第19話 でたな変態! ~ストーカーのススメ~
お久しぶりです・・・アニスです。
影が薄い、存在が空気、本当に主人公?
などと言われていますが、本当に主人公です。
今回こそは、今回こそは私がメインなんですよね。
・・・ギャピーー、て、天敵が!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
・・・・ふうっ、やっと終わりました。
私は今、千鶴子様へ今回の件について報告に行ってきた帰りです。
めんどくさい事ですがこういう事を疎かにしていると後々同じ組織内での行動に齟齬が出たりします。
報告、連絡、相談の徹底 。
これは現代であっても、この世界であっても変わらないことです。
もっとも、めんどくさがりのパパイアさんは
「水晶伝話でいーじゃない。」
などと言って結局ついてきませんでした。
あのひとは・・・。(汗)
まぁ、政務に関わらず、好き勝手にやらしてもらっている私があまり偉そうなことも言えないんですけどね。
ちなみにマジック王女とは千鶴子さまのところで別れました。
今回の一件、マジック王女にも中々よい勉強になったようです。
現在のゼスという国の底辺はどんな現状であるのか。
これは話で聞くだけと実際に見て感じるのとは、大きな違いがあります。
・・・割とショックを受けていようですね。
助けに来たのに、おびえられるか、無反応、表情が固まって同じことしか言わない子供たちの姿。
まだ十代前半の彼女には、被害者の少女たちとの年齢が近いだけにきついものがあったでしょう。
もっとも、そういう私も十代半ばの少女ですが・・・肉体年齢的には。
まったく、私たち自身も鬱になってしまいそうな事件でしたが、この事件が彼女にとって今後の糧になってくれれば、今後の彼女のためにも、そしてゼスのためにも幸いです。
この様な人間の裏側を抉り出すような事件は話に聞くだけと、実際に見て感じるのとでは全く心に受けるショックは別物ですから。
しかし、今回の件。
結局のところ最後の締めはウルザさんに頼りきりで他力本願この上なかったのですよね。
情けないなぁ~。
そのうち、なにか恩返しをしなくては・・・。
何がよいでしょう?
まぁ、そのうち考えましょう。
ただし、お礼なのですから、政府関係とはまったく別物でやらなくてはいけませんね。
けど、ウルザさんのグループにはあまり近寄りたくないのですよね・・・。
あれ(天敵)がいるから。
ウルザさんの後ろで巧みに私たちの視線に映らないよう隠れていましたが・・・。
あれ(エセさわやか男)、いたのですよね。
今回の件で興味をひかなければよいのですが。
ピー!ピー!ピー!!
おや、携帯がなってますね、・・・誰からでしょう。
「はい、アニスで「アニス!急いでパパイアのところに向かって!!」
キーーーン!!!
み、耳が、耳が。
・・・何事です!
て、この声は千鶴子さま!!
「何事ですか、いったい?」
「あなたが帰った後、水晶でパパイアと話していたのだけど、途中で客が来たとキャロットが伝えに来て終りになったの。」
・・・あの、何がおかしいのか全く分からないのですが。
「伝話が切れてから思い出したのよ、あの子、塔に来た客のことを
『顔は覚えているのですが、名前をちょっと思い出せなくて。』
て、言ってたことに。」
・・・な、あのキャロットさんが!
・・・考えられません。
一般家庭ならともかく、パパイアさんがいるのは跳躍の塔、国の最重要拠点の一つです。
そこを、いくら顔を知っていても名前を思い出せないような人を通すなんて・・・絶対おかしいです。
キャロットさんは、パパイアさんにかなり高い尊敬を持っていますし、いまパパイアさんがどれだけ危険な状況で仕事をしているか理解もしています。
・・・まぁ、そんなキャロットさんの言葉だからパパイアさんもたいして疑わずに客に会いに行ったのでしょうが。
てっ!
私はなに冷静に状況を分析してますか。
パパイアさんが危ない!!
