伯珪
「劉玄徳と名乗ったのだな?」
「はい、伯珪様」
公孫讃。字は伯珪、真名は白蓮。
琢郡(正字は涿)郡司。
盧植の下で劉備と兵学を学んだことがあり、劉備とは面識がある。
が………
劉備。
授業態度は不真面目で、
試験の出来も今ひとつで、
それどころか塾にも禄に来ることなく、
皇帝になるぅと本気かうそかわからないが大言壮語を語り、
友人に無償支援を要請することが多く(早い話がたかり)、
というより話しているといつの間にかたかられていると言う状態になっていて、
苦言を言ってもぬかに釘、暖簾に腕押し、馬耳東風、
それから、こんなことも、あんなことも(以下省略)な女だった。
あいつと関わると碌なことがない、と過去を思い出す公孫讃である。
「そうか。会いたくはないが、義勇兵を連れてきたと言うのであれば会わぬわけにはいかぬだろう。
分かった。通せ」
公孫讃の許に劉備が案内される。
公孫讃は大人である。
大人の挨拶、大人の会話ができる人間である。
「盧植先生のところを卒業して以来だから、もう三年ぶりかー。元気そうで何よりだ」
それはそれはにこやかに話しかける公孫讃。
もう一度、繰り返そう。
公孫讃は大人である。
「白蓮ちゃんこそ元気そうだね♪
それにいつのまにか太守さまになっちゃって。すごいよー」
「いやぁ、まだまだ。
私はこの位置で止まってなんかいられないからな。
通過点みたいなもんだ」
「さっすが秀才の白蓮ちゃん。
言うことがおっきいなー」
「武人として大望はもたないとな。
……それより桃香の方はどうしてたんだ?
全然連絡がとれなかったから心配してたんだぞ?」
「んとね、あちこちで色んな人を助けてた!」
「そうか。それで義勇軍を率いて琢郡を通過するところなんだ。
で、これからどこに行くんだ?」
少しくらいとどまってもいいが、さっさと出て行け、と暗に仄めかす公孫讃。
だが、大人でない劉備にそんな高等な会話が通じるはずがない。
「それなんだけど、白蓮ちゃんのところで雇ってもらえないかな~って。
桃香ちゃんにはすっごい仲間たちがいるんだもん」
「桃香がいっているのはこの三人のこと?」
「そうだよ。んとね、あい、関雲長、りん、張翼徳、しゅ、諸葛孔明だよ」
ちょっと真名以外の名は呼びなれていないような劉備である。
「そうか。他に義勇兵も連れてきたらしいけど……」
「あ、う、うん!たくさんいるよ、兵隊さん!」
「そうかそうか。……で?」
「で、でって何かな??」
「本当の兵士はいったい何人くらいつれてきてくれているんだ?」
「あ……あぅ……その、あのね?実は一人もいないんだ」
「へっ」
やっぱり劉備だ。
「ごめんなしゃい、私が具申しましゅた」
諸葛孔明と呼ばれた少女が申し訳なさそうに舌足らずの話し方で答える。
「でもね、でもね、愛紗ちゃんと鈴々ちゃんはすっごく強いんだよ。
それにね、聞いて!朱里ちゃんはすっごく頭がいいんだよ」
いきなり真名を叫んでいる劉備。
「そ、そうか。……よろしく頼む、といいたいところだが、正直にいうと三人の力量がわからん」
だからあまり雇いたくない、と暗に仄めかす。
義勇兵0では話にならない。
と、それを聞いていた公孫讃の部下らしい人物が、
「人を見抜けと教えた伯珪殿が、その武人の力量を見抜けないのでは話になりませんな」
と嫌味たっぷりに公孫讃に進言する。
進言したのは趙雲。字が子龍、真名が星。
今、公孫讃の客将としてここにいる。
「むぅ……そう言われると返す言葉もないが、ならば趙雲はこの武人の力量が分かるとでもいうのか?」
趙雲、余計なことをいうな。
この2名の武将が強いことくらい分かる。
もう一人の才も確かな手ごたえを感じる。
だがな、劉備はだめなのだ。
雇いたくないのだ。
空気を察してくれ、趙雲!!
「当然。武を志すものとして姿を見ただけで只者で無いことくらいは分かるというもの」
「そ、そうか…………星がそういうのであれば4人を客将として歓迎しよう」
趙雲のバカヤロー!
「やったーー!!
それでね、それでね……」
まだ迷惑ごとをもってくるのか、劉備!
「なんだ?」
「白蓮ちゃんって宝剣を見つけたって聞いたんだけど」
「え?あ、ああ。よく知っているな」
「それを見たいなーーって。
実はね、桃香ちゃん、家宝の宝剣を盗まれちゃって、もしかしたらもしかするかなぁって」
「そそそそうなのか。それは大変だったな。
それで、宝剣を見たいのか。そうか、宝剣か。
そうだよなあ。盗まれた宝剣かどうか確認したいものな。
よくわかるぞ、確認したいよなあ。あはは」
「どうしたの?白蓮ちゃん。
宝剣手にいれたわけじゃないの?」
「いや、手にいれた。手にはいれたんだが……」
「盗まれたとか……」
心配そうに尋ねる劉備。
「そう……ではない」
「どうしたの?」
「うん……昨今の農業はな―――」
と、いきなり農業の説明を始める公孫讃。
「―――というわけで、不作続きだったのだ」
「うんうん。それで?」
「だが、民を飢えさえるわけにはいかぬ」
「そうだね、そうだね」
「それで、仕方なく袁紹殿に食料支援を要請したのだ」
「さっすが白蓮ちゃん」
「それで、その質草にその宝剣をおいてきたのだ」
「なーんだ、そうだったの。
最初っからそう言ってくれればよかったのに。
それで、宝剣はどこにあるの?」
劉備と張飛以外、全員がずっこける。
劉備は何を聞いていたのだろうか?
「だーかーらー、袁紹殿のところにあるんだ」
「ふーん。袁紹ちゃんのところにあるんだ。
じゃあ、袁紹ちゃんに会いに行こう!
どこにいるの?お城の中?それともお城の外?あんまり遠いといや!」
関羽と諸葛亮が頭を抱えている。
公孫讃も趙雲も頭を抱えている。
趙雲もここにきてようやく公孫讃の発していた空気が少し分かったのか、公孫讃に申し訳なさそうな表情を向けている。
「あの、桃香様。袁紹様は隣の州の州牧で、ここから何日も歩かないとつかない業にいらっしゃいます」
劉備に説明する、見かねた関羽。
「えーー??!!そんなぁ!
それじゃあ、白蓮ちゃん、案内して。お願い!
桃香ちゃん、袁紹ちゃんなんて知らないから」
「いや、その、あの、だな。私も仕事が……」
「それじゃあ明日の朝にみんなでしゅっぱーつ!!」
やっぱり劉備は疫病神だと認識を新たにする公孫讃であった。
あとがき
劉備の方針を決めました。
さんざんな非難にも関わらず、元に戻したというところに意図を察してください。
少なくとも馬鹿な劉備では終わりにならない予定ですので、非難も結構ですがしばーーーーらく様子を見てからとしていただけると嬉しいです。
どのような劉備になるかは秘密です。
それから、公孫讃が趙雲に話しているくだりは、ゲームの展開とあわせると不自然だそうですが、とりあえずゲームの話に関係なくそういわれたことがあったということにしておいてください。
なお、原作のコピペはこれ以外はない予定です。