ちょっとだけ眠りますね…… ああ、……よちゃん、ゆっくりお休み。 はい、ご主人さま……今度目を覚ましたら……またみんなで…… 俺も、アス……も、……かも、みんなでずっと待ってる。だから、一日も早く…… おやすみ……なさい……ご主人さま……ナさん……あや………… 精霊の住まう、竜神の力が宿った勾玉。 力を使い果たした心優しき精霊は、今はただ安らかに眠り続ける。 次の戦いが始まるまで、彼女は眠りから覚めるつもりは無いのかもしれない。 ヨコアス外伝 とらいあんぐるリリカル ヨコなの! 第4話 初めてのチューなの! 前編 どんよりとした曇り空。いつ雨が降っても可笑しくない、そんな空模様。 心までどんよりしそうなその日、ユーノは確かに一生分の幸運を使い切ったと思われる。 彼にとって運命とも言える女性を、横島の魔の手から守り通す事が出来たのだから。結果論的に。 彼女、黒の魔導師の『元』使い魔アルフが、なのはの友人アリサ・バニングスに拾われ、そのお披露目の場に彼が居なかったと言う幸運。 アルフが黒の魔導師の操り手、プレシア・テスタロッサにより、強制的に黒の魔導師フェイト・テスタロッサとの使い魔契約を破棄され消滅しそうと言う幸運。 この2つの幸運がなければ、後にユーノの人生のパートナーとなることはなかったであろう。 そのユーノ最大の幸運である横島の不在は、美由希の作った毒りょ……もとい愛情の篭った手料理によって彼がきぜ……もとい幸せ一杯に眠っていたお陰だ。 激しい戦いと無縁であったこの10数年、その中で最大の肉体的ダメージと精神的ダメージを負わされて。 これは無意識下での美由希のファインプレーと言えよう。「お願いだよぉ。あの子を、フェイトを助けてやってくれ……。あの子は何も悪くないんだ。あのオニババが……」「もう喋らないで! 君は魔力が尽き掛けているんだ!」「良いんだ! 私のこと何かよりもフェイトを」「バカッ! 君がそんなんじゃ、そのフェイトって子がっ!!」「でも、私は、もう……」「君が良かったら、ボクと契約を結ぼう。そうしたら、僕の魔力で君の存在は消えない」「でも! アンタも使い魔じゃないか!」「ボクは使い魔なんかじゃない人間だ!! ユーノ・スクライア! オコジョ妖精でもなければ使い魔でもない!!」 ユーノが目映く輝きだし、段々と人の形を取っていく。「あれー? ユーノくんってオコジョ妖精じゃなかったんだぁ」「どう言う事よ、なのは。アンタずっとアレがオコジョ妖精だって言ってたじゃない」「ごめんねアリサちゃん。オコジョ妖精じゃなくって、ユーノくんはオコジョ刑だったみたい」「オコジョ刑?」「ただおくんから聞いた話なんだけどね、魔法使いさんが悪いことしたら、オコジョにされちゃうんだって」「何よそれ? 魔法使いってどうかしてるんじゃないの?」 ユーノとアルフ。 2人が繰り広げる安っぽい寸劇の横で、のほほんと我関せずななのは達。 ホントの本気で興味が無いのだろう。なのははすずかやアリサとのお話に夢中だ。 一方アリサは、自分が拾ってきた大型犬が妖怪だったのに驚き、更にユーノが人間になったので二度ビックリ。 なのはとただおが、風呂に連れて行くなって言ったのはこう言うわけ。 確かに同年代の男の子に裸を見られるのはゴメンだわ。 アリサは男の子の姿になったユーノを見て、心からそう思う。 その時、ふと目に入った子狐の久遠を優しく撫でる。 久遠は気持ち良さ気にアリサにすり寄り、右の前足をポンとアリサの足に乗せた。「くぅ~ん」「んもうっ! アンタって何でそんなに可愛いのよっ!」 つぶらな瞳の久遠を見て、思わず抱きしめてしまうアリサ。 この可愛らしい狐は、アリサにとっては天敵とも言える男の使い魔だ。 