前回のあらすじ
・びびり貴族
・死んだなんてみ、認めないんだからねっ!? byレスリー
・「厄介事を運ぶ者」と書いて「伝令兵」ととく、その心は?
<セニア視点>
カザネやホルスさん達が出撃して何日か経った後、今私は机の上にある莫大な量の資料から情報を取捨選択して国際情勢についての報告書を作成中です。各地に派遣した斥候や外交官からの資料や報告書なのですが……多いです、これはもうとても。なぜ寝台ほどの大きさがある特注の机びっしりに資料が山積みになっているのでしょう?
「セニア内相、こちらがフィアーズベインに派遣中の外交官からの報告書になります」
───ドシンッ!
「……わかりました、明後日までには目を通しておきます」
「お疲れ様です、ではこれで……」
さて、また追加の報告書が来ましたね。先ほどから私の部屋に資料や報告書を運んできてくれるあの官僚も、私と同じくもう一週間近く睡眠時間を大幅に削っているはず……あの人も私も、び、美容がおざなりになっている……これは女として大丈夫なのでしょうかね。はぁ……
さて、気分を変えるためにもとりあえず現在まで把握できた国際情勢についてまとめてみましょうか。
・最近発生した戦争(継続中も含む)
帝国VSDシャア朝:引き分け、終結済み
フィアーズベインVSレイヴンスタン;継続中、フィアーズベインが優勢
帝国VSサーレオン:サーレオンの部分的勝利、終結済み
帝国VSノルドール:ノルドールの勝利、終結済み
ここまではこの大陸でも別に珍しくない国家間の戦争と言えるでしょう、帝国が当時国家として成立していなかったノルドールと交戦した以外は特記すべき事もないです。
ですがこの次からがおかしくなります。
ノルドール連合国VSザルカー軍閥:ノルドール側遅延作戦、継続中
ノルドール連合国VSノルドール貴族連合:連合国側圧勝、終結間近
サーレオンVS悪魔崇拝軍:サーレオン軍壊滅的敗北、継続中
レイヴンスタンVSミストマウンテン族:詳細不明、しかしかなりの大軍がレイヴンスタンに侵攻中とのこと、継続中
帝国VSスネーク教徒:最近上陸した破壊者ユダ率いる大軍に帝国は現在かなりの劣勢、継続中
フィアーズベインVSヴァンズケリー海賊団:特に大きな動きなし、継続中
Dシャア朝VS馬賊・Dシャア反乱軍:大規模な反乱が発生、馬賊と連携して戦火は拡大中、継続中
このように国家間の戦いではなく、国家を持たない独立軍や蛮族、宗教的軍と国家間の戦いが頻発しています。まさしく大陸すべてが戦火に包まれているといっても間違いではないです……
巷ではこれら一連の戦争を異端であるカズキが持ち込んだと言う人も居るようですが、村のころからずっとカズキの事を見てきた人たちがそんなことはないと説き伏せて回ってくれているおかげで、だいぶ街で言う人は少なくなりました。この話をしていたのが大体差別的な貴族が中心で、彼らが皆反乱軍側に回ったということも理由の一つでしょうけど。
国際情勢はこれくらいでいいでしょうか? さてそれではさっき追加された資料を確認しましょう……えっとどれどれ、「ヴァンズケリー海賊団に対し、帝国が領地を提供し、独立国として建国することを提案する」……なん、ですって?
「こ、これは一大事ですよ! し、市長はどこ!? 」
これは早くノヴォ市長を含めた重役会議を早急に開く必要がありますね、最近の国際情勢は複雑怪奇ですし……これは一体何が始まるのでしょうか
ちなみに私はこの後渡された報告書の一番下に「『大陸全土に異端によってこれらの戦争が引き起こされた』という噂が各地に広まっている」という報告書を見つけて再び会議を開くことになるのでした……ああカズキ、早く帰ってきてください。私だけじゃ過労死してしまいます……
───三日後
<イスルランディア視点>
ブローウィンキアにまだ残って居たヘタレ貴族を逮捕し、アルウェルニ殿の亡骸を回収した俺たちは、レスリーとホルスに後を任せ二日駆けに駆けて北領駐屯地へと向かった。恐らく手紙の内容通りであればすでに陥落し、ザルカー軍閥が駐屯しているかすでに略奪されて廃虚になっているかだと思われるので、敵がいた場合を考えカザネと10騎の精鋭と共に俺自ら偵察に来た次第だ。
そう、手紙が届いてから三日後───そこには元気に檄を飛ばすカズキの姿がっ!
「……は?」
そう、手紙が届いてから三日後───そこには元気に檄を飛ばすカズキの姿がっ!
