前回のあらすじ
・幼女ならしかたない
・ラトゥイリイ性別バレ
・なんで怖がってるんですかね
───カルディナ視点
うーん、急に私たちカズキ隊長の護衛騎士を呼び出すなんて、ラトゥイリイはいったいどうしたんだろう?
戦いの後、夜ご飯を食べていたら伝令兵が至急集合の連絡を持ってきた。呼ばれたのはラトゥイリイの部屋で、護衛騎士4人全員を呼び出したみたい。カズキ隊長に内密で話すことなんて性別勘違いの件ぐらいだと思うけど……
「全員、のようだな。誰か内容は聞いていないのか?」
「……聞いてない、ついに性別がばれた?」
「それだけで僕たちをわざわざ呼ぶかなぁ?」
「割と重、要?」
明日以降の要塞を使った仮称『Dシャア正規軍崩れ』撃滅作戦のために戦いの疲労を抜かなきゃいけない今日わざわざ呼びつけるんだから、重要な案件だと思う。でもなぜそれを私たちカズキ隊長の護衛騎士だけにまず伝える必要があるのかが分からない。やっぱり性別ばれた話なのかな?
「お待たせしました……戦闘の後で本当はお休みしていただきたいのですが、どうしても四人に聞かなければならないことがあります」
部屋に入ってきたラトゥイリイはなんだかすごい憔悴した表情で飲み物とちょっとした軽食を持ってきたみたい。おかわりの水筒まであることを考えると長期戦になりそう。
「すごい顔をしているがどうしたんだ? やはり性別の件が主にばれたのか?」
「違います、いえ、お風呂で見られてしまったのでそれはそれでばれて「僕その話の方が聞きたいなぁ」いや、その話ではなくて「主とお風呂? 私も入ったことないのに?」いえだからその話ではなくて!」
デニスとセイレーネがものすごい勢いでラトゥイリイに詰め寄る。こわい。でも隊長の上半身裸を見て鼻血を出して倒れたセイレーネも十分同罪だと思うけど。隊長の世界にある『しゃしんき』があればなぁ……
「ごほん、ごほん! は、話を戻します。とにかくまじめな話なんです」
まじめな話と聞いてもう一度ラトゥイリイの方を向く。するとそしてラトゥイリイの憔悴しながらさらに悲愴な表情からは、ただ事ではない雰囲気が出ていた。これは冗談じゃすまない話だと思う。
みんなも茶化すのをやめて真剣な表情になった。
「先ほどカズキと話をしていて一つだけ確認したいことがあるんです。ニンゲンの感覚とノルドールの感覚で違う受け取り方をしただけかもしれないので」
「ラトゥイリイやノヴォルディアの人たちと話している分には僕は特に感じないけど、どうしたの?」
一度深呼吸をしたラトゥイリイはゆっくりと血の付いた手紙を取り出した……文字を見るとカズキ隊長の『にほんご』とノルドール語で書かれたで書かれた手紙だ。これってもしかしてあの北領での隊長の遺書……?
「カズキに借りてきました。この手紙の中身はご存知ですね? では、皆さんに聞きます。『誰かに遺書を残す時、誰かの遺書を模倣して書くことは普通の事』ですか?」
「えっ、なんでその遺書がここに? というか遺書書くのに模倣した?」
「主はよく『誰何ならこうするだろう、ああするだろう』といいながら仕事をする事が多いが、さすがに遺書は……言葉や文を真似たのではないのか?」
「……ラトゥイリイの様子からするに、全部模倣? 隊長の気持ちは?」
普通なら確かに遺書を書く時に誰かの遺書を真似るなんて事がそもそも考え付くだろうか。伝えたいこと、死ぬ前に何か残しておきたいことを書き連ねるのが遺書なんじゃないのだろうか?
