前回のあらすじ
・カルディナの口調
・冷静さダウン中
・移り行く死亡フラグ
<和樹視点>
昨日の各村長会議によって正式にザルカー軍閥討伐が決定された。日程はバーローシールド城から出撃するヘレワード男爵軍400と北領国境警備隊駐屯地にて「たまたま」遭遇するために、1週間後に出撃となった。
前回のラリア近郊の戦いの時もそうだったように、今回もノルドール軍との共同作戦を事後報告で済ますつもりだよあの腹黒男爵……よくもまあ逮捕とか召集食らわないなぁあの人も。
「最終的に出撃させる兵力はどの程度になりそうなんですか兄上様」
「まあそうだな、まず帝国が南にある以上は南領警備隊は動かせん。それに全軍と将官を動かすのもまずいだろう……まあそれでも兵力的な問題でイスルランディア軍を動かすしかないだろうが」
やっぱりなぁ。確かに帝国の再侵攻(さすがに今は無いとは思うが)の危険性を考えると全軍と将官を動かすのはいろいろと住民にも不安を与えそうだ。
現在、以前からノルドール勢力圏にある土地(以後南領)を防衛しているのはイスルランディア軍と1つの国境警備隊。そして厳密には防衛兵力ではないもののホルスさん率いる隊商警備隊だ。
イスルランディア軍 200
・本隊 100 弓騎兵中心
・和樹隊 50 弓兵中心、人間族とノルドール混成
・レスリー隊 50 人間族歩兵中心
国境警備隊×2(北領・南領)100
・北領警備隊 50 弓騎兵中心、人間族とノルドール混成
・南領警備隊 50 南領貴族騎馬兵中心
ホルス隊商警備隊 100
・本隊 100 帝国軍団兵中心
捕虜になっていた元軍人さんが多数帰国してくれたおかげで、兵力を減らさずに徴兵していた村の農民達の大半は返してあげることができた。
最大の懸案事項である帝国への押さえとして、腹黒男爵からの情報ではサーレオン側がラリアに守備隊300とは別に400の部隊を配備しているらしい。
一方帝国側には、カルディナ達諜報に適した人を帝国側に送り込んだり、ホルスさんの旧知の皆様に情報提供をお願いしたところどうやらこちらの国境に一番近いシールドストーム城に詰めている兵力は200で、統治者であるジャスタス総督を失った帝国主要都市イスズには再編成中の300ないし350の部隊が居るそうだ。
少なくとも主要都市には少なくとも300程度は兵力を常駐させるのが一般的なので、それに加えて再編成中のイスズの兵力はほぼ無視できると見ている。
シールドストーム城のリマスク司令ら200で即応可能なのは100以下とこちらでは予測している。そうなると帝国軍は帝国国内での防戦はまだまだ可能だがこちらへの再侵攻作戦は難しいと予測できる。一応リマスクさんの部隊100以下と渡り合えるようにこちらでも準備しないといけない。
その対応兵力としてはホルスさんの護衛兵と南領警備隊で対応できると思う。ただ現在の主力軍であるイスルランディア軍が討伐のために本国を留守にするというのは、野心がくすぶったままの帝国が再侵攻という馬鹿な真似をするかもしれないという不安を市民に振りまくことになる。
だからといってイスルランディア軍が出撃しないとなるとノルドール連合から派兵できる部隊はたったの50だ。いくらレスリーさんがザルカー軍閥を450程度にまで切り崩すとはいっているものの、失敗した時を考えて少なくともできるだけ兵力は確保しておきたい。他のヤツ族が応援に来る可能性も……いや、それはないか。
どっちにしたって中途半端な兵力を派兵しても損害が出るだけだ。やるなら全力でってことかな……?
