「・・・・・」
むくりと義之は起きた。場所は自分の部屋、時間は午前6時30分。ずいぶん早い時間に起きてしまったもんだと思った。身体の調子を確かめつつ
とりあえず伸びをしてみた。
「あっけなかったな」
そう義之は呟いた。気が付いたらここにいた。別れの余韻などないまま今に至る。さてと、と呟いてベットから起きて制服をとりだした。
「とりあえず着替えないとなーっと」
さくらさんが違う場所に行かせると言われてみたものの、別に何が変わったという様子は見られなかった。周囲を見回しても普段毎日みてる部屋だ。
いつもみる漫画、使わない机、シーツの色。少し違う世界とさくらさんは言っていた。自分の部屋だけしか見ていないがそうは思えなかった。
「げっ」
鏡をみてその考えは甘いと思った。髪が前より短いオレがいた。確か俺は髪を伸ばしつつストパーをかけていて結構なイケてる髪型だったはずだ。
自分でも言うのもなんだが優男なツラで結構似合っててオレいけてるんじゃね?と思ってただけにショックだ。まぁ、しょうがないか。
そして大方予想通りこの世界でのオレの身体を使わせてもらうんだなとそのとき初めて確信した。少しばかり不安ではあったが。
大体元のオレの身体って結構スプラッタな状態になってたし元通りになると思えなかった。ぐっちゃぐっちゃだったはずだ。
魔法ならなんとか出来そうなもんだと思うがあの時、さくらさんと話しているときにはオレはもう死んでいたらしいし、身体を直しても
意識がちゃんと戻るとは疑わしかった。
完璧元に戻るならオレを飛ばすなんてことはしないはずだしな。
こっちのオレの人格はどうなったんだろうと思ったが多分消えたのだろうと考えた。二重人格みたいになるかとおもったが完全に自分の意識があることを感じる。
多少罪悪感は感じないこともないが元々人に嫌な事をしてきたオレだ、そして相手はオレ、特に感情は抱かなかった。
「あと違いがあるとすれば・・・もしかして喫茶店の閉店時間が違うとか学校の位置がすごいところにあるとかそんなのかな。あんまり不便なのは嫌だな」
特に後者。一応こっちでは出来るだけ行こうかなと思っていた。さくらさんとの別れに少し思うところがあったからだ。頑張ってみると言った。
だからとりあえずは出来ることから始めようと思っていたりはした。自分ながらショボイと思いつつとりあえずは学校へは出来るだけ毎日行くというのが
目標となった。
「でも楽しくねぇんだよなぁ学校、まぁ自分から友人は作らないようにしてるから当り前だけど」
そう呟いて前の世界での学校の事を思い出した。
クラスメイトは出来るだけ自分とは話さないようにしていた。嫌な噂は絶えなかったし愛想も格段に悪かった。まだ近所の最近の子供の方が気を使えるもんだ。
また、自分からも愛想を振りまこうなどとは思わなかった。一人でいる空間というのが好きだったし、かったるい会話なんてしたくなかったからだ。
周囲の一部は本当はオレが寂びしがり屋なんじゃないかとか思っている奴もいた。事実そういう会話を小耳にはさんだ事がある。オレは腹を立てた、オレの何がわかると。
そうなってくると逆に心配してくる奴が出てきた。いわゆるお節介焼きというやつだ。自分は自分が楽になれるスタイルを選んだというのに素直じゃないとか
周囲ともっと溶け込んだほうがいいとか言われた。
そいつはクラスでもみんなから慕われるリーダー格の奴でスポーツも勉強も出来た。よく同じクラスメイトから相談を持ちかけられたりしていた。
HRなどは率先して盛り上げていたりもした。その時は別になにも思わなかった、そういう奴もいるんだなぐらいの感覚だ。その時は無視を決め込んで相手にしなかった。
結構粘っていたがオレが本気で耳を傾けないと気付いたのだろう、ため息をついて自分の席へ戻って行った。
