「ふぅ~、ごちそうさまでした!」
「お粗末さまです」
あの家に帰り鍋料理を作った。外ではまだ雪が降りつづけている。暖かい料理にさくらさんは満足気に笑った。
材料は買い出しにいかなくても十分にあり、台所の使い勝手も前と変わらなかった。
「いやぁ最近忙しくて久しぶりにこんな料理食べたよ~」
「はは、満足してもらってよかったです」
「うんうん、いつ食べても義之君の料理は美味しいよ~!でも、ちょっと味付け変えた?」
「なんでですか?」
「いつもよりなんか味が濃い感じがしたような気がして、いつもは薄味じゃなかった?」
「気分ですよ。美味しくなかったら変えてみます」
「やや、そんなことはなかったよ!うん、こういう料理もいいね!」
違いがあった。こっちの桜内は料理の味が薄く、オレのは濃い。そんな些細な違いだ。
だがそんな些細な違いでも人は気付いてしまう。おかしいと。それが積もりに積もって、あるきっかけで爆発してしまう。
オレという人間、強いては魔法の存在がばれる可能性は十分にあった。
気をつけなければと思い――――――
「あれ?」
「ん~、どうしたの~義之君」
炬燵に寝っ転がっていたさくらさんが、振り返って 聞いてきた。テレビの画面ではさくらさんお気に入りの時代劇をやっていた。
「いえ、なんでもありませんよ。学校に筆箱忘れてきちゃったみたいで・・・」
「そうやって宿題サボるつもりなんでしょう~?」
ジト目でそうさくらさんが言葉を返してきた。宿題―――やるわけがなかった。というか何を出されたかなんて知らなかった。
「机の上に予備ぐらいありますよ、別にそんな心配しなくていいです」
「ほんとに~?」
「ほんとですって」
信用していないのか、さくらさんは確認してきた。画面の向こうでは物語が佳境に入っていた。さくらさんはおっとと言いながら
テレビの方向に向き直った。
オレはなんで隠してるんだ―――。別に喋っちまってもいいんじゃないか、別人ですよと。
さくらさんは魔法使いだ。魔法の事を言ってしまっても構いやしない、そう思った。
こっちの世界では、魔法使いでもなんでもなかったらそれはそれでいい。ただの狂言かジョークだと思われてはい終わり。
それだけの事だ。だからオレは別に言ってもいいかと思い――――――
「さくらさん、オレ風呂に入ってきますわ」
「ん~」
時代劇を見てるさくらさんにそう言い、オレは風呂に向かった。
今日は疲れたな~と思いながら下着を脱ぎ、洗濯機の中に放り投げる。ガラガラと扉を開きイスに座った。
頭を水で濡らしシャカシャカ洗いながら今日の起きた事を振り返った。
まず朝の朝倉姉妹との件、教室での雪村達との騒ぎ、帰りの廊下での板橋とまゆき達との言いあい及び喧嘩。
「色々あったなーありすぎだっての」
偏頭痛がした様な気がした。あまりにもかったるい。正直ガン無視されたほうが気分がよかった。
今日一日でこれだ・・・・これからの学校生活を思うと気が重たくなる、そう思う。
前の世界にいた時は学校では最初はただのカッコ付けだと思われていた。クールに思われるためにとか思春期特有の放っておいて
欲しいという感情。
そういうのがひどい人物だと思われていた。別にオレはそれでも構わなかった。が、そのイメージは次第に変わっていった。
きっかけは多分あの時の事だろう。当時、そのクラスには中心人物みたいな奴らが集まった集団があった。
オレは特に意識はしなかったし、あっちもオレの事なんて目にも留めなかったと思う。
だがある時話す機会がった。なんの話題かというと女の事だ、くだらない話だったと思う。
向こうから言いがかりみたいなものを押しつけられた。なんでお前なんかの事をあいつが好きなんだよ、みたいな内容だ。
単純に嫉妬だったが、こういう事は案外子供でも大人でもある。実際にそれが原因で殺人をしたなんて呆れるほど聞いた。
けどオレはその女のことなんて知らないし、知ったこっちゃない。オレは呆れ果ててため息をついた。
