前回のあらすじ
・侵攻速度gdgd
・防衛線の神様ってダレデスカー
・一人ぼっちは、さみしいもんな(byレッド・ガイディア)
・銃がないと騎兵突撃を防げないって誰が決めたかな(アジャンクール脳)
<ラトゥイリィ視点>
私は今、夢を見ているのでしょうか?
「今! 撃ち方始め!」
「撃てーーー!!」
Dシャア朝の騎兵は、機動性に富み弓騎兵として強力な射撃能力と練度の高さで知られています。
また、彼らの装備しているライトラメラーアーマー(金属板を結んでつなげた鎧、ライトは一部皮鎧として軽量化している)は
射撃に対しある程度の防御力もあるため、よほど深追いして来たところを奇襲するか、こちらも弓騎兵を投入しなければ勝てないといわれてきました。
その上撃退するに留まらず殲滅するなんて、過去の歴史上類を見ない事です。さすがのニンゲンもそんなことは出来ない……そう思っていました。
───バシュン 「ッテーッ!」 バシュン 「ッテーッ!」 バシュン
50人の射撃により規則正しく一斉射撃されていく矢は、第一斉射で60騎のDシャア朝弓騎兵を半数ほどなぎ倒しました。
「ばっ、ばかなっ!? コレはいったいどういう事だ!!」
「撃てばあた、る? 攻撃の手をゆる、めない?」
「はっはっは! いいぞ! 統制射撃終了! 勇ある者は私に続けー!!」
デオダトゥス将軍が目を見開いて現実を受け入れられないでいる。
カルディナは何事も無かったように攻撃を行う。
セイレーネはここぞとばかりに射撃を切り上げ掃討のため突撃に移る。
意気揚々とツヴァイハンダーを片手に出撃門へと向かったセイレーネから視線を目の前に戻すとそこには───
「あれっ? よくよく見るとあの旗印と紋章ってDシャア朝だよね。なんでDシャア朝の弓騎兵が身内の隊商を襲ってるんだ?」
首をひねって不思議がっているニンゲンと、要塞から200mに設置してある帝国軍の白い目印から100mの目印までに倒れている60騎でした。
「に、ニンゲン……重要なのはそこなのですか?」
私の口からとっさに出てきたのは、今までの軍事常識からすればありえない光景を無視して、別の事柄で首をひねるニンゲンに対する不気味さでした。
帝国軍のニンゲンも同じ考えなのか、「まさか、いやしかしこの威力は、だが直射だぞ……」とうわごとのようにブツブツとつぶやいている。
たとえノルドールルーンボウであったとしても、弓なりの曲射射撃でなく、命中率を重視してまっすぐ狙う直射射撃なら鎧を着た兵士に有効打を与えるのは50mがいいところです。
しかし、あのニンゲンは部隊になんと指示していました? 『必中射程まで待機』だったはずです。必中を狙わないのならどれほどの有効射程を誇るのだというのですか!?
「カズキ殿、先ほど帝国軍の秘密兵器が知りたいとおっしゃっていましたな……よろしければ今回の戦果の秘策と交換で教えるというのではどうでしょうか」
「うーんどうでしょうね? 一応機密扱いですから自分だけの判断ではなんとも」
おそらくこの結果をもたらしたのはまたこのニンゲンの『ニホンの知恵』なのでしょう。よく見れば弓兵達が持つノルドールルーンボウはどうも形が複雑で、何か手が加えられているのがわかります。
やはり私は、このニンゲンが恐ろしい……この『ニホンの知識』はあとどれだけの戦死者を増やすのでしょうか。
<和樹視点>
どうやら統制射撃は訓練どおりうまくいったようだ。
やり方は単純、帝国軍の設置している500mから100mごとの目安石を使って正確に200mを狙って一斉射撃するだけ。具体的には、目安石をひとつ駆け抜ける時間から相手の速度が分かるので敵が500mの目安石を通過したら200mに到達するタイミングを見計らって200m・190m・180mとちょっとずつ手前に
引いて三連射してもらうだけ。
焼入れを施した硬く重くきわめて細い鏃(やじり)と、弓の両端に取り付けた滑車という人類の知恵と、壊れ性能のノルドールルーンボウが組み合わさった結果はご覧の通り、フルプレート装備の騎士を直射で30~50mでもガッツリ貫通し、100mで落馬させる威力を持つ恐るべきノルドールルーンボウが
直接射撃で300m先の鎧を貫通しました。
一般的に中世ヨーロッパのロングボウや、こっちの世界のサーレオンロングボウ兵の攻撃は、簡単に説明すると斜め45度に射撃して、落下速度でナナメ上から敵に当たって威力を発揮するもので、まっすぐ狙って撃つには200mはちょっとしんどいものがある。飛べば飛ぶほど威力が落ちて
最後にはただの服すら貫通できなくなってしまう。