ある時どっかへ遊びにいこうぜと言われた。さっきまでそのリーダー格とクラスの奴らがそういう会話をしていたのを見ていた。オレを誘って一緒に遊んでクラス
に馴染ませようと声をかけたのだろう。クラスメイトは露骨に嫌な顔をした。
「明日どっか遊びにいこうぜ桜内!」
「どこにだよ」
「商店街でゲーセンとかカラオケだよ、来るだろ?」
「遠慮しとくよ、気が乗らない」
「そう言うなって、たまには付き合ってもいいんじゃないか?」
「そうしてやりたい気持ちはすごいある。みんなと遊んでハッピーな時間を過ごせるのは悪くないとすごい思うが、後ろの奴らはそうは思っていないようだぞ」
「ん?」
そいつはクラスメイトを眺めた。みんなが苦笑いのようなものを表情にだした。
「別に構わないよな!そんなこわがってねーでたまには桜内と遊ぼうぜ、みんなで!」
おいおい無理強いするなよ、と思った。学校という場ではクラスのリーダーの発言というのはある意味絶対だ。
子供しかいないという空間でそいつに逆らえば何があるか分からない。みんなからハブられる可能性だってある。
オレみたいな変わり者はいいが、普通の奴なら泣いて学校へ来ない可能性だってある。事実、登校拒否の件数だってまだまだ増え続けている。
子供のやることは残酷だ。いざ自分がやられるまでその残酷さは分からない――オレはため息をついた。
「う、うん。私たちは、全然そんなこと思ってないよ・・・」
「ああ・・・、たまには、な、桜内と遊んでみたかったんだよ!オレさ、はは」
「そ、そうそう!」
「ほらな、みんな気にしてねーって桜内!」
ほらなじゃねーよと思った。こいつ空気読めてないんじゃないかと思った。明らかにそいつらは目が動揺してるし動きもぎこちない。
全身から気を使って嘘ついてますオーラ全開じゃねぇか。
「悪いが予定があるんでな、じゃあな」
「お、おい待てよ!」
ガシッと肩を掴まれる。振り返ってそいつの顔を見て理解した――こいつ、恥をかかされたくないと思っている。クラスの中心であるオレが誘ってやったのに・・・
という心情がみえみえだ。大方みんなの前で見栄をきってオレを連れてくるとか言ったものの、失敗なんかしたら赤っ恥になっちまうと思っているのだろう。頭が痛くなった。
そんなことで必死になるなよ、と。
「せ、せっかく誘ったのにそれはないんじゃねーか?」
「言ったろ、予定があるって。明日は塾がある日でさ、必死に勉強していい高校入りたいんだよ、オレ」
といい話を続けた。
「テレビで言ってたよ、どの高校に入るかで人生は決まるってな。ろくにいい学校行ってなくても成功する人間はいるっていうが2%もいないんだってよ、そういう人。
オレはショックだったよ。人間はどんないい高校行こうが大学いこうがそんなのは関係ないって、その人の世の中に対する器量が問題なんだって思ってたからな。
だが実際は違うらしい。今ではほとんどの会社はどういった高校に入りどんなことをしていたか見るらしい。大学での活動も当然重要らしいが若いうちからどういった事を
考え、行動してきたのかって事のほうが重要なんだって。オレもまだまだガキだよなぁ――中学生とはいえ」
オレは適当に思っていないことをまくし立てた。これからの人生なんて知ったこっちゃなかった。塾なんて行ってないし大体その日はバイトもなにもなかったが、とてもじゃ
ないが遊ぶ気になれなかった。特にこんなかったるい奴とは。
まともな性格だったとしても断るところだ。オレは肩の手を払った。
「じゃあな、楽しんでこいよ」
「あ、ウ、ウソつくなって!塾とか嘘だろ!いいから行こうぜ、な?」
と言ってまた肩に手をかけた――瞬間、おもいっきり腹に膝を入れた。途端に痛さにたまらず屈む相手。
