前回のあらすじ
・二日目は比較的平和?
・そろそろ物資ヤバイ
・朝駆けの大軍勢
<デニス視点>
僕は夢を見ていた。
隊長と一緒に戦って、その横にはいつでも僕が居て、結婚して子供が生まれて幸せにおばあちゃんになる夢。
でも現実は違う。隊長の横にいつでも居られるわけじゃなくて、本当の意味で隣に居るのはセニアさんで……
なんでこんな時にこんな夢を見るんだろう、なんでこんなものを見せるんだろう。
でもセニアさんが一番でいいんだ、僕は隊長の一番じゃなくても側に……側に居られるだけでいいんだ。だから僕は───
そこで僕は伝令兵の悲鳴のような報告で目を覚ました。
「ゲデヒトニス分隊長っ! 敵軍およそ700が突撃してきますっ!!」
たしか、昨日の夜は休んで今日の朝からの指揮を担当する予定だったはずだ、休んでいる場合じゃないしただ事じゃない。僕も急いで指揮を執りに行かないとっ!
「了解です、すぐに総員を起こしてカタパルトとバリスタに援護要請を出して。僕もすぐに向かうっ!」
「了解!」
うん、頭もだいぶ回り始めた。700という大軍が攻めてきたのなら射撃戦だけで押しとどめられる問題じゃないはず。僕も塹壕内での白兵戦を覚悟しなきゃいけないね……白兵戦になるなら愛用のヘヴィロングランスは持っていかずに、ノルドールルーンソードを腰に差していこう。
「ゲデヒトニス分隊長っ! 間もなく白兵戦に入りますっ!!」
「ぎりぎりまで射撃を続けてっ! ここを落とされたら後は第三塹壕だけだよっ!!」
「「ヤボールッ!」」
───バシュンバシュン
バリスタやカタパルトの援護射撃は始まっているけど一日目の時ほど効果を発揮してくれない。一日目ですでに火炎弾は使い切っているのと、敵が密集せずにばらばらに突撃してくるからだ。
僕の防衛する第二塹壕右翼にはぱっと見ただけでも300以上の敵が殺到してきている、すでに40近い敵が援護射撃とこちらの攻撃で倒れたはずだけど一向に減る様子がない。僕たちは50人しか居ないのにっ!!
「分隊長っ! こいつは下がるしかない、さっさと下がらないと第三塹壕まで行けなくなる!!」
「俺たちだけじゃいくらなんでも無理ですっ!!」
できるならここで防衛したいけど、ここはくやしいけどみんなが言う通りだと思う。こんな時のために僕たち分隊長には独断専行が許可されている……確かに残念だけど第二塹壕を今は放棄して第三塹壕で戦うしかない、ね……
「わかった、油の準備をしてから撤退っ!」
「了解っ! よし、陣地に油まいてとっとと逃げるぞっ!!」
第二塹壕放棄の時にはこれで炎の壁を作って時間稼ぎしろと隊長から言われていたので、油を塹壕に撒いて火をつける。これですこしは敵の足を止められるはず。
左を見ると同じ今日の朝担当であるラドゥさんの守る左翼の第二塹壕からも火の手が上がった。やっぱりあっちも一旦退却するみたいだ。僕たちも遅れないようにしないと。
「塹壕前後も含めた点火完了しましたっ!」
「うん、じゃあ駆け足で第三塹壕に行くよ!!」
時間稼ぎといってももう稼げる時間はそう長くない。早く、早く、イスルランディア司令の合図はまだなのっ!?
<和樹視点>
「伝令っ! 敵軍およそ700が第二塹壕に向けて突撃を開始しましたっ!!」
「700!? 700って確かなのか!!」
「はい、偵察隊からの報告です!」
なんてこった……昨日の時点でザルカー軍閥で動けるのは400いるか居ないかと予想してたのにまだ兵力を隠していた?
違う、昨日夜襲しなかったのは増援を待っていたんだ。あぁ糞っ! 700と140じゃ話にならないぞ、それに第二塹壕には100しか居ないから足止めさせながら第三塹壕に素早く下げるしかない……ああ畜生、なんだってこんなことに!!
