残虐 ―赤壁編― (グロ)
曹操は沮授と一刀の奇想天外な攻撃にあえなく敗れてしまった。
張遼らも、曹操が敗れた報を聞き、無抵抗で降伏した。
袁紹軍は一人の曹操兵を殺すことなく、曹操軍を破り去った。
名君と呼んでよい………………のだろうか?
…………よいのだろうか?
沮授の作戦は、作戦として立派だが、一刀の作戦はどうなのだろう?
まあ、効果はすごかったが。
日本の変態の勝利…………なのかもしれない。
何はともかく、これで袁紹は蜀を除く漢の大部分を制圧したことになる。
州で言うならば、益州を除くすべてが漢に戻ったことになる。
袁紹の人材は、話に登場しない人物もまだまだ多く、やたら豊富なので、各地の統治を任せるのに人材不足となることはない。
曹操と孫策が治めていた土地に州牧や郡太守など執政官を派遣し、袁紹の統治は磐石になっていった。
曹操は、業都に軟禁されている。
元曹操軍の将、参謀との接触は認められていないが、城内の移動はある程度自由である。
もちろん、武器の携帯は認められず、常に兵が張り付いているのではあるが。
そして、日々一刀に袁紹の臣下になるよう説得を受けている。
「ねえ、曹操さん。
負けたのですから、麗羽様の臣下になってくださいよ。
お願いですから」
「いやよ。
人の臣下になるくらいだったら、死んだほうがましよ。
覚悟はできているから、いつでも殺すといいでしょ?」
「そんなこと言わないで。
生きていればいいことがありますよ」
「だいたい、あなた、私をどれだけ辱めたか覚えているの?
私の裸の絵が全員に見られているのよ。
あんな辱めを受けて、おめおめと生きていられる訳がないでしょう」
「まあ、あれはちょっとごめんなさいです。
でも、ただの絵じゃないですか。
曹操さんに似ているという気もしますが、目も不自然に大きく、別人でしょ?」
「誰が見ても私と桂花だと分かるでしょう!
まあ、可愛さは……ちょっと私にはかなわないようだったけど」
結構気にしているようだ。
「それに、あの絵は大体事実なのでしょ?」
「う、うるさいわね。
そんなこと答える必要ないわよ。
それに仮に事実だとしてもそれを公にしていいものでもないでしょう」
「俺もちょっと強烈過ぎたかなとは思ってますが、おかげで誰も死なずに済みましたよ。
それなのに曹操さんが死んだら、部下の人が悲しみますよ」
「私がそういう人間でないことは部下も知っているわ。
私はね、そんなふうに哀れみをかけられるのが大嫌いなの。
そんな生き方を続けるくらいなら死を選ぶの」
「まあ、人の気持ちは変わるものです。
また明日来ますから考え直しておいてください」
「何度来ても無駄よ。
早く私を殺すことね」
だが、曹操は毎日一刀の申し出を拒否するのである。
そんなことが3日続いた。
そして、4日目。
その日も曹操は袁紹の臣下となることを拒否するのである。
「まあ、曹操さんの決心が固いことはわかりましたけど、そろそろ曹操さんが拒否したことで何が起こっているか現実を見てみてはどうですか?」
「………何よ、それは?」
曹操は怪訝な様子で答える。
「すみませーん、みんなを入れて下さい」
一刀が兵達に声をかけると、兵は縄で縛られた3名の女性を部屋の中に連れ込んでくる。
ただ、一人は歩けないようで、箱の上に座っているところを箱ごと運ばれている。
3名の女性は、夏侯淵、荀彧、程昱だった。
「秋蘭……桂花………どうしたの?その体は?」
曹操が怯えたように二人に尋ねかける。
「華琳様、私も姉者とおなじ片目になっただけです。
慣れれば全く問題ありません」
「華琳様、足がなくても、軍師は頭があれば大丈夫です。
私も今までと同じように仕事ができますから」
夏侯淵と荀彧が、蒼い顔色をしながらも、そう笑って答えるのである。
そう、夏侯淵は片目を包帯で覆っていて、その目の辺りが赤く染まっている。
荀彧は箱に座って脚を伸ばしているが、左足は膝から下が見当たらず、膝のあたりに包帯が巻かれていて、その包帯も真っ赤、箱にまで血が滴っている。
血の臭いがきつい。
曹操はよろよろと夏侯淵、荀彧の許に向かおうとするが、兵に妨げられてしまう。
「どうして……どうしてこんなことに……」
それには一刀が答える。
「曹操さんが拒否するたびに、部下の人を一人、体を傷つけさせてもらっただけです。
初日は夏侯惇さんの舌を焼きました。
二日目は見てのとおり、夏侯淵さんの目を一つ潰しました。
三日目は荀彧さんの足を切り落としました」
「春蘭!……春蘭はどうしたの?」
「姉者は……その……」
夏侯淵は言いにくそうに目を逸らしている。
「ああ、夏侯惇さんですね。
ええ、舌を焼いたときに口の中があちらこちら焼けてしまって、それが原因となったのか、次の日から熱が出て起き上がれないですね。
このままでは何も食べられず、衰弱死してしまうかもしれませんねえ。
そして、今日曹操さんが麗羽様に仕える事を拒否したら、焼けた鉄の棒を使って程昱さんが子供を産めない体になってしまうことになっています。
曹操さんの所為ですからね、こうなったのは。
素直に麗羽様の臣下に下ってくれればこんなことはしなくて済んだんですよ」
「だ、大丈夫です、華琳様。
私のことなど構わず、華琳様はご自身で進むべき道をお選びください」
と、程昱は震えながら訴えるのである。
「うわーーーーーーーーーーーっっ」
突然、顔を覆って大声で泣き出す曹操。
「一刀!お前は鬼よ!悪魔よ!
お前なんか地獄に落ちるがいいわ!」
「そうですか?瑯邪国で何十万もの人々を殺した曹操さんよりはましだと思うんですけど。
俺、一人も殺してませんし」
と、泣き叫ぶ曹操に動揺することもなくあっさりと答える一刀である。
それを聞いた曹操、泣きはらして真っ赤になった目で一刀を睨みつけ、
「ええ、いいでしょう!麗羽の臣下に下りましょう!
その代わり、お前はこのことをきっと後悔することでしょうよ!!」
と、一刀に怒鳴りつける。
だが、一刀はにっこりとして、
「それはよかったです。
麗羽様もお喜びになることでしょう」
と答えるのみである。
とても素直な臣下になるとは思えないのだが、いいのだろうか?
あとがき
ちょっと描写がきつすぎたかも、とは思ったのですが、そう簡単に曹操が臣下になるとも思えないので、ちょっと表現をきつくしました。
まあ、今までの経緯から今後の予想は大体つくとは思いますが。