友人3人の心を奪った異世界からの来訪者。 アリサは見たのだ。この男とすずかがイチャついてるところを!(アリサ主観) そして、それを見た次の日にはなのはと!(アリサ主観) そのまた次の日にはなのはの姉の美由希と!(事実) そのまたまた次の日にははやてと!(アリサ主観) そのまたまたまた次の日には……(アリサ主観) 最後は彼に突っかかる場面をなのは達に見られ、色々と勘違いされてしまった。 あの時のなのはの恐ろしさを、アリサは今でも時々夢に見てしまう。 その度に恐怖の悲鳴を上げ、寝汗びっしょりで目を覚ますのだ。 ────アリサちゃん? アリサちゃんだけは違うと、なのはは信じていたんですよ? 突然敬語になったなのはの目の色は、ハイライトが消え輝きを失った目。 背筋がゾクッとし、鳥肌が立つ。 あの時、そもそもの原因である横島が庇ってくれなかったらと思うと…… 恋愛が関わると友情は脆いって言うけど、この年でそれを実感するとは思わなかった。「どうしたのアリサちゃん?」 すずかが不思議そうにアリサの顔を覗きこむ。 アリサは久遠を抱きしめたまま、恐ろしい過去に囚われかけていたようだ。 丁度ユーノと妖怪犬の寸劇は終わったようで、何だか急いで海の方へと走って行ってしまった。「ユーノくーん、夕飯までには帰ってこなきゃダメだよー!」 大きく手を振り返して返事をするユーノ、それを見送るなのは。「犬さんも行っちゃったし、これから忠夫くんのお見舞いに行かない?」「えーっ! 私は行きたくなーいー!」「もう、アリサちゃんったら。ムリしなくても良いんだよ?」「すずか! 何度も言うけど、私はあんな変質者の事なんて、何とも思って無いってば!」「はいはい。忠夫くんもアリサちゃんの顔を見たら元気になると思うよ? ねっ! なのはちゃん!」「にゃー!? すずかちゃん? アリサちゃん? ただおくんの一番はなのはなんだからね!」「2人とも! 私はアイツのこと何て、何とも思ってないって何回言ったらわかるのよ!」「「はいはい」」 いっぱいの笑みを浮かべ、なのはとすずかはそれぞれアリサの手を握りしめる。 久遠は急いでアリサの頭の上にしがみつく。 2人はアリサの手を引いて勢い良く駆け出した。「わっ、わっ!? ちょっとー! 2人とも急に走らないでよー!!」「早く行かないと、美由希さんに忠夫くんが食べられちゃうかもだよー」「そうなのっ! お姉ちゃんとただおくんはせっくすする仲なんだから、目が離せないのっ!」「ちょっ!? せっくすって、あんのエロ野郎!」 彼女の脳裏には、あのスケベな男の子が美由希と色々と致している生々しい映像がハッキリと浮かんだ。 これも全てすずかがもたらしたエッチな知識のせい……なのだが、アリサの考えは違う。 全てはただおのせいなのだ! なのはが怖くなったのも、すずかが少し変になったのも、はやては……なんか幸せそうよね? そうやって考えると、やっぱりアイツって居ないとダメなのかもしれないわね。 あれで優しいところあるし、えっちなのもこれから私がキチンと教育していけば……「って、あたしは関係ないってばあっ!」「「はいはい」」 突然否定しだしたアリサに、なのはとすずかは慣れた様子で返事をする。 2人から見たら、アリサの態度は照れ隠しにしか見えないから。 口では何だかんだ言っても、横島と口喧嘩するアリサはとても楽しそうなのだ。 なのはは自分が子供だと言う事を良く理解している。 それは認めたくない事だけど、現実はとても厳しい。 横島にとってなのはたちは唯の子供で、守るべき対象としては扱ってくれてるけど、本当にただそれだけ。 そこには甘いラブな感情は一切なくて、美由希の様に『女』としては絶対に見てくれない。 でもだ、なのはには希望があった。 