前回のあらすじ
・一瞬だけでも風の谷に行った気がしました
・「ねんがんのあんぜんちたいをてにいれたぞ」→「ころしてでもおいだす」→「なにおするきさまらー」
・ノヴォ村長との友好度があがった!
───和樹が村にやってきてから1月後
<セニア視点>
カズキが村に来てもう一月がたちました、彼も順調にノルドールの生活に慣れているようでよかったです。
最初は夜になるたび兄上が家を出て行くのでカズキが明日死体になっていないか心配で眠れませんでしたが、『ぽんぷ』と『ねじ』といったカズキの世界の技術により村の生活はとても楽になりました。
『じょうすいどう』というものも大変すばらしく、家にいながら水が使えるのです。これには驚きました。
そのような努力により、現金ではあると思いますけれども、彼をニンゲンということだけで差別するのはこの村ではもはや兄上だけです。カズキは村の有識者達と、カズキの世界の知識を、どう村に役立てるかについてなど話し合いのため大体ノヴォ村長の家にいます。なのであまり遊びにいけないのが少し私としては寂しいのですが……
この村につれてきてから、彼は普段からいつも村のみんなのことを考えてくれて、どんな小さな悩みでも一緒に解決するまで考えてくれて、いつも誰かを気にかけている。そんな不思議な人です。
村の子供が川で溺れた時、息をしていなかった子供に『じんこうこきゅう』をして、当時は死体を痛めつける行為に見えた村人たちが止めようと何をしても、その子を助けようとし続け最後には見事蘇生させた時から、カズキはなんだってできる、なんでも知っているすごいニンゲンと思われたようです。
そのおかげか、今ではなにか困ったことがあるとすぐノヴォ村長の家に相談に行くのがこの村のあたりまえの日常となりつつあります。
そんな万能のニンゲンは今何をしているのかというと───
「ニンゲンっ! 気合がたりんっ!!」
「レンジャー!」
「む?」
彼は現在、村の鍛練場で兄上が武器や乗馬の稽古をつけています。
彼の世界では、すでに移動手段としての馬は廃れているらしくさっぱり馬に乗れないことがわかりましたし、彼の祖国では戦争がここ最近なく武器の心得など『じゅう』とナイフしかないとのことでした。
とりあえずこちらの世界でどんな物が使えるか、ということでいろいろ試してみるといろんな意味で見事でした。
・乗馬の訓練では馬に乗った瞬間反対側に落馬。
・弓の訓練では矢を番えただけで肉離れ。
・剣を持たせれば「ガトツ!」などわけのわからないことを言って標的の藁を切るのかと思えば剣を折る始末。
それでも最近は少しはまともになってきたと思います……初めて会った時の凛々しい彼はどこに行ったのでしょうか。そうです、今の彼の姿はだめなニンゲンとして村人を油断させて生き延びる彼の処世術に違いありません。
それにあの川おぼれた子供を村人から石を投げつけられながら『じんこうこきゅう』していた時の鬼気迫る表情を知っているので、やはり彼は普段はふざけているフリをしているのかもしれませんね。
「よしニンゲン、馬に乗れっ!ついて来い!!」
「レンジャー!」
「む?」
どうやら兄上とカズキは乗馬の訓練もかねて少し遠出するようです。夜ご飯までにカズキに帰ってきてもらわないと……私は『にほんしょく』の魅力に取り付かれてしまったのです。もうただのパンとサラダには戻れません。
とにかく今はカズキの世界の研究で毎日充実しています。行ってみたいなぁ、カズキの世界。
───ところで「れんじゃー」ってなんのことでしょう? 今日もカズキに聞くことがまたひとつ出来ましたね。
<和樹視点(セニア視点の一月前)>
やっぱりペンドール大陸は危険がいっぱい。ヨハネスブルグのコピペを笑ってられないぐらいに。
野盗・追いはぎ・森賊・レッド兄弟団・黎明騎士団・悪魔崇拝教・ミストマウンテン族・ヤツ族・スネーク教徒・ヴァンズケリー海賊団……どんだけいわゆる「ごろつき・犯罪」組織が多いんだ!!
