突然だが、御厨は考察した
考察の対象は、今御厨の目の前にある物。嫌でも目につく赤に塗装された、半ば程から叩き折られた大型のウィングバインダー
そして考察の理由は、今の状況が異常であること。何故か格納庫中の工兵達が、ボルトとレイニーを中心に集まり、御厨を取り巻いている
皆が皆、一様に腕組みしているのだから、何よりもまず、異常さが極立った
「・・・・・・・・・ふーむ・・・悪くは・・・ねぇだろうな、きっと」
「・・私は反対です。システムは酷似していても、シュトゥルム型のプログラムには無い物です。後付して一体どんな影響があるか・・・・」
考察の理由としては、もう一つある
今、ダリア達パイロットは、ブリーフィングの為に格納庫には居ない
つまり、何かあっても、助けは無い訳だ
今更言うまでも無いが、御厨は一人では動けない
不足の事態に気付きはしても、それに対応する術がないと言う事。これは、死活問題である
然るによって、御厨の相棒たるダリアが傍に居るかどうかと言うのは、日増しに重要度を帯びてきている
詰る所、結局何が言いたいのかと聞かれれば、ダリアが居ない限り考察なども無意味、と言う事だ
だが、大多数の人間はは自分に危険が降りかかる時、例えそれが意味を成さなくとも、様々な情報を得たがる物である
御厨も御多分に漏れず、そんな類の人間だった
話を戻そう。助けがない、それつまり、この場合の仮称として、「敵」の成すがままと言う事
・・・・結論として、その「敵」に寄って集って改造されても、誰も止めてくれない訳だ
(あ、ちょ、ま!止めてぇー!近寄らないでぇー!)
ロボットになった男 閑話 「無題」
格納庫に戻ってきたダリアの第一声は、何の捻りもない、悲鳴だった
「あ、・・あたしのシュトゥルムが!!ま、真っ黒にぃ?!」
格納庫に入ってくるなり、突然走り出したダリアは、シュトゥルムの前まで辿り着くと、膝をついて頭を抱える
御厨は、一体どう反応すれば良いのか、咄嗟には判断出来なかった
ただ、あるのは事実だけ
ラドクリフの乗機に付いていたウィングバインダーを、後付改造で設置され、頭も体も足も、どこもかしこも全て真っ黒に塗り上げられた、御厨だけだ
あまり良い趣味とは言えない。暗すぎる色も、全長の四分の三もある巨大な羽も
大体、羽で大きく見えるとは言え、御厨の元々小さな機体を黒くした所で、威圧感も何もない。ただ、奇妙な滑稽さが残るだけだ
後から入ってきたアンジーが、忙しなく走り回る工兵達を掻き分け、歩いてきた
「あ~れまぁ。こりゃ思い切ったもんだ。・・・・・全身真っ黒たぁねぇ」
(他人事みたいに・・・・・・。いや、そりゃ他人事だろうけどさ)
思わず御厨は、気だるげに頭を掻くアンジーに対して、愚痴った。ダリアは茫然自失としている
愚痴られるアンジーにしてみれば良い迷惑なのだが、それでもどうしようもない事と言う物がある
御厨は、その愚痴が無意味かつ理不尽であると痛感していながらも、それを押し隠せない自分の未熟さを、恨めしく思った
勿論愚痴はアンジーには届かないが、そこは己の心情の問題である
アンジーの言葉を受けてでは無いだろうが、唖然としていたダリアがハッと我に帰り、続いて勢い良く立ち上がる
そしてくるくると辺りを見回すと、途端に走り始めた
向かう先に居たのは、御厨の隣に位置する機体の整備を行っていた、ボルトであった
「ボルト主任!主任!ボルト主にぃぃん!!!」
移動式のタラップに上って、御厨と同じく真っ黒に塗られたタイプRの上体を整備していたボルトが、鬱陶しげに振り向く
ダリアを睨み付けた。尉官階級だの何だのはお構いなしだ
まぁ、その心情は解らないでもない。ボルトは今、その神経と体力、そして技量を、殆ど鼻先に差迫った己の職務へと向けている
余裕を持ちつつではあるが、その様は真剣の鋭さだ。立ち入るべきではない領域である
