前回のあらすじ
・あっというまに第一塹壕終了
・ばれてる夜襲
・「かかったなっ!」
<ザルカー視点>
───2日目、朝
あぁもう朝か、まったくよぉ……なんでこの兵力差で押しきれねぇかねぇ。奴隷兵はほっとんど役に立つ前に死んじまうし弓騎兵も使えねぇ、まぁ昨日の夜につっこんだ古株たちがまぁ何とかしてくれてんだろ。
「お頭、お、おはようごぜぇます」
「んぁ? ああ、んで昨日の成果は?」
「へ、へぇ……それが夜襲に出た200のうち帰ってきたのが───」
「あぁ!? 帰ってきただぁ!?」
ったく、古株で頼りにぁなるやつらだとおもってたが予想以上に使えねぇ。平和ボケのヤツ族あいてにゃまあ頼りになってたってのに帰ってきただと? 俺は次の陣地をぶんどってこいって命令したんだよ。なんでできねぇんだ!
「へ、へい。そんでもって帰ってこれて今戦えるのが30人いるかいないかでありやして……」
「くそったれ……」
これでこっちの残りは450ってところか残りはよぉ? まぁあの司祭から貰った奴隷兵でどうせ兵士はいくらでもいんだし、宿営地の部隊引っ張ってくりゃぁまあ減った分はたりんだろ。
ったくよぉ……愛しの憎い憎いレスリーちゃんもいねぇのにこれ以上やってられっかってんだ。あぁ畜生、また右肩がうずいてきやがる。はやくあんのアマぶちころさねぇと気がすまねぇ。
「おい、宿営地で暇こいてるやつかたっぱしから連れてこい。100も残しときゃヘタレのヤツ族は手ぇ出せねえだろうからそんぐらいは残しとけよ?」
「わ、わかりやしたっ! 100残すんなら400は連れてきやすっ!!」
「うるせぇよ、わーったならさっさと今日の夜までにひっぱってこい」
「よ、夜まででやすか!?」
あぁ? なんだよこいついちいちうるせぇなぁ、俺ぁ朝からいらいらしてんだよ……
「いちいちうるせぇんだよ、やれったらやれボケ」
「へ、へいっ!!」
ったくよぉ、あの司祭も人使い粗いったらありゃしねぇ。兵士だけ押しつけてあの異端を始末しろだってんだから自分でやれってんだよ。
あぁめんどくせぇ、さっさとあの駐屯地に居る異端ちゃんをぶっころしてさっさとレスリーちゃんをぶっころしにいきてぇなぁ。
<和樹視点>
───ユサユサ
「おはようございます隊長、その、朝です……起きないのかな?」
今日起こしに来てくれたのはデニスか……昨日の夜当直だったのに起こしに来てくれるなんて嬉しいね……とりあえずこれはいじるしかない、いやなんとなくだけど。
「あと300秒……」
「素直に5分って言えばいいじゃないですか、隊長が起きないと僕だって困るんですよ?」
うぅ~とデニスが唸る声が聞こえてくる……うん、やっぱりこの反応がかわいすぎる。もはや殺傷兵器に近い、セニア以外で俺が萌え死にするなら間違いなくデニスのせいだ、間違いない。
「そっか、じゃあ困らせようかな。困った顔するデニスはかわいいからね」
「え、そんないきなりっ!? えとえと、その……えと」
「さて、デニスいじりも終えたことだし作戦会議に向かいますか」
「た、隊長最初から普通に起きてましたねっ!」
いや、戦場でこんな風におちょくるのは非常に不謹慎だとは思うんだけどさ……あれだ、昨日の夜に聞こえてきた兵士たちの悲鳴が耳から離れないんだよ。でも隊長として朝からテンション低めで作戦会議でるのもいろいろと兵士たちに悪い影響(士気の低下とか)与えそうだし。
まぁデニスのいつも通りの反応のおかげでいろいろと元気が出た。
うん、やっぱりデニスの反応は素晴らしい癒し効果。動物に触れて心のケアをする物に通じるものがあるかもね。
「元気出させてくれてありがとうデニス。昨日寝てないんだろう? お願いだから無茶だけはしないでくれ」
「へ? えと……はい、作戦会議が終わったら少し休ませてもらいます」
さて駐屯地内の作戦司令室に到着……ここからでも血の臭いと肉の焦げた臭いがする。吐き気がこみ上げてくるけどポーカーフェイスでいないと、全部俺が命じてやらせたこと……この戦いが終わったら悩んだり考える時間はいっぱいあるんだから今いろいろ考えてる暇はない。
そう、今は考えるな、考えるな、考えるな。
「カズキ殿、昨日は大戦果でしたな。この調子で今日も戦いましょうぞ」