「千鶴子さま、私もすぐに塔に跳びます。」
「お願い!」
そう言って千鶴子さまからの伝話は切れました。
≪跳躍の塔≫
瞬間移動
便利なのですが、さすがに魔法防御が完璧な塔の中には侵入できません。
ええぃ、こんな事なら隠れ直通ルートを作っておくのでした。
イライラしながらも、私の持つフリーパスで塔へ入ろうとすると後ろから声が、
「アニス!」
振り返ると高速飛翔で文字どうり飛んでくる千鶴子さま。
「パパイアは?」
「今、扉のロックを開けて中に入るところです。」
「わかったわ。中に入ったら私のことはいいから直ぐに跳んで頂戴。おそらくパパイアは最上階ロビーよ。」
さすが千鶴子さま、こんな緊急の状態でも頭の回転は早く、最良のルートを見つけ出します。
ここに来るまで散々、塔に到着すればどうすればよいか考えたのでしょう。
「わかりました。」
塔の中にさえ入ってしまえば私は跳べる。
無事でいてください、パパイアさん!
ギィー!!
開いた!!
私たちは扉が開ききるのももどかしく中へ飛び込む。
「あれ、千鶴子さま、アニスさん?」
私がフリーパスで扉を開いたことに気付いたのでしょう、キャロットさんが奥から出てきますが今は構っている暇はありません。
「アニス!私は直通エレベーターで行くから!!」
「わかりました千鶴子さま!
跳びます!!」
「パパイアをお願い!」
私が消える瞬間、千鶴子さまの親友を思う声が聞こえました。
≪最上階ロビー≫
瞬間移動を終え実体化した私は即座に周囲を見回します。
いた!
突然現れた私に驚いて目を丸くしているパパイアさんと・・・男?
ちいっ!!
うまく認識できない、認識撹乱の魔法か!
えっ?
男が何か、何かパパイアさんに渡そうとしている?
・
・
・
本?
魔道書!
ノミコンか!!
するとあの男はエセさわやか男!
しまったです。学生時代に本来あるべきパパイアさんの
『ノミコンのイベント』
がなかったからすっかり油断していました。
やっぱり、今朝のウルザさんとの接触イベントでいらないフラグを立ててしまいましたか。
てっ、また私は何をのんびりと状況分析していますか。
間に合ってください。
『縮地!!!』
その瞬間、私の周りの風景は高速に歪む。
私の『縮地』の到達距離は精々10メートル、元々戦闘時に使う技だから長距離には向いていない。
現在の私とパパイアさんとの距離は20メートル以上。
通常の倍以上だ。
けど今にも渡されそうな魔道書を妨害するにはこれしかない。
ええい!瞬間移動がもっと素早く発動できれば!!
フォン!
くっ!『縮地』が切れた。
あと少し、とどけ!!
ブァン!
本来掛けるはずのブレーキを使わず、身体ごと特攻した私は、回転きりもみしながら転倒した。
・・・痛い。
じゃない!
魔道書は?
ノミコンは??
あ、・・・ある、私の手に。
その瞬間私の全身から力が抜けた。
ま、間に合った。最悪のシナリオは回避できたんだ。
「ちょ、ちょっとアニスいったいどうしたの?」
「パパイア、アニス、無事?!」
いきなり目の前を吹き飛びながら跳んで行った私に不審の声を掛けるパパイアさんと、直通エレベーターでやってきた千鶴子さまが跳んでくるのがほぼ同時でした。
ははは、なんとか無事ですよ。
とりあえず今の状況を説明しないと・・・。
ドクン!
しまった!!
≪パパイアside≫
ちょっと、ちょっと、いったいどうなってるのよ。
私はうまく思考しない頭を無理やり回転させる。
今朝の売春宿殲滅の一件を伝話で千鶴子と話していたら顔見知りの客が来て。
で、その客から珍しい魔道書が見つかったから調べて欲しいって・・・
で、魔道書を受け取ろうとしたら、いきなり部屋に空間転移の魔法でアニスが跳び込んできて
で、直ぐにアニスが『縮地』使って私の目の前をバランスを崩したまま通り過ぎて・・・。
あれ、なにかおかしくない?
・・・
・・
・
いまはいつ?・・・・・答え 朝に売春宿を潰して戻ってきたところ。
ここはどこ?・・・・・答え 跳躍の塔
私は誰?・・・・・・・答え ゼス四天王の一人パパイア・サーバー
何をしていた?・・・・答え 顔見知りの男から魔道書を受け取ろうとしていた。
男?誰?・・・・・・・答え しらない!!!
くらっ!
