前回のあらすじ
・なんとか、勝った?
・セイレーネ重症
・いつもの死亡フラグ
<和樹視点>
あ、あれ?なんだここ。目を開けたら俺の実家の部屋じゃないか……父に母どっちもいるし、窓から外を見ればなつかしのおらが~はったけ~じゃないか。
都会に出てからずいぶんとそういえば土いじりしてなかったなぁ。
───カ……キ
ん? なんだ今の声、せっかく目の前に久しぶりにそろう家族と豪華な食事があるのに……
───カ……ズ……た……ちょ……
ああ、そういうことね。なるほど、だんだん把握してきたぞ。ようするこれ走馬灯なんだろう、死ぬには残念ながら早い気がするけど、このペンドール大陸で一般人の俺がここまで生きてこれたんだ……もう十分だろ……
───カズキっ! 隊長っ!!
……俺のバカヤロウ、何が十分だ。まだ迷惑ばっかかけて借りばっかり作って、勝手に死んでられるか!
「カズキっ!!」
「隊長っ!!」
こっちの世界に来て慣れ親しんだ声に目を覚ました俺の視界に入ったのは……よし、まずはあれやるか。
「……知らない天井だ」
「ばかっ!心配したんですからっ!!」
「アタイの腕に感謝するんだね……無事で何よりだよ」
「カズキは戦場に出ると何時もこうですね……そしていつも通りの発言、ありがとうございます」
「隊長、痛くない?大丈夫?」
「隊長……うぅー僕隊長が死ぬかもしれないって聞いて本当に心配だったんですよーー!!」
「……よかった、心配した」
「お前はほんとかわらねぇなぁ」
ボケに突っ込んでくれたのはレスリーさんとニグンさんだけか。なにはともあれ……かなり心配かけちゃったなぁ。
さっきから手があったかいのは……セニアさんが両手で俺の右手を握り締めてくれてるよ。しまった、無事なセニアさん見たらガチで涙が出てきちまった。
「セニアさん、無事で……よかった」
「人の心配をする前に自分の体を労わってくださいっ! 出血がひどくて危ないところだったんですよ!!」
「うん……てうげふぅ!?」
───ムギュ
こ、このすばらしきいい匂いとこのふくよかな感触は、その、もしかすると。抱きしめられてる?
えっ? えええっ!? なんで!?
「……一人にしないで」
「うん」
「……無茶しないで」
「うん」
「……ずっとそばに居て」
「うん」
「もう……離さない」
「うん」
そのままセニアさんは俺のことをずっと抱きしめていました。家族にこんな心配かけてしまったなんて、というか前回の約束守れなかったなぁ……本当にごめんよ。
<その他の皆様>
(これは……ノルドールと人間の愛ですか)
(……砂糖を吐くというのはこのこと)
(わーわー!セニアさん大胆すぎますってばっ!!)
(隊長気がついて、ない?)
(あちゃー鈍感だけはアタイでも治せないわ)
(だめだ、ニヤけが止まらねぇ)
「あ、そういえば重症って言ってたセイレーネは!?」
「ん、正直戦線復帰まで長ければ半年かかるかもしれないね」
(女性に抱きつかれておきながら他の女性の話をするべきではないと思うのですが……)
(……空気が読めてない)
(ぼ、僕も積極的に隊長にきゅ、きゅうあ、ああわわ僕は何を考えてっ!!??)
(二股、前提?)
(バカ、そういうのは後で聞くもんだ……ま、部下思いなのがこいつのいいとこなんだけどさ)
(だからなんでこいつばっかりモテるんだ? まぁいっつも体張ってるからなぁ。まぁ、今回は許してやろうじゃないか)
「今度見舞いにいてでででででっ!」
「カズキは寝ていないとだめですっ!!」
「あたたー……了解……」
((((ごゆっくり……))))
<和樹視点>
セニアさんの家族愛あふれる抱擁によってベホイミを受けたがごとく気分だけ完全復活した俺は、セニアさんから具体的に俺がどうなったか聞いてみました。
・心肺停止
・出血多量
・つきゆび
うーん、つきゆびなんて実に俺らしい。出血多量で心肺停止とか死亡フラグもいいところじゃないか、よく助かったな俺。
まてよ、心肺停止になったら『人工呼吸』と『心臓マッサージ』をしろと教えたはず……俺の趣味で現代医術は村の人には女性にしか教えてないから(女医ってなんでこんなに響きがエロいんだ)、も、もしかすると、き、きききゲフンゲフンいや落ち着け俺、医療行為で行われたことを気にしたらしてくれた人に非常に失礼だろう俺。俺自重、素数を数えるんだ……1、2、3って違う!
「ん……みゅぅ……」
んなっ!?抱きついたまま寝てるセニアさんの寝息があばばばばばばばばば!!萌え死ぬっ!もう無理、萌え死ぬっ!!