それは大人になること……ではない。 そんなに待って何かいられない。そうではなくて、久遠だ。 アリサの頭の上に居る久遠、この子はただの狐じゃない。 伝説に残る程の大妖怪であるこの子は、人間の姿にも成れるのだ。 その姿は、なのはやすずか何かよりも、更に幼い幼女。 そんな久遠が横島と肉体関係を持っているのだ。 勿論それにはキチンとした理由があるのを、なのはもすずかも良く知っている。 それでも、そんな幼い姿の久遠と肉体関係を結んでいるのなら、今の自分達でもいけるのではないだろうか? 流石のなのはも、今の自分とせっくすしてくれるとは思ってはいないが…… でも、少し位は……ちゅーとか……してくれたり……女の子として意識してくれたりするかも…… もっとも、なのは達は知らない事だが、横島と肉体関係を結ぶ時の久遠は幼女ではない。 久遠は幼女型だけでなく、魅惑のばっつんボディータイプもあるのだ! そんな訳で、現実はなのはとすずかにとって、とっても厳しい。 なのはもあの手この手で色々と迫ってみたものの、当然の様に成果は芳しくなかった。 いっそすずかと2人で迫ってみたら……とやってはみたものの、あっさりとスルーされる始末。 結構大胆な格好……具体的に言えば、胸チラするシャツに短いスカート姿で、その胸を押し付けて唇を首元に埋めてみた。それも2人で挟み込む様にだ! だが、「なんや、もう眠いんか? もーもこさぁーん、なのはちゃんとすずかちゃんがおねむっすー」 ……この時だけは、流石のなのはとすずかも怒りで視界が赤く染まったものだ。 次の瞬間、横島の全身は引っ掻き傷と噛み痕、最後に顔面打撲。 そんな苦い経験はあれど、2人はまだまだ諦めてはいない。 2人でダメなら3人だ! 3人でダメなら4人で迫ってやる! 格好ももっと大胆に、いっそ裸……いや、裸よりももっともっと効果的な姿を考案し、「もう辛抱タマラン!」って言わせてみせる!! そうして一度でも自分を『意識』させてしまえばこっちのもの。 徐々に徐々にと、彼の精神を犯していくのだ。真綿に水が染み込むように、少しづつ…… その後は……なのはにとっては言うまでも無い。 出来れば独占してしまいたいが、それがムリなのは、なのはにも良く分かっていた。 姉の美由希は良いだろう。姉の事が好きだから。 久遠も良し。くーちゃんは大切な友達だから。 2人とも、自分よりも先に進んでいる。だから今更排除は出来ないし、したいけどしない。 排除してしまったら、彼が、横島忠夫がとても悲しむ。彼の悲しむ姿を見るのは、なのはにとって本位では無い。 それに横島の女好きは半端ない。『元』の世界にどれだけ彼の『女』が居るのか解りゃしない。 だったら、自分の好きな姉や友達の存在位は許容しなくては。 その代わり……元の世界の女は忘れて貰おう。 元の世界に何か帰してやらない。 横島忠夫は、もう自分のモノなのだ。 その為の美由希であり、久遠であり、すずかであり、アリサであり、はやてなのだ。 6人も可愛い女の子に囲まれたら、流石の彼もわたし達だけを見てくれる。 元の世界の女なんか忘れて、わたしだけを見てくれる。 帰さない、帰してなるものか。あの人は、もうわたしのモノだ。 だからね? ただおくんをこの世界に引き止める為の……、ね? アリサちゃん。 なのははそんな想いをこめて、握った手を更にギュっと力を込める。 家に向って走りながら、前を向く顔は妖しい笑み。 アリサは気づかない。彼女の位置からはなのはの顔が見えないから。 すずかは横目でチラリと見える。でも、すずかはクスリと小さく笑う。 彼女にとって、このなのはは今更なのだ。「なのはちゃん、顔、怖くなってるよ? そんなんじゃ、忠夫くんに……」「ふえ!? あはは……、ありがと、すずかちゃん」「どうしたのよ、なのは?」