私が誰かの遺書を読んだこともないし自分で書いたことが無いからそう感じているだけかと思っていたけど、みんなも不思議がっている。
「『ほんの一部だけかもしれないけれど、この文を考えた人の気持ちが分かったからみんなに通じるように少し改悪させていただいた』と。そこで思ったのです、あの人はどんな人だと思う?」
「どんな人ってそりゃぁ面倒見がいい隊長で、困っている人をほおっておけない人で、でも戦場では守るものがあれば断固として戦う人で……えへへ……」
「そして主は騎士として自分を律することができ、部下の死だけではなく人々の死も悼む優しさを持っている」
「……祖国の技術をわかりやすく伝えて、医療を発展させて、仕事の進め方もものすごくこの世界に合わせて作ることのできる『官僚』」
「そうですね、そしてセニアさんからすれば支えてあげたいと感じる困った人ですか。私からすればカズキの言葉を借りれば『憎めないライバル』というやつらしいですつまり───」
……わかった、わかってしまった。ラトゥイリイがなぜこんなに動揺しているのか、なぜ今まで私たちは気が付けなかったのか。
私たちは知っている。あの遺書を書いた人、面倒見が良くて困っている人を損得なしで助けてしまう人、民草を守るために圧倒的少数の兵力で戦いつづけた人、騎士として欲にまみれた国で己を律し続けた人、部下だけでなく死そのものを減らす努力を続けた人、自国の進んだ医療を広めその結果……みんな、みんなカズキ隊長の話してくれた『隊長の世界の偉人』で
「───みんなしんでる」
───和樹視点
……お風呂での一件の後、人の命の重みについて聞かれたので北領遅延作戦の時に作った遺書を常に持ち歩くことで、あの時一度死んだと考えて残された時間を大切に生きようって考えてるんだと手紙を見せて伝えたらなぜかラトゥイリイに借りていかれてしまった。何に使うんだろう?
まぁとりあえず夜も遅いし返してもらうのは明日の朝にしよう。じゃあベッドに入ってお休み──
「うごか、ないで?」
「……口は動かしてもいい? 大声は出さないから」
気が付けばなぜかベッドの上で馬乗りになりながら俺の首筋にダガーを当てているカルディナが居た。俺、何か殺されるほど悪いことしたかな? そしてカルディナさん? ずいぶんと薄着じゃありませんかね? ちょっとそれはまずいんじゃないでしょうか?
太ももで両手を押さえられて左手でおでこを押さえつけられているので身動きが取れない。そしてそのですね、その薄着で上に乗られますとですね、視界がですね……ぼ、煩悩退散煩悩退散!! まずは何でカルディナがこんなことしたのか聞き出さないと!
「理由、聞いてもいいかな?」
「うたがってない」
「えっ」
「少しでも力を入れれば、死ぬ」
わ、割と目がマジだ……ど、どうしよう聞きだせる感じではとても無い。こうなったらなんとかして気をそらさせてみよう。
「ぎ、疑問形な語尾はどこ行っちゃったのかなぁカルディナ」
無反応である。表情筋をピクリとも動かさない、これが間近で見るカルディナのヤツ暗殺者モードかっ!!
「私が何でこんなことしてるか考えてる」
「自分に非があるんじゃないかって考えてる」
「もし自分が死んだらセニアさんどうなるんだろうって考えてる」
「部隊のみんなはどうなるんだろうって考えてる」
「自分が死んだら十字軍が撤退するかどうか考えてる」
「考えて撤退しないだろうから私を含めてどうやって助けるか考えてる」
一言発するたびにどんどんダガーを食い込ませてくるカルディナ、出血多分してきた。まいったな、声を出そうにもその喉の動きでもっと深く切れそうだ。
「どう声をかけようか考えてる」
「シーツや服が血で汚れたことを考えてる」
「洗う人が大変そうだって考えてる」
「服を、選んでくれたセニアさんに……どう謝ろうかって、かん……がえて、る……」
つい先ほどまで人を殺す絶対零度だった瞳からぽろぽろと涙があふれてきた。そしてダガーを持つ手が震え初め表情も崩れ始めてしまった。
「どうしてなかせ、てしまったか……考え、てる」
「でも、死にたくないって一度も考えてくれない!!」
ダガーを取り落とし両手で俺の服を握りしめてくる。涙はもう止められそうもない。
「……そうだね。それで大丈夫かいカルディナ、その、これはいったいどうしてこんなことを?」
何とか頭を撫でて落ち着かせようとしたところ、急に口をふさがれた……えーっと、その、気持ちはありがたいんだけど俺既婚者なんだよね。部下とキスはやばいよね……? 一応四人娘の気持ちはだいぶ好意があるのは分かってたよ? でも一番バレバレなのがデニスでセイレーネとカザネは自分から部下のポジションで居てくれようとしているのが分かるから大丈夫だとして、そういえばカルディナがどう思っているか考えてなかった。
いや、セニアを嫁にもらえただけでも人生幸福値使い切ってると思ってたんだから、まさかこう、ここまで好かれてるとはさすがに、ねぇ?
