前回のあらすじ
・テンプレ
・大規模軍イベント
・ラドゥさん登場
<和樹視点>
「さきほどの『援護射撃』感謝するよ誇り高きノルドールよ。俺の名はラドゥ、ヤツ族部族連合所属のまあ穏健派だ」
一人で此方に進み出てきたヤツ族の人は、どうやらザルカー軍閥と戦争中で略奪をしない穏健派のようだ。でも穏健派だと言ってもノルドールと友好関係を築いているわけではないから注意が必要だ。まあ兄上様の野生的勘が大丈夫だと言っているならば大丈夫だろうけれども。
「そうか、我らはノルドール連合イスルランディア軍だ。こちらの北領の治安維持のため、ザルカー軍閥を討伐しに来た」
「はじめまして、自分はサーレオン王国軍バーローシールド城城主のヘレワードでございます」
……いつの間にか腹黒男爵が会話に交じってきている。さっき駐屯地に防衛体制をとらせに行ったはずじゃ……
「あ、なにか不思議そうな顔をしているなカズキ。実はいつまでも動かない君たちを見て別に焦るほどのことじゃないのかもと思ってね、特になんにもせずに引き返してきたのさ」
「はぁ、そうですか……」
「あーこほん、お尋ねしたいのだが……ザルカー軍閥に対するには貴軍らの兵力がいささか足りないような気がするのだが?」
ラドゥと名乗ったこのお方、片目をつむりながら口元を隠してこほんとひとつ咳払い……ダンティズムの塊というか某伝説の傭兵そっくりという言葉が一番似合う気がする。
まあ言われるまでもなく、確かに正攻法で野戦を挑むには兵力は不足気味だ。弓騎兵相手に戦う方法は、近代戦まで時代を進めないと完封は望めないが、古代中国が行ったように消耗戦に持ち込めば、ライフルマスケットを上回る性能を持つノルドール弓を装備するこちらに分がある。
作戦通りに作ったV型塹壕に誘いこんで十字砲火すれば……
「心配は御無用です、我々には作戦がありますので……ヤツ族の方に助勢を求めるほどではありません」
「ほぅ、この方はどちら様かなイスルランディア殿。なにやら殺気を向けられているようですが?」
「落ち着けレスリー、ラドゥ殿、失礼した。彼女はイスルランディア軍レスリー隊指揮官のレスリーだ。」
……相変わらず視線で相手を殺すがごとくの絶対零度のレスリーさん。今のところは敵ではないのだから、外交関係を悪化させそうな態度は勘弁してください、ここで外交的にこじらされると、ノヴォルディアに帰った後俺とセニアが過労死してしまう。
「ふむ、貴女があの『ヤツ族殺し』のレスリーか。噂はかねがね……同族がいろいろとお世話になったようだな」
「……今回は何も言わないでおきましょう、では私はこれで失礼します」
捨て台詞とともに去るレスリーさん、えーっと、この空気残して勝手に帰らないでいただきたい。残された俺と腹黒男爵と兄上様はどうすればいいのだろう。
「ふんっまあいいさ、それで我々に対する貴軍の対応はどうするおつもりかな?」
「レスリーがああは言ったが、お互い共通の敵を持っている。貴軍の騎馬兵力を考えると、我が軍としてはぜひとも協力していただきたい」
「ヤツ族だが?」
「目を見ればわかる、ラドゥ殿は信用に値する人だ。そんなことを言うならば我らはノルドールだぞ?」
「ふむ、言われてみるとそうだな。これはこれは……はっはっは」
な、なんなんだこの流れはまったく付いていけないぞ。というか目を見ればわかるって……やっぱり兄上様には主人公属性「ティンと来た」を保有しているんですね、わかります。
「お、お話中のところを失礼します。自分はノルドール連合イスルランディア軍和樹隊隊長の加藤和樹であります、ラドゥ殿はなぜ此方に来られたのですか?」
「ん、自己紹介は……もう別に必要もないな、我が軍は『40騎程度の小規模なザルカー軍が隊商を襲撃せんと行動中、これを撃破せよ』という命令受けて来たのだ。だが……各個撃破されかけたのは此方の方だよまったく」
「それで、どうなさいます? 我々と共に闘いますか?」
腹黒男爵……あなたが敬語を使ってるのを見ると背筋が寒くなってくるんですが。絶対何か企んでるでしょう。
───b
……なぜ後ろ手で俺に向けてサムズアップするんですかね、というかなんで俺の心が読んでいるんですかねこの腹黒男爵。
「いいだろう、条件は此方の兵士の治療と休養でいい。宿営地に戻ろうにもまたあいつらと遭遇してはかなわんからな」
「うむ、なればノルドール・サーレオン・ヤツの連合軍というわけだ……不思議なものだな、共通の敵により長きにわたり剣を交えてきた我らが今度は手を合わせるとは」
「いいじゃないですかイスルランディア殿、我々は我々の新しい時代を作ればいいのです。100年後には『長きにわたり手を携えてきた───』とか言われるかもしれないんですし」
「そうはならないといいな、はっはっは」
「「「はっはっは」」」
なんというか、この世界の歴史上の人物になるであろうお方が3人もここにいるといったところか……モブな俺はいったいどうすればいいんだろうね、うん。
さて次の日、寒い寒いと寝巻から出たくないと思いつつもノルドール軍全体で『ラジオ体操』をしていると、土木作業中のはずのサーレオン軍が帰り支度を始めている。
ちょっとまってくれ、何がどうなってるんだ!? ただでさえ数的劣勢なのにここで200のサーレオン軍が戦線離脱ってどういうことだ!?
