。 「緊張して損した……」 「んなことばっかり言ってると、いつか痛い目見るぞ?」 心からの忠告なんだろうけど、少なくてもナンパ男が言うセリフじゃない。 それに、私は…… 「痛い目、みてみたいな……」 「……彼氏いるんだろ? いいのか?」 「いい……よ……横島さんこそ、那波さんいるでしょ? 浮気しても、いいの……?」 それは挑発的な口調ではなかった。 どこか怖々とした…… 迷子になりそうな、子供の、ような…… 「千鶴? 俺の恋人は……だぞ?」 私の眼は、きっとまんまるになってしまったに違いない。 那波さんを含めた彼の恋人【達】の名を聞いてしまったから。 真正のスケコマシだ、この人っ! でも、だったら、ちょっとぐらい…… そう、思ってしまう。 だって、これだけ居るなら、ちょっとくらい……いいよね? 彼氏だって、今は私を避けてるんだし…… 横島さんに言われる今の今まで、すっかり忘れていた彼氏のことすら言い訳にして、私は横島さんの首に腕を回す。 ほんの少しだけ、下品にならない程度だけ唇を開け、私は彼を待った。 すると、すぐさま奪われる。 私の唇が、心が、奪われる…… 「んぅっ……」 小さく小さく、吐息を漏らす。 舌が差しこまれ、私の舌を絡め捕る。 ぴちゃ、ぴちゃ、くちゃ、くちゅ 舌と、唾液が絡み合う音が周囲に響く。 私の知ってるキスと、なんて違う…… 荒々しく、熱く、熱く、あつく…… 「くっ……」 私は呻くように顎を上げ。 こくん、と唾液が喉を流れた。 横島さんの匂いが私の胸を通り過ぎ、きゅん、とお腹の奥が高鳴った。 ゆっくりと離れる彼の唇。 2人の間を伝う、粘着した液体で出来ている銀の橋。 それが、プツン、と切れた瞬間、私の我慢も限界に来たのだと悟った。 もう、彼氏のことを思いだせない。 カラオケしながら待ってるだろう、桜子や円のことも思い出せない。 ただただ私は、彼を欲する身体のうずきを、切なさを、何とかして欲しくって…… 「……つづき、して」 魂に刻まれた、彼の与える快感が欲しくて、私は彼に、身をゆだねた。 チャラリラ~♪ ●U,お留守番サービスです…… なあ、美砂。時間あるならさ、今日、これから会わないか……? 留守録モードになった携帯から聞こえてくる声。 でも、私は、そんなのよりも…… んぐぅ……は、ん……ん、んうぅぅンッ! ほら、出ないと。 そう言われ、快感に震える手で、私は携帯の通話ボタンを…… ピッ あ、美砂? あのさ…… 後書き 久しぶりの一人称。しかもヒロイン視点。 かなり、きつかった。 なのに、つづきます。 次回はこの続き。 閑話の4 美砂ntrSPイベント です☆ そして、次回も美砂視点の一人称。 ……ノクターンの逆行もの。 今回の話よりもずっと前に書き上がってるんだが、発表するタイミングを逸してしまった(汗 次出すとしたら1000ptなんてすっげぇ高いハードルになってしまったんだが…… たまんのかよっ!? もしかしたら、日の目をみないまま時間だけが通り過ぎちゃったりしてw もう、めんどくさいからいっちゃうけど、ヒロインは 氷室早苗です。