前回のあらすじ
・不審者二人のぶらり潜入工作
・司令官が男爵とはこれいかに
・なんか軽いノリでOKだったよ
<和樹視点>
なんというか種族の対立とかいろんな障害があると思っていたら、なんだか軽いノリで共同戦線についてOKされてしまった。
まぁ結果よければということで、作戦についてや細かいスケジュールなどについてはセニアさんにお任せしてました。
すると必然的に暇になってしまったので、司令部にある書類を目でちらちらと盗み見していると、なんとこの男爵、国家元首と同じ苗字で同じ血族?……えーっと、何でこの人男爵なんて爵位に甘んじてるんだろう?
「カズキさん、話し合いは一通り終わりましたよ」
「副指令、具体的な作戦案は話し終えました。あとは作戦に多少の変更があったので部隊に戻ってあちら側の準備をするだけです」
「無事合意に至ってなによりです。ノルドール側としては人間との共同作戦ということで不安もありましたが、男爵がサーレオン軍の司令官でとても心強いです」
いたって真面目な表情で報告するセニアさん。セニアさん現実世界に生まれてたら図書館の司書さんかバリバリのキャリアウーマンになってたんだろうなぁ……もし現実世界から物を持ってこれたなら女性用のスーツを持ってきたかったかもしれない。あと眼鏡なんかも……いやいや、もうすこし役立つ物もってこようよ俺。
「で、カズキさんには悪いんだけどこのまま帰られたんじゃ部下が納得しないんだよ。「ノルドールなんて信用できない」ってね。というわけでどちらか人質としてここに残ってほしいわけ」
ひ、人質かぁ……まぁそんなこともあって切捨てやすい俺の出番ってわけだ。セニアさんにはカズキ隊の面倒も見てもらわないといけないので次期隊長権をニグンさんにお任せして、小部隊の指揮をセイレーネかデニスに任せてもらうよう伝えておかないと。
「……副指令は軍に必要な方です、私が残りますので必ず勝って私を取り戻しに来てください。戦いが終わったら後でゆっくり話しでもしましょう」
「しかし……であればここは私が───」
「いいえ、重ねて申し上げます。ノルドール軍には副指令が必要です。ですからどうかここは私にお任せください。」
「……わかりました。吉報を待っていてください。」
セニアさんが人質になるのは最初のプランで最後の手段としては考えてたはずなんだけども……やっぱり仕方がないか。本人が名乗り出てついてきてたんだし。そういえばなんか言葉の最後だけ女王様モード(真面目モード)が解けてたような……気のせいか?
人質を出さないと信用されないとはいえ、やっぱり離れ離れになるのは心配だし、想定済みであったとはいえきっと兄上様に帰ったらコロサレル……
「では明後日戦場で会おうカズキさん、信じてるよ~」
「男爵こそ、ご武運をお祈りしております」
なんだかよくわからないけどこの男爵は信用できそうだ。まてよ……国家元首と同じ苗字で男爵って事はもしかしてこの人が反乱を起こして解放軍フラグなのか?
いやいや、今はとにかくこの情報を兄上様とレスリーさんに伝えないと。
「兄上様、サーレオンはこちらの作戦案を了承しました。やはり酷い状況でしたよ」
「どのぐらいだ?」
「新兵は血気はやって訓練の邪魔でしかなく、予備隊は寄せ集めなおかげで連携もまともじゃない。そんなこんなが軍団全体に知れ渡っているせいか勝てる気がしないってことで士気はダダ下がりでございました」
「……これではこちらの援護があっても勝てるかどうか心配です」
「なに、どんなことがあろうとも粉砕、突撃、そして勝利だっ!」
「セイレーネさん、さすがにそれだけじゃ……」
司令部へ半日で戻ってきた俺はとりあえず司令部に居たみんなと軽く雑談した後、サーレオン側が出してきた計画の変更について説明する。
最初の作戦案は
・サーレオン軍は『塹壕』か『蛸壺』を掘ってその中にサーレオン軍の主力とするロングボウ部隊を隠しておく。なおその際歩兵部隊はその背後に布陣する。布陣位置は下記の通り
歩兵歩兵
陣地陣地
ノ森森 森森 森森ノ弓騎兵
弓森森 森森ノ歩兵 森
兵森森 森森森
森森
↓帝国軍
・帝国軍のクロスボウ部隊の射撃には蛸壺にこもらないサーレオンのクロスボウ部隊が応戦する。数において劣るため早々に打ち合いは終わらせること。歩兵隊は盾にしゃがんで身を隠すこと。
・帝国軍軍団兵が前進してきて、投槍の体勢に入って盾の防御力のない時隠れていたロングボウ隊で一斉射撃
・戦列が崩れた帝国軍に対して歩兵隊突貫。騎兵戦力に劣るサーレオン軍はこれで近接白兵戦に持ち込む
・蛸壺か塹壕に展開するロングボウ隊で帝国騎兵を攻撃。軽騎兵ばかりの帝国軍騎兵は上の地図で右から回り込んでこようとするはず、そこをノルドール歩兵隊で通せんぼ。
・帝国軍の主な戦い方として戦列の中央突破があるため、おそらく彼らは歩兵突貫後、こちらの歩兵の後ろからちくちく撃ってくるロングボウ部隊を殲滅しようと一箇所に兵力を集中する。
・そこに隠れて敵の背後に機動したイスルランディア軍の弓騎兵と、最初から森に伏せていたノルドール弓兵がジャーンジャーンジャーンげぇノルドールっ!?で登場し森から射撃。
うん、我ながら計画上だけの作戦だ。やはりというか、サーレオン側や他の村からの友軍指揮官のみなさんから突込みがはいった。
・歩兵隊が突撃した後ロングボウ隊は味方が邪魔で攻撃できないが?
