「こ……こっ……」
や、やぁはじめまして。俺の名前は加藤和樹、普段は歴史戦略モノ(H○iとか)やFPSとかまぁPCゲーばっかりしているせいか、いつも赤点スレスレな専門学校生……なんだけど、俺は今とても困っているんだ。理由はとても簡単で、なぜならそれは───
「ここどこだあぁああああああああああああああ!!??」
気がついたら知らない森の中でした……
「おおお、おちつけおちつけ……コレは夢いや痛い、どうなってるんだ!?」
な、なんということでしょう。頬をつねっても痛く……痛い。夢ではなさそうだ。
しかしどういうことだろう? PCゲームしながら寝落ちするのが土曜日の日課なのだが、なんと今俺がいるのは自室のPCデスクではなく暗いどっかの森の中。神社とかの神聖な感じとは違うものの、妖怪とかよりも妖精っぽいのが出てきそうな神秘的な森? かもしれない。
……と、とにかく落ち着こう、これはあれだろう? 寝て起きたら別世界にいらっしゃ~いな展開だろ? 二次創作SSや異世界召還モノでなれっこ……すみません、実際に起きるとガチでテンパります。
「慌てるなまてコレは罠だじゃなくて……とりあえず何かあるかな」
なんだかまだ混乱しているけども、とにかく所持品チェックだ。もし異世界召還系なら日本に帰れる可能性は低いし、今後人に出会うまでに死んでしまうかもしれない。今のうちに何か対策を考えないと……
しかしアレだ、異世界召還系の主人公って都合よくヒロインが居たり、親切な人が居たりするものだけれども、実際のところは治安の悪い世界なら即ヒャッハーされるか怪しい奴ということで牢ぶち込みコース、まぁ、今のように周りに誰も居なさそうな森なら飢えより先に野生動物にやられておしまいだよなぁ……
気を取り直しボディチェックの要領で確認してみると、風呂入った後だから服がパジャマなのはいいとして、他に役に立ちそうなのはポケットに突っ込んでおいた携帯と、PCを立ち上げるまで暇つぶしで聞いていた再生中の携帯プレイヤー(スピーカー機能付き)。うん、暇つぶしにしかならないねこれ。携帯は当たり前のように圏外でした。
とりあえず森の中でもスリッパ履いていたおかげで足の裏が痛くならないのは救いだが、さすがにこの登山ブーツが活躍しそうな森でスリッパは非常にしんどいものがある。
とりあえずなんでこうなったかを考えるために、ここにいたるまでの流れを少し思い出してみよう。何かヒントがあるかもしれない。スキマとか旅の扉とかなんかあったっけ?
「よし、整理しよう。えっと、俺たしか寝る前に風呂入って、PCの電源入れて起動までの10分の間ココア飲みながらいつもみたいに音楽聴いて……」
ん、まて、いまものすごーく大事なことを思い出した気がするぞ。風呂……PC……っ!?
違う、そんなことより、もっと大切なことがあるじゃないか!
「俺の、俺のココアがっ!!」
もう自分でもわけがわからないけど今、自分に起きている確かなことはただひとつっ! 風呂上りの……ホットココア(牛乳マシマシ)がっ、お預けだとっ!? 許せん、転生とかその辺をつかさどる神様に御恨みもうしあげる。
そんなアホな事で現実逃避している時、突然遠くから声が聞こえた。
───助けてっ!誰かっ!!
助けてだと!? 内容的に誰かが何かに襲われているようだ。声的に若い女性と思われる。つまりこれは第一森人発見かつ初回イベントというわけか?
