終幕
明るくなってから袁紹軍は残っている輸送船などを用いて、劉備軍の生存兵を江から救出して回った。
ある程度の兵は回収できたが、それでも三割以上の兵は帰らぬ人となってしまった。
幸運にも恋姫に登場するような武将は、軒並その生存が確認されたが、劉備や諸葛亮ら、見つからないものもいた。
劉備や諸葛亮らは、死体も見つからなかったので、恐らく江に沈んでいるか、誰にも見つからないところに死体が流れ着いてしまったのだろうと言うことになった。
ここに袁紹は大陸の再統一を成し遂げたのであった。
孫策や周瑜など一部の人には劉備の正体を明らかにし、それで彼らも袁紹に下ることに迷いがなくなった。
特に孫策らは元々漢に下ってもいいのでは?と薄々思っていたほどだから、説明を聞いた後に袁紹に下らないと言う選択肢は最早残っていなかった。
主だった武将は、袁紹の臣下の誰かに預けられ、そこで新たな生活を送るようになった。
丁度、呂布や曹操が一刀の配下に収まってしまったようなものだ。
曹操軍にいた将校の処遇と併せて記しておこう。
曹操が一刀に預けられたのは既に記したとおりである。
夏侯惇は文醜に預けられた。
「ぶっとばせーー」
「かっとばせーー」
もう、誰もこの二人を止めることはできない。
孫策は審配に預けられた。
「蓮華、一緒に踊りなさいよ!
やってみると案外楽しいわよ!!」
そして、過激な服で審配と一緒にお立ち台で踊っている。
審配も踊り仲間が出来て嬉しそうだ。
「いえ、私はちょっと……」
「蓮華殿、たまには羽目を外すのも大事だぞ」
拒否する孫権を説得しようとするのは周瑜。
審配、孫策と一緒にお立ち台で踊っている。
他には孫尚香、黄蓋らが一緒である。
「冥琳さん!あなたは私に預けられたのですから、踊ってないでこっちに来なさい!!」
その周瑜を叱責しているのは田豊、そう周瑜は田豊に預けられていた。
「蓮華さんはあんな変な真似をしませんよねぇ~」
と、孫権に理解を示すのは顔良。
孫権は顔良に預けられていた。
「はい、斗詩様に従います」
この二人は田豊-周瑜コンビと違って、いい主従になりそうだ。
顔良には夏侯淵も預けられていた。
「よろしくお願いします、斗詩様」
「そんなあ、斗詩でいいよう。秋蘭さん」
「私のこともさん付けで呼んでいらっしゃいます」
「あ、そうだね。
じゃあ、慣れるまでは今のままでいいかな」
「そうですね」
荀彧は許攸に預けられた。
「ごめんなさい、美杏さま~。また美杏様のお召し物を汚してしまいました」
「いけない子ね、桂花は。
また、お仕置きが必要そうね」
「ゆるしてくださ~い、美杏さま~」
曹操に捨てられて許攸に鞍替えしたようだ。
「あ~~~ん、こんなに本がいっぱ~~い!!
だめぇ、かんじちゃうう」
「ちょっと、穏!
人間世界に戻ってきなさい!!」
陸遜は賈駆に預けられていたが、賈駆はちょっと陸遜に手を焼いているようだ。
楽進は呂布隊に所属することになったのだが…………
「よろしくおねがいします」
「(コクッ)………………」
「………………」
「………………」
意思の疎通が難しそうである。
鳳統は荀諶に預けられた。
「もう、戦いはあまりないと思うから、気楽にしていいわよ。
もう、変な作戦はないわよね」
「あわわ、も、もちろんです……」
「軍師として活躍したいなら積極的にならないとだめね。
本当に軍師としてやっていく気なの?」
「は、はい!がんばりましゅ」
まあ、何とかやっていくだろう。
程昱は沮授に預けられた。
「作戦は陰湿が一番です」
「黒く、より黒く」
この二人は息が合いそうだ。
張遼は皇甫嵩に預けられた。
「ウチ、皇甫嵩様に預けられることになったんやて。
よろしくたのみますう」
「そうか」
ぎろりとにらむ皇甫嵩。
(な、なんや、めっちゃこわいやんか……」
「声が出ているぞ」
そういうや否や、皇甫嵩は一瞬で張遼の首に刀をあてる。
「ひぃいいい!!!」
苦労しそうである。
郭嘉は逢紀に預けられた。
「た、太夫、足がしびれて……」
「稟はん、あきまへん、たかだか数刻正座しただけで足がしびれるようでは、花魁は務まりまへん」
着物を着せられて花魁の修行をさせられていた。
呂蒙も逢紀に預けられた。
「太夫、お花はこんな感じでどうでしょうか?」
「なかなか品良く活けてあるでありんす」
こちらのほうが筋が良さそうだ。
孫尚香は董卓に預けられた。
孫尚香のきつさを緩めるにはちょうどいいかもしれない。
甘寧は臧洪にあずけられた。
超大真面目コンビである。
李典は兵を止め、破茂と一緒に仕事をすることになった。
「蒸気機関っちゅうもんがあるらしいんや」
「うちも聞いた。石炭を燃料にして色々動力を得るんやろ?