「ええ、ですが予定より早く第一塹壕を突破されて仮装第二塹壕の罠も使うことになりました。今日は昨日より厳しい戦いになると思いますが頑張りましょう」
「まず偵察隊から、報告?」
「ん、カルディナよろしく」
昨日の夜に戦ったままの姿の体中泥だらけのカルディナが報告を始める……カルディナにも分隊の指揮と偵察隊の指揮を兼任させてだいぶ無茶させている、早く兄上様の狼煙があがらないものかなあ。
「敵軍に今のところ、動きなし? 再編成、中?」
「装備から見るに、初手の雑兵と違い夜襲してきたのは動きから見て精鋭だったのだろうな、午前中は再編成で安泰と見るべきかな?」
「そうですね、では夜に戦ったデニスとカルディナの分隊は休ませてラドゥさんとセイレーネで防衛にあたってください。」
「けが人の中にももう戦列に戻しても大丈夫そうなのも居ますけど、隊長、どうしますか?」
いくら本人が大丈夫だといっても塹壕の衛生環境を考えると、少しでも怪我してる人を塹壕に入れるのは今後を考えるとアウトだと思う。やっぱり負傷兵の人たちは最後の最後まで休ませとかないとね。
「とりあえずまだ休ませよう、負傷者はできるだけ動かしたくない」
「了解です」
「そうだ、カズキ殿。矢を死体から引き抜く許可をくれ。塹壕から出なければいいだろう?」
「できるだけ塹壕から身を出さないように回収してくださいね」
「問題ない、死体を縄ででもひっぱってから取ることにでもするさ」
うん、間違いなく午前中に攻撃がなければ午後に総攻撃が来るだろうね……でもそれは第二塹壕で防ぎきるか第三塹壕でしのげるはず。でも今日中に第二塹壕を突破されるともう後がない、なんとしても守り抜かないと。
「今日第二塹壕を抜かれれば明日に予想される総攻撃を第三塹壕で防衛することになる。だから今日はなんとしても第二塹壕を守りきろうっ!!」
「「「オォーッ!!」」」
と、部隊の気持ちを盛り上げていると現れたのはニヤニヤしているニグンさんと渋い顔をしている北領隊長さん。どうしたんだろうか? 昨日は指揮させてもらったから今日は北領隊長さんが指揮を執るということで話をしに来たのだろうか?
「あ、あのだな……か、カズキ殿」
「え、あ、はい。なんでしょう?」
「昨日はすまなかった。素晴らしい防衛戦指揮だった。あんな戦い方は想像もしていなかった……できれば、その、今日も……指揮を、たのみ、たい……」
「かーっ! ちゃんとお願いするなら大きな声で頼めって言っただろうに」
「いや、だが、昨日の件でいまさら、その……」
「カズキ隊長はそんな人じゃねぇよ。なあ?」
「えっ、あ、ハイ」
の、ノルドールのツンツンキャラはなんなのだろうか、みんなツンデレなのか? すっごい申し訳なさそうな感じで話しかけくるけれども……まぁ、とりあえず今日も俺が指揮を執ることになるわけですね。
ならばいっちょ今日も張り切って守りますか! 絶対耐えてみせるぞ!!
───二日目、午後2時
「敵襲ーーっ!!」
「ついに来たか……総員配置につけっ!!」
お昼のおにぎりを食べ終えたところで敵襲の知らせ……これは俺達のわき腹を痛くする作戦ではないだろうけど急に動いたからわき腹が痛い。うんやっぱりそれもあるだろう……少なくとも俺は今猛烈に痛いです。
「隊長状況、報告?」
「ん、頼む」
「敵約150で、弓兵? 散兵で、射撃戦?」
「了解、じゃあカタパルトとバリスタは節約して昨日休んでた弓兵を出そう。ラドゥさんの下馬弓騎兵に迎撃をお願いして、ノルドール弓兵は予備として駐屯地に配置換えで」
「やぼー、る?」
塹壕で戦えるからラドゥさんの下馬弓騎兵70で十分対応できるはず、散兵で攻めてきたのならこっちに絶え間ない攻撃を行って休ませないとかじわじわ削りに来た、とかそんな理由かもしれない。
それにしてもレスリーさんが戦力を100も引き抜いたはずなのになんでザルカー軍閥はこんなに数がいるんだよ……全軍の3割が戦死したら中世的軍隊って本来なら崩壊するんじゃないか? まあ大半の損害が奴隷兵だったとしても賊上がりの兵士が中心なんだからいったいどうなっていることやら。
「伝令っ! これより迎撃の指揮をラドゥ殿、カルディナ分隊長が執ります!」
「了解、デニスは休みに入れてセイレーネと俺が予備に入る」
「はっ! では失礼しますっ!!」
