前回のあらすじ
・思考から何まで模倣できる特殊技能
・メンタルメタモン
・カルディナは妹属性を手に入れた!
<カズキ視点>
先日ののじゃろり王女襲来より三日後、こちらから挑発とか何かするまでもなく、一向に帰ってこない先日殲滅した部隊を捜索しに来たのか翌日30騎程度の弓騎兵部隊が来たので同じ手で殲滅。三回ほど殲滅した時に帝国軍のデオダトゥス将軍がある一計を講じた。
生き残った捕虜の一部を開放しこう言いつけた「親分に言うんだな、帰ってこない奴らはみんな王女側に寝返ったと。お前が帰った後親分の近くに居る余り見ない顔の大男が居れば発言には注意することだな、正しく言わなければ……わかるな?」と。
もちろんこちらから敵反乱軍にスパイを送り込んだわけではない。正確に言えば寝返ったという疑心暗鬼になってくれればもうそれはOK。逆にたまたま見知らぬ大男が居ればこいつがスパイだとか言ってくれて混乱に拍車がかかる。最後に無事帰還しましたと言ったらそれはそれで……まぁ結果はご覧の通り。目の前にはぎゃんぎゃんこっちに吠えてるDシャア朝反乱軍指導者と敵兵800名が展開している。数おかしいだろ!? 反乱軍なのにもう正規軍の一個方面軍近くそろえてこっち攻めてくるとか!!
「さて、予想外に釣れてしまったようだな。叛意を勘ぐられたくなければ総動員しろとでも言ったのだろう。ずいぶんと装備のみすぼらしい兵も多いし、なによりDシャア朝の軍なのにこの歩兵の割合だ。さすがに200近い騎兵をしとめただけはあるな」
「どの旗もたいした族長ではないのじゃ、大族長は……ほう、わらわと仲が良いはずのカシム族長までおるのぅ。じゃが数を集めるためにそのカシム族長と仲の悪いユサフザイ族まで連れてくるとはおろかよのぅ……これだから国を譲れぬのじゃ」
「あの、ずいぶんとお二人とも余裕そうですね? こちらの防衛兵力はノルドール軍50の帝国軍100で150名なのですが……」
圧倒的兵力差を前にしてお二人はずいぶん余裕そうな表情。反乱軍側は直ちに総攻撃するつもりのようだし、最低限の攻城兵器も持ち込んできている。大量の歩兵に持たせた帝国軍式の大盾と投擲武器対策マシマシの城門破壊鎚、そして大量のはしごで一気に強攻するのは目に見えている。つまり総がかりを食らうと普通まずい状況なんですが、その辺お二人ともご理解いただいているんでしょうかね?
「カズキ、どうせアナタのことですからずいぶんとえげつない方法で皆殺しにするつもりだろうと、デオダトゥス将軍もアルティングル王女もご理解されているのでしょう。何人生かしておくのです?」
「戦力比と準備を考えると、北領防衛線より、有利? 捕虜は何人必要?」
「主のことですからやはり燃やし尽くすのですか?」
「……串刺し、それより生きたまま鳥のえさが……」
「隊長おすすめの首はどれですか? 僕が一騎討ちで槍先に掲げてきてあげますよ!」
「やだ、ウチの護衛騎士怖いんですが」
うちの護衛騎士四人娘が、Dシャア朝反乱軍指導者が先ほどから吠えている王女や俺に対する罵声に対してマジで切れる5秒前状態である。三国志のアレじゃあるまいし、挑発で門を開けてホントに出撃しないでね? ラトゥイリィもニヤニヤして四人娘煽ってるし……そ、そうだニグンさんは「隊長、女性兵士はあんまり居ないようですから、大体殺しちゃっていいんじゃないですかね? もちろん隊長からご命令ただければ特殊な敵兵はちゃんと気絶させてお部屋にお持ちしますぜ」ってこらー! やめろー!! ちょっとしゃれにならないだろーーーー!!