「うぅん……カズ、キ……くー」
も……だめ……ぴょこぴょこ動く、耳が、寝言が、俺の、心を、ウワァアアアアアアア-----!!!
「カズキ、意識が戻ったと聞いたが……無事だった……か……」
「あ、兄上様!?」
「……」
オワタ、兄上様に見られた。いや俺の症状とか具体的に戦いの後丸々一日寝てたとかずっと心配だったから手を握り続けてくれてたとかいろいろありましてね、それでその疲れからかセニアさんはいまちょっとここでつい寝てしまっているだけでしてね!?」
「……そのまま寝せておいてやれ。そうだ、現状の軍事方面での報告を聞くか?」
「あ、はぃい!」
「……む?」
あ、れ?兄上様いつもだったら「セニアに手を出すなニンゲンーーーーー!!」って切りかかってくるのかと思ったのですが、いやさすがに負傷者に対してそんなことはしないか。
「まあいい。前回の戦いの結果は帝国の損害は『85ぱーせんと』ほどだ、ほぼ殲滅できたといっていいだろう」
「包囲は成功したんですね」
「ま、俺の追撃の効果も多分にあるがな」
よかった、これで帝国軍を逃してしまっていてはそろそろ再編成が終わっている300の帝国軍に合流されてまた4~500の軍と一会戦するかもしれなかった。セニアさんの話によるとレスリーさんの部隊もうまく敵の背後に回りこんだみたいだったし。
「こちらの損害は?」
「カズキ隊が8人、俺の弓騎兵隊から2人だ。サーレオン側は軽装歩兵のほぼすべてが死傷、もしくは逃亡した」
「となると、サーレオンの損害は300程度ですか」
「まぁそんなとこだ。捨て駒の軽装歩兵が居なくなっただけだと男爵は言っているが、正直かなりつらいだろう。熟練歩兵にも少なくない犠牲は出ているからな」
まとめると純粋に軍事的に考えれば『ドキッ!パクリだらけのカンナエ(嘘)。殲滅もあるよっ☆』作戦は成功したと考えてもいいだろう、ただしサーレオン軍も漏れなく半数を失って壊滅状態だけど。
気になるのはずいぶんと追撃した部隊と通せんぼしたレスリーさんの部隊や伏せていた弓兵部隊の損害が少ないことだ。何かあったのかな?
「不思議そうな顔をしているな、損害の少ない理由はお前の予想通りだったからな」
「予想?」
「もう帝国軍の部隊は戦えなかったのだ、兵糧がほとんど底をついていて包囲されたことを知った帝国軍は大部分降伏した」
そいつは何より。俺の勘だけどリマスクさんは逃げ切ったかな。
そういえば捕虜どうするんだろう。この世界では捕虜は奴隷商人に売って軍資金とするのが一般的だ、これほど大量の捕虜を買い取れる奴隷商人いるのかねぇ。
「捕虜はどの程度です?」
「捕虜はほぼすべてが軍団兵で数は400、栄養失調などで捕らえるまでもなく今は病院だ。会戦最初の突撃が気力を振り絞った突撃だったんだろう。……まあ、その気力も包囲とバリスタで打ち砕かれたのだろうな」
「城攻めの損害は軽微でも補給がなくすでに形骸化しつつあったわけですね……で、捕虜はどうするんです?」
「うむ、敵のジャスタス総督は自分と護衛数名が逃げるために武器をとって最後まで戦っていた味方の兵士を逃亡の邪魔だといって切り捨て逃亡した」
「そいつはまた……裏切り者が出ても文句は言えませんね帝国は」
なんともまあ悪役みたいなことする司令官がいたものだ、味方を大事にしないと必ず負けるんだぞって男爵もか。
しかしそうなると最後まで戦っていた帝国兵を中心にジャスタスへの復讐心というかなんというかいろいろすごいことになってそうだな、食べるものも無い状態で戦わせてその上で味方が切り捨てられたとあっちゃ捕虜達の大半は開放しても復帰しないんじゃないかなぁ。
「そういうわけでだ、実際に最後まで指揮をしていたホルスという男が切り殺された部下の敵討ちがしたいと言って寝返ってくれたぞ、数は現時点で100だが怪我の治療が終わればもっと数は増えるだろう。」
「あまり信用はできませんが、それでも味方が増えるのはありがたいですね。男爵ならまちがいなく「最初の突撃に使え」って言いそうですけど」
「ふん、違いない」
はてさてこの戦争、どこまで続くのかなぁ……一般人な俺としては、統一とか覇権とかとなんて求めちゃいないから早く平和になってくれ。
この世界に来て、平和の尊さをヒシヒシと感じたよ……
あとがき
カズキは主人公属性「鈍感」を手に入れた