前回のあらすじ
・ひょ?
・うひょ?
・ホアァアアアアアーー!!
<和樹視点>
物音がしたのでついつい「何やつ!?」と叫んでしまった、どこの殿様ですか俺。というかちょ、おま、何でみんなぞろぞろ家に入ってくんのさ!?というかみんないるし、なにこれさっきまでの全部丸聞こえですかそうですか……やばい、死にたい。そうだ、樹海行こう。
「すまんのう、忘れ物を思い出して来てみたら……のう?」
「えと、村長の護衛?」
「俺は時間が惜しいから移動しながら喋っていただけだ、だけだったらだけだっ!」
「……知的探究心」
「私はカザネに付いて来ただけですが……とりあえずセイレーネを何とかしませんと。はい、下を向いてください」
「へへっ、男女が、夜に、ふへへっ」
「た、隊長とセニアさんはは、早くその、えっとっ!!」
「「あ……」」
いかん、ベットの上でいまだにセニアにマウントポジションとられたまんまだった。おいまてよ、このほとばしる憤りはどうすればいいんだ、処理せんと大変なことになるぞ。ってその前にまず露出がいつもより多めなセニアをなんとかせんと。
「あ、えっと、これでも着てくださいな」
「あ、ありがとう……」
とりあえず上着をかけてやる……まて、一斉に顔をそむけんでくれ、俺だって恥ずかしいんだ。
ああ、でもちょっと涙をためて上目遣いでこっちに照れ隠しの笑顔を向けるセニア……萌え死ぬ、おそらく付き合い始めたらガチで萌え死ぬ。
「それでは失礼しました、セイレーネの応急処置が終わったので私達は去ります」
「ご、ごゆっくり?」
そこの男達ーー!なんか発言してくれ、空気がヤバイって俺やばいってもうあっぷあっぷだって!!セニア、立ち上がろうとしたからって服引っ張らないで、その仕草でもう俺死ねるから。
「「「「「……ごゆっくり」」」」」」
ちょ、おまえたちーーーーっ!?
「ちょっと待った、この空気どうすればいいんだよっ!?」
「ふふふ、アナタニハワタシマセンヨ……」
「ん、なんか言った?」
「いえいえ、なんでもありませんよ?」
一瞬女王様モードの片鱗が見えた気がしたけど気のせいだ、わ、ちょ、いきなりせっきょくてきであわはぁーー!?
───数日後
「ここに、カトウ・カズキとセニアを婚約者として認めることを宣言するでの」
「おめでとうございます『カトウ・セニア』さん」
「この風習、好きかも?」
「……僕だって僕だってボクダッテ」
「落ち着け私、気合で耐えるのだ……よし、大丈夫」
「いやーやっと手を出したかー。アタイはいつくっつくかわかんなくてやきもきしてしかたなかったんだよ」
「オレにとっちゃ弟分と妹分みたいなもんだからなぁ。すっげー複雑だ」
あれから数日後、村人総出で俺とセニアの婚約披露宴ですよ。まさか兄上様が認めてくれるなんて驚きだよ、「お前にしかセニアは任せられん」とか言ってくれた時は本気で涙でましたよ。ちなみに結婚じゃなくて婚約なのはエルフであるノルドールの決まりだそうです。
なんでも百年も生きない人間と数百年生きるノルドールが結婚してしまうと、伴侶となった人間が死んでしまった後宗教的な意味で再婚できなくなって残されたノルドールがあまりにかわいそうだからだそうな。つまり以前にもいたんですね、人間に恋したノルドールって。
「ま、わしのことじゃがの?」
「な、なぜ思考が読み取れたんですか!?」
「かっかっか、伊達に年をとってないでの」
「し、失礼ですがちなみにおいくつで?」
「……千年はいっとらんから安心するでのー」
いったい千才以下で何を安心すればいいんだ……あ、寿命か。ようするに十倍以上生きるわけだ、犬の一生と人の一生ほどの差はないけどいいなぁ、長生きできて。にしてもノヴォ村長にらぶろまんす(笑)か……想像つかない。