「デニスとラドゥさんに第三塹壕への撤退命令、それにバリスタ・カタパルト隊に射撃開始命令を!」
「はっ! なおバリスタとカタパルトはすでに射撃を開始しております、では私はこれで!!」
伝令が作戦司令室から退出すると同時に勝手に大きなため息がでる。まあこうなった以上できる限り粘るしかないかな。
それにしても独断専行許可しておいてよかった……さすがに俺が寝てたり総指揮官が両翼のどちらかに居る時に期を見た射撃命令なんて不可能だからね、リアルタイム通信を可能にする無線機がない以上信頼のできる指揮官に独断専行させた方が現時点では効率的だ。
それにしてもどうする、第二塹壕は第一塹壕と同じく火計で足止めは可能だけど塹壕ごと埋められたらそんなに長くは足止めできない。あとは第二塹壕と第三塹壕との間にある罠で少しでも……ああまいったな。
───3日目、午前10時
第二塹壕の炎の壁のおかげでなんとか今まで時間を稼ぐことができた……けどもうその炎も塹壕ごと埋め立てられて消えてしまった。初日の火計でトラウマとなっていてくれたのか予想以上に消火活動が鈍く、朝の突撃で第二塹壕を奪取した後は、今のところは特に目立った動きはない。
こちらの損害の方は負傷者5名に死者4名。残り140人で、今現在なんとか動ける負傷者30を戦列に戻して170人での防衛だ。一方のザルカー軍閥は予備を抽出したのか依然700ほど、うん、やばい。人海戦術で突っ込まれたら間違いなく終わる。
「隊長、どう思います?」
「……何が何でも守りきるしかないですね。できれば今すぐにでも兄上様の狼煙が上がってくれればとっとと撤退できるんですけども」
「はっはっは、まったく隊長は変わらないなぁ。村に来た時も何とかなるって言ってたですしね」
「人生ポジティブシンキングですよ、前向き前向き」
「貴方の下で戦っていれば今回も生き残れる気がするよ、ご利益が強くなりそうだからいつも以上に隊長にべったりなセイレーネ分隊長様のお邪魔にならない程度の近くで戦わせていただきます」
「たとえニグンさんでも、邪魔をするとこのツヴァイハンダーで自分の背中を見ることになりますよ? はっはっは」
ニグンさんには兄上様と同じぐらい鍛錬に付き合ってもらったり、村での生活に慣れるまでいろいろと面倒見てもらってたなあ……っておい、何気に彼死亡フラグっぽくないですか? 突然生き残れる気がするとかいいだしちゃってるんですが!?
「ちょとまってください、いきなりそんなことを言いだすと死亡フラグっていいませんでしたっけ?」
「無意識に言ってるわけじゃないから大丈夫ということでひとつ」
「いやいや大丈夫とかそういう問題じゃ───」
「ニグンさんも私と一緒に隊長を守るんですよ、死んだら任務を果たせないでしょう。死にそうになったら気合です!」
こういうときにはセイレーネの気合というか元気が兵士たちにどれだけ勇気を与える事か……いやぁ、まさしく鼓舞ってこういうことなんだろうなと理解できる頼もしさだ。周りからも悪い意味じゃない笑い声が聞こえてくるし。
───ワアアアアアアアアアアッ!!
突然背筋が凍り、大地を揺るがすほどの咆哮。先ほどまで笑顔だった兵士たちの顔が引きつる……さぁ、おいでなすった。
「よし射撃開始っ! 射ればあたるぞ、ありったけ浴びせてやれっ!!」
「熱湯の準備はできているな! 早く城門前にもってこいっ!!」
「カタパルト・バリスタ攻撃開始しますっ!」
「ここを落とされたら後がないぞっ! 守りきれっ!!」
たとえどう考えても無理そうだって耐えてみせる……兄上様やセニアと交わした約束は絶対に守ってみせるっ!!
俺はここで死ねない、絶対帰るんだ、もう一度セニアに会うんだっ!!
