前回のあらすじ
・兄上様はシスコン
・兄上様は人間嫌い
・兄上様自重
<和樹視点>
───ノルドール・ノヴォ村長の村
やってきましたノルドールの村。うん、あたりまえだけどマジ中世の村。ゲームの村と同じだよこれ、だめだこの風景を見ると村長を探す癖がついてるわ。
いろいろ驚いていた俺だが、ほかの人からするといろいろじろじろ見ているように見えたのか、兄上様から「ジロジロ見てるんじゃないこのニンゲンがっ!」と怒られました。そんなこといわれてもシカタガナイジャナイカー……
その後村の中央ぐらいにあるちょっと大きめの館っぽい(公民館?)ところに兄上様とセニアさんに連れられてはいりました。
そしてただいま俺は村の偉い人に囲まれていろいろとちびりそうです。
すばらしい殺気のこもった周囲からの目線。やめて! 俺のライフはもう0よ!!
まぁそりゃ兄上様がいくらノルドール内でも筋金入りの人間嫌いであってもノルドール全員がそんなわけないって思ってたけど……ってそんなことはなかったよ! そもそもゲームでも人間の作成キャラとノルドールは友好値最悪だったし、みんな人間を敵視してるんだった。
「カズキ……といったな、まずそちのいう別世界とはどのようなところかまず説明してもらおうかのぅ」
声の方向に振り向くとそこには黒いロープを羽織ったおばあさんが。まさにナ○シカの大ババ様みたいな人が出てきたよ。エルフっぽいノルドール人も年取るのね、何歳って聞いたら千年とか言われそうだから笑えない。
というかみんな怖いです、ぼくはわるくないてんいしゃだよ。ガクブル
「カズキ?」
心配そうに、うつむいた俺の顔を見るようにこっちを覗き込むセニアさん。マジかわえぇわぁ。残念ながらセニアさんを眺めてると兄上様と周りの目線が時間が立つたびにきつくなってるので、俺は急いで説明し始めることにした。
「はい、改めまして自己紹介させていただきます。自分は加藤和樹と申します。専門学校生をやっております。まず、最初に皆様に知って頂きたいことがございます。
自分はこの世界が物語として存在する世界から来ました。そして、その物語を体験できる装置が自分の世界にはあります。
その装置を使い自分はこの世界の出来事を知り、多少ではありますが体験したことがあります。とはいえ、なぜノルドールの皆様の言葉が理解できて、かつ皆様に通じるのか。なぜ気がついたらあの森に居たの。残念ながら自分には解りません……」
めっさみんな驚いてるよ、当たり前だよ俺だって自分で言ってて何言ってんだって思ってんだからさ。
「うーむ、いまいちわからんがの。それは、わしらが死んだ後のずっと後の世界から来て、歴史を元にした物語を体験できる装置を使ったからわしらを知っている。そういうことかの?」
周りにいた好々爺っぽい人が話しかけてきた。なんとか変な方向に勘違いされないように説明できればいいんだけど、うーん、うまく説明できないなぁ。
ちなみに転生SSとかで自分がキャラクタで自我なんてないみたいなこといわれて混乱したりする描写とか見たことあるから、未来から~的な事にしたり、物語として本に残っていたとかしとけば、神話の世界とか歴史を基にした物語とかに思考がいってくれるとおもってました。
かなりこじつけで理解するのは厳しいですね。はい自分でもわかってます、即席な自己論理武装です本当にありがとうございました。
「それはよくわかりません、あくまで物語でしたので。どの時代の歴史を元にした物語なのかもわかりません。もしかしたらどこかの国の伝承を元にしたのかもしれませんし」
「時代、のう……ふむ、ではそちらの知っているこちらの世界の現状をきいてみようかの?」
好々爺っぽい人の質問に、さっきの大ババ様がうなづいた。どうやらこのおじいさんがいろいろ質問してくるご様子。大ババ様っぽい方はちょこちょこ横に立っている人となんだか話し合っている。
それにしてもこちらの世界……今のペンドール大陸の情勢のことかね、地図とか勢力とか言えばいいのかな?
「まず、あなた方は大陸の東に位置する森に住まうノルドール族の方々。そしてこの森の北には領土を持たない遊牧民的な生活を送るヤツ族、そして西にはサーレオン王国。南にはストーム……なにがし城を有する帝国……で合ってますか?」
「うむ、間違いない。じゃが城の名前はシールドストーム城での。あとできれば誰か知っている個人を言ってみてくれんかね、時代まで合っているかはまだわからんからの」
「あの城は俺が子供の頃からあるからなぁ」
「ニンゲンからすれば遥か過去といったところかのぅ」
周りのノルドールの人たちの一部が興味を持ってくれたようだ。まぁ、大方の人たちは今にでも俺を殺したいって目で見てるけど……
それにしてもこの好々爺(仮)さんめっちゃ頭柔らかいな、俺があの立場なら絶対こんな的確な質問できないと思うけども(汗)
それにしても人物で知ってる人……あーあんまり思いつかないなぁ。コンパニオンの人でも言ってみるか、それとも国王様とか……覚えてねぇ。
そういえばやたらと身の上話が悲しい話で覚えてる人が居たな。たしかマディガンの英雄 ジギスムント・シンクレアさんだっけ?