やめて! 四人娘の目がみんなうさみちゃん状態なの! 目くわって開いてヤンデ目状態!! セニア助けて───『浮気は車裂きですよア・ナ・タ♪』 ……電波を受信したので虚無の心で望もう。うん、メタモンメンタルの能力を使って鈍感系主人公の気持ちで居よう。うん。
「カズキ殿の部隊は大変仲がよろしいようで。では防衛戦における射撃指示についてはこちらの兵もお任せしますぞ。追撃となれば逆にそちらの騎乗可能兵をお貸し願うということでよろしいかな?」
「あ、はい。防衛から反撃に転じる場合は独自の判断で結構です。そちらの動きに合わせて動かせる騎乗可能兵は回せるだけ追いかけさせます。あとは指揮する分隊長を掌握していただければ」
「わらわの護衛兵からもその時は追撃に加わらせてもらえぬだろうか? 取り込めそうな者がおればできれば懐柔しておきたいのじゃ」
「承知した。帝国軍の出撃にあわせて付いてきてくだされ」
さて、敵も一通りこちらを罵ってすっきりしたのと、いよいよ準備ができたようでゆっくりと大盾と共に前進してくる。ではでは始めようか。この要塞の名前にふさわしい『旅順の戦い』を!!
<反乱軍指揮官>
先日やっと見つけた前国王の血筋最後の生き残りである第一王女をやっと見つけて追撃部隊を差し向けていたものの誰も戻ってこなかった。その後三度信頼できる族長の部隊を送り込んだが音信普通のまま、たった一人だけ帰ってきたのだ。
その生き残りいわく最初の追撃部隊を含めみな裏切ったとの事だが……もはやDシャア朝の勢力はこちらが絶対的有利だ。残る前国王派の族長など数えるほどしか居ないし、十字軍や旧王国とやらからの援軍もある。こんな状況でいまさら王女に寝返って自滅するやつなんぞいるか!!
しかしあの忌々しい王女の首ひとつ取ってくるためにこちらの弓騎兵がたった一人の生き残りを残して200騎が全滅するわけがない……こいつはただの脱走兵だとして、なぜだ? 何かに拘束されている? しかし騎兵だぞ? 伝令の一騎ぐらい出せるだろう。となると不意打ちしかありえん……俺の新しいDシャア朝での立場のために何か策謀が? ん? 脱走兵が突然旧王国からの増援に来た騎士に対してこいつが敵軍の密偵だとかのたわり始めたが……突然なんだと言うのだ?
「ほう、この古のペンドール大陸を支配し続けてきたペンドール王国の使節たる私に対してなんという無礼……王よ、切り捨ててもかまいませんな?」
「まぁここは俺に免じてその剣を引いてくれ。こいつからは多少聞きだしたいことがあるからな」
「そうですか……まぁ、いいでしょう。それで? 王女が逃げ込んだという要塞、攻め込むのですかな?」
「ちょうどそちらの兵は城攻めに適した装備を多数お持ちだったな。俺たちは城攻めは得意ではない。今回も頼みたい」
「ふふっ……ではペンドール王国軍の実力を改めてお見せしましょう……」
この古代に滅んだはずのペンドール王国を名乗る男とその兵士達が居なければ、城攻めに不向きなDシャア朝の俺たちだけでここまですんなりと前王派の拠点を落とすことはできなかっただろう。俺たちが立ち上がるときに偶然に古代ペンドール王国の復興を手伝う代わりに俺の戦いに協力してくれると言うが……まぁいい、こうしてどんどん城攻めでやつの兵を消耗させていけばいずれは……
───『旅順』要塞前面
目の前の帝国軍の要塞には確かに王女の旗印がある。見たこともない形の要塞ではあるが……スネーク教徒に攻め込まれ十字軍の攻撃でもはや滅んだも同然の帝国軍なんぞ何を恐れる必要があろうか!!