「ではサーレオンで傭兵を雇いますか? 兵力はこれで対応できるのでは?」
「国庫はセニアの報告によると今回の討伐軍の編成だけで手一杯だ。レスリー隊の編成ですでに傭兵を雇ったから雇用相場も上がっているだろうし、なにより北領の整備にラリア~ノヴォルディア間の『さーびすえりあ』の建設もあるしな」
街道の警備にあたるホルスさんの部隊は降伏した軍団兵が中心のため、街道を巡回させるにも速度的な意味で無理があるしラリア~ノヴォルディア間はけっこう長い道のりだ、どこかで一夜明かすことも考えられる。帝国~サーレオンをつなぐ道が現在西にしかないが、この道が開通すればラリア~ノヴォルディア~イスズという商業ルートが生まれ、莫大な利益と経済圏を作る可能性が考えられる。
そのために安全に隊商が休んだり夜を明かすために40ずつの兵士が駐屯する兵舎を隣接させた高速道路のサービスエリアみたいな場所を2箇所に設置してみようという考えだ。あまりの20名が午前午後と1回ずつ街道を警備する予定。
俺がサービスエリアについて説明したらすぱぱぱぱぱーんと中身をつめてくるセニアとノヴォルディアの官僚の皆さんすごいなぁ……
最近は基本的に襲撃してくる夜盗やレッド兄弟団は10程度、多くても40だ。馬を持っている夜盗は少なく、十分に隊商護衛兵で対応できると見ているがその護衛兵も夜や疲れたときは休息が必要と思ったわけですだ。サービスエリアが儲かればそれだけ税収も上がる。
それに護衛兵を雇う数を減らせる隊商側としても、おいしい話じゃないかと。
「……そうだな、悪いがカザネは残してもらえないか、あいつが居ないとお前が抜けた穴を埋められそうもない。さすがにセニア一人ではつらいだろう」
「そうですね、カザネなら内政もでき……って兄上様、和樹隊も出撃ですか? 前回の損害がまだ……」
「『イスルランディア軍』で出ると言っただろう。稼働兵力が足りんのだ……お前たちは輜重隊等の後方防衛に充てるようには努力はする。まぁ相手の出方次第だ」
「……兄上様のご命令とあれば。可能な限り損耗を避けるように努力します」
まだ傷が痛む程度の兵も出撃対象にしないと、充足間に合いそうもないかなぁ。それに俺が戦場に出ると今までの経験上かならず重症だからなぁ……だからって今回もそうなるとは思わないことだ。なぜならそれはいっつもやる気満々のセイレーネとカルディナに守ってもらうから。
……いや、我ながら情けないのはわかっているんですが。でもセニアのために絶対に帰ってこないといけないし……そうだ、今回の討伐が終わったらヤツ族の工芸品でもお土産に持って帰ろうかな、もちろん略奪や戦利品じゃなくて購入でだけど。
さてさて兄上様との会議の後、ぶらりと立ち寄ったのは鍛錬場。兄上様にしごかれたころは10人ぐらいが訓練できる程度だった訓練場も今じゃ改築されて多い時は50人以上が訓練している。大きくなったなぁ鍛錬場。
「あ、隊長っ!おい蛆虫どもっ!!隊長がお見えだ、はぁ食いしばって立てっ!!」
「「「サーイエッサッーーー!!」」」
「お、おう……これはなかなか」
そしてここで現在訓練を受けているのは俺の部隊。核をなしていたノヴォ村長の村人がノヴォルディア設立に携わっているため、ほとんどが北領からのノルドール・人間族混合の義勇兵を中心とした部隊だ。
そしてヤツ族対策として、現在弓兵を中心とした部隊に再編成中の真っ最中だ。ちなみに大体義勇兵の皆様の半分は新兵だったはず。
まあということで隊商護衛兵時代に訓練の経験を持つゲデヒトニスが訓練教官として出撃までの間みっちり扱いてます、やっぱり新兵訓練といえばハート○ン軍曹の偉大なる教え『海兵隊式』しかないだろう。
映画のまんまをゲデヒトニスに教えたところ「効果的な予感がしますっ!!」といってなぜか採用されてしまった……いいのかな。