「ううん、なんでもないよアリサちゃ……」 妖しく、淫蕩な笑みを浮かべていた顔を、急いで元に戻す。 心配そうなアリサに、普段の笑顔で応えようとしたその時、ビリビリとした感触がなのはの全身を走り抜けた。 「ジュエル……シード? 2個、3個……ううん、全部で6個。残りのジュエルシードが全部覚醒した……? 違う! 暴走してる!!」 なのはは足を止め、先程ユーノと妖怪犬が走り去った方向を、厳しい目つきで睨みつけた。 胸に込みあがるジリジリとした焦燥。 なのはの第6感が確かに警鐘を鳴らす。 まるで、コレをこのまま放って置いたら危険だと、自分の中の誰かが訴えかけているみたい。「すずかちゃん、アリサちゃんをお願い。ウチに行ってお姉ちゃんに!」「うん、わかった。なのはちゃん、気をつけてね?」「くーちゃんは私と!」 久遠はポンっと音を立てて幼女巫女の姿に早変わり。 そのままなのはの背中にヒョイッとしがみ付く。「えっ!? ちょっとー! 何があったのよ!」 アリサの問いかけに答える事無く、なのははポケットの中から一枚のカードを取り出した。 自分の姿見を記載されているそれを高々と掲げる。「アデアット!」 なのはの力の篭った叫び。 彼女の足元からポワーっと光り輝いていく。 全身が光で満たされ、手に持つカードが一本の剣へと姿を変えた。 なのはのアーティファクト『マホウノシンケン』 それをブンと勢い良く振って手に馴染ませると、そのまま空に上がる。 ジュエルシードの気配を探り、その方向をジッと睨む。 なのはの感覚は、ユーノが張ったらしい結界を捉えた。 クルリと軽くバレルロールして、風を身体に纏わせる。 風の精霊を全身に纏わせながら、小さな声で魔法の呪文を唱えた。「リリ・カル・マジ・カル……戦いの戦慄(メローディア・べラークス)!!」 術者の肉体を強化する白兵戦闘用の魔法を詠唱し、身体能力、反射神経を向上させる。「いってらっしゃい、なのはちゃん! くおんちゃん!」「良くわかんないけど、気をつけなさいよなのはっ!! 久遠、なのはをお願いね!」「うんっ!」「まかせて、ありさ」 2人はすずかとアリサに元気良く返事を返すと、一気に飛び去った。 すぐに2人の視界からは豆粒みたいに小さくなって、それすらもあっという間に見えなくなってしまう。「アリサちゃん、急ぐよ! 急いで美由希さんに伝えなきゃ!」「わ、わかった!」 言葉を返しながら、すずかはアリサの手を引っ張る。 彼女の全力全開の走りに、アリサは引き摺られるようにしてついていく。 でも文句は言わない。なのはが、親友が心配だから。 息を切らせながらアリサは思うのだ。自分も、さっきのなのはの様に、空が飛べれば、魔法が使えれば……そう思うのだ…… 料理なんてよ、初めから美味しく作れるもんじゃねー。 初めは不味い料理しか作れなくても、その内すぐに上達して美味い物を作れる様になるだろう。 実際、俺の第1使徒のアスナが作る飯だって、最初はトテモ食えた代物じゃなかったんだから。 そう思って彼女の作る不味い料理を、週2~3のペースでウマイウマイ言いながら食ってきた。 だがな、だがな! おかしいんだよ! 全然上達しねーんだアイツ!! いや、上達どころか、日々ダメな方向へと行きやがるんだ! 初めは例え不味くても、確かに可食物だった。例え不味くてもだ! だがな、今日食ったモンを可食物だなんて、とてもじゃないが言えねーよ! 最初の一口で宇宙を見た。 二口目でアシュタロスと再会した。 三口目でラプシィアのヤツがトテモ良い笑顔で手招きしてた。 四口目でイオが号泣していた。 五口目でおキヌちゃんが、六口目で美神さんが…… その後の記憶が俺には無い。 