敵兵の姿が見えず、舌戦する気も無いようだが一応Dシャアの誇りにかけて俺単身進み出て舌戦を申し込んだがまったくの無反応。罵声の一声も聞こえない。この兵力を前におびえているのか。ふん、腰抜けめ。
「では攻撃を開始します、われらが正当なる王よ、号令を」
「あの生意気な王女を必ず引きずりだして来い! 生きたまま捕らえれば雑兵でも取り立て賞金をだそう! 全軍攻撃! 一ひねりにしてしまえ!!!」
「では歩兵部隊はこちらでお任せを。ペンドール王国兵よ! 前進開始!! 古を栄光を取り戻せ!!」
威勢のいい声と共に攻城用の大盾を装備した歩兵が列を成して進軍する。歩兵600の突撃を受ければこの程度の要塞なんぞ瞬く間に攻め取って……
───だが、その歩兵の列が突然崩れた。先ほどまで何の反応もなかった要塞から雨のような矢と石つぶてが降り注いできたのだ。
「王よ! 200の距離はあるはずなのに敵の矢が大盾を貫通してきます! それにすごい精度で狙われておりすでに100近い兵が倒れております!! 敵城内より打ち込まれてくる投石も信じられない精度でこちらの隊列に直撃していきます!!」
「そんな馬鹿な! 帝国軍の城攻大盾と同等の強度なんだぞ!? それにカタパルトでなぜ歩兵が狙い撃ちできるんだ!!」
「だが後ははしごをかければ数で勝る! 歩兵を走らせてはしごをかけさせろ!! 攻城鎚は分厚い屋根付きだから鎚を盾にしながら押し込め!!」
「くっ……走れ! 多少隊列が乱れてもかまわん! 走れ!!」
大丈夫だ、すさまじい速度で確かに攻撃されているがこれがノルドールの弓兵の力なのだろう。だが盾を貫通しても攻城鎚などに隠れて前進中の重装兵さえ取り付いてしまえばこちらのものだ。現に矢は攻城鎚の装甲を貫通できていない。敵カタパルトから飛んでくる投石もかなり小さくこれなら城攻鎚を破壊するには威力が足りない。なにより100人死んでもまだ500人の歩兵が居る。何も心配する必要は……
「王よ! 今度は投槍が絶え間なく降り注ぎ、攻城鎚に隠れて進む重装兵が投槍で正確に狙い撃ちされています! 攻城鎚を放棄して兵が逃げ出してしまっていますぞ!」
「攻城鎚部隊の逃走により歩兵部隊が動揺しています、このままでは!!」
「そんな……敵兵は100人程度であるはずだ、こんな短時間で……まさか本当にあの200騎は……」
「歩兵部隊潰走します! 敵城門開き敵軍出撃してきます! 王よ!!」
こんな、こんなことがあってたまるか!! 総攻撃を開始してまだ一時間もたっていないのだぞ!! それなのに、こんなことがあるはずが……っ!!
「だめだ、潰走する歩兵が邪魔でこちらの騎兵が……これでは敵騎兵を止められない……王よ、ここは一度引いて───「帰れると思った、の?」ガッ!?」
振り返れば側近の族長が首から血を噴出して倒れている。その後ろには……女? ヤツかDシャアの女? まさかその女が───「大将首みーつけたっ! ねぇ、その首僕にちょうだい?」
死んだ族長と族長を殺した女に注意が向いていたわずかな間に、満面の笑顔をした重装騎兵の女が槍を突き出してきていた。とっさに抜剣してはじこうとするが、その速度を超えた槍が俺の喉を貫いた。
「あはっ! つーかまえーたっ!」
そんなうれしそうな重装騎兵の女の声が、Dシャア朝王国の王になるはずだった俺の最後に聞いた言葉となった。
<和樹視点>
さて、要塞設計時の計画通り、無事一兵の死傷者を出すこともなく敵軍の撃滅に再び成功した。
ノルドールコンパウントボウ+ノルドールコンパウントクロスボウによる超威力長射程の統制射撃。要塞に設置されたスコルピオンによる精密狙撃。どんぐり型に整形した弾を回転させながら発射するねじり腱式大型カタパルト。固定手回し型連続アトラトル投槍器などなど……アリストテレス先生のびっくりどっきり装備を使ったこの『旅順』の名に恥じない圧倒的射撃力で瞬く間に敵軍を撃破できた。ただし通常の要塞を10個作る予算が飛んでったし、今回までの射撃戦4回で普通の弓兵40回戦闘分の矢を消費したけどね!! 補給もおっつかないし予算ももう無いけどね!!
敵さんは重装甲の攻城鎚と大盾に自信があったみたいだけど、コンパウントクロスボウや帝国軍のピルム型に改良したアトラトルは車のドアをぶち抜く威力があるので青銅盾や鉄と木の合成盾なんて簡単にぶち抜いてしまうのだ……これ敵に鹵獲されたり兵が持って逃げ出したらやばいよね……取り扱い注意しないと。
まぁ今回はデニスとカルディナがいつの間にか帝国軍の騎兵追撃にあわせて我先に出撃してしまったけど敵歩兵の潰走とタイミングどんぴしゃですさまじい戦果拡張にも成功して、ここまでうまく行くのかというぐらいのまさに完勝だ。味方に被害0というのもさらに良い!
幸いにも命はお金で買えないし、なにより本来なら黄金よりも貴重な『熟練兵』を大量に確保できる射撃戦ドクトリンは、ただでさえ人口の少ないノルドールには最適だとノヴォルディアの皆さんにもご理解いただけているようで、ノヴォ市長やセニアからぶーぶー文句の書かれた手紙は来ているけども要請している分の武器弾薬はちゃんと届いているので助かる限り。今回殲滅したDシャア朝の装備も溶かしたり整備してこっちの装備や軍資金に回させてもらうとしよう。ちょっとでもリサイクルしないとね?