ちなみに新兵の訓練は最初はキャラ的にセイレーネがする予定だったのだが、いつもは凛々しく仲間内ではやさしいゲデヒトニスが妙にやる気をだして「や、やりますっ!!」とのことなので任せてます。正直なところ結果だけ今こうして目の前で見ていると適任だったかなと思わざるをえない。
そして熟練兵というか経験者はセイレーネに訓練というか教練をお願いしている、まあセイレーネの趣味でいつも模擬戦ばっかりしているそうだけど。
「隊長、今日はどうしましたか?も、もしかしてぼ、ぼぼぼ、僕にあ、会いに来た、来たとかかっ!?」
「おちつこうかゲデヒトニス、はーい深呼吸ー吸ってー」
「すーーー」
「吐いてー」
「はーーー」
「吐いてー」
「はー……う……」
「吐いてー」
「は……げほげほっ」
なんと、こんなコテコテが成功するとは思わなかった。あ、そういえば新兵たちが見てるの忘れてた……あー、これは指揮と士気の問題でまずいんじゃないかな。全面的に俺が悪いんだけれども、俺とゲデヒトニスがこのままではなめられてしまう。
な、何とかせねば……こ、ここはほんのすこししかない威厳とオーラを最大まで高めてこう大物っぽい雰囲気をこう某サ○ヤ人的にシュワシュワと出すイメージで。
「……さて諸君」
「「「……」」」
「悪い、変なところ見せたな」
「「「問題ありませんサーーーッ!!」」」
び、びびるわぁーっ!?いやぁスイマセーン、本当に海兵隊みたいになるとは……仕方ないねってなんで俺まで外人になってるんだ。
「じゃ、ゲデヒトニスは訓練を続けてくれ。邪魔して悪かったね」
「い、いえとんでもありません……えへへ」
「「「「……」」」」」
い、いかん。目線が、目線がヤバイ。ここはあれだ、さっきの大物っぽい雰囲気にさらに俺のなけなしの覇気(笑)でこう隊長っぽい何かをこう心の中で出しておこう。
「では、俺はこれで……」
「はいっ!……お前ら何突っ立ってるっ!隊長に敬礼っ!!」
───ザッ!!
「隊長、相談したいことがありますので後で部屋にうかがわせて貰いますっ!」
「わかった……」
そしてそのまま不動の姿勢で敬礼された男達に見送られながら俺は冷や汗だらだらで鍛錬場を後にした。そういえばあの太ってるやつの目がよくわからんが危ない気がしたんだが……。
<部隊員視点>
「この○○○の蛆虫どもっ! 踊りをしてるわけじゃないんだぞっ!! これは殺し合いだっ!! 相手は砂袋じゃない、敵だっ!!」
「「「「サーイエッサーッ!!!!」」」」
「ふざけるなっ!!○○落としたかっ!! 腹から声を、相手を声で殺すほど声を出せッ!!」
「「「「サーイエッサーッ!!!!!」」」」
(こ、これはしんどい……)
(これは敵、これは敵、これは敵、これは敵、これは敵、これは敵)
(あんなかわいい子がこんな……なにがあったんだ)
(ハァハァ……モットノノシッテ)
「あ、隊長っ!おい蛆虫どもっ!!隊長がお見えだ、はぁ食いしばって立てっ!!」
「「「「サーイエッサーッ!!!」」」」
(あれが噂の隊長か……)
(あれも敵、あれも敵、あれは……隊長だ)
(あの人が俺達の隊長か、『ぐんそう』があれだからいったいどういう人なんだ)
(ゲデヒトニスチャンニテヲダスノカノイツ……)
「隊長、今日はどうしましたか?も、もしかしてぼ、ぼぼぼ、僕にあ、会いに来た、来たとかかっ!?」
(『ぐんそう』がああも可愛くっ!?……何者なんだ俺達の隊長は)
(ぐっ……俺は、隊長になれない……)
(なんだ、『ぐんそう』も女の子らしい一面があるじゃないか)
(ボクッコ……ハァハァ)
「じゃ、俺はこれで……」
「はいっ!……お前ら何突っ立ってるっ!隊長に敬礼っ!!」
(な、なんだこの威圧感……これが隊長の本当の姿)
(これが……『ぐんそう』をも従える隊長の本気かっ!)
(ほぅ、さすが『ぐんそう』をあそこまで飼いならすだけはある)
(グ……ゲデヒトニスチャントボクトノサイダイノテキメ)
あとがき
寒いのでSSを書く時に布団かコタツから抜け出せなくなってしまった……