前回のあらすじ
・かーなーしーみのー
・むーこおーえとー
・たどりーつきかけちまったよおいっ!?
<和樹視点>
とりあえず混乱を収拾するために食べていた料理の後片付けも一通り終わったので、日本食の試作品としてセニアさんが作ったメンチカツのうち、未だに積み上がっている失敗メンチカツを食い続ける兄上様をスルーして護衛兵の皆さんががいる馬止め場の仮設キャンプへとやってきた。
マッサージのおかげかは分からないが、槍が刺さった腕を吊っていれば歩き回れるぐらいにはなったので、少しは動いたほうが良いだろうとレスリーさんをお目付け役にしてもらいちょいとお出かけ中だ。
重傷者をいつもは他の村のノルドールたちを泊めるための館に搬送し、軽症者は俺が現代医学の初歩の初歩の初歩を教えた村人の家で治療を受けたらこのキャンプに戻ってきている。殺菌消毒や、湿潤療法だけでもかなり効果があることをこっちに来てから体感しました。今ならわかる、すばらしき赤チンキ。シップとかもう神です。ワインとタオルのあわせ技で死ぬ人はコレだけ減るんだっていうね。
ちなみに助けられた護衛兵は重傷者を含めても10人、隊商の一般人はわずか6人だ。40人以上の隊商だったのに、重傷者をのぞいたこのキャンプに居る人たちは本当に少ない、レスリーさんを含めた護衛兵7人(軽症2名)、隊商の一般人はノヴォ村長の家で今ごろげっぷしてるレッドさんを抜いて4人。
俺がもっとしっかりしていればとかそんな甘ったれたことは考えないようにしているつもりでも「あの時ああしていれば」「あの時油断しなければ」と後悔の念は尽きない。
最初に振るったポールハンマーで相手の鎧ごと打ちのめした感覚が今でも消えない、思い出すだけで手が震えてきてしまう。
ペンドール大陸で生き延びるにはこんなことに慣れなきゃいけないのか……やだな。
「慣れなくてもよいのではありませんか?」
「えっ?」
とぼとぼ歩いていた俺に対して、後ろから震える手を握って声をかけてきたのはニコニコ笑顔のレスリーさんだった。その一言で目の前にいたキャンプの人々も一斉にこっちを見てくる。
「あなたのことはセニアさんから聞きました……戦いのない国から来たのですね。私も昔は海を渡った別の大陸で家族と楽しく、平和に過ごしていました。今では護衛兵などといった荒事をしていますが、すぐには慣れるものではないですよ。
それでも、世界はこんなはずじゃなかったことばっかりでも、前を向いて生きていく意志さえあればこんな物騒なペンドール大陸でも結構生きていけるものなのですよ?」
「レスリーさん……」
「おうよ、おみゃーがいなけんばおらさ今頃こん酒のんでなんかいねべや」
「我々の命だけでは不足かな、これでも本当に君達には感謝しているんだよ?」
「……ありがとう、助けに来てくれた時の言葉、忘れない」
「かっこよかった、かも?」
あはは、ロム兄さんごっこがいまだに尾を引いてる。でも、みんないい人たちだなぁ。あれ、なんで、涙が……えっと
「す、すみません。なんだか……涙が……」
「泣きたい時には素直に泣くといいです。大丈夫、村の人は誰も見ていませんよ」
「うっ…くぅ……すみません」
結局俺は泣き止むまでレスリーさんに後ろからずっと抱きしめてもらっていた。ホームシックとか初めて人の死を見たこととかでちょっと俺、疲れてたのかな。
しばらくした後、泣きやんだ俺は今度はレスリーさんに抱きしめられていたことで顔を真っ赤にしてフリーズした。
そうだよ、俺こんなすばらしいイベントのために来たんじゃなくてレスリーさんに鎧の魔改造を手伝ってもらうんだった。
「えーっとあっと、あー、まぁ、その、実はレスリーさん、お願いがありましてですね」
「あらあら、ふふっ、ずいぶんとうぶなんですね」
「いや、その、げふんげふん。それはさておきまして、実は今回の戦いで、このノルドールコートがちょっと防御力に問題があると認識した次第でして……」
あらあらうふふとこっちを見つめるレスリーさん、たまりません。
ではなく、あの後兄上様にOHANASHIをしてみたところ「ボロボロのノルドールコート」は本来の精霊の加護が薄まっているだけでそれでも鎖帷子程度の防御力があるらしいのですが、どうやらイヤミでくれたあのボロボロのノルドールコートは極め付きなまでにボロだったらしい(セニアさんにはビンテージ物って言われたけれども)
そして刺さっていた槍を引っこ抜いて治療してくださったレッドさんいわく「あの刺さってた槍、多分帝国軍の近衛兵がつかってるめちゃ重いやつ」だそうで……なんでレッド兄弟団とかがそんな高い物もってるのさ……
そういえばゲームでの話だけれども、城攻めの時とかによくなる現象で、投槍が首とか腕とか平気で貫通するのだ。それこそガッチガチのプレートメイル着込んでてもブスリ。
いや鎧だから貫通するのは仕方がないにしても首貫通しても平気で戦う騎兵とか、弓を射るノルドールとか恐ろしい。俺も腕でなくても生きてられたのかな?