もしかしたら、あの剣呑さには、尉官と言う立場にあるまじき態度のダリアを、諌める意味合いもあるのかもしれない
「・・・・・なんですか、少尉」
「あたしのシュトゥルムが!」
ダリアは、走る勢いそのままに跳躍し、タラップの頭頂部に取り付く
目測でも、大体四メートルの高さがあるのだが、そんな事はまるで無視だ。これはいよいよ、この世界の人間は、身体能力がおかしいとしか思えない。まぁ、御厨の主観で、だが
ボルトは、誤って転落しないようにと設計されたタラップの防護柵を、いとも簡単に乗り越えようとするダリアの頭を、グイグイ押さえつける
おかげでダリアは非常に危険な立ち位置だが、そこは上手くバランスを取っていた
どうやら、タラップの上に登らせるつもりはないらしい。ボルトは、奇妙な所で容赦がない
ダリアは、その紅の髪が重力に従って流れるのも構わず、がうがうとボルトに噛み付いた
「真っ黒に!なんで!しかもあの羽!」
「・・・・・ったく、ただの夜間迷彩でしょうが。何を慌ててるんです」
ボルトはそのままダリアを抑えながら、後ろで働く工兵達に指示を出した
彼も随分と手忙しい男だ。ダリアを抑え、応対しつつ、部下達に檄を飛ばす。頭の中も静かではあるまい。格納庫の統括役であるボルトに、安息の時も地もありはしないのだ
一通り指示を出し終えたのか、ボルトは無表情に頷く
そして未だがうがうと唸っているダリアに顔を向けると、情け容赦なくタラップから突き落とした
(何ぃ?!)
・・・・と驚いたのも束の間。御厨がそろそろとバレないように動かした視界の先には、何事も無かったかのように、華麗に着地するダリア
そして、その後をついて来るかのように、タラップから身を投げ出すボルト
勿論彼も、まるで些末事をこなすかの如く着地した
御厨は今度こそ、開いた口が塞がらなかった。・・・・口は無いが
「・・・・やれやれだぜ。内の隊の紅一点は、実戦を経験しても落ち着きが出やがらねぇ」
ダリアを尻目に、アンジーが御厨に近づいてくる
御厨はアンジーの台詞に共感しつつ、胸中で大きな溜息を吐いた。無理も無い
アンジーは御厨の右足に触れると、二、三度擦った
得心したように頷く
「ダリィ。そんなに悪いもんでもないぞ。ツヤ消しもされてるみたいだし、この色なら、まず肉眼じゃ捉えられないさ」
「ついでに、断熱剤も混ぜてある。内部は熱を溜めやすいが、タイプSなら問題ないでしょう」
サーマルセンサーも誤魔化せるってか。御厨は皮肉気に言う
御厨とて、ボルトの言う事は解る
塗りたくられた塗料は元々光を反射していなかったし、その後入念に皮やすりで全体を擦られれば、嫌でも意図が見えようと言う物だ
そして、隠密効果の上昇と言う利点を、理解できない程馬鹿でもない
(・・・・・・けどなぁ・・・・・・これじゃまるで、TV特撮の悪役だよ)
そう。正にそれ。戦争にヒーローも悪役も無いと言う事は当の昔に理解しているが、この姿では流石にやる気が削がれる
前線の兵士には、メンタルとは重要な物だ
彼等は常日頃から、天気、酒、煙草、ラッキーナンバー、果てはコインの裏表、そんな些細な事を、異常な程に重要視する
それは、死と言う絶対的な猛獣の顎の中で戦いながらも、決して己以外の誰かに縋ったりできない、そんな彼等の『唯一』なのだ
全力で死に抗いつつも、運を天に任せている。矛盾しているが、詰まりそういう事だ
だからこそ、彼等なりの精神安定剤としての意味合いは、強い
元より黒とは、暗いイメージが拭えない
人が暗闇を恐れ、悪しきとするように。タロットの死神が纏う衣が、黒で表されるように
死や恐怖。人の身では計り知れぬ事を、連想させてしまう
だから、尚の事、ダリアは反発するのかも知れなかった
「アンジー少尉・・・・、他人事みたいに言ってるが、あなたのにも施されてますよ、夜間迷彩」