・イスルランディア軍の歩兵で帝国騎兵を止められるのか?
・弓兵の伏兵はばれるんじゃないか?
・帝国軍がこんなサーレオン側に有利な地形で決戦を望むのか?
一番目の問題について。実地でもし無理なようであれば、サーレオンロングボウ隊はノルドール歩兵の左の森にひっそり移動させて弓兵で奇襲をかけるときに一緒に射撃してもらう。
二番目の問題は戦列の前面を圧倒的防御力を誇るノルドール歩兵でシールドウォールするから大丈夫なはず……機動隊がごとくの大盾とノルドールソードを構えた重歩兵部隊のシールドウォールが破られるとは思えないが……
三番目の問題は、森の中に軍団兵を投入しても軽装な弓兵を追撃できるとは思わないから森の中で殲滅されるって事はないはず……それこそ事前に弓兵を蛸壺に隠しておく必要があるかもしれない。
四番目は……帝国側に士気も低く寄せ集めのサーレオンは鎧袖一触だと思わせるか、そのほかの森を抜ける道に罠を仕掛けまくって誘導するか……たぶん挑発は厳しいかなぁ。
一応四番目に関しては男爵に秘策があるそうなのでそれに頼るしかないかもしれない。
「と、質問についての回答は以上です。イスルランディア軍の準備のほうは?」
「カズキの部隊はまぁアタイもがんばったけどやっぱ戦闘可能なのは30人そこそこだわ。」
「ふんっそうなると独立して動くのはきつかろう。ニンゲンと組めばいいさ」
「……カズキには悪いですが通せんぼする部隊を私と一緒に参加してもらいます」
「了解です、では和樹隊はレスリー隊の指揮下に入るということで」
通せんぼするだけで活躍の舞台があまりない通せんぼ部隊に、人間族の部隊であるレスリーさんの部隊と、人間の俺が率いる和樹隊は当てておこうって魂胆が丸見えではあるけれども、それで他の村からの援軍が兄上様の指揮の元効率よく動けるのならばプラスであると自分を納得させる。
焦ってもなんにもならない。少しづつでいいから他の村のノルドールの人たちに信じてもらわなければ。
作戦会議が終了したので自分の部隊駐屯地へ向かうと、途中で待っていたかのように現れたのはニグンさんだった。というかなんでそんなにニヤニヤしてるんですかね?
「ニグンさん、部隊の方はどうですか? あとなんでニヤニヤしてるんです……」
「いや別に。あぁ隊長、『しぼうふらぐ』言ってたやつは戦列の後方に下げときましたよ」
「あれだけ注意したのにやっぱり居ましたか」
「知識があってもつい言いたくなるんだよなぁ。四人娘はとりあえず大丈夫だったけど」
やはり俺の部隊に死亡フラグを言ってたやつが居たというわけね。
ちなみに村の皆様に教えておいた死亡フラグは「俺(私)~が終わったら~」「今度子供が~」「~が終わったら~伝えたい~」などなど……まあ古今東西の死亡フラグの有名どころをすこし。
さらに余談だけども、村に来たばっかりのとき、「あ、セニアさん。今日の訓練が終わったら相談したいことが……」といったところ、俺に相談させないようにとこっそり聞いていた兄上様に訓練で殺されかけました。死亡フラグを俺が言ってたことに気がついたセニアさんが助けに来てくれなかったら死んでました……んー死亡フラグでなんか引っかかるなぁ、何だろう?
ニグンさんとそんな雑談をしながらテクテク歩いていると、駐屯地には俺の部下総勢33名が整列して待っていてくれた。
「カズキ隊いつでも出撃できます!」
「お任せ、あれ?」
「隊長は僕たちが守ります!」
「射撃指揮はおまかせ……」
「「「カズキ隊準備よし! 準備よし! 準備よし!!」」」
護衛娘4人に隊員達が大きな声で盾を打ち鳴らす。やる気200%ってわけだ。へっぽこ指揮官かもしれないが、やっぱり今回も可能な限り損害を出さずに勝利を目指さないと。
「ほら、隊長、シャキッとせいや。一発掛け声頼むぜ!」
ベシベシとニグンさんに叩かれてなんというか、すごい力があふれてきた。もうね、何だろう、負ける気がしない。たぶんアドレナリンどっばどばなんだろう。
これは腹から声出して気合い入れないとな!
「よし、ではこれより作戦位置に移動開始だ! カズキ隊! 出撃!!」
「「「「了解っ!」」」」
前回は突破されかかってぎりぎりの戦いだったけれど、今回は騎兵を通せんぼするだけだ。だから今度はこの仲間たちを一人も欠けず連れて帰ろう。そう強く心の中で決意しなおし出撃するのであった
あとがき
ちなみに投稿の際にプレビューができないのは自分だけなのでしょうか?
画像認識になってからボタン押してもでてこない……