前回のあらすじ
・作戦は終わるまでが作戦です
・生まれる前から好きでした
・地球が危ない、俺があぶない、でもセニアさんはも~っとあぶないです
<和樹視点>
俺の和樹隊はサーレオン弓兵の展開する森を突っ切って無理やり味方の戦列の背後に回ろうとしてた。だがそこで見たものはもう酷いものだった……誤射を前提とした攻撃。日本人としての甘さからか、俺はどうも受け付けることはできないやり方だ。
ああ、あれか。どうやら男爵は「いかんか」王と同じ性根だったのかもしれない。しかし軍事的には劣勢だった中央線戦は混乱の度合いを増やし、完全に乱戦に突入した。
コストの低い軽装歩兵で重装かつよく訓練された帝国軍団兵もろとも倒す。重ねて言おう。コストと言う面では確かに良い作戦だ。
「バリスタで味方ごと団子になった敵を撃つなんて」
「……本来なら後方の熟練兵の士気が下がるのは必然、でも仲が悪いからそれほど影響はでていない」
「そろそろ軽装歩兵隊は敗走するな……これはさすがに気合でどうこうなるものではない」
「うちは村の見知った顔で編成しているからよ、サーレオン側の味方意識の低さは理解できないよなぁ。まぁ、隊長がアレに怒って」
残りの四人娘も含めてみんな同じ気持ちのようだ。やっぱりコストとかそんな考え方で戦うのはおかしい気がする。というか第一に前回の作戦会議ではそんなことするなんて聞いてなかったぞ!?
何はともあれあの硬い防御力を誇る帝国戦列歩兵はばたばたとなぎ倒されていっている。今ようやく散開するか突撃するかし始めたが、先ほどから始まった両側面からの射撃でかなり混乱している。一応こちらの側面射撃は味方に当たらないように団子になった敵の後方部分を優先射撃するってことになっているので、誤射を前提とした攻撃とは大違いだ。
「隊長、敵騎兵隊の一部が後方の歩兵隊を突破していますっ!」
「セニアさんが……あぶないっ!?」
「な、なにっ!? ったく! サーレオン側の射撃部隊と騎兵はなにやってんだ!!」
まずいぞ、最悪のパターンだ。このまま俺の部隊で熟練兵の戦線を支えたとしても突破した敵騎兵が男爵やセニアさんが居るところに突入したら……いかん、それだけは絶対に阻止しないとっ!!
「ま、ここは俺らに任せてもらおうか」
「……ここは任せて、隊長たちは行って」
「そういうことです、バァーンと敵を追い払って見せますので先に行ってください」
「ニグンさん、カザネ……セイレーネ……」
三人の申し出は焦る俺としてはかなり魅力的だ。だけど部隊長の俺が部隊を置いて行ってもいいものか、でも今この部隊で騎乗しているのは俺と四人娘だけだ。
「いってやれよ隊長、そっちには敵兵一人行かせませんって」
「セニアのじょうちゃんは昔っから見てんだ、ここで見捨てたらおりゃ隊長をゆるさんぞぃ?」
「戦場で……男が惚れた女を助けに……フヒヒ」
「ってわけだ。カズキ隊! 俺の指揮下に入れー!」
「うるせーぞニグン! 隊長、ニグンが指揮してると死にたくなるから早めにお嬢も連れてきてくださいな!」
部隊のみんなまで……やっぱり同じ村で過ごしてきた仲間は見捨てられないよなっ!
「よし、ニグンさん。指揮をお任せします。カザネとセイレーネはニグンさんの援護を。あくまで任務はサーレオン軍の戦線維持支援だ」
「今死にたくなるって言ったやつは誰だー!? 今日の最前線はお前だからなー!」
「……任された」
「はははっ!了解した、お前らっ気合を見せろーー!!」
「「「うおおおおおお!!」」」
ははは、なんとも元気のいいことで。これで全力でセニアさんを救いに行けるってもんだ!
とにかく急がないといけないので早速ゲデヒトニスとカルディナと一緒に男爵の居るところに突貫だっ!!
「セニアさん、下がってっ!!く、くそうっ!!」
「もらったあああああああ!!」
俺達が到着した時には男爵の居たところはすでに戦闘中、10騎程度の帝国軍騎兵を4人くらいの護衛兵と男爵が迎撃中で……セニアさんが無防備でっておいまてなんで武器くらい持ってないんだ!? いつものセニアさんなら死んだ敵兵から武器を……まずい、もう1騎セニアさんのほうに向かっていってるっ!!
「トニー、カルディナは男爵を援護っ!!」
「了解っ! ……トニーって僕?」
「了解!?」
まずいっ、このまま突っ込んでも間に合わない。こうなったら今まで日の目を見ることのなかった唯一俺の得意な武器に賭けるっ!
