<デニス視点>
「うん……準備よしっ!」
今僕は僕の人生の中で最も重要な戦いの一つに参加しようとしている。護衛兵のころから愛用し、今はさらに精霊の加護も付与したプレートメイルを装備して、背中には馬上でよく使うへヴィロングランスではなくショートスピアを背負い今ここに立っている。
「デニス分隊長、俺らは全員分隊長が勝つ方にありったけ賭けてますから負けないでくださいよっ!!」
「うんっ! 負けないよ……絶対に勝って、お願いを聞いてもらうんだっ!!」
「そのいきでさぁ! 頼みましたぜ!!」
そう、僕はこの戦い……絶対に負けられないんだ。この戦い……勝って、勝って!
───いっしょにお祭りを回ってもらうんだっ!!
「え、精霊祭ですか?」
「うん、この前デニスに犬の真似してもらったじゃんか。あの時に一緒に見て回ろうって話してただろ?」
「え、えとえと……そ、そんなことも言ったような言わなかったような……」
冒頭の三日前、食堂で一緒に食事をしていた隊長が僕を精霊祭に誘ってくれました。僕は隊長と一緒に初めての精霊祭を回れるということですごくうれしかったです……おかげで聞き耳を立てている人々に気がつけなかったんですけど。
「でもセニアさんと回らなくていいんですか? その、僕とだけだと……悪いというか」
「えーとだな、実は祭りは二日あるらしくってセニアは初日内相として仕事があるから回れないらしいんだ。それでその、デニスを誘ったわけなんだけど……だめ?」
「も、もちろんばっちこーいです!」
「お、よかったよかった」
なるほど、そういう理由なら僕が一日隊長を独占してもいいとってことですよね! これは期待せざるを得ないですよー!!
「かわいい」とか「綺麗だね」とか言われてみたいのでちょっと服やお化粧とか……ぼ、僕にはあんまり縁のないことだけど試してみる価値はあるはずです。レスリーさんや村のころから仲のいい人とかにちょっと助言を乞うてみようかな。
「それじゃあ───「それでは主は私とは回ってくれないのですか?」んな!?」
「セイレーネ……隊長が最初に誘ってくれたのは僕なんだけど」
「ごめんデニス、でも私も主と回ってみたいので混ぜてもらっても?」
「え、あれセイレーネいつのまに?」
せっかく隊長と二人っきりの精霊祭に向けての準備を考えていたのに、セイレーネが話に割り込んできました。隊長が最初に誘ってくれたのは僕なのにいまさら出てきて僕と隊長との二人っきりの時間を奪おうとするなんて……いくらセイレーネでも許されないよ。
「えっとだな、なんならデニスがいいなら三人で───「二人だけ、ずるい?」「……抜け駆け」んなっ!?」
「二人とも……最初に隊長が誘ったのは僕なんだけど」
「主、私だけ一人で回れと言うわけではないですよね?」
「私も、一人はいや?」
「……たいちょう(うるうる)」
セイレーネと睨みあいをしていると、セイレーネだけじゃなくてカザネとカルディナも来てしまった。
くっ……優しい隊長のことだ、涙目で服の裾をつかむカザネには提案を断ることはできそうにないし、笑顔なのに背後にどす黒い殺気(たぶんセニアさんの『やんでれ』時と同質)をまとったカルディナには冷や汗をかきながら肯定してしまいそうだ。
隊長とお祭りを一緒に回るのは……ボクダケデイインダ
「わかったよ……じゃあ皆で隊長と一日お祭りを回れる権利を賭けて模擬選だっ!!」
ふふん、僕は武に関してなら4人の中で一番強い自信がある。これなら僕が勝ったも同然、ふふふ、ふふふふふふふふ……
「その勝負乗った、主をそばで守るのは私だということを見せてやる……」
「……いい、やる」
「覚悟して、おけ?」
「あー皆で一緒に回ればいいんじゃって、もういないし……」