「まあ、今日は無礼講だ。カズキも飲むといい」
「了解です兄上様」
「俺にも「様」などつけるな。不自然だろう」
「いえいえ、「兄上」よりも「兄上様」と呼びたいんですよ、尊敬の気持ちを込めて」
「むぅ……ならば仕方ない、許す」
兄上様もずいぶんと丸くなったなぁ、始めて会った時のもう人間嫌いがすっかりないかな。今ではレスリーさんや四人娘達を見ても何にも言わないしね、むしろ彼女らにぶーたれる別の村のノルドールをしかってるところを見たこともあるし。
「もう……あなた、私のことを忘れてませんか?」
「ごめんごめん、でもセニアを忘れることなんてあるはずないじゃないか」
「ふふふ、もう「カズキ」のいじわるっ」
「うーん、やっぱり人前では「カズキ」のほうがいいかな」
「どうして?」
「セニアの「あなた」って言葉は二人っきりの時にとっておきたいからかな?」
「もう……わかりましたカズキ」
───イチャイチャ
「……塩分大目の食事を出していて正解での」
「まったくだ……お、これうまいなもぐもぐ」
おっとっと、いかんいかん。兄上様は相変わらず食い物に目が無い様で、アニメでよく見る骨付き肉を一人で食べるなんてそうそうできませんよ。今度村で大食い大会を開いてみるのもいいかもしれないね……見てるだけで胃もたれしそうだ。
「なんだっけ、カズキ隊長の世界だと『あまぁーい』って言うんだっけか」
「私もあの人が生きていれば……私はまだ引きずりますか、仕方がありませんね」
「やばいねぇ、このお茶が砂糖たっぷりに感じるよ」
「ねえねえカザネカザネ、僕も───」
「……重婚は不可」
「重婚だと……三人で、くんずほぐれ……はふぅ……」
「浮気相手候補、多数?」
……なにやら物騒な話をしているような、とりあえずスルーしとけって気がするのでスルーしましょう、うん。
ドンちゃん騒ぎしながらこのまま俺達はノヴォ村長の村で宴会を夜遅くまで楽しみました。
───1ヵ月後
「そこには元気に走り回るセイレーネの姿がっ!?」
「何を言っているんですか?」
「ごめん、無性に言いたくなった」
セニアといちゃいちゃ生活を始めて早いもので一月がたちました。俺の右足も治ったしセイレーネの傷も治った(?)ことでイスルランディア軍はほぼ戦力を回復したといっていいでしょう、他の負傷兵達も治ったしね。さすがはレッドさんとノルドールが誇る医療団だ。
「隊長っ!これでまた隊長の剣となって戦えます!!」
「うん、期待してるよ」
「ぼ、僕だって隊長の騎士ですっ!!」
「ゲデヒトニスが護衛騎士なら戦場でも安心だよ」
「また、悪化?」
「……あの時は奇跡的に敏感だった」
「そう言ってやるな娘っ子たち。カズキ隊長がそんなイイオトコだったら娘っ子達も困るだろう?」
「僕はそれはそれで……」
「いい、かも?」
「……だめだこりゃ」
ただいま目の前ではセイレーネがリハビリを兼ねて訓練中なのだが、再編成された俺の部隊の騎乗部隊の一人をぶったおしたところです。……おまえ本当に一月寝てたのか? どう考えても絶好調です本当にありがとうございました。
「そろそろ……私がいなくてもいいですね」
「え、レスリーさんどこかに行ってしまうんですか?」
「ええ、ごめんなさいセニアさん。私は家族の敵を討ちに行きたいのですよ」
「ああ、あいつか……」
「「ザルカー」」
ザルカー……そうか、あれから一月レスリーさんは俺の回復を待っててくれたんだ。本当は早く自分の軍閥を作り直して戦いたかっただろうに、ずいぶんと待たせてしまった。
そう、あの戦いの後俺達が村で一月ほど再編成と休息をとっている間に、帝国とサーレオンの戦争は終わりました。
