前回のあらすじ
・はらぺこ王の甲冑(っぽい)
・黒髪の戦乙女×4
・誰か俺にもわっふるな展開をぎぶみー
<和樹視点>
俺の初陣から2週間後。やっと傷もある程度治りもとの生活が戻ってきた。その間隊商の皆さんがこの村の設備(上水道とかポンプとか)に慣れてしまって元の生活に戻るのが大変だと言ったり、レスリーさんたち護衛兵のみなさんが村を気に入ってくれて、隊商を帝国に送り届けた後そのまま森の警備隊として村に駐屯することになったりといろいろありました。ノヴォ村長の村のみんなも俺という人間族第一号が居たこともあり、護衛兵の皆さん達ともすっかり打ち解けているようだ。
長い長い対立の歴史の果てに、この村限定とはいえ人間とノルドールの共存が成立したのだ。
そして今俺は───
「カズキ、敵の兵力は?」
「兄上様、敵戦力は300ほどで騎兵50、軍団兵200、クロスボウ兵50です」
「うむ、レスリー敵はどう動く?」
「はい、おそらくは騎兵でこちらの左翼の進出を牽制し、その間に軍団兵でこちらの中央を突破するものかと」
「わかった、では俺が敵右翼を弓騎兵による射撃で牽制し敵の騎兵による側面攻撃を抑える。中央はカズキ、右翼からレスリーが敵に側面攻撃をかけろっ!」
「「了解っ!」」
絶賛帝国と戦争中でした。
ど う し て こ う な っ た ! ?
事の始まりは3日前、ノルドールの勢力下であるこの森に帝国軍の大軍が押し寄せてきたのだ。
帝国はかねてより精強な軍団兵による軍によって領地を拡大し続けてきた。現在もサーレオン王国とDシャア朝との長い戦争が続いている。そんな忙しい時期にこの森に大軍を派遣した理由は「迂回攻撃」をする必要がどうしてもあったからだ。
その必要とされた理由は地理的問題だ。前々回のサーレオンとの講和において制定された国境線は帝国とサーレオンの軍が通行可能な地点をほぼ一箇所に集約した形となっている。地図で表すなら下記な感じだ。
ラリア(都市)
要塞 砦 森森森
山山山山 山山山山森森森 ↑サーレオン王国
拠点 ↓帝国
←Dシャア朝
歴史的な出来事でたとえるのならば、国境線にマジノ要塞線を築かれたドイツ軍が守りの薄いアルデンヌの森を突破するって事。第二次大戦と違うところは守りの薄い連合軍に兵力的に不利だったベルギー対ドイツではなく、ほとんどの戦力を集中し、技術的に優勢に立っているノルドール対帝国ということだ。
実際にはこの「迂回攻撃」計画は、森を突破する際にノルドールの攻撃によって被る損害を鑑みて、前回の戦争の際前皇帝はこれを実行するのはやめておいた。だが現在の皇帝マリウスは膠着化した戦局を打開すべくあえてこの作戦を取ったようだ。
さらに今回カラドヴァルドさんたちの隊商がノルドールの森を突破して帝国に来た事から、ノルドールの聖なる森外縁部ならノルドールも手を出してこないと考えたようだ。
とはいえあくまでノルドールに攻撃されることを前提に帝国はこの作戦に多少手を加えてはいるらしく、偵察に出たカルディナさんの報告によると総戦力1800の帝国軍は500をノルドールに対する牽制として側面防御と兵站維持にあたらせ、残りの1300でサーレオンの主要都市であるラリアとバーローシールド城の制圧を狙っているようだ。
この世界の軍の規模というのは現実世界よりかなり小規模だ。
まず村と呼ばれるものは人口100程度で、都市と呼ばれるものが人口1000~5000程度だ。近代戦における動員可能兵力は人口の10%と言われているが、この中世っぽいペンドール大陸では根こそぎ動員をかければ一時的という制限はあるもののだいたい35%まで動員は可能だ。