「何ぃ?!俺の機体まで、こんな悪趣味な色に染めたってのかぁ?!」
「上からのお達しです。囮小隊以外、全ての機体を黒に塗り潰せってね」
何やら複雑な顔のダリアの背後で、今度はアンジーが騒ぎ出した。いい気味だ
やはりアンジーも、機能性以外では悪趣味と考えていたようで、先程のダリアと変わらぬ勢いでボルトに食って掛かる
御厨の方は既に、諦めの境地に達していた
(こんなにしてまで行う作戦って、一体どんなのだよ・・・・)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
あれから一悶着あった後、ボルトは、無理矢理アンジーに引き摺られて行った
アンジーはボルトに、自分の機体の前で、じっくりと説明して貰うつもりらしい。その態度が教えを乞う物でなく、ばりばりに喧嘩を売っていた事は、言うまでもないだろう
もしかしたら、壮絶な殴り合いでも起こるかもしれないが、そこは御厨の知った事ではなかった
それらは、一応横に置いておき、だ
結局の所、ダリアは色の事は納得したらしい。出撃時間が差し迫り、余裕が無くなったとも言える
あちらこちらではしゃぎ回った――本人にそのつもりは無かろうが――せいで、あまり時間的余裕が無いようだ。今は、御厨のコックピットの中で、微調整を続けている
あれだけ騒がしかった格納庫は、基地放送によって通達された待機命令によって、閑散としていた
「・・・・うん、そこら辺はピーキーな設定で構わない。整備班でもテストはしたけど、類敏に推進力のベクトルを変えなきゃ、派手に地面に突っ込むから」
そして、タラップの階段、その途中から作業を見守っているのが、レイニーだった
専ら彼女の仕事は、後付されたウィングバインダーに関する事だったが、出撃前の気が高ぶった状態のダリアには、丁度よかろう
あまり口出ししない方が、作業はスマートだ
しかし、驚くべきは、この二人が相争っていない事だと御厨は思う
格納庫では、ダリアと取っ組み合いをしてでも、御厨に触れさせようとしないレイニーが、今日は存外に大人しい
勿論、些か不機嫌そうではあるが、それ以上の物は何もなかった
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ、・・・・・・・・この羽って・・・・・・・・・」
コックピットで計器を弄りつつ、ダリアが声を上げた
訝しげな表情。訝しげな声。そして発言の内容。言いたい事は大体解る
「・・・・・・『死神』の乗機についてた羽なんでしょう?・・・・・なんでこれ、・・・・・こんなに上手く、シュトゥルムに取り付けられるの?」
ダリアの疑問は、当然と言えば当然だった
普通なら、回収した敵機の部品が、そのまま自機の改造に宛がえる筈がない。設計が違うし、規格も違う
無理矢理付ければ、膨大な負荷とエラーで正常動作の確立は極めて低い。そして物理的な理由も含めれば、稼働率はどんなに高く見積もっても五%を切る
これは、兵器としては使い物にならない
なのに、このウィングバインダーは、さしたる問題もなく、すんなりと御厨の背に収まった
矛盾(エラー)も無理(オーバーウェイト)も無く、極めて自然に、まるで、初めからそこにあるのが当たり前だとでも言うように
これはつまり、このウィングバインダーが、更には、あの死神の乗機が
御厨・・・・タイプSと、サイズの違いはあれども、ほぼ全く同一の固体であると言う事だ
勿論、タイプSはトゥエバの研究機関によって開発され、生み出された。それも、メタルヒュームの製造が始まった頃の初期に
他国の干渉の余地はない。ならば、後考えられる可能性と言えば
「さて・・・ね、トゥエバに、産業スパイでも居るんじゃないかしら。スパイはスパイでも、軍需産業に取り付く腐れ虫がね・・・・」
