第五話 征伐のミト参上です。
どうも、爆弾フラグに日々怯えるへっぽこ魔法少女アニスです。
結論から言いますとパパイアさんはすごくいい人です。
年下の私や千鶴子さまにも威張ったところがなく、私の練習にも笑って付き合ってくれます。
何回か暴走に巻き込んで吹き飛ばしたのですが、笑って許してくれました。
いい人だ。
久しぶりに他人の優しさに触れた気がします。
千鶴子さまと同じクラスなのですが、10歳の時に入学しているので年上です。
けど、のんびりとした口調と性格からあまり歳の差を感じません。
というか、保護意識をそそられるタイプですね。
こんな方が将来、人体実験を喜々としてやるマッドサイエンティストになるとは……。
なんとか成らないでしょうか。
千鶴子さまが初めて紹介してくれたお友達、きっととても大事な方なのでしょう。
そんな友達があんなキチ○イになったら、すごく悲しみますね。
千鶴子さまの悲しむところは見たくないのです。
かなり歴史が変わってしまいますが、あの悲劇を回避するため、なんとか介入したいと思います。
と、いっても今現在できることは殆どありません。
せいぜい、
『顔が良くて口のうまい男には気を付けろ。』
とか、
『古い魔道書には迂闊に手をださない。』
位を忠告する程度しか思いつきません。
確かパパイアさんがおかしくなったのはランス6で出てきた『エセさわやか男』がプレゼントした魔道書が原因のはずです。
けど、そこまで考えて問題がある事に気づきました。
私、……いつ頃エセさわやか男がパパイアさんに近づいたのか知らないのですよね。
四天王任命前か後かも覚えてないです。
そして致命的な事にその男の名前を忘れてしまったのです。
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私の馬鹿。…………orz
いえね、エロゲの男キャラなんてあまり記憶に残りませんよ、ホントに。
顔は覚えてるんですけどねぇ。
まさか自分がこの世界に来るなんて思っても見ませんし。
思いっきり必要の無い知識でしたから。
確か最初に『ア』がついていたような…。
アレックス?
アリオス?
アレフガルド?(これは違うな。)
しかたありません、とりあえずウルザさんの側近の医者のおじーさんの子供という設定で暮らしているのは覚えているのですから、できるだけ早めにウルザさんに接触して思い出しましょう。
できればウルザさんもお助けしたいですし。
ちなみにリズナさんは無理でした、生まれたときには既に事件は起きていたので。
リズナさんはかなり悲惨な目会っているためになんとかしてあげたかったのですが…。
パパイアさんについては、千鶴子さまにもそれとなく注意するようにお願いしておきましょう。
パパイアさんて、なんとなく男にだまされやすそうなタイプですし、そのあたりの事を言っておけば、責任感の強い千鶴子さまの事です、かなり期待できるかもしれません。
◇◇◇◇
歴史に介入しようと決心してから、こう見えても結構一生懸命調べたのですよ。
ゼスの歴史や魔人達の事、そして白くじらの事を。
まあ、半分以上千鶴子さまに手伝ってもらったのですが。
関係のない千鶴子さまを巻き込むのはどうかと思いましたが、私1人では無理な事が多すぎる為ご協力願いました。
なんといっても詳しい理由も聞かずに手伝ってくれるのが千鶴子さまだけだったのですよ。
そこで分かったのは、魔人については昔話程度、白くじらについては殆どなにも分からないということ。
三超神までなら幾つかそれらしき記述があったのですが、白くじらについては全くのお手上げでした。
結構無茶をして調べたりしたのですよ、『王宮図書館』に忍び込んだりして。
ゼスについて分かった事は、予想以上にこの国は救いようがないという事でした。
表の歴史には人類圏を魔人から守ってきた英雄の国などと記されていますが裏側はドロドロに腐りきってます。
権力闘争から、奴隷を手に入れるための侵略、残虐な部族を滅ぼすと大義名分を掲げた虐殺行為、そんな記録が次から次に出てきます。
例を挙げれば、かつてゼスが建国された頃、モエモエ王国という同盟国がありました。
しかし今はありません。
ゼスに滅ぼされてしまったからです。
どうやらその王国の王様は名君だったようで、その時代、善政をしき豊かな国を築いていたそうです。
そのため隣国であるゼスから奴隷達がどんどん王国に逃げ込んだそうですが。
そうなると気に入らないのがゼスの貴族達、不満はどんどんたまり、ある年、ゼスが不作のため飢饉が起こりそうになったときに爆発しました。
最悪の形で。
その時のモエモエ王国国王は同盟国の窮地に援助を申し出ました、近年悪化する同盟関係の強化のためのものでしょう。
それをゼスは利用したのです。
わざわざ持ってきてもらうのは悪いという表向きの理由から大量の荷駄隊を王都に送りこみました。
ただし荷駄の中には大量の兵士を隠して。
…そして戦争が始まりました。
いきなり王宮に攻め込まれ、更に外からも隠れていたゼス軍が攻め込み、当時栄華を極めていたモエモエ王国は3日で滅びました。
もっとも戦闘は1日で終わったようで後の2日は虐殺と略奪につかわれたようです。
その後の歴史には王家の人間が罪のない民衆を虐殺していたことから正義の国ゼス王国がこれを成敗した、と記されています。(嘘なのは丸分かりです、王国の国民を奴隷として連れ帰っているのですから。)