しかしAPFSDS弾のような先端が極めて細く硬い返しの無い鏃(やじり)と、コンパウントボウの構造による弓を引く力の軽減+ノルドールルーンボウの驚異的な弦の軽さが合わさり、弓がへし折れる限界まで張力上げて射撃すると200m先のフルプレートを直射でぶち抜く矢を「連射」できる
弓兵の出来上がりというわけ。本来の弓の強度的な問題もありこんな強い引きは出来ないんだけど、ノルドールルーンボウの性能マジパナイ。ちなみに兄上様はコンパウントボウの引く力補正抜き+馬上で放てます。マジパナイ。
編成にかかる費用? 俺の部下50人を編成するために帝国軍団歩兵500人が雇えると思いますが何か? えぇ、この前のレッドさんのお兄さんへの領地・資金提供とかでもう俺のお財布は財布すらないぞ。
人を雇うにしてもノルドール兵として村人をこれ以上徴募したら国家としてヤバいのがノルドール連合なわけで、近代国家軍にありがちな『兵士を増やす<兵士を生かす』方向に予算をつぎ込んで、精鋭化するしかないのだ。正規兵全員が特殊部隊並みだけど兵士がほとんど居ないみたいなもん。
ちなみにそのほかにも、人型ターゲットを使った人への射撃忌避感払拭や、統制射撃による一斉に矢が飛んでくるという敵に与えるビジュアル的恐怖などなどこまかな改善点は多々あれど、無事に射撃力チートは成功したようだ。
これで発砲音と発砲煙の無い普仏戦争レベルの射撃能力が50名限定だけど手に入り、早速敵騎兵に試したところまさかの結果であった。本当は開きかけの城門に~とか他の策を考えていたんだけれど、倒せてしまった。
カルディナがほめて欲しそうにこっちを見つめていたので頭をなでつつ「気持ちがこもって、ない?」……ちょっとまてまて目の前に60人の死体があるのにうちの部隊ずいぶんとほのぼのな雰囲気が流れているってまてまて、今度はさっき出撃したセイレーネが、
まだかろうじて息のある奴を捕縛し、致命傷ならトドメをさして回っている。え が お で
怖いんですけど。み、みんなー? どうしてそんなほのぼのなのかなー?
「元々私達隊商護衛、隊? 隊商いじめる奴は嫌、い? あと隊長を異端扱いするゴミには容赦、しない?」
「カルディナ副隊長のおっしゃるとおり! 隊長に仇なす敵はわれらがすべてなぎ払いますぞ」
「いかにも! あの北領での戦いに比べればなんのなんの!」
「だってよ隊長。好かれてるねぇ」
「……なんとも、俺には過ぎる部下だよ。みんなありがとう! それじゃあやりますか! 勝利の勝ち鬨用意! えい! えい!──」
───「「「「オォー!!」」」」
どうやらみんなは隊商が襲われていたことに対する義憤と、俺に対するやさしさである意味鬼のような強さを発揮したようだ。『俺の部隊がこんなに好戦的なわけがない』ってラノベが書けそうなぐらいの士気の高さだ。
まったくもう、頼もしい限りである。
「カズキ殿、先ほど帝国軍の秘密兵器が知りたいとおっしゃっていましたな……よろしければ今回の戦果の秘策と交換で教えるというのではどうでしょうか」
帝国軍のデオダトゥス将軍もこの結果には驚きを隠しきれないようで、さっき答えを濁された秘密兵器と今回の戦果の秘訣を交換してほしいと、口調は丁寧、目は見開いてこっちの肩をつかみ超怖い。何が悲しくて部下達の前でおっさんに肩つかまれて至近距離で鼻息フーフーされねばいかんのだろうか? いや、ない。
秘密兵器の情報が欲しいのは山々だが、コンパウントボウの技術と鏃は出来れば帝国軍にも知られたくない。今後戦争が継続すればすぐに鏃は解析されるだろうが、焼きいれ技術とこれほどの重量鏃を飛ばす弓が作成できず難航するはずだ。
というかカルディナステイステイ! 短剣に手を伸ばさないの! ヤバイ、俺が鼻息フーフーで嫌な顔押しているのを見たカルディナがヤツモードになりかけてる。ムツゴロウさんを心の中に召還し、抱き寄せてさらに頭なでなでせざるをえない。
「うーんどうでしょうね? 一応機密扱いですから自分だけの判断ではなんとも」
「……ん、んふぅ~?」
「そうですか……では次の合同作戦会議の際ぜひ、そちらの上層部の皆様とご相談ください」
カルディナをナデポしながら困った顔をして答えると、目に見えてしょんぼりするデオダトゥス将軍。帝国の英雄とはいえ何気に子供っぽいところもあるんだなぁ……
「隊長! 先ほど収容したDシャア朝の隊商代表が面会を求めています!」
「了解した、武器防具を外してもらってから面会する。面会に際し、本人達へ武器防具の携帯不許可について説得しておくように、まぁがんばって」
「了解!」
息を切らして走ってきた伝令にお願いしてこちらも武器防具外しましょうか。さてさて、Dシャア朝の弓騎兵がDシャア朝の隊商を襲う理由はなんだろうなっと?
