前回のあらすじ
・隠し事
・無理やりの出陣
・副隊長さんゲット?
<和樹視点>
さて、いよいよこれから出撃です、先ほどノヴォ市長の演説も終わりただいま市外に出て遠征軍全員で手を振ったり敬礼しているところ。
絶対に今回もここに帰ってくるんだ、死んでも帰ってってこれは死亡フラグだな、いけないいけない。
「遠征軍はこれより北領国境警備隊基地へと移動する、行軍開始っ!」
「「「うおおおおおおおお!!」」」」
うん、士気も悪くないし何より指揮官が兄上様だ。うちの和樹隊は補充兵も入ったし編成も変えたからまだ錬度不足で補給隊と行動を共にする予定です。
うーんもう少し時間があれば部下ともっと話をしたかったんだけれども、カザネが今回抜けるため、その穴を埋めるのにてんてこ舞いだったからなぁ……
「隊長、私たちもそろそろ」
「それじゃ行こうか! 和樹隊行軍開始!」
「「「ヤ、ヤボール!」」」
「確かにかっこ、いい?」
「オレにはわからん……なんでこれがかっこいいんだ?」
うーん、いまいち思い切りが足りないかな和樹隊の諸君。あ、そうそう『了解っ!』っていうのも結構かっこいいけれど、『ヤヴォールッ!』の方がかっこよくありません?
なんたって戦車がパンツァーになるんだからドイツ語はすごいと思う、前の世界で「このテストはこれで終わりだっ! クーゲルシュライバーっ!!」って言ってボールペンで名前書いたらうるさいって先生に怒られたけど……かっこよくないですか?
「ん~いまいちアタイは慣れないねぇ『どいつご』つーのはさ」
「補給隊も変えてみますレッドの姐御?」
「姐御言うんじゃないよバカタレ」
「いいですよ、もっと、もっと言ってください!」
「くそっ、お前ずるいな姐御に罵ってもらえて」
「へへっ、俺これでまた戦えるぜ」
「あ~~ったくこの野郎どもが!!」
……なんというか、補給隊も補給隊で元気そうでなにより。そうそう、補給隊には野戦病院のためにレッドさんを中心とする医師団も10人くらい参加してます。
ノルドールは精霊の秘薬とかあるからいいとして、人間族は『傷が化膿するのは傷が治るために必要な現象である』とか平気で言う連中が医療の主流なもんで、手術のためにわざわざノヴォルディアに来る人もいるくらいだ。
詳しくは覚えてないけどその一派はレッドさんいわく怪我したら熱した油か何かを傷口にぶちまけて火傷させておいて「これで助かります」とか言うのまで……家庭の医学の偉大さはよくわかりました。小学校の読書の時間に読んでおくといい本のひとつかもしれない。
まあ医療班の話しはここら辺までにして、現在の遠征軍についてなんだけどまあサーレオン軍との連携を考えているから結構特殊な編成だ。
ザルカー軍閥討伐隊
イスルランディア軍 200
・本隊 100
ノルドール弓騎兵 50
ノルドール重装歩兵50
・レスリー隊 50
サーレオン重装歩兵 10
サーレオンパイク兵 40
・和樹隊 50
ノルドール弓兵 20
レイヴンスタン義勇弓兵 20
サーレオンロングボウ兵 10
そう、この編成は軽騎兵中心の400で出撃してくる腹黒男爵とで打ち合わせた編成。「パイク兵+重歩兵と弓兵で狙い撃ち作戦」だっ!
基本的に弓騎兵の倒し方は射撃系でちまちま削るか同じ弓騎兵で戦うしかないんだけれど、今回はザルカーの首印さえ上げてしまえばあの軍は瓦解するって事がわかっているので(レスリーさん調べ)サーレオン軍の軽騎兵で誘い込んで、V字の塹壕をつくりそのVの中に誘い入れてしまえば一網打尽にできるって事らしい。
兄上様もできるならどうせ逃がしても賊になるであろうヤツ族は殲滅しておきたいようだ。
レスリー隊で足を止めて和樹隊で狙い撃ち、背後をサーレオン軍が遮断して本隊が予備隊として突破されそうなところの補強かな。でもそうなるとパイク兵は野戦で別な勢力と戦うことにでもならない限り塹壕から狙い撃ちする以上あんまりいらない気が、でもまあそこは兄上様に何か思う所があるんだろう。
いまさらだけど俺結局ゲームとか本で知った知識しかないから、この世界の戦い方って言うのがいまだに深く理解できてないんだよなぁ。もっと精進せねば。
まあ兄上様はやはりプレイヤーを恐れさせるイスルランディアなわけでして……食堂とかでよくボケかます兄上様と同一視できない今日この頃。でもまあ……うまくいくものかな?