頼むから味見してくれ……、最後にそう呟いたのだけは覚えている。 傷つけたかもしれん。だが、これ以上は流石の俺も耐え切れなかったんだ。 軽い罪悪感と、もしかしたらこの地獄から解放されるかも。 そんな期待を胸に、少しづつ俺の意識が回復していく。 なんでか俺の中の霊力が大量に消費されているのが分かる。 ただの手料理から受けたダメージが、ここ10年で最大だったってどうよ? 一体どんな毒物をこしらえたんだ、美由希…… そんな事を考えつつ、目を瞑ったまま周囲の気配を探る。 なんだか場の気が乱れかけている。 声が聞こえる。 恐らくは俺をこんなにした美由希と、この声はすずかちゃんか? それにはやてちゃんとアリサちゃん……かな? まだダメージが完全に抜け切らない所為なのか、ハッキリとは分からない。「……のはちゃんが……はい、急いで……」「……ったよ。安心して、すずかちゃん……サちゃん。……ちゃん、案内してくれる?」「はいっ!」「アリ……と……やてはただくんをお願いね」「わかりました、美由希さん」「任せてな、姉さん」 耳鳴りが酷くて、声が今一良く聞こえない。 だが、なのはちゃんに何かがあった事だけは分かった。 俺は身体を起そうとするが、毒でも盛られたみたいに身体が痺れて起きれない。 目を開けようとしても、まぶたがピクピクと痙攣して上手く開けれない。 ようやく目を開けても、視界が白く霞んで全然見えない。 ほんっっとうにぃっ! 美由希! キサマ俺に何を食わせた!! 声帯を震わせ、怒鳴ったつもりが声すら出ていなかった。 オレ、もしかしたら死ぬんじゃなかろうか? そんな未来が脳裏を掠める。 それでも俺は、全身の力を振り絞り、勢い良く身体を起す。「キャアッ!?」 悲鳴と共にズボッと音がして、何かに顔を突っ込んだ感じ。 白く霞んでいた視界が暗闇に変わる。 プニプニとした柔らかくも暖かい、とても心躍る感触。「ひゃん!」 俺は手を伸ばす。すべすべしてて、やはり触り心地は実に良い。「ばか! そんなトコ……ああんっ」 だが何故だろう? 死をとても間近に感じるのは? 美由希の料理以上の死の匂い。「アアアア……ンタって人は……!! いつまで私のスカートの中に顔を突っ込んでんのよ! この変態っ!!」「げふぉっ!?」 鳩尾に入った小さい踵。肺に溜まっていた空気が強制的に吐き出された。 俺はゴロゴロと床を転げながら、今自分が居たのがアリサちゃんのスカートの中だった事を知る。 怒りの眼差しを向けるアリサちゃんと、呆れた表情を浮かべるはやてちゃん。「傍から見たら、ほんまに変質者みたいやったで?」「みたいじゃなくって、変質者なのよ! コイツはっ!!」 アリサちゃんは俺の胸倉を掴み、ガクガクと激しく揺さぶった。 こらアカン、体調が最悪な今の俺には、この揺れは可也キツイ…… 吐き気が、眩暈が、天と地がグニャグニャと揺れて何が何だかワカラナイ「ア、アカン! 今のただ兄ちゃんは死に掛けやったんや! アリサちゃん、抑えるんやっ!!」 はやてちゃんに宥められ、それでもアリサちゃんは「フーッ!フーッ!」と怒りの息を吐く。 俺はと言うと、もうダウン寸前。 霊力は足りんし、体力も尽きている。 今日は何もしていない筈なのに…… そう思いながら、目の前にいる魔力の塊と精気の塊に目をやった。 ゴクリ…… と思わず息を呑む。 イカン、それはイカン。それをやってしまったら、ワイはペドに……まあ、既にペドだが。 だがここ最近は手を出した覚えは無いし、精々見かけがアレな夕映くらいなモンだ。「アリサちゃん、ただ兄ちゃんを殺ってもうたらダメや。なのはちゃんを助けに行ってもらわなアカンやろ」「わ、わかったわよ! ホラ! さっさと起きなさいよ! この変態!!」 