軽い頭痛とともに私の頭は一気にクリアになる。
しまった!認識撹乱の魔法だ。
今朝私が使ったばかりなのに、私が掛かるなんて。
なんて間抜けな。
「パパイア!しっかりして!!」
事の異常さに気付いた瞬間、いつの間にか私の隣に来ていた千鶴子から声が掛かる。
「だ、大丈夫、今異常さに気付いたわ!」
私は反射的に千鶴子に答えると、目の前にいた男に対し戦闘態勢をとる。
やられたー!
今朝、問題事が一つ片付いた事で完全に気が抜けてた。
いつもならこんな単純な手、引っ掛からないのに。
あー完全に隙をつかれちゃったな~。
だけど、もう掛からない!
わたしは右手を振り上げた。
「跳躍の塔の守護者にしてゼス王国四天王パパイア・サーバーが命ずる、第一級警戒モード発動!」
私の命令とともに塔の防衛機構がフル稼働する。
この塔はこの国の最重要施設の一つ、むろん外部だけでなく内部にも防衛装置は設置されている。
もっとも、普段は何かの間違いで誤作動を起こしたらまずいので起動スイッチをOFFにしているのだけど。
機能としては単純なもので、
第一段階
塔のメインコンピューターに登録されていない人物、物体に対しまずは非殺傷攻撃と捕縛魔法が展開される。
それと同時に塔内を巡回している近場の警護ゴーレムが招集され、攻撃を仕掛ける。
第二段階
前記非殺傷行動が効果的でないと判断されると、当該地域が隔離され、塔の魔力炉を利用した攻撃魔法の攻撃が容赦なく侵入者に叩き込まれる。
なお、対魔法能力や、魔法無効化能力を持った者もいるため(ハニーなど)物理攻撃に特化した重ゴーレム部隊が投入される。
第三段階
これでもなお効果的で無いと判断されれば、最終手段として隔離地域丸ごと転送魔法が発動しランダムに跳ばされる。
しかしこれはあくまでも最終手段だ、隔離地域丸ごと跳んでいくので塔に対する被害がシャレじゃすまない。
けどこれで侵入者は捕縛されるか、殺害されるか、排除されるはず・・・。
けど・・・、
「シンニュウシャハッケンデキズ。」
な!
メインコンピューターからの回答に私は驚愕する。
写ってない・・・こいつが。
そういえば・・・
ええぃ、何度同じ間違いを繰り返せば良いのよわたし!
冷静になれクールになれ、驚くのは後でもできる、今必要なのは、状況の解析と対策よ。
私の脳が高速で現状を解析している。
・・・
・・
・
あ、そうか!!
「その仮面、オリジナルね。」
その言葉を侵入者に叩きつける、すると侵入者はわずかに笑った(ように感じられた)。
やっぱりあたりか、可能性としては他にメインコンピューターに何らかの細工がされたと云うのも考えられたけど、ここは私の塔、メインコンピューターは完全に隔離してあるし他の塔より数段防御は堅い、私に気付かれずに細工をすることはまず不可能だ。
なら、相手がこの塔のコンピューターにも察知されない手段を持っていると考えるべきよね。
「あなた何者?」
仮面のオリジナルを持っていることから只者ではないとわかるが、貴族たちの刺客にしては行動に疑問が残る。
「刺客じゃあないわね、あまりに行動に無駄がありすぎる。
まるで私のことを試しているような・・・。」
ははは!
私が心に浮かんだ疑問を口に出したとたん侵入者はいきなり笑いだした。
「なんなのこいつ」
千鶴子もどこか不気味そうに見ている。
「いや、失礼。パパイアさん。
あなたがあまりにもあっさり私の行動を言い当てたので、ついうれしくなりましてね。」
・・・こいつ、いったい。
「と、いってもあなたたちには何の事だか全く分からないと思いますので、少し説明させていただきましょう。」
「ふざけないで!」
「いえいえ、ふざけてなどいませんよ。
実はわたし、あなたたちののことは学生時代からよく知っているのですよ。」
「学生時代って」
「あらら、ストーカーさんだったのねぇ。」
「ストーカー・・・、少し違いますね。
実は私、理想の女性を探しています。
私の目蓋に映るその女性は美しく強く孤高の存在です。
その女性に恋い焦がれ、私は長い間そんな女性を探しているのです。
ただ美しいだけや、強いだけの存在には興味がありません。」
「ずいぶんと、好みに拘りがあるのねぇ。」
「ええ。
ただですね、残念なことに表向きそう見えても実は私の理想の人物とかけ離れていることが多いのですよ。
現実とは残酷なことです。
そう、そこにいる千鶴子さんのようにね。」
「あら、以外、千鶴子なら私より強く美しいと思うのだけど。
まぁ少し胸の部分がさみしいけど。
・・・巨乳がお好みで?」
「ちょ、ちょっとパパイア、何いきなり友人売り飛ばしてるのよ。
それと胸のことは言うな!
