「……この物語は、ノヴォ村長の村の日常を淡々と描く物です。過度な期待はしないでください……隊長、これでいいですか?」
「うん、いい感じ」
「えと、馬鹿ばっか?」
「何をしとるでのお前達」
~まだノヴォルディアと呼ばれる前のノヴォ村長の村にて~
<和樹視点>
「兄上様ちょっと聞きたいことがあるのですが」
「む、どうしたカズキ」
「魔法ってあります?」
───ピキッ
うわっ、空気が凍った。
今俺が空気を凍らせたのは部隊の訓練が終わって、四人娘や兄上様にセニアさん等々みんなでお昼ごはんタイム中の時。
で、でも……気になるじゃないか! 魔法だよ魔法、こんなファンタジーなペンドール大陸なら魔法の一つや二つあるでしょ!? 何、俺そんな変なこと聞いた!?
「……隊長、以前話してくれた『ちゅうにびょう』のことは実体験からだった?」
「さすがに魔法……ぷくくっ、あっはっはだめだってっ! いくらなんでもその年で魔法って! アタイの腹筋が持たないってばわはははは!」
「隊長疲れ、てる?」
「そ、そうですこの後一緒に鍛錬しましょう! きっと気分転換になりますよ!」
「すこし訓練を厳しくしすぎたようですね、今後注意しましょう」
「あの、僕はきっとあると思いますよ!? だって夢があるじゃないですか!」
あーぼっこぼこですな人間族の皆様。しかもレッドさん、腹抱えて笑わないでください……涙目になるほどツボに入ったんですねわかります。
そしてカザネ、べ、別にあの厨二病の例は実体験なんかじゃないんだぞ!?
「またいきなりなんで魔法なんじゃ?」
「カズキ……どこか頭を打ったのですか?」
「もぐもぐ、精霊の加護があるからあるのではないかもぐもぐ」
うぐっ、兄上様はともかく村長もセニアさんもひどいなぁ。だってデモニックウォーリアー(ちゃんと書庫の本で調べた)とかいう死体の騎士とかが悪魔崇拝軍にいるそうじゃないですか、だったら魔法ぐらいあるのでは?
それにしても兄上様とゲデヒトニス、そしてカザネはよく食べるなぁ……そろそろあわせて30人前は食べとるんではないでしょうか?
「そ、そんなに言わなくてもいいじゃないですか……で、具体的に言うとこう手から刀をぬ~っと出してみたり魔法の砲撃でばったばったとなぎ払ったりしてみたいんですよ」
そう、俺にとっての魔法とは「今はこれで精一杯」レベルでなく、「受けてみてっ! これが私の全力全壊っ!!」レベルです。ただの魔法には興味ありません。あ、でも「今のはメラだ」とかも言ってみたいかも……ふふふ、俺自重ふふふ、俺自重ふふふっ はっ!? どこからか電波が……
「も、だめ、酸欠になるっぷくくっ!」
「衛生兵、呼ぶ?」
「……きもちわるい」
ふっふっふ、虹裏……じゃなかったペンドール大陸ナンバーワンの厨二病であるこの俺を知らないとはって何を考えているんだ俺は。いかんいかん、魔法のことを考えすぎて夢が広がりすぎた。
それにつけてもさっきからカザネひどいな、カルディナも何気に哀れんだ目で見ないで欲しいな。心が痛いよ。
「え、ええとですね多分召喚とか使役のような魔法はあると思いますよ、実際に悪魔崇拝軍の死人が動くのをサーレオンで見ましたから。」
「そうですね、でもゲデヒトニスそれは不死というのが正しいのではないでしょうか? まあ私は魔法を見たことが無いのでなんとも言えませんが」
なるほど。つまりゾンビの悪魔崇拝軍と交戦したら映画とかのセオリー通り頭を狙えば倒せるのかな。
ってそもそも今俺が知りたいのは魔法だ、物体の壊れる線とかより……まてよ、精霊さんがいるならセルシウスとかいるんじゃないか?
ま、ないよな……
「ふむ、ではご飯を食べた後に精霊様の宿る木に行ってみるかの?」
「もぐもぐそれじゃあ俺の新しい剣を一緒にお願いするもぐもぐもぐもぐ」
「兄上、ちゃんと飲み込んでから喋ってください……きたないです」
「あ、それ僕も見てみたいです」
「えっ本当ですか? それは興味が」
精霊様の宿る木ってあれですか、ゼルダ的な木なのかな。いやむしろこのー木なんの木気になる木的なものかも。
興味があるし見に行ってみましょうか、笑いすぎてびくびく痙攣しているレッドさんはほっておいてってちょセイレーネ! 俺の春巻き食べたなっ!! 知らない振りしても無駄だぞっ
「セイレーネ、俺の春巻き食べただろう。ほっぺについてるぞ」
「え、ど、どこですか!?」
「コテコテだけど自爆したな、というわけでセイレーネのから揚げもぐもぐ」
「ああっ私のから揚げが……」
「……そもそも勝手に隊長の春巻きを『ぼっしゅーと』したのが悪い。あと、おかわり」
どの世界でも唐揚げは美味しいなぁ。よし、じゃあ食べ終わったらノヴォ村長にくっついていってみますか。
「で、でかい……」
「手をつないで囲もうとすれば50人は必要での、これほど大きな木はそうそうないでの~」
すさまじいでかさですよ、ゼルダ的な木だったけど喋りはしないみたい。いままではご神木としてあんまり近づかない方がいい的なことを言われてたから、こんなに近くで見るのははじめて……どこぞやの神男のようにこれでゴッ神木扱いしてみたいかも……いや、呪い殺されそうか。
そして今ノヴォ村長が兄上様に頼まれた新しい剣に精霊の加護を付与するために儀式を行うようだ。
「この森を司る精霊よ、この剣にあなたの加護を……」
おお、村長が木の根元にある祭壇のような物を置くところに剣を神妙において……ってそれで終わり!?
「え、村長これで終わりですか?」
「うむ、終わりでの。後は明日の朝にとりに来るだけじゃ」
あーうん、このワクワク感の落とし所はいったいどこに持ってけばいいのだろう……
「えと、隊長ほどではないですけど僕もちょっとびっくりというか拍子抜けというか……」
「……残念」
ご飯を食べ終わった後一緒についてきたのはゲデヒトニスとカザネ、セニアさんと兄上様はまだ食事中(セニアさんは兄上様の食事に無理やりつき合わされてるみたいだけど)、セイレーネは食後の運動だかで鍛錬場へ。ほんでもってレスリーさんにカルディナは笑い死に一歩手前のレッドさんと一緒に居るご様子。
「儀式をなんだとおもっとるでの……大々的なものを見たいのなら一月後の祭りを楽しみにしているといいでの~」
「お祭りかぁ、僕隊長と見て回りたいですっ!」
「……楽しみ」
え、何だろうこの俺の両腕に抱きつく二つの萌え生物。えっと、その、うーん、いけない、これは色々といけない気がする。
でも、ちょっとやってみたい、うん、少し悪魔の囁きに負けてみよう。
「ねぇゲデヒトニス、犬の鳴きまねしてみて」
「くぅ~ん? わんわんっ」
「……」
「わぅ? わんわんっ♪」
「……関東、万歳」
「わんわんって隊長、どうしたんですかっ! しっかりしてください隊長っ~!!」
これは、いろんな意味で、クリティカル……ガクッ
「ふむ、後でセニアにこのことを言っておこうかの」
あーお昼なのに星が見えるような……