鏡が、淡い光を放ち始めて、自分という存在を形作る想念を呑み込んでいく。溶かされていく。
この物語の突端と、同じ光。そして‥‥外史を終焉へと導く光。
切り離されたフィルムのように、途切れ途切れに、脳裏をよぎる。
今まで過ごした時間。
向けられた笑顔。
柔らかな、温もり。
走馬灯のように、浮かんでは消えていく。
自分という想念が薄れていくことを感じながら、それでも俺は心の中に愛しき人たちを思い描く。
不意に‥‥‥‥声が聞こえた。
「ご主人様!」
愛紗‥‥‥‥‥。
白い光に包まれ、薄れゆく視界に、確かに見えた。
ずっとそばにいてくれた、心優しき少女。
この戦いの物語の中、ずっと俺を支え、時には励ましてくれた、大切な半身。
愛沙だけじゃ、ない。
星、翠、朱里、鈴々、紫苑‥‥‥。
皆、こっちに走ってくる。俺を助けようと、手を伸ばしてくる。
「約束したのに‥‥っ! ずっと‥‥‥ずっと一緒にいるって約束したのにっ!」
「私を置いて、どこへ行くおつもりですか! そんな事ッ、絶対に許しませんよ!!!」
「ご主人様! どこにも行かないで! あたしを一人にしないでよ!」
「消えないで‥‥っ! 絶対に助けてみせますから! どこにもいかないでっ!」
「やだよっ! お兄ちゃんとお別れしたくない!」
「そんなの嫌ッ、ご主人様がいなくなるなんて嫌よッ!」
道を阻む少年‥‥左慈に一切構わず、ただただ‥‥‥その手を伸ばす。
嫌、だ‥‥‥‥。
離れたくない。もう、彼女たちのいない世界なんて‥‥考えられない。
たとえ‥‥消え去る運命だとしても‥‥‥
「み、皆‥‥‥‥!」
こんな別れ、認めない。
まだ、まだ皆と一緒に生きていたい。
ここにいる愛沙たちだけじゃない。
無口な恋、陽気な霞、口うるさい詠に、心根の優しい月。
敵対し、そして文句を言いながらも仲間となり、俺を助けてくれた華琳たち。
王としての責任、役割‥‥‥そういったものを教えてくれた蓮華たち。
力の無かった俺を助けてくれた、義侠に富んだ少女、公孫賛。
この世界で生まれた絆が、それを失う恐怖が、この胸を締め付ける。
「傀儡どもが、そんなにそいつが好きなら、全員まとめて殺してやるよッ!!」
俺に向かって走る、左慈に背を向ける仲間たちに、その凶拳が振るわれる。
「ぐぅっ!」
紫苑が、倒れた。
「にゃぁっ!?」
鈴々が、倒れた。
背を向け、走る少女たちに振るわれる豪撃。武の達人も、世に名だたる英傑も関係ない、今は一人の少年しか見えていない。
「くそぉっ!」
叫ぶ声すらも、消え入りそうに掠れる。
もはや意識すらも消え果てそうに薄れる中で‥‥
「きゃあっ!」
「っぁああ!!」
朱里と、翠が倒れた‥‥‥ようだ。
もう、目も見えない。
「一刀殿!!」
星が、倒れた。
かなり間近で聞こえた、そう思えたのに‥‥その声はひどく遠い。
「一刀様!!」
愛沙の声、さっきよりさらに‥‥近い。
「うっ‥‥‥ぁあああ!!」
目も見えない、耳も‥‥もう聞こえない。
それでもただひたすら、爆発させるように、がむしゃらにその手を伸ばした。
そして、その手は‥‥‥‥
ただ、虚を掴み、新たな外史の扉が開かれる。
築いた絆は、育んだ絆は、伸ばした絆は‥‥‥しかし届かず。
新たな外史に、その爪痕を残す。
(あとがき、兼まえがき)
はじめまして、水虫と申します。
まず、はじめに。
今回はプロローグという事もあり、特に短いですが、私は携帯からの投稿なため、以降の話も字数制限により、一話一話がそれなりに短くなってしまうかと思います。
私は、三國志に関する知識はそんなにありません。ので、所々おかしな点が見られるかと思いますが、その際にはご指摘頂ければ幸いです。修正可能な部分であれば直します。
それ以外でも、今回が初投稿‥‥というわけではありませんが、未熟な所が多かろうと思いますが、完結目指して頑張りますので、よろしくお願いします。
(注意)
本作品は、内容に原作キャラの死が含まれます。