「じ、人物ですか……北のレイヴンスタン王国か西のフィアーズベインにジギスムント・シンクレアという黒い騎士甲冑を着た人物がいるはずですが。自分の知識ではまだご存命のはずです。率いていた部隊は壊滅したようですが……」
ジギスムントさんの名前を出したらまさかの周りのノルドールさんたちがおおーとなにやらざわざわし始めました。なんでせうか? これってもしかして地雷でした!?
「ジギスムント様なら私知っていますよカズキ、以前『マディガンの英雄』と呼ばれ義勇軍を率いて賊の討伐をされていた方のはずです」
「以前、ということは現在はやはりもう野に下っているんですか?」
「それはわかりませんが、最近活躍の噂は聞きませんね。以前はこのノルドールの人のあいだでもよく話題になる人でした」
地雷踏んだかと思ってあせっていたところにセニアさんが解説をいれてくれました。
にしてもジギスムントさんも俺とあの野郎どもと同じ人間族なんだけどいいのかね? 集まった方々の中には明らかに尊敬の念がうかがえるんだけど。
「ニンゲン、ジギスムント殿のようにニンゲンにも弱きを守り、悪を打ち砕く誇り高きものがいることぐらいは我らとて知っている」
わーお、人間嫌い党党首の兄上様がそういうくらいなんだから、ジギスムントさんマジすごい。ゲームで彼をスカウトする時に払う4000デナリ以上払ってでもこの世界ではぜひパーティーに加えたい。
「さで、カズキとやらよ。そちの話は大体わかった。で、これからどうするつもりかの?」
「この村の場所を知った以上、ここで殺しておくべきでしょう大ババ様」
「そ、そんなっ!彼は私の命の恩人なのですよっ!?」
兄上様いきなり口封じですかっー!? 命助けて死亡フラグ拾うとか俺ついてなさ過ぎるだろ。
周りの人たちも「ニンゲンに村の場所を知られたからのぅ」とか「確かにここで殺しておいたほうが……」とかまてぃ、俺はまだ死にたくないよ!
というかつれてこられたのに知られたとか理不尽です。
と、ここで先ほどの好々爺(仮)さんが助け舟を出してくれた。
「大ババや、このニンゲンはわしが引き取るでの。ニンゲンの生活知識や、こやつの言う物語の知識を生かせればノルドールの民のためにもなるでの」
「ひ、引き取るって、ニンゲンを!?」
「お気をたしかにっ! こやつはニンゲンですぞ!!」
周りの人からすると人間族引き取るのってすんごいんですね。爺さんさすがっ! もうこの人に任せるっきゃない!!
「助けていただけるのならば、非才の身なれど、全身全霊をもって職務にあたります!」
なんだか時代がかった言い方になってしまった。
でも、俺だってこの先生きのこれるかわからないからもう全力全壊で保身に回りますよ。ノルドールの村でこの時代の知識とかゲッチュウしておかないと野垂れ死にそうだし。
「大ババや、よろしいですかの?」
「うむ、そちのよきようにするがよい」
よしっ!再び死亡フラグを回避したっ!!