ガキかよ・・・と思いながらも、向こうはそんな事知った事で無いので次々罵声を浴びせられた。
まぁカッコ付けとか暗いとかアホとかそんなくだらない罵声だ。あまりにも単純でオレは少し笑ってしまった。
子供だしそんな気のいい言葉遊びなんて出来ない、オレはハイハイ言いながら帰ろうと鞄を取った。
しかし、それが本気で気に障ったらしく髪を掴まれた。
「おい、逃げるなよ、チキンが」
「勘弁してくれ、手を離してくれないか」
「なんだ、本当に腰抜けかよ、このカッコつけしいが」
「カッコつけでもなんでもいいよ、とりあえず離してくれないか?」
その対応がいけなかった。調子に乗らせてしまった。ニタニタ笑いはじめた、攻撃的な笑みだった。
「お~い、やっぱりこいつ、大したこないぜ」
「おい―――」
「あーやっぱり~?」
「だよなぁ、弱そうだもん。さっきから見てたら何もやりかえさないしぃ」
そういってその男の友達だが仲間が数人集まって来た。どうやら前からウザく見られたらしく、オレの事をどうかしようと
いうのが見て取れた。
そして廊下まで連れて来られ、そしてその男が口を開いた。
「お前の事前から気にいらなかったんだわ、すかした態度取ってカッコイイと思ってるのか?」
「・・・・・」
「あれ~?ビビって声もでないか」
「・・・・・・」
「―――ッ!いいかげんに黙ってないで―――」
「服」
「あ?」
そう言ってオレはそいつの学ランから覗いてるシャツを指さした。そして口を開いた。
「これ見よがしにシャツを見せつけてるが―――悪いがそれはパチモンだろ? だっせーなオイ」
「あ!?」
「大方本島にいった時に購入したんだろ、そのシャツ。デパートかどっかのセールだか何だかしらないが―――
そんな時に、お前はそのシャツを見つけた」
男が着ているのはある有名ブランドで、シャツだけでも数万はするモノだ。オレ達ではもちろん買えないブツだ。
そしてそんな店は初音島にはもちろんない。本島にもそのブランドの販売をしているインポートショップは無かったし
あるのはデパートのみ。遠くへ行って買ったと言ってもそれは嘘だと分かる。
なぜなら生地からして違う、見ただけで分かった。こいつはそこらの流行に流されてパチモンでもなんでもいいから
と買ったのだろう。頭の悪いヤツが考えそうなことだ。
「有名ブランドだからお前は目を輝かせた。当り前だよな、オレ達にとっちゃそんな服は手の届かない存在だ。
パチモンでもなんでもいいからブランド物が欲しかった。そんな服が安く売られている。買わないといけないよな」
大体言ってる事は当たってるだろう。男の顔は赤くなった。そして言葉を一回切って、話を続けた。
「つまらない虚栄心だな、お前みたいな人間と一緒だよ。パチモンとは分かっているがバレやしない、お前はそう思った。
自分を高くみせているつもりだろうが―――ハッキリ言ってマヌケだぜ、お前?」
男はとうとう我慢できなくなったのかオレの髪を掴み叩きつけようとして―――
「ギャッ・・・・!」
「お、おい!」
「―――このッ!」
男の目に指を差し込んだ。たまらず座り込むが―――その顔に膝をいれた。たまらず転がる相手。
「あー何の話だったんだっけ、脱線しちまった、悪い。そうそう、お前のお気に入りの女の話だったか」
そう言いつつも転がっている男の顔を踏みつけて足を捻った。男は豚みたいな悲鳴を上げた。
「てめぇが好きな女ぐらい自分でなんとかしようと思わないのか? 思わないんだろうな、だからオレの所にきて気持ちを
発散させる事しか出来ない。小さい男だよ、お前は。ちゃんと自覚してんのか? あ?」
「お、おい止めろよこの野郎ッ!」
と言われ殴られた。壁に叩きつけられるオレ、だがオレは笑った。
「なんだよ、ただ立っているだけだからただの銅像だと思ってたよ。もしくは金魚の糞だな。いや、待て、確か金魚の糞
はビタミンだが何だかが含まれていて、金魚はそれを食うんだったな。なんだ、役にたつんじゃないか。金魚の糞に悪
い事を言った。さっきの発言は撤回させてくれ」
