農協
一刀は今日も視察に出向く。
沮授に充分に昂奮を鎮めてもらったので、麹義の暴力的なフェロモンを受けても、何とか耐えられるようになっている。
タイトスカートのうえに布を巻いてもらったのも大きい。
布が垂れて、大事なところは見えなくなっているから、昨日ほどの攻撃力はない。
その状態でも、麹義の攻撃力は凄まじいから、帰ったらすぐに沮授に昂奮をぶつけなくては。
何は兎も角、何とかまともな視察が始められる一刀だ。
ジャガイモ畑で水を撒いている百姓がいる。
「すみませーーん!!」
一刀は馬からおりて、畑の外から大声をかける。
「んーーーー?なんじゃーーー?」
「どのくらいーーー水をーーー撒いているんですかー?」
「毎日じゃあーー」
「そんなにーーー撒かなくていいですうーー。
しおれてきたら撒いてください」
「枯れちまうじゃあー」
「そんなことはありませーーん。
ジャガイモはーーー水が少ない場所が原産ですからーーー却って少ないほうがーーーいいんですーー」
「信じられんばいーー」
「それじゃあーーあとでーーーお百姓のみなさんにーーー
農産物の育て方をーーーおしえますーーー。
そのうちーーー連絡するからーーー聞きに来てくださいーーー」
暫く馬に揺られると、麦の収穫をしている畑がある。
「すみません、城から来たものですが、道具を色々見せてもらえますか?」
「ええで」
「この鎌は……青銅ですね?」
「そうやで」
「鉄の鎌はないんですか?」
「鉄鎌は高いよって、よう買われへん」
「なるほど、そうですねえ。
脱穀は棒で打つんですか?」
「そやで」
「わかりました。お邪魔してすみませんでした」
大学2年で習った農業史の通りだ。
農業史なんて、一体なんの役に立つのだろうと思ったのだが、現代でも農業が進化していないところもあるから、農業の変遷を知っているのは農業指導には確かに有効だということを身を以って体験中の一刀である。
その日も麹義フェロモンにコチコチにされた一刀は沮授の許を訪れる。
「一刀、待っていたの」
と閨から沮授の声がする。
一刀は大喜びで準備をして閨に飛び込んでいく。
「え?菊香さん?」
そこにいたのは沮授だけでなく、田豊と沮授の二人。
「清泉だけ愛するなんて不公平じゃない。
一緒に頑張ろうといった仲でしょ?」
「そうだけど、二人も奥さんにしていいの?」
「別に二人くらい全然問題ないわよ。皇帝なんて、何百人もいる人もいるくらいだし」
多妻制万歳!
「うん、俺も一目見たときから菊香と清泉に恋に落ちていたんだ」
そして、その日も下半身を鎮めることに性交……いえ、成功したのである。
その日以降、一刀の部屋では一刀、田豊、沮授の3人がいつも一緒に寝るようになるのであった。
その後も麹義フェロモンにコチコチにされながらも畑の様子を色々見て回った一刀。
おおよそ現在の問題点が大体把握できた。
そこで、一刀は農業改革の方針をまとめ、袁紹に提言することにする。
「農業協同組合?」
「そうです、麗羽様。
農民の使っている農具は、青銅製であまり質がよくありません。
やはり鉄器を使ったほうが効率があがります。
ですが、価格が高いので皆が使うというわけにもいきません。
ですから、鉄器の農具を集中して管理し、それを貸し出すようにするのです。
他に、俺の知っている農具でまだここでは使われていないものも数多くありますから、そういう農具を協同で所有するのです。
それだけではありません」
「もういいですわ」
「……は?」
華麗がないのがまずかったのか?と少し反省する一刀。
「収入が増えるのでしょ?」
「はい、その予定です」
「それでは、細かいことはいいからさっさとおやりなさい」
「はい!ありがとうございました!!」
農業をどうするかは麗羽にとってはどうでもいいことなので、一刀に丸投げであった。
一刀は早速農協機構を設立する。
といっても、指示するだけで、実際に行うのは文官たち。
そういう事は彼等はお手の物だから。
そして、鉄製の鎌などの農機具、車輪付大型犂、設計図を描いて作ってもらった足踏み回転式脱穀機、そんなものを準備した。
新型脱穀機の威力は凄まじく、今まで何週間もかけていた作業が一日で終わりになってしまった。
精米精麦機も注文中だが、これは構造が難しく、まだ納入されていない。
そのうち、これも入手できるだろう。
それから、一刀の農業指導。
農民全員に直接指導するのは難しいので、農業指導員を育成して、間接的に全農民に指導をしていく。
種の撒き方、剪定のしかた、マルチングについて、水遣りの方法、害虫対策、種の採取の方法などなど。
時々は実際に畑を回ってみて、様子を確認する。
一刀が来たということがわかるように、牙門旗ほど立派ではないが幟も準備した。
天の御使い農業指導の頭文字をとって"天"にしようかという案もあったが、あまりにおこがましいというので、"農"の幟とした。
だから、農の幟が見えると、
「天の御使いさま~~、おかげさまで楽にたくさん収穫できるようになりましたーー!
ありがとうございましたーー!!」
「天の御使いさま~~、ちょっとおらの畑みてくだされーーー!!」
とあちらこちらの農民から声がかかるのである。
その他にも養鶏、養豚、牧畜の方法を伝え、その結果、数年で冀州は他の州をはるかに凌ぐ農業大国となったのだった。
葡萄の種も入手できた。
葡萄酒を扱っている商人に頼むと、結構苦もなく持ってきてくれたらしい。
種の輸出入はそれほど厳しくなかったのだろうか?
蚕は厳重に管理していたはずだけど。
芽は出てきたので、無事育つといいのだが。
山間の半乾燥の場所を畑にしたので、ある程度はうまくいくと思うのだけど。
ただ、一般的に果物などの実ものは今のところ芳しくない。
蜜蜂が少ないので受粉が充分でないからだろうか?
これもおいおいなんとかしたいなあと思うのであった。
おまけ
「よかったですね、一刀さん」
「なにがですか?斗詩さん」
「想いが遂げられて」
「想い?」
「とぼけちゃって。
菊香さんや清泉さん、ある日を境に呼び捨てにしてるし、菊香さんや清泉さんも一刀さんのこと呼び捨てにしてるでしょ。
もう、ばれてますよ」
「ななななんのことかよくわかりません」
「でも、いきなり二人かぁ。
一刀さんもやりますね」
「ででですから、なんのことかよくわかりませんってば」
「まあ、そういうことにしておきましょう。
朝、菊香さんと清泉さんが一刀さんの部屋から出てきていても何もないということにしておきましょう。ね?」
ばればれであった。
あとがき
現在数話先の話を執筆しているのですが、その展開上、田豊、沮授とそろそろやっておかないとまずくなってしまったので、ちょっと急いでしまいました。
最初は黄巾の乱の後あたりを予定していて、もう少し落ち着いた展開で結ばれる予定だったのです。
このため、準備不十分でかなり唐突な展開になってしまった感があることが否めませんが、ご了承ください。
あまりに唐突なので、この辺はそのうち変えるかもしれませんが、とりあえずはこのままでお願いします。