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念願のミリタリーショップに辿り着き、ようやく一応の安全を得た俺はとりあえず休憩をとることにした。
昨日からずっと外で活動してきたので疲労も溜まっている。
幸いこの店のバリケードは前住人が念入りに補強してくれたおかげか頑丈だし、もともと店の性質上防犯意識も高かったのだろう、かなり堅牢だ。
容易にゾンビは侵入できまい、安心して休むことができる。
リュックから食料を物色して取り出す、カップラーメンは既に食べきってしまっていたので缶詰だけだ。
メニューはサバの味噌煮とみかんの缶詰だ、相性なんか知ったことか、腹が膨れれば良い。
とはいえ、みかんはともかく生温かいサバの味噌煮は正直マズイ。
ここはアウトドア用品も扱っている店なんだから何か暖めることができる道具は無いものだろうか?
俺がアウトドアコーナーへ向かい何か無いかキョロキョロしているとさっそくそれらしいのが見つかった。
『シングルコンロ』というかなりコンパクトなバーナーだ、ガスボンベと一体型で手の平サイズ。
それを持ち出してサバの味噌煮をさっそくセットする。
意外と火力が強いのか、あっという間に暖め終わり、味噌風味の良い匂いが漂ってくる。
俺はアツアツのサバを味わいながら完食した。
このコンロはかなり便利だ、とっておこう。
そして腹が膨れたら今度は眠くなってきた、丁度良い、昨日からろくに寝てないしここで仮眠も取っておこう。
ラッキーを呼んで枕代わりにする、少し窮屈そうにしていたがまあ数時間だけ我慢してくれ。
俺はふかふかモフモフの枕で心地よい眠りに落ちていった
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食事と休息を取ったおかげで気力・体力も回復した。
さて、そろそろ店内を物色するか、前にチェックを入れていたミリタリー本を取り出し広げる。
本のカタログと照らし合わせながら幾つかのめぼしい品々を選んでいく。
20分程度であらかた集め終わり、死んだ先住人の武器も合わせて目の前にズラリと並べた。
なかなか壮観な光景であるが、いくらなんでも全部持ち歩けるわけじゃない。
これから優先度ごとに餞別して持っていくモノを決めなければならない。
今後、自分自身の命に関わってくる重大な問題だ、真剣に考えなきゃな。
まずはこれだ、『軍用リュックサック(35,960円)』
サイズも大きく、とにかく頑丈、背面にメッシュパネルが入っており通気性と背負い心地にも優れる、防水加工済み、ジップポケットが3個、それぞれのポケットの内側にもメッシュポケットやジップポケット、ペンポケット等があり収納性も抜群。
これは迷い無く頂きだ、今現在俺が使っているリュックなんてバーゲンで買った1,980円の安物だしね、比べようもない。
ついでに『レッグポーチ(17,220円)』なんてのも付けてみた。
これは腰から足部分にかけてくっ付けられる収納バッグで容量もそれなりにある。
とっさに必要とされるアイテムを入れておくのに丁度良いかもしれない。
次、『防弾・防刃ベスト(139,800円)』
いわずと知れた超有名防具、ゾンビ相手には大して意味ないかもしれないけれど人間相手には心強い。
銃やナイフで武装した暴徒に遭遇した時なんかには俺の命を守ってくれる頼もしい存在になってくれそうだ。
そのうえ最新バージョンらしく、超軽量で長時間の着用においても身体への負担が少なく疲労感をあまり感じないらしい。
これなら通常のベストと同じ感覚で違和感なく着用できそうだ。
値段は相応に高価だが、店員がいない現在では関係ないな、好きなだけ取り放題だ。
一緒に『防刃グローブ(45,000円)』なんてのもゲットしてみた。
ケブラー製の素材に内部に一部鋼鉄を仕込んでいるらしく防刃性能だけでなく直接的な攻撃力も高いらしい、現代版ガントレットと言ったところか。
さてここからお楽しみの武器編だ、まずは『クロスボウ・185ポンド・コンパウンド(499,800円)』