私はまだこれれからなのよ。
そうよこれからよ・・・」
あ、しまった。千鶴子のテンションが下がっちゃった。
千鶴子ってば、ほとんど完璧だがらついつい唯一の欠点の胸をからかっちゃうのよねぇ。
ゆるせ、千鶴子、悪意はないのよ・・・たぶん。
「えーと、ごめん千鶴子。今現在、進行形で危険なんでそろそろ戻ってきてくれないかなぁ。
・・・侵入者も笑ってるけど。」
「ええい、そこの侵入者件不届きもの!
そんなに人の胸がないのがおかしいか、おかしいのか~!!」
いやね、千鶴子さん。
たぶん侵入者は君の胸のことについて笑っているんじゃないと思うよ。
胸の件についてふった私が言うこっちゃないけど。
「いやぁ~すみません。
ついついあなたたちの掛け合いが面白くて。
パパイアさん、あなたの新たな魅力を見つけてしまいましたよ。」
しまった、やぶへびだったか。
「そうそう、そういえばまだパパイアさんの質問にお答えしていませんでしたね。
なぜ、千鶴子さんではいけないのか?
足りないからですよ。
それは、最後のひとつ、孤高でないからです。」
「孤高でない?
友達がいることが孤高でないなら、私も孤高ではないわよ。」
「ちょっと違いますね。
べつに友達がいようと臣下がいようと愛人がいようと別に構わないんです。
私が求めているのは、独立した強さという意味なんです。
そこにいる千鶴子さんは一見、一人で何でもできる強い人のように見えますが、長い間いろいろな人を見てきた私にはよくわかります。
彼女は精神的にかなり脆い。
ただ彼女はそれを表に見せまいと強がっているだけです。」
「・・・はん、何を言うかと思えば、偉そうに。
私たちは、これまでこの若さにかかわらず、幾つものむごい現実を見て感じて来たわ。
その中には、心が壊れそうな出来事も幾つかあったわ。
けどね、そんな中、千鶴子はいつも私たちのリーダーとしてみんなを支えてきたの。
そんな千鶴子のどこが脆いっていうの!」
「うん、たしかに、大したリーダーシップをお持ちだと思いますよ。
けどね、心の強さとリーダーシップは関係ないのですよ。
その気になれば私はすぐに千鶴子さんの強さを壊せるのですから。」
「ふざけないで!あんたに私の何がわかるというの!!」
あまりに一方的な言葉に今まで黙って様子を見ていた千鶴子が切れた。
だが次の言葉で、黙ることとなる。
「アニス・沢渡」
この一言に室内が氷ついた。
「あなたも気付いているのでしょう。
あなたの強さはだれかに依存した強さなのだと。
本来のあなたは決して面倒見の良いリーダーじゃない。
むしろその逆、自分では何も行動を起こさないのに周囲の行動には不満を言い、何かを行動することに恐怖する臆病者。
そんなあなたが行動するただ一つの理由、それが『アニス・沢渡』さんです。
幼いころにでも何か心の傷でも癒していただきましたか?
その恩返しのつもりか、それ以降あなたはアニスさんの望む役割を担ってきた。
今のあなたはアニスさんが望んでいるから、望むように行動しているのであって、本来のあなたは単なる臆病者なんですよ。」
・・・いきなりの千鶴子の人間分析、あまりといえばあまりの内容。
だけどその言葉を私は一蹴する事が出来なかった。
幾つか思い当たるところがあったからだ。
思い返してみれば千鶴子はアニスの意見に反対したことがない、叱ったり説教したりすることはあってもそれはあくまで無謀なことや危険なことをする行動に対してであって、アニスの目的に対して反対したことはない。
・・・思考中
・・・思考中
・・・思考中
・・・結論!
あちゃ~、二人は仲がいいと思っていたけど、そこまで依存してたとは。
今更ながら考えてみれば当てはまるわ。
せいぜいガールズラブ位だと思ってたんだけどなぁ~。
「千鶴子・・・」
「う、う、う、う、う、うるさーい!