……既婚者なのでたとえ重婚がOKな世界だったとしてもまずはセニアに確認しないといかんでしょ。ここはまずカルディナを落ち着かせてじっくり話し合わないと。
「か、カルディナ? ご、ごめんな? 気持ちはとっても嬉しいんだけど───「隊長の生きる意味にはたりない?」いや、えっと」
「隊長は模倣し続けてる。その時々にあった最適の人物を」
「隊長は殺し続けてる。カトウカズキという人格を」
「私も、自分を出してこなかった。間違ったら怖かったから」
「カトウカズキはいつだって最適解をとろうとし続けてた、でも平和な『にほん』から来たあなたは特別な力なんてなかった。だから自分を変えた。知っている歴史から最善を尽くした人を探して、思考を、行動を模倣した。ううん、きっと『にほん』にいた時からずっとそうだった。だから平和な学生だったり歴史を学んだ学者だったり医術を学んだ医者であったり、そしてしたことが無い仕事のはずの役人もできた。」
まって、待ってくれ、頼む、頼むからそれ以上言わないでくれ。急な話の展開に頭が付いていかない。そしてこれ以上カルディナの話を聞いてはいけないと心が叫んでいる。でも服を握り締めて泣いているカルディナから目をそらすことができない。
こんな時どうすれば……『どんな人を真似すればいい?』 あ、あれ? なんで真似する必要があるんだっけ。いやいや、ここは鈍感系主人公? 違うな、冷静に乗り切るには……あれ?
混乱していると、今度はカルディナが両手で俺の頬を包んでまっすぐ見つめてきた。どうしよう、目がそらせない……
「教えて、カトウカズキ。カトウカズキはどんな人? 私たちを……違う、私の事をどう思っているの?」
「俺は、私は、自分は、僕は……あ、あれ?」
「教えて、あなたはどんな人?」
カトウカズキは…………あれ? どんな人間だったっけ? お、おかしいなぁ、自分の事のはずなのに。頭が混乱する。そ、そうだよ。セニアの旦那で四人の黒髪護衛騎士の隊長で、和樹隊隊長でこの戦線の指揮官の一人で、それで───」
「違う、役職や役割じゃない。あなたはどんな人?」
「えっ、それは困ってたらつい助けちゃう様な能天気───「それは私たち和樹隊に見せる『隊長』」うっ、じゃ、じゃぁ」
おかしいな、自分はこんな人間だってすぐ出てこない。どうしよう、こんな時『どんな人を参考にすればいいか分からない』なんて。
「教えて、どうしてあなたはあなたがないの?」
「教えて───」
「どうして『死んでしまう人を模倣』し続けるの?」
───まったく、なんでこうできないのかねぇ。お兄ちゃんはああしてちゃんとできるのに
わかった、おにいちゃんみたいにする
───***は部活と勉強両立できているのに、どうも最近成績が悪いなぁ
わかりました、***君のように部活も勉強も両立できるよう努力します
───同期の***はバイトなのにいい売り上げ出してるんだ、もうちょっと頼むよ
わかりました、***さんのように売り上げを出せるよう努めます
自分はダメなんだ。自分なりに努力しても他人の期待に応えられないんだ。だからせめて───
「賢者は歴史から学び、愚者は自己の経験から学び、本物の愚か者は経験からすら学ばない」
「だから、オレは他人と比較すればどうしようもないほどダメだけど、他人からの期待に応えようとして、賢者であろうとしたんだ。だから歴史……他人から学んだんだ。『考え方をまねできるぐらいに』」
漫画、ゲーム、映画、小説、実際の歴史……様々な英雄や偉人の行動を調べて、覚えて、「選択肢」を増やし続けてきた。そんな人生だったんだ。
そっか、オレは全部他人のマネだったんだ。自分なんてものがないただの……
───カズキ、愛していますよ。
思いっきり自分の頭をぶん殴る。ものすごい頭が痛い。でも、だからこそ、カルディナが気づかせてくれたんだ。あの声が導いてくれるんだ。
───あ、アナタって言うのは二人きりの時だけですからね!