「―――ッ!こ、こ、この野郎!」
「あの後は大乱闘だったなぁ・・・ガラスも10枚ぐらい割っちまったしオレも相手もボコボコで・・・かったるかった」
特に男たちの方は悲惨だった。四人ぐらいいたと思うんだが全員どこかしらは折れていたし、前歯なんか無くなったやつもいる。
目に指を差し込まれた男はしばらく眼帯をしていたが、特に後遺症は残らなかったらしく無事に直ったらしい。
オレはというと肋骨にヒビが入った程度で済んだ。一対四・・・・勝てるとは思ってなかったが、運よくそれだけで済んだ。
止めにきた先生達でもその騒ぎはなかなか抑えられず一時間は騒然となった。その乱闘が収まったきっかけは―――
「杉並の野郎・・・・被害がでない範囲の外でデジカメをカシャカシャしやがって・・・・・・」
乱闘の途中、ふと階段の方をみた。杉並がニヤニヤ笑ってデジカメで乱闘の様子を撮影していた―――非公式新聞部のネタにするの
だとオレは理解した。
そして―――カチンと、その日で一番頭にきたオレは杉並を追いかけた。逃げる杉並、場はみんな茫然としていた。
「結局掴まえられなかったんだよなー・・・・まぁ、そんなこともあったなっと」
そう呟いて浸かっていた湯からあがる。水気が残らないように丹念に身体を拭いて、服を着た。
そして居間にいたさくらさんに声を掛ける。
「さくらさーん、次どうぞ。オレ、もう眠りますね」
「んにゃ、早いね?」
「色々疲れちまって・・・・じゃあお休みッス」
「はーい、お休みなさーい」
そう言って部屋に戻り布団を被った。冷たいシーツが心地よかった。
「・・・・・・・」
魔法の事聞こうと思ったが止めた。さくらさんとはガキの頃からの付き合いだ。自分の記憶の中での一番古い人物象はさくらさんだ。
そんな長い付き合いの中、さくらさんは魔法の事なんて少しも触れなかった。喋りたくなかったのか喋らくてもいいと判断
したのか。
だったら別に聞かなくてもいい事だと思った。教える必要性があったら教えてくれるだろう、オレが死んだあの時みたいに―――
「縁起わりぃなー・・・考えるのやめるべ・・・・」
そういい布団を深く被った。余程疲れていたのかすぐオレは夢の中に潜り込んでいった・・・・・。
翌日の学校生活は悪くなかった。だれにも話しかけられなかったからだ。
板橋がうまく伝えたのかどうだが知らないが、オレの周囲の空気は以前のモノと同じになっていた。
時々小恋がこちらを見ていたが、その度に板橋が睨みつけて止めさせていた。そしてこちらを見る板橋。
オレが目でなんだ? と伝えたらそっぽを向いた。それらの様子を雪村が見ていたが、特に何も言いはしなかった。
「おはようございます」
「・・・・・・・・・」
休み時間にトイレに行こうと思い、席を立って廊下を歩いていたらまゆきと会った。
昨日の一件で怪我したまゆきは、口と頬にかけて当て物をしていた。オレはそれを気にせず話しかけた。
「思ったよりは、怪我がひどくなくてよかったです。それじゃ―――」
「・・・・待ちなさい」
オレはまゆきの言葉で、歩きだそうとした足を下ろした。別に行ってもよかったんだがまゆきは生徒会員、とりあえず
昨日の件があったから話を聞くことにした。もしかしたら停学とかにされるかもしれないしな。
「この怪我についてはもういいわ、それより聞きたい事あるんだけど」
「なんすか?」
「あんた何があったの?」
「もう何回その質問されたか―――特になにもないですってば」
「へぇ―――しらばっくれるのね?」
そう言って二ヤリと笑った。そして近づいてこう言った。
「退学にしてあげてもいいんだけど? これは立派な傷害罪だし、裁判沙汰にでもなるかもしれないわね?」
「別に構いませんよ―――面白そうですね」
「――――――舐めないでね、本気だから」
「やってみろよ――――――――」
そうしてピンと張りつめた雰囲気になる。お互い外さない視線・・・オレを試すかのように見据える目。