目は涙目になり、なんでという顔をしていた。オレは襟元をつかんで無理矢理立たせた。
「な、なに――」
「オレさ、別に気を使って欲しいとか思ってないわけよ、クラスの奴らまで巻き込んでな。ただ、オレの事はいないもんだと扱ってほしい。無視してくれていい。
分かるか?」
そう言ってまた膝を叩きこむ。襟元を離した。そいつはまたたまらず痛さに耐えきれず屈むも、無防備な横っ腹に蹴りをいれた。もんどりうってそいつは転がる。
オレは話を続けた。
「子供感情で構ってほしいからそっけない訳じゃない。ただ本当に一人が好きなんだ。自分でもこの性格はどうかと思うんだが、まぁ、生まれつきだからどうしようもない」
オレは喋りながらも蹴りを入れ続けた。周りはだれも助けない。涙目になりパニックになっている女子もいる。構いやしなかった。
「だからオレの事は放っておいていい。嫌だろ?こんな性格のやつ。オレなら放っておく。とてもまともな人間じゃないからな」
そう言って最後に思いっきり蹴りをいれた。そいつはのびてしまい動かなかった。オレは机からカバンをとりクラスから出た。クラス出る際に少し周りを見たがまだ凍っていた。
「停学2週間でよく済んだよなぁ、さすがさくらさん」
あの後そいつは病院に行って全治一ヵ月の怪我と診断されたそうだ。オレにしてみればなんてことない出来事だ。
が、親御さんにしてみれば天地がひっくり変えるほどの事件だ。当然朝倉家まで来て謝罪と慰謝料を請求してきたした。
純一さんが困り果てた顔で応対してると、話を聞きつけたのかさくらさんが飛んできた。
そして結局さくらさんが、要求する金銭の3倍もの額を払った。学園長の謝罪と予想以上の金額。
まだ怒りは収まらないという顔をしていたが納得はした。文句をぶつぶつ言いつつ帰って行った。
さくらさんからその後停学を言い渡された。だが身内贔屓だか何だか知らないが思ったより期間は短かった。普通なら退学されていてもおかしくない・・・。
まぁ中学で退学なんてあるのかとも思ったが。こうしてオレは経歴に中学校退学と烙印を押されずに済んだ訳だが。
「あの時も音姉と由夢も泣いてうざかったなぁ」
と呟いて廊下に出た。ひんやりした空気。出る時にカレンダーをみたら今日は12月20日の月曜日。いきなり憂鬱な曜日だ。かったるいと思いながら洗面所に向かい
顔を洗うことにした。
「ん?」
冷たい水に震えながらも顔を洗い、タオルで拭いていると見慣れない歯ブラシあった。ピンクの歯ブラシ、自分の記憶しているさくらさんのものではないしそれに
本数も多い。自分の物と思えないし明らかに女性用だ。
「だれのだよ、さくらさんの予備か?」
そう疑問に思いつつ洗面所を出て台所に向かった。いつもはちゃんと朝食を採るが現在そういう気分ではなかった。行く途中コンビニで何か買う事を決め、
予定を頭の中で立てる。
「さくらさんが作ってるみたいだけど今あんまり食べたくないんだよなぁ」
おいしそうな匂いが台所から漂ってくる。忙しい身でありながらもさくらさんは時々料理を作ってくれていた。
まぁ珍しく普通に起きた時はオレが料理する。料理自体は嫌いではなかったしさくらさんがせがんでくるからだ。
最初はかったるいなぁとは思って作っていたが美味しいってさくらさんに言われるのは悪い気はしなかった。
が、先程も言ったがオレの寝坊でそういう機会は多くなく、さくらさんも忙しい身なのでコンビニなどで買って食べ
オレはトーストを焼いたもので済ませてしまう事が日常であった。
「~♪」
機嫌のよさそうな鼻歌が聞こえてきた。オレはそれを聞いて少し身体が身構えてしまった。さくらさんの声質じゃ明らかになかった。
「おいおい誰だよ、勝手に朝っぱらから人の家の台所使ってるの・・・。ちょっとおっかねーんだけど」