(・・・・或いは、政治判断によって設計図が引き渡されたか)
御厨は、胸中複雑になった
ダリアとて、いや、もしかしたらレイニーすらも同じ心境かも知れない
彼女達が前線で戦う最中、後方では敵に利する輩が居る
ゾッとしない話だ。背中を守ってくれる味方は、まずこちらに銃を向けないと言うのが第一条件である
そんなこんなで現状が成り立っているのだから、本当に危ういバランスな訳だ
重く沈んでしまった空気を振り払うように、ダリアが話題を変えた
「・・・・・・けど、やっぱりどうにかならないのかな、この色」
「・・・・・・・・・・・・・・・・諦めなさい。この悪趣味なカラー、某馬鹿少尉をメタルヒュームに乗せる事の次くらいに気に入らないけど、効力は折り紙つきだから」
ダリアなりに雰囲気を好転させようと、無意識の内に繰り出した話題
返るレイニーの返答には、痛烈な皮肉がオマケとしてついてきていた
確かに、この一瞬で雰囲気は変わっただろう。ああ変わった。とても張り詰めた
ダリアの藍色の目がひくひくと震えたかと思うと、急激に細くなる。三白眼。正に目が据わっていると言う奴だ
そして、飄々とダリアを見下ろしていたレイニーの高い鼻を、立ち上がりざま有無を言わさず掴んだ
今度はレイニーが、その形の良い眉をピクリと吊り上げる
ダリアが鼻を捕まえたまま、じりじりと構えた
(・・・・・・・まったく、珍しく騒いでないと思ったら・・・・・)
「ミンツ技官・・喧嘩売ってる?今まで我慢してたけど、いい加減、黙ってばかりじゃないよ」
「良いトコのお嬢ちゃんが偉そうに。紛争地帯の掟を教えてあげようか」
喧嘩する程仲が良いと言うが、それは詭弁であると、御厨は悟った
流石に見慣れた光景だ。最早、何言う気にもなれない
双方にとって良い経験になるだろう、と、誤魔化し方にすらやる気が見られない始末だ
冗談で睨み合う二人では、ない。やる時は本気。手加減も容赦もあるいまい
そして一度火が付けば、どんな状況下であろうと、やり合うだろう。例えば今が、出撃の三十分前だとしても
御厨はこう言うしかなかった。怪我するなよ
と、そんな時、この危機的状況を打開する勇者が現れた
唐突に御厨の視界の中に現れ、じっとこちらを見上げ続けるつぶらな瞳
ラフにジッパーを開けたままのパイロットスーツ。方々に尖る硬質的な髪が、その下にある顔の幼さを引き立てる
勇者、即ちホレックは、この張り詰めた空間を、たった一言で打破した。完全に、完璧に、完膚なきまでに
「・・・・・・・・・か・・・・・格好良い・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
止まる御厨。留まるダリア。滞まるレイニー。ホレックの言は、恐らく御厨に向けられた物
勿論、コメントなんて、どこからも出なかった
――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・・それで、今は出撃二十五分前の筈だけど、一体何しに来たのかしら?ホレック少尉」
(・・・・そんな重要な頃合に、殴り合い始めようとしてたのは誰と誰だよ)
所々、油や煤、塗料などで汚れたツナギを正しながら、レイニーがのたまう
階段の高位置から、ホレックを見下ろすような形だ。事実、その態度は不機嫌なのも相まってか、酷く威圧的だった。高圧的でないのは、評価できるポイントだろう
内に秘める炎は熱い物の、平時に置いて少々押しの弱さが見えるホレックは、案の定気圧された
「いや、あの、ダリアに用が・・・・・・」
「へ?あたし?」
シートからダリアが立ち上がり、そのままコックピットから飛び出す
何時もの如く、衝撃を殺しながら音もなく床に降り立つと、ホレックに目を向けた