とにかく話を聞くためにラジオ体操から抜け出してサーレオン軍の司令テントへ……あーもう今回のラジオ体操のスタンプもらい損ねた!
「失礼します! ヘレワード男爵はいますか!? これはいったい───」
「あぁカズキ、まずはこの紙切れを読んでくれ」
「え……はいそれでは失礼して」
『ヘレワード男爵へ
現在西部国境線において悪魔崇拝軍との大規模な戦闘に突入せり。戦況我が方が不利とみて一時軍全体の再編成と集結を行う。ただちに貴殿の有するホワイトスタック要塞とバーローシールド城に最低限度の守備兵を残し、首都サーレオンへ来られたし。
なお、ノルドール連合側に対してはすでに使者を出立させたので問題はない
ラリア統括官 アラマール公爵』
なんと……サーレオン王国東部方面の司令官でもあるラリア統括官からの直接の命令。しかもノルドール連合へすでに連絡済みと来ている。これでは引きとめるわけにもいかない……だがどうする、これでは兵力も火力も何もかも足りないじゃないかっ!!
「カズキ……我々が持ってきた補給物資はすべて『速やかな行軍を行うためにここに投棄』していく。約束を違えたことを心より詫びる、すまない……」
「……わかりました、とにかくこちらの指揮官である兄上様にまずそのことを報告しないと───」
───バサッ!!
「朝早く失礼しますっ! こちらにノルドール連合軍のカズキ隊長はおられませんかっ!?」
「どうしたんだデニス、このサーレオン軍の動きのことか?」
「それもありますけどとにかく来てくださいっ! 大変なんですっ!!」
ものすごいあわてて司令テントに来たのは息絶え絶えのデニス、いくらなんでもこの急ぎ具合は尋常じゃない……なにか嫌な予感がする。あたってくれないといいけれども。
「ちょうどいいね。じゃあいっしょに行こう、話は早い方がよさそうだ……すみません男爵、自分たちはこれで」
「こちらこそすまない、私も一緒にそちらに行くよ」
デニスに手を引っ張られて駐屯地内の司令室に到着。今日はやけに走ってる気がする……正直いくら兄上様に鍛えられているとはいえ、駐屯地とサーレオン軍司令テントまで寒い中往復するのはつらい。
「た、ただいま戻りました。一体どうしたんですか兄上様?」
「む、来たか……まずはこれを見てくれ」
「こちらも手紙ですか……では失礼します」
『イたスたルた大た変たでの、た南領た警た備隊をた含む貴族た共が「ノルドたール貴た族た同た盟」と名た乗りた反た旗たをた翻したてたきたでたのっ!! ホたルスたの警た備隊たや傭た兵隊たは人た間のた住むたノヴォたルデたィアた近辺たの集た落たの護た衛のたためたに出た払ったておたってたまるたでた戦力たが足たりん。た討伐たは一た旦中た止したてすたぐにた戻ったてきたてくたれっ!!
ノたヴォたルたデッたトた市た長 『たぬき』』
※訳↓
『イスル大変での、南領警備隊を含む貴族共が「ノルドール貴族同盟」と名乗り反旗を翻してきたでのっ!! ホルスの警備隊や傭兵隊は人間の住むノヴォルディア近辺の集落の護衛のために出払っておってまるで戦力が足りん。討伐は一旦中止してすぐに戻ってきてくれっ!!
ノヴォルデット市長 『たぬき』』
「なるほど……って大変じゃないか!?」
「読んでもいいかなイスルランディア殿?」
「かまわんよ、男爵のことは信用している」
「では失礼して……読めないんだけど?」
男爵は困ったように手紙をひっくり返してみたり逆向きに読んでみたりしているようだけれど……あ、この超お手軽暗号文の読み方がわからないのか。
「男爵、それは『た』をぬかして読めがいいんですよ?」
デニスさん、うちの軍の暗号方式すらっと教えてしまうのはどうなのさ。まあ腹黒男爵のことだから口外はしないだろうけど。それに本式の暗号方式はシーザー暗号だからまあいいのかな?
「え、うんなるほどね……うわーそっちもたいへんだねこりゃ。こっちもこんな様子でね、これをどうぞ」
「うむ、どれどれ……ふむふむ。わかった、これは一旦どちらも討伐から手を引くことになるな」
となると、この駐屯地の部隊はここに今まで通り残留させるとして、ラドゥさんの部隊はどうするんだろう……一日休んだくらいじゃ強行軍で帰るのも大変そうだ。
それにしてもこうも俺たちの周りでいろいろ起きると何かの陰謀な気が……まさかね。
「まずは兄上様、状況を説明するためにラドゥさんを呼んできま───」
───バタンッ!
「偵察隊より報告っ! ザルカー軍本体と思われる400の部隊が接近中っ!?」
「「「な、なんだってーっ!?」」」
まったく、どうしてこう次々と悪いことが重なるんだよ畜生っ!!
あとがき
悪いことって重なりますよね……はぁ……