───半開きにしていた防衛拠点入り口扉にて
さて、無事追っ手から逃れたDシャア朝隊商の皆さんとお話してみることにしましょうか。
掃討を終えたにもかかわらず返り血ひとつ無いセイレーネと、るんるんで俺のルーンコートのすそを握っているカルディナと、メモ帳片手に厳しい表情のデオダトゥス将軍と俺で、Dシャア側の代表だというご老人を包囲する。
先ほどは全力で助けたが、あくまでDシャア朝と帝国は戦争状態にあり、Dシャア朝は教皇十字軍に参加しているのだ。油断は禁物である。といっても向こうは武器防具は外している状態で
こっちは非武装なのは俺だけ。だからカルディナさん? Dシャアの人に会ったとたん暗殺者モードになるのやめてもらえませんかね? 俺の体に隠れて抜刀準備OKって怖いんですが……セイレーネもなんだかんだ半開きだった扉を足でゆっくり閉めていつでも切りかかれる
体勢だ。部下の忠誠心が異端認定以来とんでもないことになってつらいようなうれしいような……
入り口には矢が大量に突き刺さっている隊商荷馬車と、隊商護衛兵にはどう見ても見えない装備をマントで隠しきれて居ない兵士が10人、そしてかなり裕福そうなご老人がお一人いらっしゃる。どう考えても隊商ではない、なんらかの偽装工作だろうコレ。
疑いの目でジロジロ見ていたら、ご老人が話しかけてきた。表情や声色は服装に比べてずいぶんと腰が低そうだ。
「この度は戦争中にも関わらず我らの命を救っていただきありがとうございました」
「『困っている人が居たから助けた』、ただそれだけです。……まぁそれはともかく、ご無事で何よりです。こちらはこの拠点の指揮官、帝国軍のデオダトゥス将軍です。」
「お初にお目にかかる。帝国軍将軍のデオダトゥスです。あなた方はいかなる理由があって戦争状態にある帝国へ? なぜ同胞に追われていたのか? 疑問は尽きませんが教えていただけることを期待しておりますぞ」
隊商のご老人はそのご年齢に関わらず深く頭を下げると、荷馬車の扉を開ける。すると中から帽子を深く被った子供が降りてきて、ご老人は中から大きな荷物を取り出す。周りの兵士は万が一に備えて緊張が高まるが、
周りの隊商護衛兵(偽)とご老人が膝を着き子供に頭をたれたではないか。やばいやばい絶対コレ政治とか内紛とか外交官が居ないとまずい問題なんじゃないか!?
「こちらにおわす方は、Dシャア朝の第一王女、アルティングル様です。またこちらの荷物の中には各地で抵抗を続けるDシャア朝部隊の情報と活動資金がございます」
「お、王女? 抵抗? ちょ、ちょっとお待ちを、それはいったい……」
「またれよ、ということは現在反乱軍と言われている方がもしや……」
Dシャア朝は帝国への漁夫の利攻撃を行ったものの最近ちょうどここにいるデオダトゥス将軍にこてんぱんにやられたはず。ではそのこてんぱんにやられたDシャア朝軍とはいったいどっちだ? 反乱軍が正規軍で正規軍面しているのが実は反乱軍? そして王女とかいったいどういうことだ? というか内乱状態とはいえDシャア朝の王はどうなってるんだ?
などとアレコレ考えていた頭の中身、が一瞬にしてその『第一王女』の一言で吹っ飛んでしまった。
「助けていただき感謝するのじゃ。助けてもらった上であつかましいのだが、わらわのためにも戦ってはもらえぬじゃろうか?」
の、のじゃロリっ子だと!?
あとがき
初投稿から7年目の追加です。
久々にキーボードに指を置くと動く動く
といいつつ仮更新です。
>ルンバルンバさん
>>待ってたかいがあった
たいっ……へんお待たせしておりました。
現在放映中の小説家が主役のアニメを見ていてまた書き始めた次第でございます。
加筆修正と平行でちょっとずつでも新しい内容を投稿するようがんばります。