うーん、今のところローテーションを組んで何とか24時間体制で防衛にあたっているけどそろそろ疲労困憊ですよこっちの兵士は。俺も正直疲れてきた、え、働いてない? いやいや矢の分配や臨機応変にローテーションを組みなおしたりで矢面に立たなくても大変なんですよって誰に言ってんだ俺……いかんいかん。
───午後4時
「カズキ殿、一応手痛い損害を与えて押し返したぞ」
「お疲れ様ですラドゥさん、戦果は?」
「相手の損害は戦死40確実。こっちの損害は戦死10、負傷12だ」
「これでこちらは残り149人ですね……これでこの日をしのいだら明日で最大の期限ですが」
「兵士は残っていてももう2時間以上も弓を引いてたんだ、ふらふらで今日の夜に当直をさせるのはむりだぞ?」
ラドゥ軍閥の兵士もこれで負傷者を含むと半数まで減ってしまった。経験豊富なラドゥ軍閥の兵士の数が減るということは射撃による防衛力の大幅な低下を招いてしまうわけで……まいったなぁ。今日の夜の当直はセイレーネに任せて今からの指揮はデニスに任せよう、失われた兵士のことを考えても今は仕方がないと割り切るしかない。
「伝令、悪いけどデニスを起こしてきて」
「そんなことだろうと思いまして、すでに来てますよ隊長」
「それはちゃんと休んでいないって事だろうに……まぁちょうどよかったデニス、ラドゥさんの防衛指揮、引き継ぎよろしく。夜になったらセイレーネとカルディナが指揮交代ってカルディナに伝えといて」
「了解です、隊長も僕がそばにいない間無理しないで下さいよ」
「ん、わかってるって」
さて、あの射撃戦をしかけてきた理由を考えないと……今日の夜にまた来るための威力偵察? それともやはり純粋に損害覚悟でこっちを削りに来たか?
疲労狙いなら間違いなく今夜夜襲で来る、だけどそれほどの余裕がこれだけの損害を連日出し続けているザルカー側にあるのか? うーんわからん、レスリーさんやカザネが居れば相談できるんだけどなぁ、まあラドゥさんに聞けばいいか。
「あぁカズキ殿、また矢の補充をお願いする。残余はどの程度残っているのだ?」
「え、はいえーとですね……そうか、そういうことか」
「ん、どうしたのだ?」
今俺の手元にある残りの各物資備蓄量の資料には訂正と上書きが繰り返されているが、そこの中でも一番書き直しや訂正が行われているところがある……残りの矢数だ。
個人携帯は50本としているが、現在兵力50のラドゥ隊が補給待ちということを考えると彼らへの補給だけで最大2500本の矢が必要だ。それに対して現在の残本数はすでに5000本を若干上回る程度となっている。
そもそもこうなった理由は考えてみれば簡単だった、そもそも兵力100程度の駐屯隊で籠城することが前提の矢の備蓄数だ。そりゃ二倍の兵力で塹壕戦のようにほぼ全兵力で矢をぶっぱなしてればそりゃあっという間に使い切りますよねー……すっかりその点を失念していた。
ノヴォルディアから持ってきた矢は全部隊に2回補給できる程度で、すでに一日目で持ち込み分は使い切っている。
これではあと1回全軍に矢を再配分したら在庫は空だ。ザルカー側がこっちの残矢数を正確に知っているとは思えないが確かに今回の射撃戦でだいぶ使用したから……あと2回だね、全力で戦えるのは。
仮定として今夜夜襲があったとしよう、まずそれで個人携帯分を完全に使い切ったら最後の補給。そして次の日に午前中に攻めてきて守りきったとしても、午後に攻撃されたら弓矢の援護なしで塹壕内での白兵戦となる……バリスタやカタパルトだけじゃ損害は与えられても突撃自体を止めるのは難しい。どっちももう火炎弾の在庫は空だ。
そしてその日の夜……敵の夜襲はなかった。俺は内心ほっとしていたのだが、夜襲がなかった理由を次の日の朝知ることになる。
次の日の朝、700近いザルカー軍閥が雄たけびを上げて突撃を開始した。
二日目防衛成功
損害
和樹隊・ラドゥ軍閥軍 戦死者:10名 負傷者:12名 計:22名
ザルカー軍閥 戦死者:推定40 負傷者:不明
残存兵力
和樹隊・ラドゥ軍閥軍 149名
ザルカー軍閥 推定400名以上(三日目早朝にて推定800以上)
現在の戦線:第二防衛ライン
残り期限 :あと1日
あとがき
だんだんM&Bの戦力数とかけ離れてきました、ちなみに普通は500VS500でもゲーム的には総力を挙げた決戦です。まずヘタレのAIはそんなこと起こしてくれません。