そして今、訓練場には僕たち隊長の護衛兵4人が武器を構えて開始の合図を待っていた。ノヴォ村長とラトゥイリィの発案でいつの間にか大規模な模擬戦のお祭りとして観客を入れることにしたらしく、僕たちの部下や街の人々まで見物に来たようだ。
「制限時間は無し、決定打となるのはいつもの訓練通り相手に降参と言わせるか気絶させれば勝利とします……みなさん、できるだけ怪我しないでくださいよ?」
「大丈夫だよラトゥイリィ、僕なら手加減しても勝てるから」
「心配、無用?」
「……矢の先は潰してある」
「この大剣相手に無傷で済むと思うなよっ!」
「だからセイレーネは相手をできるだけ怪我させないように戦ってくださいってばぁー!!」
ラトゥイリィの抗議は完全に無視されて今戦いが始まろうとしている……ふふふ、僕が勝ったら隊長と一緒に祭りを回って、夜になったら二人で夜景を見ちゃったりして、そのまま、そのまま……ふふふふふっ
「もういいですよ……はじめちゃってください」
「さあ始まったぞ! さあ剣をふるえ、矢を番え、槍を構え交戦しろ! そうだ早く早く早く早くはやげふっ!?」
「兄上、いくらなんでも飲み過ぎです……飲み過ぎの兄上は嫌い、です」
「う、うわああああああああああああああああああああああ!!」
えーと一応始まりの合図も出たことだしいざ突貫ーーーー!!
<カザネ視点>
イスル司令が酔っぱらってセニアさんにぼこぼこにされているのをこのまま見ていたいけど、だめ。目の前からカルディナとデニスがこっちに向かってくる。
私は一人だけ弓、遠距離攻撃のできる私が残っていると後々厄介だからみんなこっちに攻めてきた。でもそれを攻撃の機会としてセイレーネがまず一番私たちの中で武にたけているデニスを倒すために突貫した、なら私はカルディナを接近させないように矢で迎撃するだけ。
「……っ!」
───シュン カキィン
「効か、ない?」
「デェエエニィイイイスゥウウウウーーー!」
「セェエエエイレェエエエネェエエーーー!」
───ガキィンッ!!
私の放つ矢はカルディナの短刀に切りはらわれる、どうやらヤツに居たころ訓練された短刀と投げナイフで私と戦うようだ。
カルディナはヤツの戦い方である短刀と投げナイフでの戦い方と、投げ槍とロングソードを使った帝国式の戦い方どちらもできる。前者は暗殺や一対一に強く、攻撃的な戦い方なので護衛兵になってからはあまりしない。後者は普通にショートランスとしても使える投げ槍で敵を接近させず、距離を取ったら投げ槍で貫き、近づいたらロングソードで戦う防衛的な戦い方。
護衛する相手のいない個人対個人の戦いだからこそカルディナはあの戦い方をする、あぶない、今さっそく投げナイフが飛んできた。
「うーん……やっぱり当たら、ない?」
「……切りはらわれると当てれない」
「うぉおおおおおおおお!!」
「でぇりゃぁあああああ!!」
───ガキィン! ドゴォーーーンッ!!
……今まで意識しないようにしていたけど、無理。どう考えてもデニスとセイレーネの戦いが人間同士の戦いに見えない、あれはもはや悪魔に憑かれた何かと何かのぶつかり合い……勝てる気がしない。よく表情を見ればカルディナも冷や汗をかいて嫌そうな顔をしている、うんわかる、あれに正攻法で勝つのは無理。
「カザネ休戦、する?」
「……適切、あれをはるから頼んだ」
「うーん、がんばる?」
正攻法で勝てないのならそれ以外で戦えばいい、不意打ち上等、『かてばかんぐん』。
「……えい」
───ボムッ!
<セイレーネ視点>
主と一日祭りを回れる権利……欲しい、そういえば遅延作戦の後はずっとごたごたとしていてあれ以来長く話したり二人っきりになったことはない。これはぜひとも権利を手に入れて、その、えと、誰も居ないところでくらいならキスとか抱きしめてもらったりとかしてもらってもえとえとえと……と、とにかく私も負けるわけにはいかない、分隊の部下の財布と自分の欲望のためにっ!!