「よかった……」
おうセニアさん、あんたのおかげでっせ。もー軽く涙目になりながら俺が助かったのを喜んでくれるなんてもう……いかん萌える。
「ではカズキといったな、ついてくるでの」
「サーイェッサーッ!」
「む?」
よし、反射的にしてしまったがこれで英語もないっぽいのが確認できた、いやいやまだ決め付けるのは早いか。次は何語言ってみようか。
とりあえず転移して即死亡は避けられたうえ、野垂れ死ぬこともなさそうなので一安心。いまは黙ってこの好々爺(仮)についていこう。
さて好々爺(仮)の家に到着しました。現実世界では寮生活だったから家が広く感じるなぁ。あ、そういえばこの好々爺(仮)の名前聞いてなかった。
「すみません、あなたのおかげで命拾いしました。この時代でできることはまだよくわかりませんが、これからよろしくお願いします」
「なに、気にせんでいいでの。わしもタダで助けたわけではないからの」
かっかっかと好々爺(仮)が笑う。こんなおじいちゃん前からほしかったんだよな。見た目もエルフ耳じゃなけりゃ某山岳地帯の少女のおじいさんみたいだし。
「さて、わしの名前はノヴォルデットじゃ。この村の村長をやっておるでの」
「ノヴォルデットさんですね。これからよろしく……って村長様でしたか!? し、失礼しました!」
村長さんだったんですか!? 、見た目から村長~って人だしなぁ。まてよ、そうすると大ババ様と呼ばれた人はいったいどんだけ生きているんだ。
さすがに村長より若くはないだろう。もう千年どころか万年でも納得してしまいそうだ。
「くっくっく、硬くならなくてもいいでの、では早速だがなにかこの村になにか貢献できそうなことはあるかの?」
「知識ではなく、即実行できそうなことですか?」
「そうじゃ、まずは知識を教えてもらうよりもカズキがニンゲンでも我らノルドールの民のために働いてくれる”友”として認められるのが先での。でないと今日の夜にでもセニアの兄に寝首をかかれるでの、かっかっか」
兄上様はやっぱり危険すぎる、洒落にならんとです。となるとこの村のためにわたーしにもーでーきることーは現代の知識を生かすこと、やっぱり知識じゃんね。
そういえば、この時代は地球の過去とは違うから意外と中世にあってもこの世界にはないものがあるかも。ゲーム内でも攻城兵器の投石器とかかなり小ぶりだったし、トレバシェットとかバリスタ作れば城攻めかなり楽なんじゃ……
でもノルドールの人たちは別に城に攻めるつもりないだろうしなぁ。日常で役に立ってすぐ使える知識か……あ、あるじゃん! 助けて、アルキメデス先生~!
「あの、今井戸からどうやって水を汲んでいますか?」
「む、どうもなにも桶に紐を付けて井戸に投げ入れてすくっているがの。別に楽な方法があるのかの?」
「ええ、俺の世界にはポンプというものがありまして……」
とりあえずポンプの説明をしてみる。あ、なんかギコギコする手押し方式(?)のポンプは原理よくわかんないので初期のねじ巻きみたいにしてくみ上げるタイプを教えました。欠点として一度水をポンプで取り出すと圧力が自然に下がるまでダバダバ流れで続ける=地盤沈下の危険な所。
ヘウレーカとかヒストリエとかあのへんの本とか読んでると、無駄に古代ギリシア期の技術とか機械仕掛けとか覚えるよね。まぁ技術が好きで俺専門学校に入ったわけだし……
原理ともらった紙に羽ペンで図を描き描きしていくと「ほほぅ!」と喜んでました、古代ギリシアで作れたんだし、加工技術に関しては近代レベルのノルドール人なら作れるよね?
「こんな感じなんですが、作れそうですか?」
「これならいけるでの、当然カズキも手伝うんじゃぞ」
「サーイェッサーッ!」
「カズキの世界では返事は『さーいえすさー』と言うのかの、ふむ」
「あ、自分の世界にもいろんな国があっていろんな言語があるのです。自分が話しているのは日本語、今のは英語というものです」
「ノルドール語がそちらの日本語とやらに対応しておるのかの、『えいご』とやらは……サーレオンかの? サーと呼ばれる人がいた気がするんじゃが」
サーレオン王国はロングボウ兵とかいるからイングランドと対応してるのかな。
でもサーレオンとは隣接してるのに言葉わからないのか。そういえばあの野郎どもが何言ってるかわかんなかったし。あ、俺の英語スキルが低いんですねわかります。
「お隣の国なのに言語よくわからないんですか?」
「うむ、基本的にこの村の住人も含めて人間族について詳しい知識を持ち合わせているのはいないでの。まあセニアのような知識大好きノルドールでなければ他国のことを知ろうとなんぞせん」
知識大好きノルドール(笑)
でもたしかに、携帯電話にものすごい反応を示していたセニアさんを現実世界の図書館とかに連れてったら一月くらい出てこないだろうな。
いかん、学校の窓辺で放課後一人夕日を浴びながら静かに本を読むエルフ……見たいっ!
「他にこの村や技術力で作れそうなものは……」
「ほほーなるほどのぅ。それとな、あまり村長だからといって固くならんでいいでの。わしの家でこれから過ごすんじゃ、かしこまっていては肩もこるじゃろうての」
「はい、そういうことでしたら俺も助かります。それでは、今日からよろしくお願いしますノヴォ村長」
「うむ」
とりあえずノヴォ村長にネジ、上下水道、衛生概念、人間の倫理観(現代日本編)、日本食を教えておいた。
これならばきっとできるって信じてる。目指せうどんっ!
あとがき
言語に関しての設定等はオリジナルです。ゲームではみんな英語(パッチ入れれば日本語)です。