「生き……てる……?」
そう、手紙が届いて(ry
「生きていたかっ! 良かった……」
「ん? おぉ!? おーい兄上様ーそんな少数の部隊でどうしたんですかー?」
「……生きてた、やっぱり隊長は生きてた!」
「司令、よかったですな」
「これは我々がお伴する必要もなかったですかな?」
うむ、やはりな。あの幾多の『しぼうふらぐ』を立てながら今まで生き抜いてきたカズキがそう簡単に死んでなるものか。見ただけでわかるほど焼けただれた陣地に城壁が吹き飛んだ駐屯地など、相当な激戦があったのは確かなようだ。
実際今カズキ達が行っている駐屯地の修繕作業に携わる人数はわずか10人にも満たないほどだ……考えたくはないが、恐らくその他の兵士たちは……
「馬鹿者、結果論で物を語るな。まあ今回は戦いが終わった後すぐの強行軍、よく耐えてついてきた……ありがとう」
「我らは誇り高きノルドール貴族弓騎兵隊、司令の強行軍について行けずしてなにが司令の護衛兵かと」
「ええ、私たちなら大丈夫だと選んだ司令の人を見る目が一番賞賛されるべきですよ」
「いやいや、ここは遅延作戦なのに守り抜いたっぽいカズキ隊長をほめにいきぁせんかね?」
ブローウィンキアに立てこもった敵軍との戦いで傷ついたぼろぼろの装備のまま、ここまで一人の脱落者もなくついてきた彼らは俺の誇れる素晴らしい精鋭だ。全員が村のころからの顔なじみということも俺たちの連帯感を強くしている。まあカズキの護衛兵4人娘と同じようなものだな?
「まずはカズキに何があったか聞く必要があるな……とりあえず顔を拭けカザネ、きれいな顔がぐしゃぐしゃだぞ」
「えぐっ、で、でも……たい、ちょう……生きて……」
「カザネちゃん……司令も人の事言えませんよーご自分の顔を見た方がいいともいます」
「ふんっ、真の男はうれしい時は恥ずかしがらずに泣くものだ!」
さて、俺をこれほどまで心配させた事を後悔させてやるからなっ!!
<和樹視点>
な、なんぞこれ……どうしてこうなった?
───ギュッ
「……幻じゃない、ちゃんといる、隊長がここにいる……」
「えと、あの、えぇとね……ごめん、心配かけちゃったね」
「……(フルフル)」
「大丈夫、俺は生きてるよ……心配してくれて有難う」
「……(コクコク)」
えーと現在なにが起きているかと言いますとですね、再開早々にカザネのダイレクトアタックっ! 俺は腰にタックルを受けた! ということ。もともと頭をなでるのにちょうどいいくらい身長が小さいカザネが、ほんでもっていつもはそんなに表情を出さない彼女がもう、ね? 顔赤らめて涙流して俺に抱きついてきているわけですよ……やばい、不謹慎だとわかっているけど萌える。
と、とにかく撫でておこう。精神衛生的に何かしてないと俺の心が爆発してまうねん! なんでエセ大阪弁やねん!?
───ナデナデ
「……ん、ん~♪」
「ごふっ! こ、こいつぁやばいぜ……」
やばい、やばいってもんじゃねぇ……ハイスピードとかナデポとかそんなもんじゃねぇ。言葉に表せない何かがカザネから発せられている……尻尾と耳が見えるのは俺の気のせいだな、うん。
ちなみにこれって俺ナデポか? ねぇねぇこれナデポなの? もちろん撫でてる俺が萌えてるから逆ナデポという名前の方が正しいと思うけど。
「隊長、負傷者の……えと、か、カザネ来てたんだ……あ、イスルランディア司令もはるばるお疲れ様ですっ!!」
「主、糧食の再配分について……えーと、これはその、えぇと」
「イスル司令こんにちは? 隊長は何をしている、のかな? かな?」
「おお、三人とも無事だったか……見ただけでもわかるほどの激戦だったようだな」
俺がカザネの事を撫でているとすぐにカルディナとセイレーネとデニスがやってきた、というかおいおまいたち怪我はどうした? そんなすぐに鎧着てほいほい出歩くけるほど軽くなかったはずだぞ? つかカルディナめちゃめちゃ怖いんだけど、その表情やめてはくれんかね?
「そうだな、お久しぶりだなイスル司令。今回の遅延戦のツケは高くつぞ? なんたって俺の軍閥がほぼ壊滅したくらいだからな」
「ラドゥ殿……今回は遅延作戦への尽力、まことに感謝しております。ノヴォルデット市長以下全ノルドール連合国国民が貴方と貴方の部下への感謝を忘れることはないでしょう」
「そう言っていただけると助かるが、さて軍閥の再建はどうしたものかな……まあ今は考えても仕方ない。そちらも現状の把握が必要だろう。なぜ我々が生き残っているか不思議だろうしな?」
なんかいつの間にか兄上様とラドゥさんの間で主人公っぽい会話が繰り広げられております、俺やっぱ空気ですねわかります……あーもうこうなったらカザネの事かまいまくってやる! うりうりうり~
「主、とりあえず現状説明をイスル司令に行うので一緒に来てください……あとカザネばかりずるいです」
「うぅ~隊長、僕の事なでてくれたことないのに……」
「……ん~♪」
「『なでぽ』?」
なんというカオス、とにかく作戦司令室に行かねば。おーい、兄上様ー俺を置いていかないでー! 無視しないでー!!