アリサちゃんに罵られながら「な、なのはちゃんに何が……?」と必死に声を出す。 イカン……、アリサちゃんの罵声が心地好く感じてきた…… ワイは、変態やないって言うのに…… 俺がこんな事を考えているとは露とも思わないのだろう。 アリサちゃんは焦った口調で答える。「ジュエルシードが暴走してるって言ってたわよ! そんで美由希さんに応援頼んで、それでそれで……」 俺、マジでヤバイんじゃないだろうか? あんな魔力の結晶が暴走してんのに気づかないとか…… いや、それよりも美由希一人じゃ大変かも知れん。 なのはちゃんなら大丈夫だと信じたいが。「……恭也はどうした?」「恭兄ちゃんは忍さんとデートに」「あんの野郎! 俺に隠れて忍さんとハッスル……グハッ!?」 床に寝転んでいた俺の腹に、アリサちゃんの膝が落ちてくる。 キレイに入ったそれに、回復してきた体力を再び激しく消費させる。 ここで漸く思い出した。俺は今、子供の姿なんだっけ。 だからか、こんなにダメージが来るのは。「ただお! ふざけてる場合じゃないって、いい加減気づきなさいよ!!」「こらえてえなアリサちゃん! ほらほら」 アリサちゃんは再び「フーッ! フーッ!」と怒りで息を荒げる。 「どっちにしても今の俺に出来る事はねーよ。体調最悪だし、なにより霊力が底を尽いとる」 アリサちゃんを腹に乗せたまま、慎重に言葉を紡ぐ。 腹に感じるプニプニとしたお尻の感触が、地味に俺の霊力を回復させる。 ヤバイことに煩悩的な意味で。「でも、何か出来ることあるやろ!?」「せめて霊力が回復できたら何とか……いけるかなぁ……?」 言いながら身体を起こす。 急に俺の顔が目の前に現れたせいか、膝の上に乗った形になったアリサちゃんが顔を真っ赤にさせる。 恥ずかしそうに俺から離れようとする彼女の顔を、両手で包み込み逃がさない。 ぶっちゃけアレだ。ちょっとした仕返しって言うか……「な! なななななにするつもりよ!?」「霊力くれ」「霊力ってあげれるん?」「ちょっと恥かしい思いをするけどな」「ど、どんな……?」「最低でも、ちゅーだな」 俺の言葉に頷くはやてちゃん。 ボンっと顔がゆでだこになったアリサちゃん。「わ、わかったわよ! ほら!!」 アリサちゃんはそう言うと、身を乗り出して俺の頬にチュッと触れるだけのキス。「ないわアリサちゃん。絶対にそれとちゃうから。ホッペにチュッて、この場面でそれだけですむ訳ないやろ普通」 はやてちゃんは首を左右に振って、呆れたように溜息。 そして俺のすぐ傍にくると、オデコにオデコをコンとぶつける。「責任とってな……って、とってくれる訳ないか。ま、ええわ。私の初めて、ありがたく受け取ってな?」 はやてちゃんは戸惑いなく俺の唇に自分の唇を重ねた。 「ん、ンッ……ぅんっ」 口内に差し込んだ舌に、くぐもった音を漏らすはやてちゃん。 驚いて身を竦ませてはいるが、俺から離れ様とする気配はない。 急な舌の侵入に驚きはある様だが、決して拒絶するつもりはないみたいだ。 口の中にはやてちゃんの味が広がり、ペド的な意味で胸がザワザワとする。 はやてちゃんは俺が舌で歯茎の裏や舌先を嬲る度に、体をピクンっと軽く跳ねさせ、息苦しそうに鼻息を荒くする。 あんま苦しそう何で、様子見で唇を僅かに離した。「はぁっ、はぁ……んっ、んあぁっ……ただ兄ちゃん……んふぅっ……」 はやてちゃんは素早く息を整えると、今度は自分から舌を俺の口中へと差し込んでくる。「うぅっ、ふっ、んぅううっ……はぁっ、あぁ……な、なんや、おかしなってきた……」 一頻り俺の口中を舌で弄ると、トロンと潤んだ瞳を向けてくる。 膝に乗ったアリサちゃんをそのままに、はやてちゃんを抱き寄せ背筋の上からツツゥーと下へとなぞっていく。 