まぁ簡単にペンドール大陸の危険性を皆さんにお伝えするならば───
・ゲーム開始直後なら大丈夫だろうと近隣の村に向かったら、盗賊60人に襲撃されて捕虜になった
・向こうが徒歩なら大丈夫と騎乗突撃したら数分後敵に囲まれて袋叩きにされた
・村から税金が入ってこないので数名の護衛兵と村に向かったら村人が一人残らず賊に連れさらわれていた
・キャンプで野営中の正規軍が襲撃され、気が付いたら300人の部隊がわずか数名になっていた
・宗教組織が一国家の全戦力に匹敵する軍を保有、というか一国の総力戦で挑んでも宗教組織の大軍に敗れることも
・隊商が襲撃され、荷馬車も「護衛の精鋭騎士団も」一部収奪された
・都市から村までの1日の間に賊に10回襲われた
・諸侯軍に合流すれば安全だろうと思ったら、諸侯軍の全正規兵が殲滅されており、農民主体の雑兵だった
・全諸侯の30/100が賊軍の捕虜経験者、しかも諸侯軍にたてつく者など居ないという慢心から「大規模で精鋭軍団ほど危ない」
・「そんな危険な大陸なんてあるわけない」と1000名のフルプレート装備の騎士団と共に行った聖騎士が五年経っても骨の一つも戻ってこない
・「ゲームなんだから最初から襲われるわけがない」と訓練場から出て行ったプレイヤーが身包みはがされて奴隷として発見された
・賊で最近流行っている遊びは「村人の人口を増やすこと」永く続く戦争で男手がなくなった村を襲い続ける(いろんな意味で)と、いつの間にか人口が増える事から
・海を挟んだバークレーからペンドール大陸間は賊の襲撃にあう確率が150%。一度襲撃されて撤退中にまた襲撃される確率が50%の意味
・ペンドール大陸全体における戦死者数は一日300人、うち約280人が賊に襲われたスコア
……ということで村に来てすぐ、井戸のポンプ作りと平行して武器の訓練を受けることになりました。受けることにはいいんですが……ノヴォ村長いわく、相手がは兄上様とのこと。あれだけこちらをニンゲンニンゲンと
嫌っている兄上様ですよ。ノヴォ村長、俺に死ねと?
「これを機会に仲良くするでの」
「はーい、みなさんにはこれから殺し合いをしてもらいまーす」と目の前で言われた気がする。あ、一方的な殺戮か。村長っ! かっかっかとか言ってる場合じゃないですよ!!
「ニンゲンっ!今日こそはその息の根をとめてくれるっ!!」
「アィイイイ!!」
ーーーぴんぽんぱんぽーんーーーーーー
ただいまお見せすることができない惨状
ですのでしばらくおまちください
ーーーぴんぽんぱんぽーんーーーーーー
ひでぶ、とりあえず訓練場に行ったら開始の合図もなしに木刀持った兄上様が突貫してきました。一振りで脳天直撃で気絶です。その後も木刀でぼこぼこにされました。
不安がって見に来てくれたセニアさんがいなければそのまま木刀は咽か胸に突き立ってたでしょうね。ハハッ……ははは……
「兄上っ!これでは稽古ではありません!!」
「なに、まず反射神経の確認だ……殺すつもりなど……殺すつも……ころ」
「もういいです、殺すなどと物騒なことばかり言う兄上なんてもう知りません!」
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!」
う、うーん。えっと、気絶から回復したらいつの間にかまたおなじみのコントしてました。セニアさんほっぺ膨らませて腰に手を当てて「ぷんぷんっ!」ってしてる。いやまて、これは「ぷっぷくぷー」状態と言わざるを得ない。
しかしここで「めっ!」ってメガネをかけて言って欲しい気もする。落ち着こう。セニアさんがかわいすぎて頭が混乱している、げふんげふん。
さて、兄上様もセニアさんが「許してあげますからカズキの指導、しっかりしてくださいね?」といって先ほど復活したので今度こそ訓練してくれるんでしょう。
「……ではニンゲン、普段使っている武器を取れ」
「あのぅ、武器を普段使いしたことが無いんですが」
……セニアさんも兄上様も目と口が○になってしまった。だが待って欲しい、平成日本じゃそうそう武器なんて手に入らないし、薪割りですらしたことないからなぁ。あ、投げナイフならできるよ!