もっと一刀はんが詳しかったらできたんやろけど」
「わいらで作ろうや」
「そやな!でも、鉄の加工精度が甘いと色々むずかしいらしいわ」
「やることがぎょうさんあるな!」
許緒も兵を止め、袁術養蜂組合に就職、張勲や華雄と養蜂活動を始める事になった。
典韋は袁紹直属の料理人になった。
哀れなのが馬超、馬岱である。
「はぁ、趙雲の言うことなんか聞くんじゃなかった……」
「お姉さまが司州と豫州の州牧を任せる予定だ、なんてでまかせを信じるから!!」
「面目ない。
それで、踏頓とかいう男のところで修行でもしてこいっていわれたんだけど、どんな男なんだろう?
まあ、弱い男だったら、あたしがぶっとばしてやるけどな!」
と、突然現れる踏頓軍。
「あら~~ん、待っていたのよう。
馬超ちゃんと、馬岱ちゃんね。
あら、ずいぶん細いのね。
もっと食べて筋肉つけなくちゃいけないわよ」
目の前にずらっと並ぶ踏頓たち、その様子に怯える馬超、馬岱。
「あ、あたしらは細くったって強いから問題ねえ!
お前らなんかぶっ飛ばしてやる!」
「あら、威勢はいいのね。
出来るものならやってみなさ~い?」
「貂蝉365号、負けるんじゃないわよ」
「任せなさい、貂蝉500号。こんな小娘、一瞬よ。
ふぬぉああああああーーーーー!!!!」
そして当然のように馬超はぼろぼろに敗北する。
「たんぽぽ、逃げよう。あいつら化物だ」
「そ、そうしよう。人間に見えない」
夜、静かに逃げようとするのだが、
「あら、馬超ちゃんも馬岱ちゃんもいないわね。
折角歓迎のお食事作ってあげたのに。
馬超ちゃ~~ん!!馬岱ちゃ~~ん!!どこにいるの~~??」
「ここにいるぞー!」
「ば、馬鹿!返事をしてどうすんだよ!!」
こうして二人は踏頓というか貂蝉(x500)と生活を共にすることになってしまったのであった。
さて、預けられた将、軍師の描写はちょっとおいて、顔良らが業都に戻ってきたときの様子を説明しておかなくてはならない。
「一刀さ~ん!勝って戻ってきました!!」
と嬉しそうに一刀のところにくる顔良の目に、妊婦服を着た女性が9人並んでいる風景が飛び込んでくる。
前に2人(正室たち)、中に2人、その後ろに5人。
前と中の4人は確かに一刀が妊娠させたのは知っているのだが……
「一刀さん、後ろの5人は何なのですか?
何か見たような顔ばかりですが」
「え、え~っとね、斗詩さん……」
しどろもどろの一刀の説明を聞いて、
「いいですか!これからは私だけが一刀さんの側室を務める時期なんですからね!
浮気は許しませんからね!!」
ということがあったりした。
で、そんなことがあったのにも関わらず、一刀はこんなことをしていた。
「愛紗さん、無事でよかったです」
「はい、私も一刀さんにまた会えてうれしいです。
私は一刀さんの配下に任じられましたので、これからよろしくおねがいします。
もう、私には一刀さんしかいないんです」
この言葉を関羽から聞いて、くらっとこない人間は少なそうだ。
「愛紗……」
「一刀さん……」
思わず関羽を抱きしめて、口付けをしようとする一刀なのだが……
「一刀さん、浮気をしてはいけないといった矢先にこれですか!!」
顔良に阻まれてしまった。
それでも、夜は関羽は昔の呂布の寝ていた位置(一刀と顔良からちょっとだけ離れたところ)に寝て、それから数日かけて一刀の傍にやってきて、そのころには顔良の機嫌もよくなっていたのか、3人での夜の生活が始まった。
ようやく、顔良も願いを叶え、関羽も収まるところに収まったようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから数年後、倭国の女王と称する卑弥呼から親書が届けられた。
それを見た袁紹は怒りでぶるぶると震えていた。
その親書にはこう書かれていた。
「しょくはとうかちゃんのもの。かえせかえせー!!」
「桃香!国交を開こうというのにそれは何だ!」
「そうだそうだー!返さないのは泥棒だぞう!!」
「鈴々も桃香を挑発するんじゃない!」
「桃香様!はわわ、卑弥呼様!白蓮様の言うとおりです。漢字で書いてください!!」
「朱里殿!指摘すべき点はそこではないだろう!!」
「主殿、メンマとウィスキーを所望いたす」
「星!ウィスキーよりビールだ!!」
「日ノ本の国に忍びの術を根付かせます」
「明命!関係ないことを書くんじゃない!!」
どうやら、劉備たちは船にのって日本に辿りつき、そこで女王卑弥呼となって倭を建国したようだ。
確かに転んでもただではおきない雰囲気の劉備である。
そのころ倭国では、麗国に送る予定だった親書が手許にあり、冗談(本音?)で書いた手紙がどこを探しても見当たらないことに気付いた公孫讃が真っ青な顔をしていた。
尚、劉備が倭国に持っていった宝剣靖王伝家はア○ノムラクモノツルギ、趙雲の帽子の飾りはヤサ○ニノマガタマ、船に劉備が乗っている目印として飾られていた鏡は○タノカガミとそれぞれ名を変え、その後の日本国に長く伝えられていると言うことである。
完
あとがき
ようやく終わりました!