この記録を見たとき千鶴子さまは泣いていました、私も泣いていたと思います。
人がいかにして人に対して残酷で恥知らずになれるか、その見本のようなものですから。
そしてその行為に自分の国が係わっていると言う事に。
もっともその後、天罰のように続けて
『ケイブリスダーク』
『メデュウサダーク』
と魔人の侵攻が続きます。
ついでにヘルマン軍の侵攻までありました。
この頃からかもしれません、千鶴子さまが積極的にこの国を変えていきたいと思ったのは。
そして私、千鶴子さま、パパイアさんの三人はこの国について話す事が多くなりました。
◇◇◇◇
このような事があったものの特別なイベントもなく私の学校生活は進んでいきました。
千鶴子さまとパパイアさんは2年で卒業し、私も3年で卒業しました。(千鶴子さまの猛特訓を受けたおかげですが。)
座学と実技は2年で卒業資格を取ったのですが、最後の卒業迷宮で魔法を暴走させてしまい1年卒業が伸びてしまいました。
わざとじゃないのに………。(泣)
結局、最後まで私には友達が出来ませんでした。
シクシク(泣)
けど、卒業式で知った顔を見つけましたよ、
『カオル・クインシー・神楽』
さんです。
カオルさんて私より年下だったのですね、お姉さんキャラっぽい感じがしていたんですけど。
しかし、8歳で入学して10歳で卒業というのは千鶴子さま並に優秀なのに全然知りませんでした。
確かカオルさんて高Lv魔法使いじゃありませんでしたよね、にもかかわらず名門校入学and最短卒業なんて…。
どれだけ有能なんですか。
………カオル、恐ろしい子。
将来お庭番になるために目立たないようにしていたのでしょうか?
知っていたならなんとしてもお友達フラグを立てていたのに。
残念です。
◇◇◇◇
その後、私は王立魔法研究所に入りました。
ここは大学と研究機関が一緒になったような所で、千鶴子さまのように10歳で卒業してしまう天才に人生経験を積ませる機関でもあります。(さすがに10歳で軍人や公務員になるのは無茶)
そして事件は研究所に入って直ぐ起こりました。
研究所に入り、そろそろどこかのダンジョンか森で修行をかねたLv上げに行こうかと思っていたところ、いきなり真っ青な顔をした千鶴子さまがやってきました。
「大変よ、アニス!」
「おや、千鶴子さまどうしたのですか?珍しくあわてて。」
「………虐殺が始まるわ。」
へっ?
「異文化撲滅法案が可決しそうなのよ。」
「ちょ、ちょっと待ってください、それって。」
「そうよ、国内において魔法文化しか認めず、他の文化は全て撲滅する、とんでもない悪法よ。」
・
・
・
あ、あ、あ、あー!、忘れてた!!
『ムシ使い村の虐殺』
そういえば、確かガンジー王が即位する前に起こったとかいってたような。
「現王さまが病気がちでまともに政治が出来ないのをいいことに貴族達が強引に法案を通してしまいそうなのよ。」
千鶴子さまが現体制への不満やら貴族達の悪口を言っていますが、今はそれどころではありません。
ただでさえ私というイレギュラーがあるのです、どんなバタフライ効果が起こっているのか知れたものじゃありません。
後にランスと一緒に戦う事になる
カロリア・クリケット
数少ない生き残りとして生き延びるはずですがそれだってどうなる事か。
へたをすると、カロリアが死んでしまうかも知れません。
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介入です。
今まで思うだけで目立った行動は起こしてこなかったのですが今は行動の時です。
なにが出来るか分かりませんが、助けに行かなくては。
「千鶴子さま、すみませんがアニスは行かねば成りません。
必ず起こると分かっている悲劇を黙ってみてられるほど大人になれそうにないので。
取りあえず確実なところでムシ使い達が危ないと思いますのでそちらに行ってみようと思います。」
私が、ムシ使い村の救出に行く事を千鶴子さまに伝えると直ぐに賛成してもらえました。
私1人で行くつもりでしたが千鶴子さまもすっかり行く気のようです。
しかし、
「ちょっとまって、あなたムシ使い村が何処にあるのか知っているの?」
あ、そういえば隠れ里でしたね。
「それに私たち子供だけで行っても説得力がないわ。」
そうでした、学校を卒業していると言っても私は12歳、千鶴子さまでも13歳、一般的に子供と呼ばれる年齢です。
例え、大人顔負けの魔法を使おうとも、外見は子供、これでは軍が攻めてくるから逃げてと言っても説得力がありません。
こんなことなら、大人になる魔法でも覚えておくのでした。
そんな後悔をしていたところ、千鶴子さまもしばらく考えていた様ですが、
「アニス、2日ほど待ってちょうだい。」
そう言ってどこかに行ってしまいました。
まぁ、千鶴子さまの事ですから何かお考えがあるのでしょう。
パパイアさんでしょうか?
パパイアさんでも14歳、まだ説得力に欠けると思うのですが………。
ここは一つ千鶴子さまの明晰な頭脳に期待です。
取りあえず、出発の準備をしつつ千鶴子さまを待っていると、2日後、1人の男性を紹介されました。
「うん、君がアニスくんか、よろしくたのむ。」
紹介されたのは、マッチョで変な髪型をした、おじさまでした。
「私の名はラグナロックアーク・スーパー・ガンジー、まぁ気軽にガンさんとでも読んでくれたまえ。」
あは、あははは、
なぜここにいるのです、ガンジー王!