再び唇を奪いつつ、舌を絡めあう。 ぴちゅ……ちゅう……くちゃ…… 眼前で舌と舌とがいやらしく絡み合う所を見せつけられ、アリサちゃんは「ううう……」と唸り声をこぼす。 そんなアリサちゃんを残った手で腰を掴むと、俺の腕の中に押し込めた。 軽く抵抗するものの、すぐに大人しくこちらを伺うようにジッとする。 丁度はやてちゃんの背筋をなぞっていた指がお尻にまで到達し、俺は彼女のお尻を鷲掴む。 ビクッと身体を跳ねさせるはやてちゃん。 俺はその瞬間、絡めあう舌を通して彼女の全身に俺の霊力を這わせていく。「あんッ!? チュッ……ふぅ、ん、ん、んぁ……んんぅっ……」 小刻みに身体が震えだし、はやてちゃんの吐息が熱く何度も吐き出される。 彼女が感じる初めての性的快感に、まだ身体の方が戸惑いを感じているのだろう。 完全に性魔術に囚われ、「ふんむぅっ!?」最後に大きく震え、ぷしゅっと彼女の股間から潮が噴き出す。 彼女の中の魔力が俺の中に流れ込む。 訓練されてもいなければ、性魔術的にも大した事をしてないにも関わらず、流れ込む魔力の質と量は可也のものだ。 流石は単純な魔力量だけなら、なのはに勝るだけはある。ぶっちゃけた話、木乃香と同等か? はやてちゃんは俺の唇から離れると、クタァっと崩れるように床に倒れこむ。 相変わらず身体がビクビクと痙攣しており、捲くれたスカートの中身、ショーツは股間の盛り上がりを中心に黒く濡れていた。 俺は最後にはやての頭を数回撫で、「ありがとな、はやてちゃん」そう言って次の獲物にニヤリとした笑みを向けた。 真っ赤な頬を引き攣らせ、涙目でコチラを見上げるアリサちゃん。 俺の中の嗜虐心を激しく揺らす。 すでになのはへの救援に行くぐらいの霊力は確保出来ている。 当然アリサちゃんにちょっかいかける必要は無いのだが……「す、するんなら早くしなさいよっ!」 声を震わせるアリサちゃん。何か本当に変な気分になってきた。 ペド? 今更なに言ってやがんだ! それに今の俺は外見年齢で言えば10歳前後。問題はあるまい。「ちょっ、ちょっと待って! こ、この体勢はいや……だってアンタの……アレが……あたって……るぅ……」「興味あるんだ? ちょっと触ってみっか?」 オヤジ臭いセリフを吐きながら、俺はジッパーを降ろしナニを取り出すとアリサの手を導く。 彼女の手が触れた瞬間、ビクンとナニが上下に揺れる。「ヒィッ!? う、動いたわよ……って! こんな事してる場合じゃないでしょ! さっさとなのはを助けに行くんでしょ!」 チッ! 気づいたか…… と少し残念に思いながら、ナニをズボンの中にしまいチャックを閉める。 そしてアリサの唇にチュッと軽く合わせると「ごっそうさん」と言って優しく微笑み掛けた。 彼女の魔力量だと、キス程度の性魔術じゃ大した量は取れんからな。 そう思っての事だったんだが……「何よ! 私とじゃ出来ないって言うのっ!」 目の端に涙をたっぷり浮かべるアリサちゃん。 プルプルと身体を震わせ、今にも涙が零れ落ちそう。「いや、初めてのチューは貰ったろ? 続きは、成功報酬って事でさ」 そう言いながら立ち上がると、ズボンのポケットに手を突っ込む。 ハイパー文珠『転/移』を握り締めると、なのはちゃんの姿を思い浮かべ、そこへ跳躍するイメージを膨らませた。「行くの……?」 少し不安そうなアリサちゃん。 ここは男として、将来性豊かな少女を安心させなければ!「ああ、なのはちゃんは任せとけ!」「なのは、無傷で連れて帰りなさいよ。そしたらさ、もっとエッチなことしてもいいわよ……」 ほんのりと赤いほっぺ。上目遣いで両手の指をモジモジ。 やべ、萌えそう、オレ…… 湧き上がるピンク色の何かを振り払いながら、俺はなのはちゃんの下へと跳んだ。 続きはすぐなの!