現在のノヴォ村長の村で動員可能な戦力は50名。これはノルドールの村は人間にくらべ比較的大規模であるのと同時に、女性も弓兵として参戦可能なことに由来する。さらにノルドールの各村では協定があり、どの村が攻め込まれても各村から応援が駆けつけることになっている。現在到着しているノルドールの援軍は100名。そしてレスリーさんたちがサーレオンでかき集めてくれた義勇兵50名が現在兄上様の率いる『イスルランディア軍』の総兵力だ。帝国が攻め込んできた地域に一番近いノヴォ村長の村が指揮権を有するそうなので、その指揮官に兄上様が選ばれている。
ノヴォ村長の村出身者で編成した部隊は俺やレスリーやレッドさんが居るおかげで人間の部隊との軋轢はあまりないのだが、他村からの援軍はあからさまにすきあらば誤射してやるといわんばかりの嫌悪感を見せている。そんなこともあり、ノルドールの援軍(主に貴族弓騎兵)を兄上様が率い、ノヴォ村長の村民と義勇兵をレスリーさんと俺で2つの部隊に編成している。
イスルランディア軍 総兵力200
イスルランディア本隊 100
・ノルドール弓騎兵70
・ノルドール弓兵30
レスリー隊 50
・サーレオン軽装歩兵25
・サーレオンハルバート兵10
・サーレオン騎兵10
・サーレオンロングボウ5
カズキ隊
・ノルドール弓兵30
・ノルドール重歩兵20
装備について、ノルドールの弓の引きやすさを生かした銃剣付きの戦列クロスボウ歩兵とかできればいいんだけどなぁ……戦争のドクトリンと兵装が500年ぐらい進むけど。
ちなみに部隊のノルドールの皆様は前述の通りノヴォ村長の村出身者で固めた士気の高い重装備なノルドール歩兵部隊だ。
ノヴォ村長が若いころ、森で一番外縁部にあるこの村は大きな戦渦に巻き込まれたらしく兵士が沢山亡くなったらしい。
それから生存性重視の、斥力バリアがごとくなノルドール大盾を装備した重歩兵を中心にこの村では訓練してきたらしい。
戦闘方法は帝国軍軍団兵式の大盾を並べて壁を作り、そこから槍を突き出す。その後ろから弓兵で矢を射かけ、重歩兵で突進を受け止めたら両側面からノルドール騎兵による突撃……まんま鶴翼の陣、シャカの雄牛戦法である。
現在俺の率いる部隊では重歩兵をセイレーネさんとゲデヒトニス君に、弓兵をカザネさん。歩兵隊の後ろでカルディナさんと俺が馬上より指揮を出している。
「隊長、準備ができました。あとは気合と努力で戦列を維持すれば勝利はこちらのものですっ!」
「……隊長、弓兵の指示はまかせて」
「隊長は僕が守りますっ!!」
「隊長は絶対に……死なせない?」
「よし……命預けてもらった以上、絶対に勝たないと!」
ちなみに部隊編成の時に名前が出てた護衛兵黒髪の4戦乙女は本人達の希望によりうちの部隊です。実際部隊の指揮経験から考えると、こうした優秀な下士官に支えてもらうのはとても助かる。
……そうはいってもひざが笑うし腕の震えも歯がガチガチと鳴る音も止まらない、それでも俺は戦わなくちゃいけない。よくしてもらった村とかわいい部下達を守るためなら……俺だって戦えるっ!
───ドンドンドンドン
敵の行進太鼓の音が聞こえてくる……兄上様の弓騎兵隊が敵の右翼霍乱のために出撃した。こちらの左翼のノルドール弓兵が、兄上様たちを追撃してきた敵を射抜くために弓を番える、あとは敵が射程に入るまで待つだけ。
「敵、有効射程に入りますっ!」
「射撃開始っ!蜂の巣にしてやれ!」
「「うてぇーーーー!!!」」
そして戦いが始まった
あとがき
M&Bですから戦争は回避不可能なイベントですよね。