店内で一番高価、かつ最も強力で高性能らしいクロスボウ、展示品にはドットサイトスコープ(暗視機能付き)、ショルダーベルト、コッキングメカ(リールを巻くように弦を引っ張る装置)付きでデカデカと《最強クロスボウ!》と宣伝していた。
実際に試し撃ちしてみたが想像よりも遥かに強力だった、的にしたマネキンを貫き砕き、そのうえ店内の壁に深々と突き刺さってしまったのだ。
非常に心強い威力ではあるが、ヘタな銃よりも強力そうに思えるのは俺だけだろうか。
ただし弦を引き、矢をセットするまでにちょっと手間がかかり連射は難しい、集団で襲われたらアウトだろうな。
重量は約4.5キロで結構重いがようやく手に入った貴重な飛び道具だ、少し悲しいがシャベル(シャーリーン)を手放せば持ち歩ける重さだろう。
さらに攻撃力を上げるために『4ブレードヘッド(2,590円)』というアルミ矢の先端にくっ付ける付属品もゲット、流石にこれならゾンビの頭も一撃でフッ飛ばしてくれること間違いなしだ、アルミ矢24本と合わせて当然持っていく。
次なる飛び道具は『スリングショット(15,200円)』
要するにゴムで鉄玉を飛ばすパチンコだ、弾はそこいら辺に落ちてる石でも代用できるお手軽さ、意外な攻撃力、携帯性の良さ、とても経済的な飛び道具である、ただし攻撃力はあまりない、人間相手に牽制程度に使えれば良いかもしれない。
命中すればかなり痛いが、それだけだ、殺傷能力が低いので役に立たないだろう、コレはここに置いていく。
次はお馴染み『スタンガン(24,800円)』
護身用のアレです、殺傷能力は皆無に等しいが人間相手なら怯ませることくらいは出来る。
ゾンビには効くかどうかわからないが、痛みを感じていないような連中だしそう大した効果は望めなさそう。
一応コンパクトだし邪魔にもならないだろうから持っていくか。
同じようなアイテムで『催涙スプレー(5,980円)』
CN(クロロアセトフェノン)ガスという物質を吹き付ける、このタイプのガスは眼はもちろんのこと皮膚に付着するだけでも火傷のような激しい痛みがでる、らしい。
とはいえゾンビには効かないだろうね、これも人間用かな。
怯ませて逃げる時間くらいは稼げるだろうし持っていこう。
今度は接近戦用の武器『消防斧(18,000円)』
シンプルな武器だ、金槌に刃が付いたようなもので鈍器の性能も併せ持つ以外と高性能武器、至近距離で力いっぱいゾンビの頭に叩き下ろせば一撃必殺できるのは間違いなし。
ドア破壊用に刃の反対側にピッケル状の尖った台が付いていて、こちらも攻撃力は高そう。
厳ついフォルムもカッコ良いし、持ち運びしやすいコンパクトなサイズも良し、ここに置いていくことになるシャベルに代わる新たなる相棒となってくれるだろう。
専用のアタッチメントで腰後ろのベルト部分に取り付けられ携帯性も高い、是非持っていこう。
今はこんなところか、その他に小物を数点持っていくことになるがそれほど重要でもないので箇条書きしていく。
・防犯ブザー → 大きい音を出してゾンビどもの気を引くアイテム、多分すぐ壊されるから脱出用の使い捨てかな、10個くらい持っていこう。
・手錠 → 暴徒・犯罪者・略奪者を拘束しておく時に使うかも、念のため一個持っていこう。
・アーミーナイフ(十徳ナイフ) → 缶切り、栓抜き、工作等に利用する。
・ゴム底のスポーツスニーカー → 足音対策。
・迷彩系服装一式 → 軍隊仕様で頑丈で防御力も高い、皮ジャンよりも軽い。
・携帯非常食 → カロリーメイト、缶詰、カンパン、レトルトパック等、おおよそ三日分の食料。
・水筒 → 軍隊仕様でアルミ製の非常に頑丈な水筒、1.5L入る。
・オイルライター(Zippo) → 伝統と信頼の人気ブランドライター。
・その他 → ミニコンロ、救急セット、ミニラジオなど。
持っていく荷物はこれくらいか、いざ全部装備してみるとズッシリ重い、欲張りすぎたかな?
当面必要なさそうなモノは全てここに置いていくことにする、この店の鍵は俺が持っているしいざとなればまた来て補充にくれば良い。
ああ、そうなってくると足となる車が欲しいな、後でカーショップもあれば覗いてみるか。
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