前回のあらすじ
・はらぺこカザネ
・最近の違和感
・カルディナ襲来
<カルディナ視点>
今日は姉さんのことについて自分ひとりで考えていても何も思いつかないだろうと思って、夜だけど隊長に相談しようと隊長の部屋までやってきた。
到着した隊長の部屋の扉の前にはゲデヒトニスが居て、耳を扉につけたと思ったら顔を真っ赤にしてあたふたして……盗み聞きをしているんだろうか?
「ゲデヒトニスは隊長の部屋の前で盗み、聞き?」
「か、カルディナ!?」
私が声をかけたとたんびくんと体を跳ねさせて、ぎぎぎぎという金属のすれる音が聞こえるかのようにゆっくりとこちらに首を回す。そんな行動をとったらなにかやましいことをしたんじゃないかとすぐにわかってしまうと思うんだけど……あわあわ言っているゲデヒトニスもかわいい、かな?
「どうしてあせって、る?」
「あ、ええとあせってはないんだけど、あのえと、その今はちょっとまずいというかなんと言うか……そう、これは不可抗力による偶発的な仕方のない事故なんだよ! と、ところでカルディナはこんな夜遅くにどうしたのかな、かな?」
「……隊長に相談が、あって?」
「そっか……と、とにかく今は隊長は部屋でちょっと用事があるらしいから明日の昼ごろとかにしたほうがいいと思うよっ!」
えと、別に隊長が今夜なにか用事があるのなら明日でもいいけど、ゲデヒトニスの慌てようが何となく気になる。今までのことをまとめて今扉の向こうがどうなっているのかとゲデヒトニスが何で焦っているか推理してみようかな。
・その1、夜に隊長の部屋の扉に耳をつけて盗み聞きしていたこと。
これは入ろうとしたら話し声が聞こえてきて気になってしまったという可能性もある。あんまり感心できるものじゃないし、通路から丸見えで怪しすぎる。私以外に見つかってたら相当恥ずかしいんじゃないんだろうか?
・その2、ゲデヒトニスの顔が真っ赤。
ゲデヒトニスが顔を赤らめるなんてことは隊長にほめられた時と、色恋沙汰の時だけ。隊長の部屋ということを考えると、隊長が誰かと一緒に居てゲデヒトニスのことをほめてるかいちゃいちゃしているかのどちらか。もしくはさっきほめてもらったばっかりということも。
ここから想像するに───
「えと、隊長にほめて、もらった?」
「えへへ、実はそれだけじゃなくって……って僕は何を言ってるんだ!?」
えと、ゲデヒトニスがほめてもらうだけじゃなくって他に何かしてもらった……荒い息、赤い顔。も、もしかすると隊長その、えと……なにしたのかな?
まあ私が考えていることでなかったにしても、隊長のことが気になって盗み聞きするなんて周りの目を考えたほうがいいと友人として思うんだけどな。
「なんで部屋の中がそんなに気に、なる?」
「いや、だからこれは不可抗力で……」
「混ざればいいの、に?」
「ま、ままま混ざるってえとそのうえぇっと!?」
扉から飛び跳ねるようにして離れてゲデヒトニスは頭から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。すこし『いじる』しすぎたかも。
今思い直してみるとゲデヒトニスって結構乙女なところがあって、それに今目の前の彼女は女の私から見ても……いけない、私にそんな属性はないは、ず?
ま、まあ要するにもうすこしゲデヒトニスが積極的なら隊長と浮気かセニアさんと3人でくんずほぐれずな展開になってもおかしくない気がする。
なんにせよ、今日はちょっと隊長に相談は無理みたい。でもゲデヒトニスから元気をもらったというかなんというか慌ててる姿を見たらさっきまでの暗い気持ちがすこし楽になった気がする。
「とりあえず今日は寝、よう?」
「うんそうだねそうしようそうしなきゃそうでないとそうだよ」
「『ななめよんじゅうごど』で殴、る?」
「じゃあおやすみなさいー!」
ゲデヒトニスはぶつぶつ言い出したので、隊長から言われた「壊れたかなと思ったら『ななめよんじゅうごど』で『ちょっぷ』しろ」と教わったので、たたこうと思ったら全力疾走で逃げてしまった……私も帰りますか。
「隊長、それじゃおやすみな、さい?」
<和樹視点>
───おーい、朝ごはんだよー
───いってらっしゃいな、学校がんばってね?
───次のテスト範囲はここだからちゃんと補修して置くように、あ予習だね、ん、これは復習か。はっはっは
なんだこの声……
───おい副部長、部室の鍵は持ってきたか? 持ってこなかったと思って事前に私が持ってきたぞ
───おい和樹、昨日駅前のPCショップでCPU大安売りしてたぜ!
───おい聞いたか、クリスマスが中止になったってよ!?
ああ、そういうことか……いまさらだろ、こんなこと夢に見るの。
───あ……た……
ああ、もう聞きたくない。せっかくこっちの世界が俺の世界だって思えて来たんだ……もう思い出させないでくれよ。
「あなた、どうしたの?」
「え……あ、うん、なんでもない。とりあえずおはようセニア」
「おはようじゃないです……悪い夢でも見たの?」
「えっと、うん、なんでもないよ。そんな気にするほどでもってふもきゅっ!?」
朝目が覚めて、まず見えたのは不安そうにこちらを見るセニア。そしてまだ頭がぼわーとしている時に急に頭が引っ張られてその後に来たのは、ぼわーっとした意識を一気に覚ますやわらかい感触……や、やはりこれは少なくともEはあるぞ。
「なんでもないわけ……ないじゃない」
「ふぇ?(え?)」
「じゃあどうして、泣いてたの?」
「ぷっは……あ、あれ? ほ、本当だ。あ、あはは」
抱き寄せる力が弱まったので名残惜しくもすばらしいセニアの双丘から顔を離してみると、そこには濡れた後……確かに位置的によだれでも鼻水でもないな。
しかしこんな所を見られるとは恥ずかしいなぁ。幼稚園のころに寝小便垂れた時のごとく恥ずかしいかもしれない。あ、もちろんたとえだよ。
「あなた……その、もしかして」
「んー今日もいい天気だね、さーて今日も仕事がんばっちゃおうかなーっ! じゃ、俺は着替えて朝会に遅れないように食堂いってくるよ。じゃあまた後で!」
「ちょ、ちょっと!」
短距離走選手もびっくりかもしれないような気がしないでもないと思われる可能性があると推測できなくもないダッシュで急いで部屋から逃げ出す俺。服はどうやら昨日仕事着のまま寝たみたいで……せっかくのセニアとの夜だったのにこの服の様子だとすぐ俺爆睡したっぽいな、ごめんよセニア。
さてさて飯食って今日も一日がんばろー……恥ずかしさのあまり勢いで飛び出してしまったからさて、このあとどうしよう。
まあそんなこんなで、頭の中がこんがらがっているというか恥ずかしいという気持ちともちと違うよくわからない気持ちに急かされるように飛び出した俺には部屋から出た直後にセニアが言った言葉を聞き取ることができなかった……いや、聞き取りたくなかったのかもしれない。
「帰りたいのですか……カズキ」
あとがき
新年明けましておめでとうございます、これからザルカー編はずっと書き直しばっかりですが今年もお付き合いください。では