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいいいー!!!」
あ、きれた。
「たしかに昔はそうだったかもしれないわ。
けど今は、今の私が本当の私なの。
アニスにあこがれ、アニスに恥ずかしくないように努力し今の私を作ったの。
始まりは確かにいびつな感謝と依存だったかもしれないけど、そこから努力した私を誰にも否定させないわ。
そう!私が、今の私が『山田千鶴子』よ!!」
・・・さすが千鶴子、私たちのリーダー。
「そうね、あなたは随分長い間、人を見てきたようだけど、まだよく人がわかっていないわね。
人はね、成長するのよ。」
「いやぁ~、たしかに成長しているみたいですねぇ。
まさかここまで、しっかり宣言されるとは思ってなかったですよ。
・・・けど、まだ治っていませんよね、アニスさんへの依存は。」
・・・こいつ絶対性格悪い。
「パパイア、これ以上こいつと話しをしていても埒が明かないわ。
こいつ、つぶすわよ!」
千鶴子のセリフとともに私にアイコンタクトが来た。
魔法の同時攻撃!
その内容を理解した瞬間、私たちは同時に叫んだ。
「「黒色破壊光線」」
放たれる黒い光線、私たちの完全にシンクロされた魔法攻撃の威力は単純に2倍の攻撃力じゃなくて、3倍を超える。
非詠唱のため少々威力は落ちているが人間一人消滅させるには十分すぎる威力だ。
というか、上級魔法のシンクロ打ちは完全に『対軍団用戦術呪文』の領域だ。
本来、こんな侵入者は捕まえて尋問がセオリーだけど・・・しかし、こいつに限っては私の勘がびんびん警報を鳴らしている。
こいつはやばすぎると。
こいつ相手に拘束目的の甘い攻撃など仕掛けようものなら絶対痛い目にあう。
大して会話はしていないが、私に十分な危険を認識させる人物。
これについては千鶴子も同意見のようで、不意を打てる最大級の攻撃呪文を選択してきたことからもよくわかる。
私たちが放った魔力の光線は目標を飲み込んだ。
・・・・な!なによこれ!魔法が、魔法が、引き裂かれた。
この塔は私の身体のようなものだ、特に私の生活する最上階には各種センサーが設置してあり、私の命令一つでそこにある情報がリアルタイムで私に流れるようになっている。
そう、今そこから流れてきた情報は絶望的なものだった。
戦術級、対軍団使用目的の巨大魔法が引き裂かれたという・・・。
「ねぇ千鶴子、非殺傷限定した?」
「冗談でしょう、あんなやばそうな相手にするわけないじゃない。」
だよねぇ~
千鶴子も自分の情報魔法から感知した今起こっている信じがたい状況に動揺しているようだ。
吐き出すように応えた。
「対軍団使用目的の戦術級魔法を耐えるでも相殺するでもなく引き裂くなんて。」
私たちの魔法が終了し次第にその残滓が薄れ視界が開けてくる。
「ほら、千鶴子出てくるわよ、戦術級魔法を引き裂いた・・・化け物が。」
「まったく、いったいどんなトリックを使ったのやら。
・・・え?
二人?」
私たち二人のセンサーには、魔法の爆心地に、
『認識できない何か』
と、
『高密度の魔力を放出している人型』
がいた。
なるほど、この人型が、私たちの魔法を引き裂いたわけか。
この高密度の魔力、噂に聞く魔人クラス!
まさかこいつら魔人の先兵か!
次第に晴れる魔力塵、鈍っていたセンサーがフル稼働を始め敵の情報をかき集める。
・
・
・
・
・
え!
「ちょっと、パパイア、これって!」
「ちょ~とシャレになんないわねぇ~これ!」
魔力塵の向こう側から現れたもの。
それは、涙で顔をぐちゃぐちゃにした・・・アニスだった。
ーーーーーあとがきーーーーー
わたしの駄作をお読みいただいてくださる皆様、
大変申し訳ありませんでした。
私自身1年以上も間を空ける羽目に陥るとは全く思ってもいませんでした。
いろいろと言い訳があるのですが個人的なことですのでしません。
こんな無責任なことをした私の作品ですが、今後もお読みいただけたら幸いです。
本当に申し訳ありませんでした。