レイニーがホレックに、追い討ちをかけるように言葉を重ねる
彼女とて、ホレックを虐めたい訳では無いであろう為、少々誤植があるだろうが、追い討ち云々はまぁ事実だろう
滲み出る覇気が違うのだから、レイニー自身にその意思がなくても、そうなる
御厨はふと、レイニーは敵を作り易いタイプだ、と理解した
「用?待機命令より重要なのかしら。まぁ、機体の調整も済んでないボンクラ少尉は、待機も何も無いんだけれどね」
「む・・・・うぬ・・・・」
ダリアは言い返さなかった。と言うか、言い返せなかった
調整の不行き届きは、ウィングバインダーに寄る物が大きいのだが、それ以外にも理由はある。各部の反応値など、細々とした事を設定するのが、ダリアは苦手だ
(にしても・・・・)
レイニーは以外と、毒舌家だったんだなぁ、と、御厨は妙に思い至った
普段、レイニーが見せる面は、非常に行動的な物ばかりだ。それ故に御厨は、レイニーの性質を半ば確想定してしまっていたのだろう
だが、当のレイニーは、百メートルも二百メートルも深かったと言う事か
若いながらも老成した彼女は、皮肉や挑発の上手いやり方も、良く心得ていた
・・・・言うまでもないが、人とコミュニケーションを取るに当たって、必要ない物である
兎に角、ホレックはレイニーの言を器用に受け流しつつ、ダリアに向き直った
「あのさ・・・・・・コレ」
タラップの真下まで歩いてくると、ダリアに手を差し出す
広げられた掌に乗っていたのは、何も刻まれていない、黒い認識票だった
本当に何も施されていない。奇しくも、今の御厨と同じように真っ黒に塗られた認識票は、通常は白線で彩られ、兵士個別の物となる
それが無い。在るのは星型を模した、奇妙なフラットラインだけだ
ダリアはそれを受け取り、灯火の光に翳した
「なんか、ジンクスらしくて。俺の所の分隊長が、『手前のマジのダチには、まっさらなタグを贈るのが良い』って言うからさ。・・・・御守り・・・・みたいな物かな?」
「へぇ・・・・知らなかった・・・・・・うん、ありがとう。何だか、今度も生きて帰って来れそう」
御厨はコソコソとレンズを動かして、レイニーを視界に納めた
レイニーは背を防護柵に預けながら、首だけをダリア達に向けている
一見、無表情に見えるが、御厨には、その瞳に好奇の色が宿っているような気がした
(・・・・・・・年頃ってやつかな)
レイニーとて若人。異性間の話には、やはり興味もあろう、と、御厨は、嫌に親父のような事を考えた
二十歳を過ぎた御厨にしてみれば、ダリア達の行動、その一つ一つが、酷く初々しく見える
御厨自身、未だ落ち着きがあるかと問われれば、否だが、やはり思う所があるのだろう。ダリア達の行動を見ては、一々感慨深く思うのだった
「でも、何で隊の違うあたしに?」
「・・・・・初めて戦場で会った時、ダリアと・・・・シュトゥルムが居なかったら、俺はきっと死んでた」
ホレックはダリアの目を見つめ、そして御厨に笑いかけた
御厨を知っているからこその行動である
ダリアもホレックも人前では億尾にすら出さないが、こういった所で、御厨に気を使ってくれる
些細な気遣いとは重要な物だ。御厨はこの世界に来てから、それを痛感した
心の中で笑みを返す御厨に気付かず、ホレックは言葉を続けた
「ま、まぁ、恩に感じてるんだよ。それ話してたら、分隊長が渡して来いって言うから」
そうして振り向きざま、ホレックは小走りに駆け出す「用って、それだけだから」
普段、人の波のせいで簡単には歩けない格納庫も、閑散とした今ならただの部屋だ。ホレックは、後ろから呼び止めるダリアの声を聞かず、そのままドアを開く
そして一度振り向いて手を振ると、閉じるスライド式のドアのまま、この格納庫から姿を消した
何故・・・・だろうか。その時ホレックが浮かべた、照れたような笑顔が、御厨の記憶媒体に焼きついた