わけがわからないけども情報収集のために人に接触するのって大事だろう、うん。
相手が危ない装備とか持ってたりしたら全力で逃げよう、うん……
というか初回イベントって何だよ俺……うん……
───キィンキィン
モヤモヤ考えつつ、こそこそと先ほど声が聞こえたほうに近寄ってみると、なにやら金属と金属がぶつかる音が聞こえる。
この音、斬り合い? なんだ時代劇でも撮影中……わけないか。とりあえず近寄ってみればココが異世界か過去か未来かはてまたただ場所を飛んだだけかどうか判断付くだろう。
それとまぁ、もし斬り合いとかになってたら───
『若い女の子(ぽい声)を救わないで何が漢かっ!』
───こうして俺は死亡フラグへ向かって、声の聞こえた方へ突貫するのであった。
<???視点>
「きゃっ!? こ、こないでっ!!」
私としたことが失敗しました、ここがノルドールの聖なる森だからニンゲンはいるはずがないと思ってたのですが……いまさら考えてみればここは森の外に近い場所、ニンゲンがここまで彷徨って来る可能性を考えなかった私のミスです。
本当はこんな森の外近くまで来るつもりはなかったのですが……みんなからよく言われる方向音痴がこれほどとは……やはり一人歩きは控えたほうがいいのでしょうか。
「***?****?」
「*******!?」
「*******?」
自分の方向音痴に後悔しつつ、目の前の状況を確認する。錆びた剣を構えたニンゲンが3人、よくわからないことを話し合ってる。そういえば私まだ大ババ様にニンゲンの言葉教えてもらってないんだった……じゃなくてっ!
今はそんなこと考えてる場合じゃない。
最初は全力で走って逃げたのだけれど、始めてみるニンゲンに足がすくんでしまっていたのかうまく逃げれず結果は失敗、その後も何度か剣を斬り合わせながら村まで逃げ切ろうとしたのですが、振り返ればいつの間にか後ろは崖で目の前にはニンゲン。
もうどうやら逃げれないみたい、です……
「こ、これ以上近寄ったら斬りますっ! だから近寄らないでっ!!」
念のためにと兄上から借りた剣を改めてニンゲン達に向ける。今の私ができる精一杯の威嚇。私の剣術なんかじゃとてもニンゲンを三人も相手にはできないし、何より今まで戦ったこともないです。さっき斬り合えただけでも十分今の私の技量では上出来と思えるほどですし。
どうしよう、ニンゲン達が追ってくる……私勝てるかな、でも勝たないとニンゲン達にどんな酷いことをされるかくらいは大ババ様に教わりました……ニンゲンに好き勝手にされるくらいなら、いっそ……
「****?」
「****!」
「***!」
ニンゲン達がまた何か話し合ったかと思ったら、剣をこちらに構えてじりじりと近寄ってくる。だめ……怖い、震えが止まらない。お父様、お母様、お兄様……助けてっ!
「助けてっ!誰かっ!!」
助けを叫び震えながらあたりを見回しても分かることはただひとつ、周りに助けは無くて目の前には剣を持ったニンゲンが3人……
「****!」
「****!」
「****!!」
私の叫び声に反応したのか、ニンゲン達がそれぞれの得物を振りかぶった。私は死を、そしてその後の地獄を覚悟して目を閉じました。
でもその得物が私に振り下ろされることは、突然森の中に響き渡る声で中止されたのです。
「まてぃっ!!」
「「「***!?」」」
「えっ!?」
突然私とニンゲン達以外いないはずのこの場所で、私たちのノルドールの言葉が聞こえた。ニンゲン達も驚いている。
でもこの声……違う、私たちじゃない。こんな森の外れに偶然でもノルドールの民が居るはずがない、じゃあ今の声はいったい……
「怯え震える女性に対し凶器を振るい脅すものどもよ、守るべきか弱い者を襲い人としての道を踏み外す……人それを『外道』と言う。」
その声はとても自信に満ちた声でそう言った。『守るべきもの』? 『外道』? 私はその声がこんな時に何を言ってるのかとわけがわからなくなっていました。
今思えばあの声でニンゲン達の注意がそれている間にさっさと逃げ出してしまえばよかったのです。でも、この時の私はなぜかこの声の主が知りたくて、その声がした方へと私の目線は釘付けになってしまいました。
「***!!」
「****!?」
「**?」
「えっと……何を言ってるかは知らんが、お前らに名乗る名はないっ!! くらえっ!!」