───はーふのるどーるっていうのは、その寿命もちょうどはんぶんで……えっと……こ! 子供は何人ほしいですか!! ノルドールは繁殖力が低いのでそのえっとあ、あわわわわわ
───死なないで! 帰ってきてくださいね!!
───カズキががんばっているから私もくーるびゅーてぃーでがんばるんですよ♪ ふふっ♪
自分の中で、自分自身の考え、気持ち。あるじゃないか。大丈夫、コレがある限りカトウカズキは加藤和樹で居られる。
「自分の頭を殴りつけた、そんなあなたは、だれ?」
「ノルドールのセニアって女の子にぞっこんなダメ人間。そして四人の美人部下にメロメロなダメ人間」
「……満点じゃないけど、合格、点?」
「ちなみに一点だけ指摘しておくぞ。死んだ人ばかり模倣しているんじゃなくて、歴史上の人を模倣しているんだ。だからすでに死んでて当たり前」
「自分の命を計算に入れない、のは?」
「『すでに死んでいる人、生きていない人』を模倣しているんだから死ぬこと考えるの忘れてた」
「なんだ……もう、隊長のばーか? 心配して、損、した?」
「いやでも、ありがとな。正直ちょっと自分を見失いかけてた気がする。ここら辺でこうなってなかったらちょっとヤバかったかもしれない」
ていうか他人を模倣し続けていたおかげで自分らしい何かが分からなくなるってヤバイだろ。精神メタモンとかなんだよ。イタコさんじゃあるまいし……
まて、そしてなんだか落ち着いたらジクジクと首筋が痛む。やばい、まだ出血止まってなかった所に思いっきり頭ぶん殴ったから力が入って余計に血が出てる。止血止血!!
「……かぷっ」
「ちょっ! まっ!?」
「ちゅー………」
流れ出た血と傷口にカルディナが舌を這わせてなめとったと思ったら、そのまま切り傷に吸い付いてきた。なんなのだこれは! どうすればいいのだ! あっ、模倣できる精神状態に戻ってきた。ってそうじゃないだろーーー!?
「……とまった? でも私は謝らない」
「ま、まぁうん、今回はここでカルディナが気づかせてくれたからよかったってことでひとつ。あと女の子なんだから男の血なんてなめちゃダメだぞ」
「血の契約? えい……はい、指切った。なめて」
「いやなめないだろう普通まて、むぉ!?」
落としていたダガーナイフで自分の指先を切ると出血した指をそのまま俺の口へ突っ込んできた。男のゆびちゅぱとか誰特だやめ、やめろぉーーー!? あっ、これはこれでばぶみを感じないでもっていかんいかん。
「ふふっ……これで、あなたと私は、血族? 血がつながった、儀式?」
「血族って……うーん分かった、俺は既婚者なのでカルディナは『妹』とします。異論は認めないからな」
「義理付かない、ほう?」
「血族なので義理尽きません。手出さないからね?」
「ぶー……でも、いいかも?」
今まで見たことのない笑顔を浮かべて俺のおでこにキスすると、カルディナは腕を広げ俺に抱きついて耳元でこういったのだ───
「じゃあ……大好き! おにいちゃん!」
ずきゅーん! という謎の音と心臓を矢で貫かれるイメージ映像と共に感情のオーバーフローを起こした俺は意識を手放すのだった……
あとがき
ちょっと殴り書きが過ぎました。後で改修工事しますので……
そしてマジメかけずに最後ギャクで終わらせてしまう……