<前回までのあらずじ>
・気がついたら森にいました
・現実逃避してたら女の子のSOSが聞こえました
・ヒロインフラグだと思ったら死亡フラグでした
・携帯プレイヤーの尊い犠牲によりなんとか死亡フラグを折ってお互い自己紹介
・女の子が頭巾をとったらエルフ耳
↑いまここ
<和樹視点>
「エルフ耳? いや今はそれよりも聞きたいことがあります。やはりあなたはニンゲンなのですね、それにしては私たちの言葉を使えるようですが……」
なにやら自称ノルドールの女の子がマシンガン質問を浴びせてくるが、ちょっと頭が受け取り拒否をしている。
おい、ちょっとまて。ノルドールって単語にエルフ耳。もしかするともしかしなくてもここはM&BのMADの一つであるPoPの世界? なんというマイナーゲー(しかもそのMOD)だ。
異世界召還系だったら、ゲームならこうもっとFでファンタジーな大作のやつとか、アニメなら魔砲少女とかピンク髪でくぎゅぅううう! とかそういうところじゃなくて!?
よりにもよって四勢力に分かれた人類と邪教徒と遊牧民とエルフがいて150年間ず~っと戦争を繰り返し続けているペンドール大陸ですかそうですか。
うわぁ……どうすりゃいいんだ。プレイした人なら分かると思うけどこのゲームって「天が許しても俺がゆるさんっ! な賊狩りプレイ」とか、「夢はでっかく大陸征服」な殲滅プレイとか……ようするにこのゲーム『話の流れ』ってもんがない。
メインストーリーのないオブリビオンみたいなゲームって言うと少しはわかるかな? ドラゴンとか居ないけど。
普通のゲーム世界召還系だったらさ、こう、死んでしまうキャラクタを助けたり、歴史の改変に挑んだりするじゃないですか? しかしここはM&B PoP世界のようだ。うーん自由度最高だとは思うけど、メインストーリーの無いこの世界で俺は何をすればいいんだろう……
「あの……カトウカズキ……さん?」
おっと、ずいぶんと考え事をしていたようでさっぱり話を聞いていなかった、ごめんよセニアさん。しかし改めて彼女を見ると美人だ。ゼ○ダ姫というか、なんだろう、とにかく美人だ。
何と言っても目を引くのがその綺麗な銀髪だ、胸くらいまで伸びたコットン100パーセントもびっくりなさらさらヘアーには驚きを隠せない。
しかもエルフ耳、ぼんきゅっぼん、ノルドールの民族衣装というお年頃の男には大変ドストライクな美人さんだ。正直女神さまです、別な世界では金髪でロードス島あたりに居そうだ……
「あ、ごめんなさい、ちょっと考え事を……えっと、自分のことはできれば和樹って呼んでください」
「わかりました、ではカズキさん、まずあなたもどうやら混乱しているようですが教えてください。ニンゲンのあなたがどうしてこの森にいるのですか?」
「そっちも疑問に思うってことはどうやら長くなりそうですね、いったんそこにでも座りませんか?」
こっちも聞きたいことがあり、向こうも聴きたいことがある。これは長くなりそうだということで、とりあえずお互い近くの木の根に座って一休み。決して走りすぎて足が生まれたての鹿のようにガタガタしそうなのをこらえるためではない。
それはともかく、セニアさんはとても不思議そうにこちらを見つめてくる。え、ゲームじゃ人とか賊とか普通にノルドールの森の南とか西に侵入してた気がするのですが。人がいるとそんなに不思議なんですか?
「その様子だとこの森について知らないようですね。この森は私たちノルドールの民が住まう聖なる森。ニンゲンはこの森の入り口とその周辺までしか入れないのです。無理に進もうとすれば帰り道どころか自分がどこにいるのかすらわからなくなります」
「なるほど。えっと、そうすると先ほどの盗賊らしき一味はいったい?」
「あのニンゲン達ですね。彼らは森の外から来ましたが、カズキさんは森の中から来ましたよね? 森の中から人が出てくる、というのは本来はありえないのですが……」
ゲームをやりこんだ既存プレイヤーだが聞いたことの無い話だ。。一応このMODのWIKIはあるけど英語だから某興奮翻訳に頼って流し読みしたくらいなので、知らない設定があったりするかもしれないし、そもそもゲームにはない設定がこの世界にはあったりするのかもしれない?