「・・・・行っちゃった・・・・」
言いながらダリアは、もう一度認識票を光に翳す
レイニーが、下方のダリアを覗き込むようにして、柵から身を乗り出した
つい先程まで争っていたのすら忘れたか、ダリアは認識票をレイニーに見せるように掲げ、首を傾げた
「・・・・・・・うーん、突然だよね」
レイニーはダリアから視線を外す
そして身を反転させ、再び柵に背を預けた。もう瞳は、ダリアを見ていなかった
「少尉、良い事教えてあげる」
光を乱反射させる程のツヤを持つ、黒い認識票が、御厨のレンズには、とても眩しく映った
「あのうぶな少尉が「ちゃん」を付けないで呼ぶの、あんただけよ」
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いや・・・・・遅れました。いつもは大体、4~7日の間に投稿するように心がけて居たのですけれど。
暫くは無理です。シーズン終わるまでは。今の時期、結構辛い。
真に申し訳ないのですが・・・・ね。
この度も、ここまで読んで下さった方、そしてあまつさえ感想を下さった方々、真にありがとうございました。
皆様のご意見は、確りと噛み締めて行きたいと思っております。
遅れたので・・・・と言う訳ではありませんが、今回はオマケ付きです。
―――――――――――――――――――――――オマケ
今回の話の一部を馬鹿っぽく変えてみました。
意味も無ければ設定もありません。本当に、ただ、何と無く書いた代物です。
・・・・・・文句は受け入れますけど、出来ればあまり目くじら立てないでやって下さい。
―――――――――――――――――――――――
ロボットになった男 オマケ
―――――――――――――――――――――――
「見つけたわ!取り敢えず理由とかはうっちゃって、問答無用で貴方を撲殺します!」
移動式のタラップ(舞台)に上って、御厨と同じく真っ黒に塗られたムキムキのボディを誇示していたボルトが、鬱陶しげに振り向く
ダリアを睨み付けた。裸族だの猥褻物陳列罪だのはお構いなしだ
まぁ、その心情は解らないでもない。ボルトは今、その根性と体力、そして経験を、殆ど芸術にまで達したポージング(ビディビルダーの仕事)へと向けている
余裕を持ちつつではあるが、その様は真剣の鋭さだ。立ち入るべきではない領域である。っつーか寧ろ、立ち入りたくない
もしかしたら、あの剣呑さには、自分のポージング(ボディビルダーの仕事)を見ようともしないダリアを、諌める意味合いもあるのかもしれない
「・・・・笑わせるわ!小娘が!」
「言ったわね!この前コンビニに行ったら強盗と間違えられた癖に!」
ダリアは、走る勢いそのままに跳躍し、タラップの頭頂部に取り付く
目測でも、大体四メートルの高さがあるのだが、そんな事はまるで無視だ。まぁ、常識を外れた人間に言っても無駄の一言である
ボルトは、今まで何人もの血を吸って、朱に染まったタラップ(舞台)の防護柵を、いとも簡単に乗り越えようとするダリアの頭に、ぎしぎしとアイアンクローをかける
おかげでダリアは、まるでモグラ叩きのモグラだった。ぷもー
どうやら、タラップ(舞台)の上に登らせるつもりはないらしい。ボルトは、奇妙な所で容赦がない。また、ポージング(ボディビルダーの仕事)にも余念がない
ダリアは、ボルトの握力によって頭蓋骨陥没寸前なのにも構わず、がうがうとボルトに噛み付いた
「う、迂闊、・・・・認めたくない物だな。自分自身の、若さゆえの過ちと言う物を・・・・」
「・・・・うあはははは!このボルト平八の!泣く子も黙る戦国水泳バレェを見せてやるわ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・・・・・・・・・さあ、どこでしょう。と言うか何やってんだ俺。