対してオレはどうでもよさそうな態度で向かい合った。時間にしてやく一分近く睨み合っていた。
「はぁ~・・・・・」
そしてまゆきは目を逸らしてため息をついた。緊張した空気が解れた。
「どうしたら弟くんは心開いてくれるのかなぁ」
「起訴とかしないんですか?」
「いいよいいよ、その話は」
「一応女性だから9割勝てますよ、裁判」
「一応は余計だっての――――――そんなんで何十万ぽっち貰っても嬉しくないよ」
「裕福なんですね、そんな金でも犯罪に走る人は大勢いますよ」
「あんたのためじゃなくて音姫の為だよ―――悲しむ」
そういって踵をかえしたまゆき。これ以上聞いても無駄だと悟ったのだろう、手を振って行こうとして―――止まった。
「あと音姫の事だけど――――――これ以上何かしでかしたら、ビンタじゃ済まないよ」
「何をしてくれるんですか?」
「なにをすると思う?」
そう言って振り返るまゆき。顔は無表情で目も何を考えてるか分からなかった。
「さぁ?」
「一応だけど――――――弟くんのことも心配してる」
そう言ってもうこちらに顔を振り返る事なく去って行った。オレはため息をついてその後ろ姿を眺めていた。
緊張していた身体から力が抜けていくのを感じた。思った以上にあの空気に身体が構えていたらしい。
オレは身体をコキコキ鳴らした後、呟いた。
「一応かよ―――にしても」
あれだけやったにも関わらず心配という言葉を吐いたまゆき――――おかしな人間だと思った。
もしくは元々のオレはそんなに人望があったのか、それとも両方か―――分からなかった。
「どうでもいいけど、トイレ行く途中だったんだな、オレ」
そう思いだしたオレはトイレに向かった。そして昼飯はどこで食うかなと考え事をしていた。
クラスで食うのなんかかったるい事がありそうだ、そう思い頭の中で選択肢を思い浮かべた。
「あ――、兄さん」
「ん?」
昼飯を食おうかと思ってさて、どこに移動しようかなと思っている時に由夢に声を掛けられた。
弁当の小包を持っており友達と一緒に食べるのだろう、そんな様子が見て取れた。
「・・・・・・」
話しかけたのはいいもの、何をしゃべっていいか分からないのか口を開きかけたり閉じたりしていた。
オレはかったるく感じながらも一応聞いてやることにした。面倒事は最初の内に方付けたほうがいい、そう思いながら。
「なんだよ、何か用事でもあるんじゃなかったのか?」
「や、ま、まぁ・・・・そういう訳ではないようなあるような」
「はぁ・・・本当にないならオレはもう行く。かったるい」
無いなら無いでそれでいい、何も無い方がむしろ清々する。オレは歩き始めようとして――――
「―――ッ!待って!!」
結構大きな声でそう言われた。廊下にいたやつらがこちらに注目した。オレは軽く舌打ちをしながら言った。
「だったら屋上に行こう、それか中庭か・・・どっちがいい?」
「え?」
「このままウダウダやっててもしょうがねーだろ、もう一度聞くが――どっちがいい?」
「――屋上で」
そう由夢は言い、オレは踵を返し屋上に向かい歩き出した。友達の約束もあったろうが、由夢は慌ててオレの
後ろをついてきた。
「さみぃ」
「・・・・」
そう言い屋上のフェンスに背中を預ける。由夢はジッと下を向いたままだんまりを決め込んでいた。
しばらくそうしていたが―――――オレの方が先に痺れを切らした。由夢に話しかけた。
「なにもないならオレは――――」
「最近、調子はどう?」
・・・・ったく、だんまりしたと思って喋ったと思ったらそれか。くだらない。
「別に悪くは・・・違うな、かったるい事が多すぎるな、最近は」
「お姉ちゃんから聞いたよ・・・まゆき先輩との事」
「さっき話した、別になんとも思っていないと言っていたが――――今度何かあったらタダじゃ済まないと言っていたな」
「ねぇ・・・やっぱり私がからかったのが原因?」
こいつそんな風に思っていたのか・・・見当違いにも程があった。
「違うな」
「じゃあ、どうして?」
「どうしてというのは?」