後は第一次第二次両大戦最強といわれた近接格闘武器ならお手の物か。ふふふ、雪国の男はスコップとスノーダンプの扱いならお手の物さって、どっちもあるわけないよなぁ
「本当にないのか?」
「そういえば投げナイフなら趣味でやってたのでできますよ」
「趣味、ですか」
二人そろって「暗殺者でもないと投げナイフなんて」ってあきれているような……
えーっと、みんなっ! 中2病の時ってそういうのに憧れるよね!?
「中2病(笑)」なんてことないよね、投げナイフは男の子ロマンだよね!?
「むぅ、とにかくこの武器庫には我らノルドールの武器とニンゲンとの戦で手に入れたニンゲンの武器がある。好きに使ってみるといい」
「投げナイフは副兵装としてはいいのでしょうが、戦場で使うには剣、馬上戦闘を行うつもりなら槍は必須です。ぜひノルドール自慢の弓も試してみてください」
「えっ、ノルドールの装備も使っていいんですか?」
「カズキはこれから村の一員になるのですから、使っても文句は「ぐぬぬ」……兄上ぐらいしか言わないでしょう」
「あ、あはは……」
ここでまさかのノルドール装備!! ゲームでチートアイテムだったノルドールアイテムが使えれば俺無双とかできるんでは? かっこいいところセニアさんに見せられるかも?
ま さ に こ れ ぞ 主 人 公
───1ヵ月後
前略、現実世界とお父さんお母さん。一月前の和樹は調子に乗っていました。
馬に乗れば乗った反対側に落ち、弓を番えれば肉離れを起こし、石を布に包んでまわして飛ばせば自分の顔面にあたり、投げ槍を投げれば30cm先の地面に突き刺さるという天才的センスを持っていました。訓練をつけてくださっているセニアさんの兄上様も呆れて何も言えないようです。
っじゃなくて、現実逃避してる場合じゃないっ!!
一月もノルドールの村にもまれ、今はいちっぱしのノルドール(汗)まで進歩しました。(笑)でないだけすばらしい進歩です。
村人も上水道と井戸ポンプ、ネジのおかげでだいぶ生活が楽になったと喜んでいます。
村人の子が川で遊んでいる時に溺れたところにたまたま出くわし、呼吸止まっていたので日本の感覚で人工呼吸したところ、よくよく考えてみればこの時代の人から見れば俺って死体に接吻する変態さんというか、悪魔崇拝教徒扱いされて一緒に居たセニアさんからバケモノを見る目で見られ、
兄上様からぶん殴られ、周辺の村人から石を投げつけられ……まぁ、無事その子が蘇生してくれたから良かったものの、そうでなかったら間違いなく殺されていたと思う。というかセニアさんからそんな目で見られたら生きてられない。
あ、あと日本食も試験的にノヴォ村長の食事で振舞ってみました。
小麦があったのですいとんです、めんつゆの作り方がわからなかったのでうどんは断念しました。
他にはただパン食べるだけだとつまらないので食パンの形に作ってもらった厚めのパンに切れ目を入れて蜂蜜パンをつくったり、チーズフォンデュにしてみたり。
これがセニアさんとか村の女性に大ウケで、今では週一で日本食教室開いてます。
そんなわけで現実世界の食べ物はすべて日本食だと思われてるけどまあいいか。牛がいるからすき焼きも……いやいやここは焦らずウィンナー、いやいやハンバーグもいいかもしれない。
そして俺はただいまノヴォ村長の家に兄上様にに訓練するから完全装備で来いといわれたので全装備を付けて来ています。
「で、最終的にはその装備と武器にしたのか……特殊じゃな」
と、出迎えてくれたノヴォ村長に言われるほど、普通にゲームをプレイするにはまずしない装備品だ。王道の騎士装備でもないし。
装備品
頭部:錆びたノルドールヘルム
胴体:ボロボロのノルドールのコート
足:使い古したノルドールのブーツ
手:穴の開いたレザーグローブ