なかなか難産でしたが、なんとかここまでやってきました。
劉備のときはさすがに参りましたが、練炭さんらの変わらぬ応援で何とか乗り切ることができました。
最終形をイメージしてからはもう迷いはなく、大体当初方針通り進んだと思います。
なので、ボディーペイントで色々言われてもそれほど堪えませんでした。
詳細は決まっていなかったので多少予定と変わったところはありますが。
当初予定では馬超は劉備のところに行く予定だったが話の筋を見て変えてしまった、などです。
皆様ご存知の通り、かなり軽い文です。
描写も(必要以上に)少なく、人物も極力減らしています。
そうして話が進むことを最重点に考えたので、何とか終わりに辿りついたのだと思います。
これで描写を丁寧にしたり人物を増やしたら発散して終わらない、というより終わる前に気力が尽きてしまう気がしました。
一瞬、まじめに丁寧に、と思ったのですが、そんなことをしたら麦の生産量を上げるだけでも話が終わらなくなってしまいそうだったので、早々に諦めました。
そういう背景がありますので、描写が丁寧でないとか、説明が足りないとかいう点はご容赦ください。
雰囲気は伝わったのでは?と思います。
それだけ描写を少なくしたのにこの分量...
描写の丁寧な人のSSが無事完結できるのか、他人事ながら心配になってしまいます。
案外、恋姫で完結が少ないってその辺に原因があるのかも、と思っています。
三国志の話を色々見ると、袁紹も沮授の話をずっと聞いていれば天下をとれたとか、そんな雰囲気のことが結構書かれているので、だったら袁紹に参謀の言うことを聞かせればいいのでは?と思って始めたのがこの話です。
オリキャラが多いのは、袁紹のところでは仕方が無いかと思います。
それでも、かなり数を減らしたつもりです。
一刀の仕事は第一に袁紹に参謀の意見を通すこと、参謀達の和を保つこと、おまけで食料の生産量をあげること、一般知識を広めることです。
妙に強い人間よりは現実的ではと思っているのですが。
董卓あたりまでは1万歩程譲れば三国志っぽい流れのようにも見えますが…………やっぱり見えないか?、その後は更に酷く、袁紹が巾を利かせてしまうのでどこにもない話になっています。
もし、実際にそうなっていたらその時点でその他の諸侯が袁紹に下っておしまいか、そうでなくても誰も知らない展開になったところでしょうが、それでは話が(三国志的に)面白くないので無理やり三国志っぽいイベントをいくつかくっつけて赤壁までもってきました。
ですから、もう史実がどうこう言われても意味があまりないので、深くは考えないでください。
劉備は、敗れた後乗っていた船が日本にたどり着くことはほぼありえないでしょうが、まあ執念深い劉備のことですから何とかしそうな気もします。
最初から最後まで無能だったら、ひょっとしたかもしれませんが、クルーゾーにはなれませんでした。
最後の手紙の劉備と張飛の台詞は、ほぼ最初に登場したときに袁紹にクレームをつけたときの台詞と一緒です。
と、結構、よくよくみれば全体的につながりはあるのですが……
さて、三国志ですが正史は読んでいません。
演戯は子供向けのを昔読んだことがある程度です。
今回参考にしたのは三国統一史
http://sangoku-touitushi.com/
というHPです。
リンクフリーとありますから紹介しても大丈夫でしょう。
これでも読むのは大変でした。
素人が作ったとは思えない膨大な分量に圧倒されますが、三国志にまじめに取り組んだらこうなるという見本のような気がします。
これは正史を元にしているようですが、他にも色々な文献を引っ張ってきていて、かつその差異を鑑みて筆者なりにこれが事実ではと言う推論も立てています。
面白いのは演戯のうそはこれだけあります!という注で、なかなか笑い、かつ参考になりました。
その他、参考にしたHP(一部)
単位
http://homepage3.nifty.com/kyousen/china/list/size.html
地図
http://ditu.google.cn/maps/mpl?t=p&moduleurl=http://redcliff.googlecode.com/svn/trunk/mapplet/redcliff.xml
http://www.project-imagine.org/mujins/maps.html
グーグルマップの日本語版があれば面白いのにと思いました。
袁紹伝ですが、おまけを一つつける予定ですが、基本的にこれで終わりです。
大昔に感想に記しておいたように、最初のほうで一話挿入するかもしれません。
読み直して修正すべきところは直すかもしれませんが、追加はもうそれだけの予定です。
また、別の作品でお会いできればとおもいます。
長い間駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
追伸:
ところで、タイトルは袁紹伝でしたね。
最終回に袁紹が出てこなかったような???
本当に袁紹伝?
という突っ込みはなしでお願いしますw。