~ノルドール連合国北領国境警備隊基地~
さて、三日の行軍の末たどり着いたものの、そうすんなりとは事は運ばないようだ。
「ですからこの命令書にあるようにこちらに従ってください」
「お断りします」
「キサマ、いくら北領にある程度の権限を与えてるとはいえこちらの指示には従ってもらうぞ」
「あんな災いを基地入れることなどできません、休みたいのなら外の塹壕にでもどうぞ」
なにやら国境警備隊の基地での受け入れについて認識の齟齬が発生しているようです、遺憾の意を───
「た、隊長は部隊の野営準備の手伝いをしてください!」
「外は寒いから野営の、準備?」
「まあ……た、たしかに寒い……」
うん、なにやら遺憾の意を表明するのはまた次の機会になりそうだ。まあともかくこんなに寒い中兵士達を待たせるのもなんなので、野営の準備をさっさとしておきましょうか。東北出身なので寒いのは一応平気なつもりかな。まあロシアやフィンランドみたいな寒さには対応不能ですけど。
この北領国境警備隊基地は収容人数100程度と比較的小規模なもので、もともと駐屯している50人を考えるとここまでの行軍で体調不良になった人や靴ズレになった人に医療チームを入れたらそこで満杯でしょうね。
まあそのほかの元気な皆さんは焚き火しながら基地周辺の塹壕に入って塹壕に布張って仮設テントでお休みすることにしよう、普通にテント張ってるより防衛的な意味でも塹壕に詰めとくのは悪くないでしょ・・・・・・これで雨降ったら最悪だけれども。
「よし、じゃあ体の調子が悪い者や軽くても怪我した者以外は塹壕に入る準備してくれ! 塹壕に味方と一般人以外の怪しすぎるやつが警告を無視して近寄ってきたら射撃を許可、猪や鹿が近寄ってきたら夜ご飯が豪華になるぞー!」
「「「おおー!」」」
夜ご飯が猪鍋になれば寒さもだいぶマシになるだろうね。さあおいでませイノシシさん。
……それにしてもセイレーネがどこか上の空というか元気がないな、カザネが留守を守っているからだろうか?
「なぁセイレーネ」
「……」
「えっと、もしもーし」
「……」
「セイレーネさーん」
「……私は」
「……わっ!」
「はっ!? あ、すみませんなんですか隊長!?」
やっと気がついたようだ、あやうくスルーされすぎて心に傷を負う所でしたよ。
「何かあったのか? 最近様子がいつもと違う気がするんだが」
「あ、いえ、その……」
「まぁ、なんだ、セイレーネならこう今日もバァーンと行きましょうっ! って元気が無きゃさ?」
「それは、ですが……」
「俺のことについて何かあったんだろう? いつも頼りっぱなしなんだからセイレーネが何か困っていることがあれば俺でよければ頼ってくれ、これでも隊長やっているんだからさ」
うん、たぶんきっと元気が取り柄のセイレーネがここまで落ち込むというか悩むんだから相当な事だろう。最近俺への態度がおかしいのもこれに関連してだろうし、まあ俺の悪い噂でも聞いてなにかひと悶着あったんだろう。
となるとこういう時こそ隊長として、部下を助けてやらんと。いっつもというかほぼすべて四人娘に頼りっぱなしだしな。
「隊長……実はその、私は───」
「伝令っ! 基地から10時方向っ! 砂煙を確認したそうですっ!!」
「偵察隊より報告っ! 所属不明の部隊がザルカー軍閥の小規模部隊と交戦中ですっ!!」
「なにっ!? 今行く!」
なんだってこんな時に!? 行軍し終えて装備もおろしたり休んでいる途中の現在、すぐに動ける状態ではないんだぞこの部隊は!
「隊長、騎乗可能な騎兵はすべて行動を共にすべしの、命令?」
「司令自ら確認のために出撃するそうです。もしかするとサーレオン軍の偵察隊か他のヤツ族の可能性もあるので、連れて行く兵力は機動力の高い騎兵でとの事です。僕らも動ける人員だけで装備軽めで行きましょうか?」
「そうだね、了解した。デニスは慣れてるだろうし重装備でいいよ、この拠点での戦闘が発生した場合はセイレーネが指揮を執ってくれ、では行ってくる!」
「え、わ、私もっ!」
「いや、この部隊について詳しい指揮官が居ないと部隊と拠点が心配で戦えない。ここなら3,400の敵が来ても200あれば守備できるだろうしね」
「しかし……」
どうやらセイレーネは納得いかないご様子だ……現代日本人だった俺が言うのも変な感じなんだが、戦場じゃ迷いがあったらいくらセイレーネでも危険だ。
しかもザルカー軍閥と交戦中の部隊が突然こっちにも襲い掛かってくる場合を考えたら、信頼できる(基地の駐屯部隊は、さっきのゴタゴタを考えると信頼はできない)部隊が後詰にいるのは心強いことだ。まあ作戦の予行演習としてこのザルカー軍閥を使うのもありかもしれない。
とりあえずその辺は兄上様に任せて行きますか。
「まぁ、娘っ子、カズキ隊長は俺たち古参兵に任せとけって、な?」
「今回もこの大盾で隊長は守ってやるさ」
「騎乗していくんだからその盾はおいてかないといかんぞ」
「そいつはいけねぇ、隊長の護衛はカルディナ嬢にまかせます」
「任され、た?」
「む、カズキ達も準備できたようだな。ではこの55人で出撃する、戦場に着いたらまず様子を見るぞ。迂闊に手を出すなよ、俺の指示を待てっ!」
「「「了解っ!!」」」
「カズキ」
「はい?」
「俺から離れるなよ、絶対にだ」
「りょ、了解」
なんだろう……兄上様の目が本気だ、これは以前俺がレッド団と交戦した時の兄上様と同じだ。どうしたんだろう急に。でも今度こそ怪我しないといいけどなぁ……無理か。
あとがき
資格試験におわれる今日この頃、ここのところ更新が遅くなってごめんなさいです。