さて、話は変わるけれど、みんなヤンデレって知ってるかい? 病的に愛してくれる女性について表現した日本の文化なんだけど、二次元だって正直それはキツイっすって感じの愛され方が強いんだ。それがね? 三次元になるとね?
「あはっ! 隊長! 見てくださいよ! 大将首団子のお土産です♪」
「後方の補給部隊に妻子供連れの敵、多数? みんな捕まえて、きた? どう『使う』?」
「主の悪口で笑っていた敵兵は降伏してきても全員始末しておきました!」
「……デニスが持ってきた首、城門にでも吊るす? ……塩漬けにして残った敵族長に送りつける?」
「「「………」」」
あのさ、その、ね? デニスさん? そのロングランスは団子刺す串じゃないんだよ? そのすごい数の首の形をした団子はなんなのかな?
カルディナさん? 全身血まみれで恍惚とした表情で捕まえてきたって言うのやめて? 捕まえた人の安否も気になるけどお兄さんカルディナの感染症と性癖が心配だよ?
セイレーネさん? 王女からすれば降伏した兵は取り込める存在だったんだよ? 降伏した敵兵をなます切りしちゃやばいんだけどその辺わかってるのかな?
カザネさんは発想が古代中国並に残忍極悪なんだけど大丈夫? 普段リスみたいに幸せそうにご飯もきゅもきゅしている君はどうしたの?
ていうかデオダトゥス将軍も王女も絶句してるよ! 俺も絶句だよ! ラトゥイリィも───「弓兵部隊の指揮で城から出れなくてとても残念でしたが、四人ともお見事ですね」ってラトゥイリィーーーー!!!
「……これが、ノルドールの戦なのかえ?」
「……これほどの者から敬愛され使いこなすカズキ殿は……その、さすがですな」
やばい、帝国軍とDシャア朝正規軍との心の距離がどんどん広がっている気がする。やめて! この子たちちょっと気がたってるだけなの!!
「ま、まぁこれで敵対勢力はほぼ壊滅したのじゃ。下った兵も50ほどおるし、わらわはこれよりDシャア王国を取り戻しに首都へ行って来る。デオダトゥス将軍、カズキ将軍、この恩はわらわとDシャアの民は未来永劫忘れぬぞ」
「帝国軍からも外交官として一人連れてっていただけると助かります。国内を平定されたらば十字軍に参加中の兵の撤収や、可能であればこちらへの義勇兵などのご協力お待ちしておりますぞ」
「も、もちろんじゃ! わらわもまだまだ死にたくないからの!!」
王女様? そんな涙目でこちらを見ないでください。先ほどからカルディナに血だらけの体を恍惚とした表情のままこすり付けられてるんです。セイレーネが頭なでて欲しそうにふんすふんすしているんです。デニスが抱きついてきているせいで首の形した団子さんと目が合ってるんです。カザネがしゃがんで腰に抱きついてきているです。ちょっと怖いのは分かるのですが引かないでください。というか助けてください。
「一応お二人にはお伝えしたいのですが、ノルドール族にこのような事をする風習はございませんのであしからず。これはこのカズキ隊長のみなしえる事なのです」
だからラトゥイリィも変なこと言わないでーーーー!!!
「まぁ敬愛する人があそこまで罵られたのじゃ。それに四人とも隊商護衛兵じゃったのも聞いておる。恨み千万だったのじゃろうて。そこは男の甲斐性を見せると良いぞカズキ将軍」
「では王女、我々は一旦ここを離れましょうか。功一等のカズキ将軍とそのご一行だけの時間も必要でしょうし」
「そうじゃな、ではまた会おうぞカズキ将軍」
えっ、マジで俺おいてくの? 今後のDシャア朝を左右するような話スルーしちゃうの? というか誰も助けてくれないの?
「隊長~」
「主~」
「……隊長」
「ハァハァ……隊長……」
「せっ……セニア助けてーーーーー!!」
───第4次『旅順』攻防戦─── ※王女救出戦を第一次とし、その後3回迎撃戦を行っているため
攻撃側:Dシャア朝反乱軍
騎兵:200
歩兵:600
防衛側:ノルドール・帝国連合軍
騎兵:30
歩兵:70
ノルドール弓兵・クロスボウ兵:50
損害
Dシャア朝:死傷者300
降伏者100
残りは逃亡
ノルドール・帝国連合:損害なし
Dシャア朝反乱軍王位僭称者の戦死によりDシャア朝反乱軍崩壊