「あたれええええっ!!」
そして俺は全力で投げナイフをセニアさんに襲い掛かろうとする敵騎兵に投擲した。
<セニア視点>
どんどん近づいてくる敵兵、恐ろしさのあまり私は目を瞑りました。すぐ目の前で伝令の兵士が倒れているのになぜ私は剣をとらないのでしょうかっ!
剣なんかもったってどうしようもない、そう心はあきらめようとします。でもなぜでしょう、それでも心のどこかではきっと彼がまたかっこいい言葉と共に助けに来てくれるような気が、そんな気がします。
───ガキィンッ!
「……間に合った」
何かがはじける音、そして何時も聞きなれた私の大切な家族の声。瞼を開けるとそこにあったのは何時も見慣れたあの背中。
「セニア」
「君をっ」
「助けに来たっ!!」
ああ、来てくれた、やっぱり彼は来てくれた!!
「カズキっ!!」
彼を見たとたん私の心を支配していた恐怖とあきらめがあっという間に消えうせ、生きようとする心が私を突き動かし始めます。
すぐに死んだ伝令兵の盾と剣を拾うとカズキの横に並びます。
「無事でなによりです……ちょっとオイタしようとしたやつにお灸すえてくる」
「はいっ!」
「セニアさん、早く僕の馬へっ!!」
「じゃ、ちょっと行ってきます……帰ったらセニアさんの手料理が食べたいかな。できれば日本食で」
そう笑って言った後、彼はそのまま走り出しました。彼の進路上には盾に突き刺さった投げナイフをを投げ捨てる一騎の帝国歩兵。まさかカズキの『ちゅうにびょう』の成果である投擲の技能で救われるなんて……『ちゅうにびょう』冥利につきるのではないですか?
「いきますよ、つかまっててください!」
今は私が居ても皆さんの邪魔になるだけです……カズキのことが心配でしたが、ゲデヒトニスさんの馬に彼女の後ろに乗って、私は戦場を離脱しました。
<和樹視点>
ふぅ……セニアさんの前ではかっこいい人間であろうと努力したら赤坂さんですか。正直もう汗だらだらです。なんたって馬を狙って投げた投げナイフが盾で防がれたんですもの。しかもその敵騎兵がこっちをガン見してます、うん逃げたい。
「お前、名をなんと言う」
「……ノルドール連合イスルランディア軍、加藤和樹」
「カトウカズキ……帝国軍シールドストーム城城主リマスク、いざ勝負っ!!」
な、なんだってー!? あろうことか相手がゲームでガチムチでめちゃめちゃ強いリマスク司令かよっ! 勝てるわけがっ!?
しかももう剣を構えて突っ込んできてる、リーチは俺のポールハンマーが上だが……俺の技量であのリマスク司令にランスチャージができるか、いやこれしかないっ!!
「うぉおおおおりゃぁあああ!!!」
「うぉおおおお!!」
───ガキィンッ!
「ぐっ!?」
「ぐぬぅ……浅かったか」
お互いの正面突撃の結果は俺のポールハンマーがリマスク司令の鎧にヒビを入れて、司令の剣が俺の右ももを抉った……相手もヒビの入ったところを抑えて苦しそうだが、俺は正直もっとやばい。皮鎧の部分だったから何とか足ごともってはいかれなかったけど、馬にこのまま跨り続けるだけでも厳しい。
だけど、こんなところで死んでたまるか……前みたいに気絶している場合じゃない、俺がこいつを倒さないと次はカルディナやゲデヒトニスがやられるかもしれないっ!
「ま、まだ……まだだっ!」
「ふむ、意気込みは良し……だがその程度ではな」
畜生、司令は馬首をこちらに向けるとまたこっちに突撃してくる。痛みと恐怖で目がかすむけど、意識がまたやばいけど、なんとかポールハンマーを構えなおす。こうなったら刺し違えてでもヤツだけは、俺が止めてみせるっ!!
「来いよリマスク! かかって来いっ!!」
「よかろう、これで止めだっ!!」
「隊長っ!下がって!?」
刺し違えるチャンスを手に入れるために挑発していたらカルディナが俺とリマスク司令の間に割って入ってきた。いや、ナイスタイミングです。君が居なければ俺はこの後2秒後くらいに首飛んでたと思う……そう思ったらちょっと下腹部から液体が暴発しそう。出撃前にトイレ行っとけばよかったなぁ。
「ふん、興がそがれたな……次会った時はその首、貰い受ける」
「何度来ても……隊長は、私が守る……」
ふぅ、なんとか司令は撤退してくれたみたいだ。彼に従って生き残った5騎が離脱していく……なんとか生き残ったよ。
「隊長、報告?」
「ん、くっ!……大丈夫だ、報告を頼むよ」
「……ごめんなさい、まず止血?」
俺を馬から下ろしてくれた後カルディナがてきぱきと止血していく、よく見るとカルディナが気に入ってるって言ってたハンカチで止血している。なんだか悪いなぁ、今度買いに行ってあげないと。
あとがき
やっぱりかっこよく決めれない主人公。