無理し進むと迷う森と言われてもプレイヤーキャラは、軍団を率いて普通にこのノルドールのいる森ウロウロできるしなぁ。
待てよ、そういえばさっきからセニアさんとは普通に会話できるのに、盗賊連中がなに言ってるかさっぱりわからなかったな。
異世界召還系は最初にチート能力をもらえるものだが、もしかすると自動翻訳がチート能力なのだろうか……?
「なるほど、参考になるかわかりませんが、実は自分はかくかくしかじかしかくいきゅー……」
<セニア視点>
カトウカズキと名乗った彼の語った事情は驚くべきものでした。
『自分はどうやらここじゃない世界から来たようです』
そんなことを言われて素直に信じることは普通はないでしょう。けれども彼の持っていた『ケイタイ』に映る風景や人を見る限り、私たちノルドールが保有していない技術があり、それが彼の世界に存在していると認めなければいけませんでした。
ノルドールは今現在ニンゲンの作る装備や道具などのすべてにおいてニンゲンの技術力を上回っています。ノルドールの中でも珍しくニンゲンの機械や知識などが好きな私としては彼の持ち物の技術には非常に興味があります。
「あなたの話はだいたい理解しました。ところでカズキさん、あなたは元の世界に返る手段はあるのですか?」
「いえ、今のところは……」
少し寂しそうにそう言うと、彼のおなかがかわいく”ぐぅ~”と鳴ったので、ニンゲンにもかわいいところはあるものだと少し笑いながら、私は持っていた携帯固形食をひとつちぎって分け与えました。
彼はショウユがほしいと言っていましたがショウユとは何のことでしょうか。やはり彼から聞きだせることは非常に多々あるようですね、ぜひともいろいろ聞き出してみたいです。
でもひとつ問題が。情報を聞くためにどこかでゆっくりとしたいのですが、ノルドールの村にニンゲンであるカズキさんを入れるのはまず無理です。ノルドールとニンゲンは昔から多くの血を流し、戦い続けています。
そんなノルドールの人たちに彼を紹介したら間違いなくその場で殺されてしまうでしょう。となると私が彼をこのあたりに匿い、毎日食料を持って来るべきなのでしょうか……しかし匿うとしてもこんな森の外縁部にそう匿えるようなところも……
そんなことを考えていると、彼は私が先ほどからすっかり忘れていたことを思い出させてくれました。
「あの、セニアさんの話ですとノルドール人は人間族のことを徹底的に嫌っているようですが、自分は大丈夫なのでしょうか? 人間なのですが……」
そういえば言われるまで気がつきませんでした。どうして私はニンゲンの彼が怖くないし嫌いでもないのでしょうか、やはり命を助けられたことが原因なのかもしれないですね。
「あの、カズキさん。助けていただいたわけですし、もっと砕けてお話しませんか? 私のことはセニアと呼んでくださって構いませんよ」
「えっと、じゃあお言葉に甘えて。俺のことも和樹と呼び捨てにしていいですよ。でもさん付けはしますよ。えっと、なんというか、美人さんを呼び捨てするのはちょっと照れくさいもので……」
「ふふふっ」
「えっと、なんで笑うのかな……えっと、そんなに俺変なこと言ったかなぁ?」
「ふふっ、いいえ、ノルドールと人間がお互い砕けて話すというこの状況がなんだか面白くって」
「セニアさんの話を聞く限りでは、たしかにありえない状況みたいなのかな?」
そんなことをしばらくのあいだ、木の木陰で座りながら話しているといつの間にか彼と私は親しくなっていました。なかなかどうしてニンゲンの友達というのも面白いかもしれないですね。
───セニアー!どこにいるんだー!
そんな楽しいかもしれない未来を想像していると、静かな森にこだまする声、この声は兄上だ。そういえばずいぶんと彼と話し込んでしまいました。兄上にも彼を紹介……だ、だめです! ノルドールの中でも特にニンゲン嫌いな兄上に彼が見つかれば結果は簡単に想像がつきます。か、カズキにはいったんどこかに隠れていてもらわないと。
「えーっと、誰の声?」
「カズキ、今のは私の兄上の声です。帰りが遅いのを心配して探しに来てくださったのでしょう。ですがあなたは兄上に見つかってはなりません、固形食糧とコートを渡しますのでそれで今夜はしのいでください」
「了解! ……えっと、セニアさんのお兄さんってもしかして……」
「ええ、大のニンゲン嫌いです。ニンゲンとの争いがあるといつも最前線で部隊を率いるほどですので。なのでカズキは……っ! いけません、早くどこかにっ!!」
さきほどまで小さかった足音が急に大きくなってきます、カズキのニンゲンの臭いに気がついたのでしょうか。私はあわてて彼をせかしました。
結果───
彼は木の根で盛大にころんだのでした。
<和樹視点>
ちょっ!? 「ニンゲンクゥ、クッテツヨクナル」的なお方だったのセニアさんのお兄さん!? なんとしても早く逃げないと!!