結果はサーレオンの勝利という形に落ち着いたご様子。帝国側は大兵力を東部に向けてたせいで西部で行われたサーレオン軍との決戦に戦力差が響いて大敗したらしくそのまま国境線からずるずる押し込まれ、結局城を2つ近く落とされて講和に踏み切ったという。講和条件として現在の戦線を国境線とすることと賠償金で決着が付いたそうだ、サーレオン側の得たものは城二つに大規模な村二つ。
ちなみに東部で大活躍した男爵には新しい封土と報奨金がでたそうで、男爵は協力のお礼として報奨金の大半とサーレオン側の勢力圏だった聖なる森の北部分を事実上ノルドールに管理権を預けてくれるそうです。書類上はサーレオン王国の領土だけども、実効支配がノルドールってことだね。
ちょうど新しい封土がそこだったそうでこちらとしてもうれしいことなんだけど……まぁどう考えても森の北にはヤツ族がいる草原があるわけで、正直ヤツ族の討伐と治安維持が面倒くさいからあげちゃえってことなんだろうな……あの腹黒男爵め。
あと残念ながらサーレオンとの同盟はできませんでした……交易は大々的に行われるみたいだけどね。
主君に邪魔だと部下を切り殺されたホルスさんたちですが、見事シールドストーム城から兵力の少ないままうかつに出てきたジャスタス総督を野戦で討ち取ったそうです。現在は「敵は討ったから恩を返す」とのことで、いまだにレッド団や夜盗に背教騎士団が出没するラリア~ノヴォルディア間の護衛を警備を行っています。
ノヴォ村長の村はノルドールの主要都市として各地に散らばっていたり捕虜になっていたノルドールがサーレオンや帝国と講和したことにより戻ってきたりしていつのまにか成長しました。人口も500人を超えたし、名前がないと困るだろうということで村人の『投票』によりノヴォ村長の治める土地として「ノヴォルディア」となりました。ペンドール大陸で唯一の上水道完備、人間族とノルドールが平和的に共存するまさに新世界です。
下水は公衆便所を作って対応してます、これもお金がたまったら改善しないとなぁ。台所から出る汚水はまだ対応させてないんだよね……この世界にいろいろ求めすぎかもしれないけど。
M&BはM2TWとかとちがって衛生概念はゲーム上で反映されなかったけれども、ここは現実。当然人口が増えれば衛生問題や治安の問題も出てくる。
兄上様はノルドール連合軍の総司令官、前回の戦いが終わった後、アルウェルニさんは完全に引退して、今はどこかで静かに暮らしているとのこと。第一回連合軍司令官任命会議の時に、今回の一連の戦闘にて指揮をとった兄上様を推挙してくださり、実質ほかの村からの反対や不満の声も強い中連合軍が結成されたのはアルウェルニさんのおかげのようだ。怪我をしていてしばらく会えていないが、やっぱり足の怪我に戦場の空気が悪くさせたのかな……
あと、連合軍といっても主力のイスルランディア軍と3つの国境警備隊しか保持してないんだけどね。
セニアは本の虫だった経験を生かして財務大臣と総務大臣を兼任したような内相というポストについてお仕事、おかげで男爵から貰ったお金や税金を無駄なく使えます。
ちなみに各村がそれぞれ国のように独立して統治しながらも、軍事力のみは連合軍として一本化しています。どうやらほかの村の村長や貴族の皆さんはこっちに兵力預けていれば維持費がなくなるのにメリットを感じたようですな。
俺は情報処理技術者を目指してた経験を生かして、大雑把だったりまとまってない情報を論理的にまとめてかつ、兄上様にわかりやすいようにまとめる作業を行っています。QC7つ道具とか実際こういう場で使うと便利だね。
エクセルとワードとパワーボインとの三種の神器が欲しい今日このごろです。
一応俺の役職というか立ち居地は兄上様の副官かセニアの秘書のはずなのに「わからないことがあったらカズキ殿に聞け」というノリができてしまって、いつのまにか周りから見てずいぶんと偉い立場についています。最近はだいぶ慣れてきたけどね。