ちなみにゲーム的な数値で今回の攻撃力と防御力の関係を言うのなら
・ノルドールのコート 防御力52ぐらい
・プレートメイル 防御力55ぐらい
・精巧な帝国近衛兵の投槍 攻撃力34ぐらい
ここから予測するに
・イヤミのボロボロノルドールコート 防御力30前後
と推測できる。比較対照としていろいろな防具を上げてみると
・重厚な部族民のコート 防御力30
・局部的チェーンメイル 防御力30~38
重厚とはいえタダの分厚いコートレベルの防御力とはこれいかに。となると本来のノルドールコートにある精霊の加護はきっと半重力フィールドでも形成してるんですねわかりません。
ちなみにあの兄上様に簡単にこうなった理由を吐かせる方法は下記の通りでした。
「兄上様、ノルドールの誇るこのコートが下賎な人間のボロい槍で貫通したのですが?」
「やはりアレが原因なのか……」
「そうですね、やはりアレかと。」
「うむ、あまりにもボロボロだったからあのコートにしたのだが……成功だったが失敗だったな」
「そうですかそうですか、兄上様ちょっとOHANASHIしましょう」
というやり取りが。とはいえいくらボロいとはいえ初めて兄上様から直接もらった大事な物だ、できるだけあのコートを使って生きたい(誤字にあらず)。
ということで先ほどまで装備のチェックをしていたこともあるし、『人間向き』の装備に詳しいであろうレスリーさんに聞いてみた次第。
「新しいのに変えてみてはどうでしょうか?」
「初めて兄上様にいただいたコートなので、大事にしたいのですよ」
うーん確かに新しい防具に交換するのが一番手っ取り早いんだけれども、大事なことだから2回言うけどやっぱり初めてもらった品だし……大事にしたいし。
あれ、今の感動するところだった? 隊商の人達からのニヤニヤとした目線はなんですかね?
「え、自分なにか変なこと言いました?」
「んにゃ、深くはきかねぇだ」
「兄様思いなやつだなぁ」
「兄と弟の種族を超えた……愛……ぶふぅっ!!」
まて、最後のヤツちょっとまて。
「えーまぁ、一応改良するにはある程度の方針が必要なのですけれども」
「重いと自分潰れます」
「簡潔にありがとうございます」
ただでさえ馬上で尻が痛くなるのにこれ以上重い装備になったら冗談抜きでボラギノールが必須アイテムになってしまう、持ってないしこの世界にないけどね。
「そうなりますと……コートを基本として被弾しやすい各部位に優先的に皮鎧を追加していく感じでどうでしょうか。鎖帷子では森での奇襲には不向きでしょうし」
「いいですね、皮鎧てどのぐらい重いんですか?」
「そうですね……全身を覆うくらいですとそこそこといった程度ですけれど、今回は腕周りと肩、それに胸に腹と首周りを重点的に追加してみましょうか」
「ノルドールの技術と人間の発想のあわせ技ですね」
確かに鎖帷子やプレート系より革系のほうが軽くて動きやすそう。実際こっちの世界に来てはじめて触って実感したんだけど、革鎧ってけっこう硬いんだよね。色塗ると革ってだいぶわからなくなるし。
頭の中ではクシャナ殿下の鎧の鉄の部分が皮鎧になったノルドールコートが浮かんできた。かっこいいかも!
「では、改良は明日にして……今日は少し付き合ってもらいましょうか」
「えっ?」
「なんでぇわかんねぇのかい?速飲みだよ速飲み!俺らの酒が飲めねぇのか!?」
みなさんすでに宴会準備スタンバってるよ、これは……は、速飲み競争やろうっていうのかいオヤジ。
「いいですよ! さぁ早飲みいざっ!!」
「のーんでのんでのんでのーんでのんでのんでー!」
「男と女の……夜の宴会……ぶふぅっ!!」
はい、最後の人。お兄さん怒らないから明日射撃訓練場の標的並べしてくださいね。
ま、いーや飲んでまえ飲んでまえー!! どーせこのエール交換したやつだからね!
ごくごく……ごくごく……ぷはっーーー!
異世界飲みニケーションの時間だぁあああああ!!
いちじかんごぉ~~~~~~~~
「じゅんちょーによってまふね~」
「そーゆーレスリーたんもえろいね~」
「ごくごく……ぷわはぁ。『えろい』ってなんれふかぁ?」
「からだでおしえたろかぁ?」
「ふふふ、いいですよぉ、ほぉら~」
「みせつけおってからに~もみしだくぞぉ~」
「きゃあ~せっきょくてけぃ~」
ちなみにべろんべろんに隊商の人たち全員と一緒に次の日の朝壮絶な二日酔いになるのはお約束でした。
ただ、お互い気兼ねなく会話できるようになったのは怪我の功名なのかな?
あとがき
夜になっても家に帰ってこない→探す→女とイチャイチャ→かーなーしーみのー
感想掲示板でご指摘があったのですが、このゲームの戦闘画面において敵の投槍が直撃するとどんな重装甲の鎧でも槍がグラフィック上貫通した状態で表示されることがよくあります(中には顔面貫通とか、首貫通とかも)。そのためノルドールのコートでも貫通されたという構成にしておりました。
今回の話の中でゲーム内でのボロボロのアイテムについて多少触れておきました。今後の番外編でひび割れた・痛んだ・普通・精巧・名匠の手掛けたについて表現していけたらなと思います。ご指摘ありがとうございました!