「ここ最近の兄さん・・・すごく怖い。でも、怒ってるような感じじゃないし」
「ああ・・・・そうだな、ここ最近みんなに甘やかされてたからな、少し自立しようかなと思って」
「ウソ」
「じゃあ、思春期特有のあれだよ。よく妄想するだろ? オレ達の歳って。女はドラマにハマり、男は漫画のヒーローに
なりたがる。そういったやつだ。オレもちょっと漫画に影響されちまってな、で、今みたいな感じになってる」
「そんな風に見えない。クラスの男子でもそういう感じの男の子いるけど、兄さんのはそれじゃない」
「じゃあ正直に言ってやるとだ―――――お前ら全員ウザいんだ。もうオレに話しかけるな。身勝手なお願いだが
そうして貰えると助かる」
「――――っ!どうして・・・?」
「どうしてもクソもない・・・だがこれだけは言える事なんだが、本気でオレは―――――そう思っている」
そう言うと由夢は涙をポロポロ流し始めた。
「ご、ごめ―――」
口を開けば開くほど我慢が出来なくなったのか、しゃっくりをしながら泣き始めた。腕で何回も目をゴシゴシやるが
それで涙が止まる訳でもなく、意味がなかった。そしてとうとう両手で顔面を覆った。
面倒くさい女だな――――オレは見て思った。
「オレ、かったるくなったから行くわ」
そう言って屋上の扉に向かった。
「ヒック・・・!ぐ・・・うぅ・・・!、ま、待って!」
泣きながらオレの前に回りこむ由夢。オレはそれをどうでもよさそうな目で見た。由夢はオレの目を見て、若干怯んだが
両手をオレに突き出してきた。その手に持ってるものは―――――
「弁当がどうかしたのか」
「・・・・こ・・・、これ・・・、兄さんに作ったの・・・ヒック・・・ウゥ・・・食べて」
嗚咽を漏らしながらもそう言って、オレの胸に押しつけてきた。思わず手に受け取ってしまい、しまったと思うオレ。
「・・・・いらないなら、す、捨てて―――――」
そう言ってダッと駈け出した由夢。オレはおいっと声を掛けるも無視された。バタンと鈍い音を立てて閉まる扉。
オレはため息をついて弁当をみた。捨ててもいい、ね――――。
だが今のオレはバイトも何もしていない状態で金銭余裕もなく、ちょうどタバコが欲しいと思っていたところだ。
購買でパンなんか食おうかと思っていたので、その分金に余裕が出来れば買える、そう思った。
「めんどくせーな・・・足元見やがって由夢のやつ・・・・」
そう言ってその場に座り、布を解いて弁当を開けた。中身は唐揚げとソーススパゲティ、ウィンナー等そういった感じだ。
「一応女か・・・ガキだと思っていたが料理出来たのか」
そう言ってまずはとりあえずご飯を食べてみた―――――瞬間吐きだした。
「おえぇぇぇぇ、クソッ! なんだこれ!?」
砂抜きをしていなかった。ジャリッという音がして、たまらず吐きだした。オレは悪態をついて呟いた。
「もしかしてよ・・・・」
他の食べ物も食べてみた。
「・・・・・ぺっ」
食えたもんじゃなかった。味と味が殺し合ってるような感じの料理だった。
こんなもの食べさせようとしやがって・・・・ッ! あいつやっぱりオレに恨みあんじゃねーか!と思った。
しかしあの涙目ながらも真剣な――――目。恨んでいる様には見えなかった。ただ純粋に弁当を食べてほしい目。ため息をつくオレ。
「はぁぁぁぁぁ・・・・捨てちまってもいいんだが、食べ物を捨てるのには抵抗あるな・・・」
一応自分は料理はかなり出来る方だと思う。自立するために勉強しまくったからだ。そのおかげか
お金のありがたみも知り、物を大事にするようにもなったし、一人暮らし程度なら難なく出来る。
自分自身料理はする方なので捨てるという行為は、あまり気持ちのいいものではなかった。
「・・・・・」
何の罰ゲームだか知らないが―――――
「くそっ、だからまずいんだよクソが・・・ッ!」
そう言いつつオレは弁当を食べた。かなりオレは頭にきていた。
今度会ったら罵声を浴びせてさっきみたいに泣かせよう―――――とそう決心して不味い弁当を食べた。