■05出発してから二時間ほど歩いただろうか、そろそろ夕暮れだ。目立たないようゾンビのマネをしながらゆっくり歩くのでえらい時間がかかる。今日は避難所到着を諦めてどこかで休んだ方が良いかもしれない。暗い中で歩き回るのは危険だし集中力もいるだろうから疲労も大きいだろう。真っ暗闇でゾンビとぶつかって襲われた、なんて洒落にもならない。めぼしい空き家が無いかどうかチェックしながら歩いていると、かなり気になる家を見つけた。玄関が開いているとか、ゾンビが少ないとかじゃなくて、その全くの逆。厳重なバリケードで入り口が固められ、異常なほどのゾンビが群がる家を発見した。家の周囲は高さ2m程のブロック塀で囲まれ、家への入り口には大量の家具が積み上げられて容易には突破不可能なバリケードと化している。ゾンビ連中はそれでも家の周りに群がり虚しく呻き声を上げている。なんとなく中に誰かが篭城しているということはわかるのだが、なぜこうもゾンビが集まっているのだろうか?これまでも人が篭城しているらしい家はいくつか見かけたがゾンビはそれほど群がっていなかった。この家だけゾンビの密集率が異常だ、何か気になる。バリケードが頑丈だから? いや、逆だろう、侵入できないなら意味がない。大きい音でも立てているのだろうか、だが今のところ全く何かしらの音は届いてこない。周囲のゾンビに注意しながらそっと中を覗こうと近づく、正面玄関はゾンビが多すぎるので側面の庭側から。転がっていた大型ゴミ箱を足場にして塀越しに中を覗き見る。「……うわ、こりゃ酷い」そこにはかなりヘビーな光景が広がっていた。こちらから見える家の中、大きな窓ガラス越しに見えたリビング内では5人の男女が見える。男四人、女一人、なんとなくこれだけでも想像できそうだが、一応簡単に説明しておこう。・女 → ガムテープで両手足縛られ、全裸、でもって体中に青痣っぽい痕・男 → 全員裸、ガラの悪そうな兄ちゃん集団、チ○コまるだしまあ、この状況だけで十分過ぎるほど何があったのか想像できるだろうけど。リアル陵辱ですね、わかります。ゾンビが発生して三日目にしてもうコレかよ、まさにリアル世紀末だな。エロゲとかでレイプとか輪姦とかNTRのジャンルはそれなりにやってきたけど、現実は遥かにグロいなぁ。エロ本とかなら俺みたいなのぞき野郎はアレ見てハァハァするべきなんだろうけど、正直無理ッス。あんなリアルな陵辱風景見せられたら一般人はドン引きして勃ちもせんわ。俺がそんなことを考えているうちにも男の一人が女の股を無理矢理開いて腰を振りはじめた。そのうえ何が気に入らなかったのか怒鳴りながら、女の顔や腹をボコボコ殴る殴る。うわぁ、なんというかサディスティック、今度は首絞めてるし、流石に死ぬんじゃないかアレは?でもって周りの連中はそれ見てゲラゲラ笑ってやがる、まさしく外道と言うべきか。人間ああはなりたくないものだ、反面教師とすべきか。さてと、様子見はこんなところでいいか、あんまりじっと見てて向こうに見つかるのはご勘弁だし。ブロック塀から降りると俺はゾンビ集団の群がる家から少し離れて手ごろな地面に腰を下ろした。同じように、後を付いてきたラッキーも俺の横におすわりする。まずは落ち着いてこれまで集めた情報で少し考えてみよう。なぜあの家にだけゾンビ連中が群がるのか。最初に原因として考えられるのは騒音、あれだけレイプ祭りで馬鹿騒ぎすれば多少は寄ってきてもおかしくはない。だが、それでも大音量というわけではない、家から10mも離れたら殆ど聞こえてこないレベルだ。じゃあ他には? 臭い、そう臭いだ。ゾンビ連中は『生きた人間』の臭いを嗅ぎ取ってくる、一日中セックル三昧のあの連中ならさぞかし『生臭い』だろう。それと脳波も関係しているかもしれない、さっきの光景を見た限りでもすさまじくエキサイティングしながら腰振ってたし、興奮関係で何か脳波がビンビン出ているのかも。結論としては『エロいことするとゾンビが寄って来る』でいいだろうな。ホラー映画でも真っ先に死ぬのはカップルからだし、こんなところでもまた一つ謎が解けたぜ。童貞の俺にはあまり関係ない事柄かもしれないけどね。あ、でもオナヌーする時は気をつけた方がいいのかも、あれだって結果的には同じようなもんだし。……安全地帯に辿り着くまではオナ禁だな!■考察も一段落して、さて、どうすべきか。勿論あの家に捕まってリアル陵辱されてる可哀想な姉ちゃんを助けるべきかどうかという問題だ。人道的には助けに行くべきなんだろうが、個人的にはちょっと躊躇してしまう。なぜかって? もちろん俺が一般人だからだ、シャベル(シャーリーン)で武装していようと所詮は貧弱一般人。あんなガラ悪そうな兄ちゃん四人組に勝てるわけない、銃で武装するか、変身ベルトでもないと逆に殺されてしまうわ。かといって見殺すのもちょっと気分が悪い、何よりも若い姉ちゃんだしね。上手く助ければ、お礼にヤラせてくれるかも、いや、流石に夢見すぎか。助けるとしても正面突破は無理、となると側面から攻略すべきだろう。つまりはゾンビ戦略と同じというわけだ、要は『四人組と戦わず、姉ちゃんだけを助け出す』。あの連中だって24時間休まずレイポォしているわけじゃないだろうし、深夜になれば眠るだろう。その時が狙い目だ、こっそり忍び込んで姉ちゃんだけを助けて即離脱、これしかない。あの家の対ゾンビ防御力は正面のバリケードを見た通り大したもんだが、人間に対しては意味がない。たった2m程度の塀なんて足場を使えば簡単に乗り越えられるし。問題はどうやって家の中に侵入するかだが、おそらく流石の連中でも戸締りには気を遣うだろうし、大きい音を立てると連中にバレる恐れもある。ゾンビ連中は聞こえようがバリケードに阻まれて入って来れないだろうし、さてどうすべきか。考えに煮詰まった俺は気分転換にリュックを漁り何か使えそうな道具がないか探してみる。カッター、流石にこれで窓ガラスは切れないだろう、それほど頑丈でもないし武器としてもあまり期待できない。ペンライト、リビングにいる姉ちゃんに合図でも送るか? でも彼女縛られてるし無意味っぽいな。ガムテープ、なんに使えと? あ、いや、まてよ、コレは使えるんじゃないか!?俺はとある妙案を思いつきそれを実行に移すべく、夜がふけて連中が寝静まるまでゾンビ蔓延る屋外で静かに座り込んで待つことにした。■