武器1:ひびわれたポールハンマー
武器2:大袋入りの投げナイフ
武器3:欠けたノルドールルーンソード
武器4:穴のあいたノルドールマジックシールド
馬:ノルドール黒色馬
本来ならばまさしくノルドールのチート装備多数なのですが、自分自身のスペックがお察しなのと、兄上様の嫌がらせにより本来の性能を発揮できないのである……
「ニンゲンに合う大きさがこれしかないものでな」とかニヤニヤしながら言いおってからに、訓練でぎゃふんと……ぎゃふんとさせられるだけか。
装備品は一般的にポジティブな表現がついてる武器が、本来の性能より上回っている証拠で、ネガティブな表現付きは性能ダウンというわけだ。
つまり、「重厚なポールハンマー」であれば重量UP+打撃力UP なのだが、「ひびわれたポールハンマー」では値段と打撃力がダウンなのである。
ポールハンマーはVS騎士の時に正面きってランス突撃なんて俺にはできないので(そもそもあんな長いランスなんて持てるか!)、すれ違いざまにこう右手で横に伸ばしてゴインっ! といっぱつぶちかますためにしました。現実世界じゃ鍛えてた程度の筋力じゃ馬上で横に振れるのこれくらいなんだもん。
大袋入り投げナイフはそのまま使えるからということで採用。使い道?そんなものはロマンさえあればいいんです。
剣も野戦では大事だということで無理やりしごかれて少しは使えるようになりました。普通のペンドールソードとかだと多分重くて使いこなすのは何十年もかかるのでしょうが、ノルドールルーンソードの軽いといったらもう……お土産品のうっすい木刀?
ぶんぶん振れます。ぶんぶん切れます。ぶんぶんはちがとぶん。
ノルドールマジックシールドはなんでしょう、重弩で攻撃されても不思議な斥力(?)が働いてごいんごいんはじいたりしてくれます。
チハの主砲を受けるケーニッヒス・ティーガーみたいなもんです、わかりにくいですね。
馬のノルドール黒色馬は、村に来た日がちょうどこの子の出産日で、ノヴォ村長に初仕事をしろということで出産のお手伝いをしたとです。
それ以来ずっと一月世話してきたので今では私がおじいさん、ではなくだいぶ仲良くなれました。鐙がなぜかノルドールの間では使われていなかったので簡単な物ながら自作装備。うーん、すばらしい馬だ。どうしてもお尻はいたくなるけどね。
「かっかっか、ニンゲンの鎧でなくてよかったのぅ。フルプレートじゃったらいまごろお前はぺしゃんこでの」
「あ、あはは……」
あれ確か40kgとかあるはず。自衛隊の人が転移してこない限り転移者が使うの無理でしょ。これ装備してるだけでも現代人の俺にはつらいのだ。
とりあえず兄上様がいる村の出口まで行ってみましょうか。
「馬に乗ってても……疲れた……」
「ふん、気合が足りんぞニンゲンっ!」
「レンジャー!」
「む?」
さて、いつものやり取りを兄上様と。レンジャーとはつらい時やくじけそうな時に力を与えてくれる魔法の言葉。まぁ、理解できない言葉を言うと兄上様が「む?」と首をかしげて会話が終了するからなんだけれども。
この後は兄上様にくっついて森の境界まで警備をかねて出撃だそうです。まさか賊とかいるわけないよね、そういうのって死亡フラグですよねー
「よしニンゲン、馬に乗れっ!ついて来い!!」
「レンジャー!」
「む?」
大丈夫、セニアさんが最初に言ってたじゃないか「この森にはニンゲンは普通入れない」って。初めてのフル装備での遠乗りだけど何とかなるよね。
あ、昼間なのに一つだけ星が見える。
あとがき
日本語化が終わってない装備は勝手に日本語にして見ました。主人公のスキルは軒並み0か1ですよ。剛投が2くらいかな?
スキル的に装備できないものは……こう……オーガニック的な何かですよ、はい。