「ですのでカズキは……っ! いけません、早くどこかにっ!!」
急に近づく足音とセニアさんに急にせかされたれたのと、さっきの全力逃亡により疲労していたこともあり、俺は見事なまでに木の根っこにつんのめってしまった。
「ふべしっ!?」
つんのめり全力で顔面を強打する。いてて……鼻が痛い。それに足もくじいたかもしれん、いやいやとにかく木の反対側でもいいから隠れないとっ!!
「おおセニアまったくいつまでこんな所……そこの貴様っ! 何奴っ!!」
あっ、間に合わなかったとか思う前に、しゅっという音が聞こえたと思ったらセニアさんの兄上様が、根っこで転んだままの俺に対し剣を喉元に突きつけてます。1ミリあるのかコレ!?
絶賛死亡フラグ祭りです。俺ゲームの世界に来たと思ったら美人のエルフと楽しくしゃべって試合終了ですか、やすにし先生、まだ俺あきらめてないんですけども……
「兄上っ! その者はニンゲンに捕まるところを助けてくださったのです! 剣をお引きください!!」
おおー焦るセニアさんもかわいいなぁ……人間死ぬ一歩手前になると急に何かを悟るとか言うけど、今まさに俺は悟ったよ。かわいい女の子はなにしてもかわいいんだなぁ。HAHAHA、すばらしいね。世界の真理のひとつを死ぬ前に悟れたよHAHAHA……ひでぶ。
「貴様、ニンゲンか! ニンゲンが我らに益をもたらすことなどするはずがなかろうっ! おのれ貴様っ、妹がニンゲンをかばうなどと……なにをしたっ!!」
だから助けたんだよっ! と言いたいが喉元には1ミリあるかないかの所に剣があり、ヘタに話せば刺さりそうだ。その上左足で俺の右肩はがっちり踏みつけられ身動きひとつ取れやしない!
踏まれてムカついたのと慌てるセニアさんを見て少し生きる気力がわいてきた。冤罪過ぎる上、間違いなくこのままだと殺されるので、喉に剣が刺さるの覚悟でなんとか兄上様の誤解を解かねば。
まったく……この兄上様、見た目は指輪物語的な意味の弓兵さんばりなイケメンのくせにずいぶんと暴力的だなまったく!
「じ、自分はは別にセニア様にやましい気持ちがあって近づいたわけではなくてですねあのですねかくかくしかじかしかくっ!?」
「黙れニンゲン!」
回る視界、体に響く衝撃、ひどく痛む後頭部。あぁ、どうやら説明を全部できる事なく首根っこつかまれブン投げられたようだ。俺の中で兄上様はシスコンキャラが定着したのはおいといて、やましいとか言ってしまった。余計に勘違いの元撒いてどうする!?
キレてる上にシスコンキャラ(決め付け)に過剰反応しそうな単語言ったからか非常に、ひじょーに怒ってる。いやまぁ俺が兄上様の立場だったら間違いなく俺の事通報するけど、話さないと通じないことだってきっとありますよ?
そんなことを投げ飛ばされた後、背中に走る痛みから意識を逃すために現実逃避していると、また兄上様が剣を向けてゆっくり近づいてきた。
なんだろう、兄上様の背後にどす黒いオーラが……あれだね、これは歩道橋の上でZソー持っている女の子と同じぐらいやばいオーラだね……あぁ、首のかぁ……
それでもやっぱりせっかくM&Bの世界にきたっぽいんだし、冒険のひとつもせずに死ぬなんて真っ平ごめん!! と柄にもなく覚悟を決めていたらセニアさんからシスコンの兄に対する最強の言葉が飛び出してきた。
「……もう! お兄様のばかっ! 話も聞いてくれないお兄様なんてだいっきらいっ!!」
するとなんということでしょう、突然目の前のセニアさんのお兄様は全身の力が抜けたように剣を落としその場でひざをつくと『うわぁあああああああああああ!!!』とか盛大に叫び始めた。
ほぅ、やはり俺の見立て通り重度のシスコンだったようだ。こ の シ ス コ ン め が っ !
