前回のあらすじ
・ノルドールに包囲の危機迫る
・新兵と寄せ集めVS疲れ果て物資も少ない熟練兵
・勝つも負けるもノルドールにおまかせ
<和樹視点>
「貴様何者だっ!」
「サーレオン軍の野営地に何用か!」
「控えろっ!この方は『ノルドール連合イスルランディア軍』の副司令官であるぞ!!」
「……理解していただけたかな?」
何者だと言われたら「地獄から来た男」と返したくなる衝動を抑えて、ただいまセニアさんと俺はサーレオン軍の野営地に二人で乗り込んでます。フードかぶって顔を見せない俺達二人はとても怪しかったに違いない。現代なら間違いなく「不審者が出没します」が町内会報に載る。
ところでセニアさん? ノルドール連合ってなんですか? というか副司令官って誰の事ですか? えっ?
「ノルドール連合……?」
「聞いたこのがない組織名だが……貴様らあのノルドールどもの使いか、死にに来たのか?」
番兵さんは今にも斬りかかってきそうな態度だ。これがこの世界でのノルドールと人間の壁か……村長の村にすこし慣れすぎたかなぁ。あの、番兵さん剣を抜かないでくださいよ! 怖いですって!! あなたじゃなくて隣のセニアさんがですけどね!!
と、とにかくポーカーフェイスで乗り切るしかない!
「使者をいきなり切るか……これだから粗野なニンゲンは」
「まったくです副指令、やはりこんなやつらなどほおっておきましょう。助力など最初から考える必要性すらなかったのです」
「まったくだな、では失礼するよ……あさってごろの決戦では君たちの屍を見に来るとしよう」
耳が見えないようにフードの角度を調整しつつ、出荷されるブタを見る目で話しかけましょう。これでノルドールの人間に対する態度の出来上がりです。ほんと、ノヴォ村長の村の人意外からの目線ってこんなんだからね。会議中死にたくなりましたよえぇ。
ため息をついた後きびすを返そうとしたら番兵の中でも装備の整っている人がすこし反応した。正直なところサーレオン軍の中でも敗北する気配というか、ダメなんじゃないかという空気はあるようだ。 この兵隊さん、「副司令官が……いやしかし……」とかぶつぶつ言って困ってますが
司令官がアルウェルニさんか兄上様で、副司令官は兄上様かレスリーさんです本当にありがとうございました。
「ま、待っていただきたい!」
「隊長!?」
「はて、殺されに来たのではないので帰ろうとしたのですが?」
「帰れと言ったり待てと言ったり……ニンゲンはやはり理解しがたい生き物です」
セニアさん、身にまとったそのオーラは俺もドン引きでございます。今のセニアさんはまさしく女王様というかハマーン様というか……踏んでくださいじゃなくて番兵も俺もビビってしまっているのだけども。
「先ほどは失礼したノルドールの使者よ、馬はこの先の馬止めでよろしいのでしたらそちらに止めさせていただきます。ただいま司令部までお連れいたしますので少々お待ちください」
「かまわない、よきに計らってくれ」
「え、あ……う、馬はこちらへ」
番兵もあの恐怖には撃沈か、いやびびってるのは新米っぽいほうでベテランぽい偉そうな人は何か思うところがあるんだろうな。とにかく馬を下りてついてってみよう。
「副指令、あまり私からお離れにならないように」
「うむ、わかった」
……正直この口調はとても疲れる、疲労度当社比130%ぐらい。セニアさんいわく「カズキのいつもの話し方では敵になめられるだけなので、『ロム兄さん』の状態を維持していてください」だそうで……正直ロム兄さんを維持し続けるのは無理だったので今はえらそうな社長風にしてます。威厳がないだろう、えっへん……
「大変お待たせをしました、こちらへどうぞ」
「副指令」
「う、うむ」
こ、これは!? セニアさんが腕を組んで来た!? なんということでしょう、セニアさんほどの美人に腕を組んでもらえるなんて……もう死んでもいいかもしれない。
むしろこんなご褒美があるということは、俺の死期が近いのかもしれないのか……
ま、そんなことは置いておいて俺達は偉そうなほうの番兵と一緒に司令部にお邪魔するのでした。
<セニア視点>
「初めましてノルドールの使者よ、私はこの軍を率いるヘレワード男爵……以前バーローシールド城の城主だった者です」
司令室に居たのはヘレワード男爵と名乗った男と数人の副官らしき人のみでした。サーレオンの未来を決めるほどの決戦の指揮を執るのがもしかして「男爵」のこの男なのだろうか……サーレオンにとっても重要な一戦となるこの戦いの指揮官に爵位が低い男爵のものが就任するのは不自然すぎます。
本来、決戦などであればもっと大貴族が来たり、サーレオン有数の司令官が来るものではないのでしょうか?