「梯子かかりましたぁっ!!」
「熱湯をあびせてやれっ!」
「あぁあああ目がぁ、目があぁああ!!」
次々と梯子をかけては城壁に突入してくる敵兵士、俺の指揮する駐屯地はまさしく最大の激戦区となっていた。こちらの守備兵は負傷兵を含む50人、一方攻めよせるザルカー軍閥は300。
いくら防衛戦だからといっても次々と梯子で登ってこられちゃ押し切られるからできるだけ梯子は蹴落とす方向で戦う。城門への攻撃も今のところは熱湯を中心とした攻撃でしのいでいる……でもそろそろバリスタ・カタパルトも弾切れ初めてこっちの熱湯も品切れだ。
「お前が大将か「やらせんっ!」ぐぁっ!?」
「隊長は一旦さがれ! この混戦状態じゃそっちにかまってられないぞ!!」
「助かります! でもここで指揮官が下がるわけには……」
「いいからさがれ! 城壁での混戦はセイレーネと俺にまかせろ!!」
後ろからいきなり切りかかってきた敵兵をニグンさんが使い込んでいるだろう剣で胸を刺し貫く、敵兵はその後力なくその場に倒れ伏したが次々と梯子を上って他の敵兵が城壁へ上ってくる。
さすがにまともに戦えない俺がいても邪魔なだけだということで、一旦城壁から降りて作戦司令室へと戻る。だが到着した後届く報告は悲惨なものばかりだった。
「左翼すでに崩壊寸前っ! ラドゥ殿も負傷しましたぁ!!」
「右翼いまだ持ちこたえておりますが後持って僅かだとのことですっ!!」
「左翼にカルディナと負傷者の中から動ける人を集めて送って! 右翼には弾切れになったカタパルト・バリスタ隊から逐次兵力を投入!!」
「駐屯地城壁の半数を占拠されましたっ! 城門はまだ持ちこたえていますがこのままでは……」
報告であわてて窓から城壁の方を見るとすでに城壁正面は城門付近を除いて100以上の敵兵がひしめいており、奪還はどう考えても不可能に見える……できればこの時点で使いたくはないんだけど、使うしかないか。
「セイレーネに連絡、城壁内に小麦粉を撒けと」
「りょ、了解っ!」
事前にできた最大の突貫改修工事で、城壁の内側下半分を板で覆って部屋のようにした。そこに小麦粉を充満させて……できればこれをするともう二度と城壁を使えないんだけど背に腹は代えられない。この一撃で敵の士気を挫いて後退させないと冗談なしにこの時点で詰みだ。頼む、ぶっつけ本番になるが……成功してくれっ!
「これより城門前からの撤退を支援する、全員出るぞ! 俺についてこいっ!!」
なんとか城門前に着くとすでに城壁から城門前は一方的な攻撃を受けつつあった、ニグンさんやセイレーネが粘ってはいるものの正直もう限界のようだ。
「セイレーネ、後退準備はいいかっ!」
「隊長っ!? ええ準備はできてっ! こ、このっ!!」
まずい、セイレーネのツヴァイハンターは大剣なため、一度振り切ると次の攻撃態勢に移るのに時間がかかる。ちょうどセイレーネが敵の体の上下を泣き別れさせたところで後ろから別な敵兵がセイレーネにつかみかかった。
剣で刺すか、いやだめだ貫通したりしたらセイレーネが危ない。なら俺が持っている武器で最高の命中精度で貫通しない武器はこれしかないっ!
「当たれっ!!」
───ビュンッ グサッ!
「ぐぇ!?」
「隊長! アレの準備はできたぞ、はやく離れよう!!」
「隊長助かりましたっ! 一旦総員離脱っ!! 中央へと後退だっ!!」
「下がれ下がれっ!!」
腰につるしてある投げナイフを投擲し、セイレーネにつかみかかった男の喉に突き刺さす。我ながらマイナー武器なのに活用機会が多いなぁと思いながらも負傷者を半ば引きずるようにしながら駐屯地中央の最後の防衛拠点へと後退する。
敵兵士の大半は今だ城壁の上、あれをやるなら今しかない。
「よし火だっ!」
「了解っ! これが最後の火矢だ、くらえっ!」
───ビュンッ
ニグンさんの火矢が城壁に向かって飛んでいく、そして火矢が城壁後ろに積み上がった藁束にきれいに刺さり───
次の瞬間、遺跡を補修してできていた石造りの城壁が100以上の敵兵ごと爆ぜた。
あとがき
フリーバトルで700対170をプレイしてみました。300ほど削ったところで全滅しました……