オレはさくらさんの言葉を思い出していた。ちょっと違う世界と言っていたが・・・・明らかに違い過ぎている。
少なくともこの家に住んでいるのはおれとさくらさんだけ・・・・と考えたところでさっきの歯ブラシを見て止まる。
誰だかしらないがどうやらオレとさくらさん以外に誰か住んでいるらしい。頭が痛くなった。予想していなかった。
これ以上気が揉むことはあまりオレにはよろしくない―――絶対にロクな事にならないからだ。
歯ブラシはよくうちに泊まる知り合いの物で、今料理してるのはそのお知り合いがお節介で勝手に台所で料理している展開のほうがまだありがたい。
親戚の仲のいいおばちゃんみたいな感じで。
そう思いつつ台所に方に足を進めた。
―――見て後悔した。どこぞのお節介焼きなお知り合いさんの方がいいと考えた自分を呪った。もちろん親戚のおばちゃんなどではなく、明らかに面倒そうな人間がいた。
特徴のあるリボンで髪を留め本校の制服、スラリとした長い脚。オレが覚えてる人間像の中でもかなり厄介な人物。
オレの存在に気付いたのか振り返ってきた。何が嬉しいのか満面の笑み。オレの顔が引きつったのが分かった。
「あ、おはよう弟君!えらいえらい!今日も寝坊しないで起きれたね!」
「・・・・」
「さくらさんはもう出て行っちゃったみたい。話を聞いたらまた忙しくなるんですってー、大変だよねぇただでさ暇な時間とれないのに」
「・・・なぁ――」
「でね、しばらくまた私がお料理作るね!あ、もちろん弟くんにも一緒に作ってもらうから!一緒にお料理出来るし遅刻しないしいい事尽くしだね!」
「・・・・・・」
いきなりのテンションに面くらってしまった。というか胃が痛い。オレの知ってる限りじゃ音姉のオレに対する態度は暗いといってもよかった。
話かけてくる時はいつもどもるし、まず目を合わせない。それなのにいつもしぶとく後をついてきていた。オレが何度も罵声を浴びせてもそれを辞めることはなかった。
いつだったか本気でキレかけて音姉の身体を押したらすっころんで怪我させてしまったことがある。軽い打撲だが本人はショックでしばらくオレを見掛けても声をかける
ことはしなかった。
数日後にはまた前と同じようにオレに話かけていたが。その時はもう諦めて好きにさせていた。まともに相手するのがかったるかったからだ。
そして音姉の様子から察するによく家に来るのだろう。
音姉はまたと言っていた。恐らくだがこの様子だとお泊りなんかもしているに違いない。
あの歯ブラシの持ち主はこの人物の物でおおかた間違いはなく、オレは頭が痛くなった。
一番厄介な奴と円滑な交友関係にあるとは・・・。
「あ、もうすぐ由夢ちゃんもくるから一緒に朝食たべよーね」
「は?」
思わずおれは間抜けな声を出してしまった。すぐにオレは理解した。あいつが来るのか。オレは由夢の事を思いだした。由夢は音姉ほどオレに干渉しなかった。
すれ違っても特になにもなかったし必要以上の言葉は交わしたことはない。ただいつも遠巻きにみられていた。特に何するわけでもないのでオレは放っておいたが視線はに感じていていい気持ちはしなかった。
いつか廊下でバッタリ会った時にそのことを指摘してみたが――――
「え、や・・・、み、見てませんよ」
と慌てて否定されてしまった。明らかに嘘をついてるのがみえみえだったが特に追求はしなかった。先程言った通りオレに構わなければ特に何も言わない。その場は
あんまりジロジロ見るなよといい話は終わりにしたが。
「・・・おはよー」
「あ、由夢ちゃんやっときた」
「眠いー・・・」
「ほらシャキっとする!もういつまでたってもだらしないんだからー」
「や、私はちゃんと人の前ではちゃんとしますよ。どこかの誰かさんと違って・・・ねー兄さん」