「では、話を聞こうか」
「了解。まず兄上様に宛てた手紙を書き終えた後、遅延作戦参加将兵のうち動けるものは全て3日目の夜、敵陣地となっていた第二防衛線へと突貫しました。本来ならばそこで恐らく全滅していたはずだったんですけど……」
「確かにな、話を聞けば聞くほどあの戦力では遅延すらままならなかったというのがよくわかる……まさかザルカー軍閥側に増援が来るとはな」
「しかもどうやら大半の援軍は奴隷兵のようでした、おかげで迎撃したこっちの兵士の士気は下がるしトラウマになる兵士も……いました」
逆ナデポから辛くも復帰した俺は、あちらこちらに未だ戦闘の傷を残す作戦司令室で、兄上様に北領遅延作戦において何があったかの詳細な説明を開始していた。兄上様も敵軍にあれほどの大兵力の増援があったことは驚きを隠せないようで、説明を開始した直後は「俺のせいでお前を死なせかけた」と謝罪の嵐……いや、正直兄上様がこれだけ俺の事を心配してくれてたってことがわかってちょっち泣いてしまったのはお兄さんとの秘密だぞ!?
「そうか……そうすると恐らく敵がいなかったのだろう? でなければどう考えても助かるはずがない」
「ええ、俺たちが突貫した第二防衛線には敵軍が居ませんでした。最初は罠かと思ってたんですけど、カルディナの偵察隊に探ってもらったらこっちの夜襲準備中にどうやらすたこらっさっさと撤退したらしく……なんででしょうね?」
「主も最初は偽装撤退と睨んで再度の防衛準備を今まで続けていたのですけど……今のところ敵軍の動きすらつかめない状態で」
「弓騎兵相手に撤退するにはあんまりにも負傷者が多すぎて、動かしたら死ぬかもしれない人も居たのでここで僕たちは防衛を続けようということになってたんです」
「……そこに私たちが来た」
「そういうことになるな、俺の部下で元気な奴を数人穏健派の皆さんに派遣しているからもう少しすればなにか撤退の理由が分かるかもしれん」
まあ情報をまとめようとすればするほどわからないことだらけだ……まず撤退の理由。
死体の数から考えるに多大なる犠牲を出したザルカー軍閥だけど、まだこの北領駐屯地を押しつぶすには十分な戦力があったはずだ。古来より全軍の半数を失っても恐怖で戦い続けられる軍は居たわけであるし、恐慌状態になって撤退したというわけでもないだろう。でなければいくら夜襲準備に追われていたとはいえ、俺達が撤退に気づけないということはないだろうしね。
次にわからないのは現在サーレオン軍と交戦中の悪魔崇拝軍だ。どう考えてもこの時期にサーレオンへ侵攻してくるというのは出来過ぎてない? おかげで俺たちはサーレオン軍の増援を手にし損ない討伐を中止することになったし、反乱軍の発生とあいまって危険な戦力の分散を行うことになったわけでして。
そして最後は世界規模の国家対非国家の戦いだ。兄上様いわくノヴォルディアに居るセニアからの報告では、現在世界中で大規模な賊や私兵集団が蜂起して、ペンドール大陸に有る国家群との大陸全土にわたる戦争が開始されたようだ。なんという第三次ペンドール大戦。
おそらくこの流れの中にノルドール連合国とザルカー軍閥、そしてノルドール連合国と反乱軍というものが含まれるんだろうね。
そして兄上様が言うには報告書の中でいちばん目を引いたのがこれらしい
───『大陸全土に異端によってこれらの戦争が引き起こされた』という噂が各地に広まっている
まあ前からこの噂は広まってたんだけど、この大陸全土が戦火に包まれている今この噂が流れるとどうなるか……そりゃ俺=諸悪の根源になりますん。俺どうやら一部からは魔王扱いらしいですよ? フハハハハ、勇者のLvが99になるまで俺は待たないからなっ!!
……さて、冗談はほどほどにしておいてともかく負傷兵を連れて一旦ノヴォルディアへと戻るとしましょうか。あーその前にここへ詰める別な部隊が来るまで待たにゃあかんか……早くセニアに会いたいなぁ。
あとがき
そろそろ自分のシリアス在庫がゼロになるので、また番外編を次にでも入れたいと思います……今日電車内で書いていたら隣の人にガン見されてしまった(汗)