「デェエエニィイイイスゥウウウウーーー!」
「セェエエエイレェエエエネェエエーーー!」
───ガキィンッ!!
一直線に突撃して横なぎに払ったツヴァイハンターをはじいたのはデニスのショートスピア。さすがはデニスだ、私のこの一撃をはじくとは……でも私も負けられない、たとえ実力で勝てなくても愛と言う名の忠誠心ではだれにも負けないっ!!! そしてその忠誠心で実力の差など埋めてみせるっ!!
「うぉおおおおおおおお!!」
「でぇりゃぁあああああ!!」
───ガキィン! ドゴォーーーンッ!!
横にはじかれたツヴァイハンターの勢いを殺さないようにそのまま一回転して遠心力を乗せた重い一撃をデニスに対して横なぎにもう一度振るう、だがその一撃も上から叩きつけるようなデニスの一撃でまたしてもはじかれてしまう……しかも悪い事にはじかれた剣が地面にめり込んでしまい隙が生まれる。だがこれしきの事で私はまけるかあぁあああ!!
「……えい」
───ボムッ!
「な、なんだ!?」
「煙幕っ!くっそーカザネのしわげふっ!?」
「なっ!? おいどうしたデニスっ!!」
今まさにデニスが私に槍を突き付けようとし、私がノルドールルーンソードを抜刀しようとしたその瞬間視界が一面白い煙で覆われた。こういった戦法をとるのはカザネやカルディナだ、そしてこの状況に最も適しているのはカルディナ。
煙のおかげでうっすらとしか見えないが、おそらく今デニスが煙にまぎれて接近してきたカルディナにやられたのだろう……ツヴァイハンターではこういった状況には不向きだ、このままルーンソードを構えて静かに敵の気配を探る。
───ヒュンッ
わずかな風切り音が聞こえると同時に二方向から二つの影が飛び出してくる、一つは囮、もうひとつが本命っ!!
「でぇええいい!!」
「っ!?あっ!!」
私が思い切り剣を振り下ろした先にはダガーで私の剣を受け止めているカザネ、もう一方に対処するために素早く剣でカザネを払い飛ばすともう一方の影が私の顔横を通り過ぎる。カルディナの投げナイフ……彼女はたしか投げナイフを7本持っているはず、少なくともこれで1本消えた。
「来なカザネ!煙幕なんかに隠れてなんかないでかかってこいっ!!」
「えーと、『ちきしょうぶっころしてやる』?」
「しまった後ろかっ!?」
背後から声が聞こえたかと思うと素早く放たれる4本の投げナイフ、剣で2本たたき落とし左手の手甲で1本をはじき、残りの一本は回避する。これであと1本。
だが回避とはじくことで体制を崩した私に軽装のカルディナは一気に切りかかるっ! だが私は負けんっ!!
───ガキィンッ!
「……毒を塗りこんでおけば、勝った?」
「そうだな、だがこれは殺し合いではなくて模擬戦だ。実力で勝ってこそ、だぞ?」
「ぶー、『かてばかんぐん』?」
「ふん、煙幕も晴れてきた……これで終わりだっ!!」
「負け、『ふらぐ』?」
「……零距離、とった」
手甲でカルディナの短刀を受け止め、剣を右手で振るうもルーンソードは彼女の投げナイフで受け止められる。私は背後すぐに迫るカザネ対策に素早く地面に刺さったままのツヴァイハンターの柄を蹴りあげた。
「……あ」
「今っ!」
「きゃっ!?」
カザネのダガーは蹴り上げたツヴァイハンターの柄にあたって止まり、力に任せてカルディナをカザネに向かって弾き飛ばす……よし、これで距離を取った。あとはこの大剣の長さを生かして撃破するだけ!