というかセニアさんキャラがおかしい、それは会ってまだ短いけどわかる、たぶんきっと彼女のキャラではない気がする……
というか、さっきまでのちょっとシリアスな雰囲気がいきなりギャグ展開じゃないか! わけがわからないよ!
「あの~セニアさん、キャラ変わってません?」
「ふふっ、昔から兄上はこう言うと一発で言うことを聞いてくれるんですよ?」
「うあああああおおおおおおおおおおおおあああああ!!」
口に人差し指を当ててふふふと笑うセニアさんかわいいなぁ。まて、何だこのカオス、誰か収拾してーっ! なんだ、ここはよくわからんけど俺が突っ込まなきゃいけないのか!?
「さて兄上、そろそろ落ち着いてください。とにかく村へ彼をつれてってもよいですか?」
「……う、うむわかった」
「で、ではお言葉に甘えてお邪魔しますね」
「まったく、ニンゲンの言葉はわから……む? ノルドール語?」
おお、セニアさん勢いでOKさせたよ。セニアさんの兄上様が……って、面倒くさいので心の中では兄上様でいいか。
まぁその兄上様はようやく俺がノルドール語(仮)を話している事に気がついたようだ。俺はそのまま日本語を話しているつもりなんだけどなぁ。
まてよ、他の言語だとどうなるんだろう。
「セニアさーん、ぐーてんもーげーん」
「え?」
あえての英語でなくドイツ語でいったが無理だったか。まだだ、洋ゲーで鍛えた言葉はまだまだあるぞ!
「いやセニアさんがいなければ本当に兄上様に殺されてたよ。スパシーバ」
「えっと、スパシーバ……? どこかで聞いたことのあるような、レイヴンスタンの言葉でしょうか? 先ほどのぐーてんもーげんとやらはわからないのですが……」
「……ニンゲン、我らの言葉ではなくいきなりどうしたというのだ」
「あ、いや、これといって深い意味はないのですが」
「……」
「あ、あはは……」
レイヴンスタン王国といえばこのゲームでは厄介な盗賊ミストマウンテン族の住む北の山岳地帯を主な領土とするさむーい王国だったはず。
寒い=ロシアなら、南の帝国はローマ軍団兵みたいな装備してたからイタリア語になってたりして。てことはさっきの盗賊みたいな野郎どもは西のサーレオン王国からか、北のヤツ族かな。
ヤツ族ならモンゴルというか中央アジアっぽい装備のはずだから、普通のヨーロッパ人ぽかったからあの野郎どもはたぶんサーレオンの流れ者だろう。
とりあえず、兄上様の目線がとっても怖いので、話題を変更しよう、うん。目線で死にそうですよ……
「えっとですね、どうやら俺の世界の言葉とこちらの言葉は多少つながっているようでして……よろしければ後で色々とお話を聞かせていただけると幸いなのですが……」
「ええもちーーー」
「いろいろとはなにごとだっ!!」
兄上様、自重してください。 首が、首が絞まってうぎぎぎぎ息がががが……
「はぁ……兄上、ニンゲンが嫌いなのは結構ですがどうやら彼はニンゲンはニンゲンでもどうやら違う世界の住人のようです。もし精霊様の世界の住人だったら精霊様たちにどのような制裁を受けるのかお分かりですか?」
「ぐっ……うぅむ。」
兄上様の一挙一動死にそうになってばかり居る気がするが、どうやら別世界=神々や精霊の世界、としておけばノルドール人には効果はばつぐんだっ!で死亡フラグ回避が可能とわかった。
それにしてもこのセニアさん、すばらしい説得術である。
よしこれでとにかく突撃ノルドールの晩御飯が可能になったわけだ(ほぼ100%セニアさんのおかげ)。ところで晩御飯といえばたしかこのゲームの食料って基本パンとか干し肉とかばっかりだった気がする。
ゲームでは安くて大量に手に入る干し魚にはだいぶお世話になったが、今ならわかる。もし現実世界に帰ってプレイすることがあったら今度は食料はバリエーション豊富にしよう。たぶんこの世界の兵士たちもきっと干し魚だけでは飽きるだろうし。
「ではカズキ、村はこちらですのでついてきてください。」
「了解です、どうぞよろしく」
なんてことを考えつつ途中セニアさんといろいろ話しながら、兄上様の殺意のこもった目線を受けながら俺はノルドールの村へといくのでした。
あとがき
和名翻訳は現在進行中の翻訳を使用しております。興奮翻訳先生だとトンデモ翻訳になりますので(汗)