そう言いオレに言葉を掛けてきた。オレの記憶だとこういう風に話しかけられた記憶はあまりなかった。小さくまだオレがまともだった頃はいつもこういう風に話し
かけてきてはしていた。大きくになるつれオレはだんだん自分というものが分かり始め由夢を遠ざけた。うざかったからだ。
それを本人に伝えて以来まともに話したことはない――――――
「人を巻き込まないの!確かに弟くんは時々だらしないけど・・・」
「でしょーお姉ちゃん。私はちゃんとする場面ではちゃんとしてるですよ、緩急つけて。兄さんはそんな場面見受けられませんが」
といいオレをジーッとみた。今度は遠巻きなどではなくオレを見据えて。
「そうだねぇ・・・もっと弟くんにもしっかりしてもらわないと」
「でしょー?この間だって杉並さんと板橋さんと3人で――」
矛先がオレに向いて安心したのか由夢が滑舌よくしゃべりだした。音姉はまともに受け取って話の内容を聞いている。もちろんオレには身におぼえのない話だ。
「――っていう事があったんですよ。まったく兄さんときたら・・・」
「こら!弟くん!あんまり悪さしちゃだめでしょ!まったくもう」
―――――あー・・・・・・・・ちょっと
「あーホックもまた外しちゃって、お姉ちゃんがいないと駄目なんだからもぉー」
結構クルなぁー・・・・今の状況――――――
「ほら、ちゃんとつけてあげるよ、ホック」
うんうん頷いてオレのホックを閉めようと手を伸ばしてきた。
「え――」
当然オレが受け入れるはずもなく手を跳ね除けた。バシーンという音が場に響いた。凍りつく空気。何をされたのか音姉は茫然としていた。由夢も目をパッ見開いて
驚いていた。それに反してオレは普段通りだった。特にいつもの事だと思った。そしていつもどおりに言葉をかけた。
「うざいよ、アンタ」
「え――あ、と」
「行くわ、オレ」
茫然と言葉を吐く音姉を置いてオレはカバンを掴んで玄関に歩いて行った。今日の朝飯何にしようかと考えつつ下駄箱にしまってある自分の靴をはいて出ようとした。
「待って!兄さん!」
由夢がこっちに向かって走ってきた。おれはまた面倒な事が起きる前に靴をはいて家を出たかった。
「ちょっと待ってって!!」
ガシッと腕を捕まえられた。靴を履き終わって出ようと思った瞬間だった。すこしたたらを踏み、その場に踏みとどまった。
「私が気を悪くしたなら謝るから!だからとりあえず居間に戻って、ね!?」
先程の強気な様子は見受けられず若干涙声になりつつ喋った。でもオレがそんな言葉に従うわけもなく―――
「あ――」
先程と同じように腕を掴んでいる手を払い除け
「悪いと思うけど、ニ度と話しかけないでくれるか?」
「な――」
「うざったいから」
いつもと同じ言葉を掛け家をでた。由夢はもう追いかけてこなかった。
「あー厄介な所に送ってくれたよ、さくらさん」
オレは一人愚痴った。先ほどの様子を見る限り、随分こっちのオレは円滑な関係を築いてたらしい。普通なら喜ぶところなのだろうがありがた迷惑だった。
嫌われ者のほうが全然楽でよかった。これじゃ学校行っても多分同じような感じなんだろうなぁと考えた。
「学校行くのだりぃ・・・でもさくらさんとの約束だし・・・はぁ、かったるいわ」
おれはため息をついて早足で歩く。登校中に誰にも会いたくないからだ。まぁ会ったとしてもさっきみたいな事になるだろうが。
「なぁんかまだまだ何か起きそう・・・出来れば誰もオレに話かけてきませんように・・・」
そう言いつつも多分無理だということは頭のなかで分かっていたがせめて神頼み、今まで神様に頼ってこなかったぶん叶えてくれと願いつつ歩いた。
風が吹いて桜の葉が舞った。それを見て、多分変わっていないのはこの桜の木ぐらいかと思い、またひとつため息を吐いた。