「カザネ弓、は?」
「……切れた」
「ふははははっ! これで投射武器は全て尽きたようだな!! これで私の勝ちだああああ!!」
素早くツヴァイハンターを拾い一か所に固まっている彼女たちへ全力で振りかぶる、この大剣の横振りから逃れられは……なんだとっ!?
私が剣を振り切った時、吹き飛ばされていたのはカザネのみ。まて、これはどういう……まさかっ!?
「カザネを踏み台にしたっ!? でも短刀と一本の投げナイフでなにがっ!!」
「一本あれば、十分?」
───ガキィンッ!!
私の大剣を短刀で受け止めたカルディナは空中に居たこともあって吹き飛ばされるが、一矢報いんと投げナイフを投げる。だが私にはあたらないな、なんとかかわせる……だが確かに一本は私はその攻撃をかわせた。そう、最後に投げられたのは一本の投げナイフとスリング用の石つぶてだった。
───ゴインッ!
「な……かはっ……」
ふふふ、ふはははは! そうだ、確かに一本で十分だ!その一本で私の動きを誘導し頭へと石つぶてを命中させたっ!! さすがはカルディナだ……これならば、やは、り隊長の護衛をま……かせ……
「わ、私の……勝ち?」
「……違う」
「あっ!?」
「……油断大敵」
「カザネもね……」
「デニっわっ!?」
遠のく意識、最後に聞こえたのは隊長の声とラトゥイリィの叫び声だけだった……きゅぅ
<セニア視点>
「あぁもうそこまでっ!! 勝者はなし! 医療班早くっ!!」
「ちょ、おまっ!?」
横に居たカズキが声を張り上げると同時に、訓練場にいた彼の護衛兵全員が地面に倒れました。なんということでしょうか……まさか全員同時に撃破となってしまうとは。
「いや~アタイら医療班の手間増やしてくれるね~」
「私が見ていないうちに腕を皆さん上げましたね……まさか全滅とは」
「しゃれになっていないと思うんですが……」
「帝国に居たころこんな相手と戦っていたとは……戦場で出会わなくて良かった」
観戦していたみなさんもとても驚いてます、それは私もあいた口がふさがらないですが。
最終的にまとめるとこうなりなりました。
・煙幕で接近したカルディナがデニスを撃破(仮)
・セイレーネがカザネを撃破(仮)、同時にカルディナがセイレーネを撃破
・カルディナをカザネが壊れたと嘘をついていた弓で急襲、しかし放つ前にデニスが槍で攻撃して撃破
・撃破された後に放たれた矢はデニスに命中、矢が命中寸前にデニスが投げた槍がカルディナに命中……全滅とあいなりました
……なんですかこの一瞬の攻防戦は、まるで彼女たち全てが「お前一人を勝たせるものかっ!」という気迫が感じられました……なんとう恐ろしさでしょう、私にはとてもできません。
なんですかカズキ? 私の顔に何かついているのですか? やけにぶるぶる震えていますが。ああ寒いだけですか、なら今晩は私が暖めてあげますね?
「まあ、なんだ・・・・・どうやらこれだと初日回る相手が居なさそうだね。アタイと行くかい?」
「レッドと二人で行かせるのは心配なので私も行きましょうか」
「……ふんっ!ど、どうしても行く相手が居ないのならに、ニンゲンのお前でも別に付き合ってやるのもやぶさかでもないぞ。べ、別に私は行きたいわけじゃないんだからなっ!!」
あれ、おかしいですね? カズキに近付く女はみんなあそこで倒れたはずなのになんでまだいるんですか?なんで、なんでなんでなんで?
「ちょ、いやそのですね、やっぱり俺は彼女たち4人でまわろうとおも……まてセニア、落ち着くんだ一体どうしたんだああ衛生兵ー! 医療班鎮静剤ーーー!!」
「カズキは私の旦那様だぁああああああーーー!!」
───キシャアアアアア!!
今日もノヴォルディアは平和です。
あとがき
……やっぱりリベンジでがんばってみたものの作者にはやはり戦闘シーンはむりだと痛感しました、精進します。 お、オチが適当でごめんなさい(汗)