そういって突然姿を現した声の主は全身灰色の少しだぶだぶな見慣れない服を着たニンゲンでした。でも目の前のニンゲン達となにか違うような……だってあまりにも身に付けているものや雰囲気が違います。
そんなことを考えている間に声の主は聞いたことのない音を出し続ける四角い箱のようなものをニンゲン達に投げつけました。ニンゲン達は突然の音に驚いてあわてて四角い箱から距離をとり、必然的に私との距離も離れました。
ここでやっと私も気づきます、今が逃げる機会はいまですっ! そう思ったとき私の手は引っ張られていました。
「さあ!今のうちに逃げるぞ!!」
声の主は私の腕をつかむと駆け出します。急に引っ張られたから私は転びそうになったけれどなんとか姿勢を保って一緒に走り出すことができました。でもこの私を引っ張るこのニンゲンは私を見て怖くないのでしょうか。ニンゲンの間では私たちノルドールの民は珍しい物を持っている凶暴な民族といわれているらしいのですが……
いやその前に私はなんでニンゲンがこんなに近くで、そして私の腕に触れているのに怖くないんだろう。
どうやら私はいろんなことがありすぎて少し感覚が麻痺しているようです。とりあえず悪いアレとはちょっと違うみたいだから話くらいは聞いてみたいですね。言葉は私たちと同じようですし。
<和樹視点>
これは幸運値を人生のほとんど分使ったかもしれない。でもほっとけないだろう。『漢』なら。
・女の子の周りを野郎3人が囲んでて、凶器で脅してた。
・女の子も剣を持っていたけど震えてた。しかも背後崖で逃げ場なし。
・左手には音楽がかかりっぱなしの携帯プレイヤー
だめもとでロム兄さんごっこしてみたけど野郎達がなにいってるかわっぱりわからなかった。何語だろうあれ? とにかくこの女の子に話を聞いてみよう。
「はっ、はっ、ねぇ、君は───」
「あ、あのっ!助けてくださってありがとうございます!」
全力疾走中にもかかわらず息ひとつ切らさずお礼とは恐れ入る。しかも俺としてはかなり全力疾走に近い状態にもかかわらず女の子はだいぶ余裕のようだ。こっちは呼吸するのにやっとでまともに話しかけることすらできないよ!
どういたしましてを言う余裕も無くしばらく走り続け、そろそろ首が反るぐらい息が切れてきた。どれだけ走ったか分からないがさすがにもう限界なので、走るスピードを徐々に遅くして背後を振り返ってみる。幸いにして追ってくる気配は無いようだ。携帯プレイヤーの音も誰かの足音も聞こえないくらい離れたから大丈夫なはず。俺と女の子はいったん走るのをやめてとりあえず立ち止って話を振ってみた。
「とり……あえず、もう、追ってこない、みたいだから、走りながら話すの、はやめよ、はふぅ」
「え?あ、はい。あの……大丈夫ですか?」
息絶え絶えな俺に対してかなり余裕そうな女の子は、頭巾をかぶっているせいでいまいち顔が見えない。しかしずいぶんときれいな声をしている子だなぁ……
息を落ち着けながらあまり失礼にならないようにチラッと女の子の様子を確認してみる。まずこちらの第一森人、見た感じ身長は結構高めで、肌の色はびっくりするほど白い。
頭には頭巾をしていて、隠せていない所から見える髪の毛は綺麗で薄い銀髪。染めているような色ではないから自毛なのかな?
服装はゲームでよく見る村娘が着ている服装にかなり特徴的な模様が刺繍されていて、鎧の類は着ていない。
それにしても……片やあの場から走って逃げ出してきたのに息切れひとつしない女の子。片や息絶え絶えにしゃべる俺。
俺体力無っ! いや逆転の発想だ、命をかけた火事場の馬鹿力を使ったから体が悲鳴を上げているだけだと。最近テストが近いからってまったく運動してないなんてことは無いよ、ホントダヨ。
とにかくこの第一森人にここの詳しい場所と現状を聞いてしまおう。それが一番手っ取り早いはず。
「とりあえず自己紹介しましょうか。自分の名前は加藤和樹、専門学校生です。貴方は?」
「あ、はい。私の名前はセニア、ノルドールの民です……えっと、センモンガッコウセイとは?」
ん? 女の子はノルドールの民って言ったよね……え? ノルドール? ちょっとまて ノルドールって……
「えっともしかして君は……」
「ええ、私は……」
そういって女の子は顔の耳から後ろを隠していた頭巾を俺の前ではずしてくれた。そしてそこにあったのは───
「え、エルフ耳……だとっ!?」
俺のびっくりした声に反応したのかぴくぴくと上下にゆれるエルフ耳だった。