俺の作る行政や組織の新人に対する『マニュアル』はだいぶ好評のようでなにより。無料でこういった手引きが読めるのは新しい役人や新人にはありがたいらしい、中身は現実世界のビジネス検定対策本みたいなものなのですかねー。
さてさて、世間では首都として扱われているせいかノヴォルディア国とか間違って言われ始めたノルドール連合ですがだいぶ落ち着いてきたところです。最高意思決定機関は今まで各村で行っていた行政を各村長の協議会によって決定する方式になってます、アラブ首長国連邦や国連安保理みたいですねわかります。
この協議会の議長は、対帝国との戦いで主導となったノヴォ村長となっています。まぁ一部の村は人間が住んでいるノヴォルディアを快く思わない人もいるけど、少しずつ意識を変えていくしかないと思ってる。なによりもまずは人間とノルドールの信頼関係の構築から始めないと。
そしてその協議会で出てきた話が最近北の森(以後北領)でヤツ族の軍閥が略奪のかぎりを尽くしているという報告。そしてその軍閥の名前がレスリーさんの敵討ちの相手であるザルカー率いる「ザルカー軍閥」という話。
正直北に管轄地が増えたのでヤツ族との国境紛争が増えてきている、しかもヤツにとっての南の草原は「ザルカー軍閥」が事実上支配しているのでこれまたレスリーさんが反応するわけです。
「レスリーさん、ザルカーの兵力はわかりました?」
「おそらく600ほどかと思います、兵力の大半は家族を人質に取られたりザルカーの恐怖で無理やり戦わされているようですので、実質ザルカー軍閥の正規兵は200ほどですね。私に任せていただければ600のうち150ほどは切り崩せるはずです」
憎しみとかいろんな想いが詰まっているであろう表情で答えるレスリーさん。でもやっぱりいつもと比べてここ最近落ち着きがないというかレスリーさんのあの冷静さが足りないような気がする。いつもならこんなに意見を押し出してくる人じゃないしね……復讐に人生をささげるとも思えないけど心配で仕方がない。
「カズキ、男爵からの連絡によりますとサーレオン側でもザルカー軍閥に手を焼いていたらしく、近々討伐軍を派遣するようです」
「それではサーレオン側と協力して兵を出せないか検討してもらえないでしょうか……カズキ、軍は出せますか?」
「正直帝国がまだ心配だからあまり大規模には派遣できないです、徴兵なんてしたら今回の戦いに参加した人からせっかく村に戻ったのにってことで士気やノヴォルディアの信頼にもかかわってきますし。常備軍のほとんどは国境警備隊とイスルランディア軍ですから、もし出すとしても出せるのは兄上様のところから100ちょっとでしょうね」
「くっ……」
レスリーさんにザルカー軍閥の戦力を450まで切り崩してもらったら、ノルドール連合北領の治安維持を名目として男爵とまた一緒に戦うことになりそうだ……あんまりというか戦争はしたくないんだけど仕方がない。実際にノルドールにも被害は出てるんだ、もはや見過ごせるレベルじゃない。
100年の戦争より一年の平和が勝るっていうのは本当なんだなぁ……。
でもさ、今俺見過ごせないとか戦争したくないとか思ってるけどさ……なんか俺、最近どうしたんだろう。よくわかんないけど言葉にはできないというかいらいらするというかなんと言うか……ああもう、考えてもしょうがないか。
あとがき
対帝国編は終わって今回からレスリーさんの敵討ちが中心となるザルカー討伐編となります。
12/28
ザルカー討伐編を一旦削除して書き直しします。なんというか見直したりすると自分で書いたのに納得がいかないもので……前回次で最終回と言ってごめんなさい。