「はじめまして男爵、私はノルドール連合イスルランディア軍司令官イスルランディアの妹セニアです」
「はじめましてヘレワード男爵、私はノルドール連合イスルランディア軍副司令官加藤和樹。サーレオンの未来に関する話をしに来たので、できれば人払いをお願いしたい」
「ふむ、わかった。お前達一端下がってくれ」
男爵の支持に対し、なにやら副官らしき人たちの反応が薄い。内部統制がうまくいっていないのでしょうか?
やはりこの様子では単独での勝利はおぼつかなかったかもしれませんね。
サーレオン側の司令部要員達が退席した後、早速カズキが交渉を開始しました。
「して話とは?」
「その前に一つよろしいでしょうか、なぜ男爵はノルドールの私達を前にして冷静で居られるのでしょうか?」
「ははは、そのことでしたら親近感がわいたといったところですよ」
「親近感?」
カズキへの親近感とはいったいどういうことなのでしょうか、まさかこの男爵がノルドールの血を引く……はずもないですね。そうするといったいどういうことなのでしょう?
「お互い肩がこる話し方はやめましょうカズキさん。ぶっちゃけ無理にガチガチな話し方しているのばればれです」
「おっと、分かってしまいますか? 自分としては威厳あふれるノルドールであったつもりでしたが」
「ええ、どうにも背伸びしているというか、なんだか違和感がすごかったですよ」
「それは恥ずかしい限りです。もう少し練習を積まなくては」
えっと、いつのまにかなぜか男爵とカズキは意気投合したように笑いあっている……正直なところさっきまでのカズキのほうがちょっぴりかっこよかったのですが……また思考がそれました。
「では、簡単にこっちの要件をお話しますね。正直なところ、サーレオン軍単体では、近日中の帝国との決戦が発生した場合……勝算はありますか?」
「さて、どうやってサーレオン軍の現状を掴んだかはわからないけれども、やっぱりわかります? ぶっちゃけ新兵が調練でも足を引っ張って現在取れる行動が限られて仕方ない限りで。
挙げ句の果てに予備隊の部隊を中心に士気ががたがたなんですよ、もう今は藁にもすがりたいんです。もうノルドールでもミストマウンテンでもなんでもこーいって感じです」
「それほどとは……失礼を承知で言わせて貰えば、サーレオン軍は張子の虎であったという訳ですか。それと、ずいぶんと貴族の割には軽いのりですね」
「ははは、もうどーでもよくなっちゃったんですよ、うちの城を守る優秀なサーレオン兵が負けたのに、人間とノルドールの混成軍が帝国に勝利したなんて聞いた時はもう軽く欝に入りましたよ。いやー昔からきつく貴族としてのなんのと教え込まれてきたので今そのしがらみの象徴だった城がなくなったからか、精神が今自由なんです」
おかしいです、私の予定ではもっと難航するはずでした。まだ5分もたっていないのにすでにノルドールとの共同戦線についてサーレオン側から提案したいと言ったも同然の発言です。
私の常識がおかしいのでしょうか、目の前の会談(?)にはまったく本来会談にあるべき駆け引きやそういったものがありません……偶然です、この光景は偶然の産物なのです。そうなのです。
「では共同戦線について、同意とみなしてよろしいですかね?「その通りです」では、連携について詳しいことはそちらのセニアさんも交えて詰める必要があります」
「なるほど、了解しました」
「え、ええぇ!?」
な、いきなり私に話をふるのですか!?こういうのをカズキの世界であまり多用すべきではない『むちゃぶり』というものではないのですか!?
私はあくまで人質というか、共同戦線への保険程度の認識だったのですが……
「さて、それではセニアさん、カズキさん、具体的な話を詰めましょう。まずは軍の配置についてですが……」
いきなり真顔に戻って話しかけてくる男爵。えぇと、急に話題が進んでちょっと混乱中です。
……なんだか考えるのが面倒になってきました、もうどうにでもなってください。
結局具体的な話し合いは私がすべて行いました……その間カズキはさりげなく司令部にあったサーレオンの機密資料のようなものを気づかれないように盗み見ていたようです。
そうですか、そのために私に話をふったのですね……さすがカズキです。自分ではなく、他の者との会話を持たせ、相手注意を逸らし、その油断を最大限生かすすべを知っているというのですね。
ちなみにこの後話の詳細と連携作戦案をまとめたら夜になっていたので、私達は使者用の臨時休憩所で一泊するのでした。
あとがき
ゲーム中の男爵はこんな人じゃないですよ(汗)