柳花
数日間の絶食で骨と皮だけになっていた荀諶であるが、栄養も少しづつ摂取し、次第に元の体形に戻っていった。
体力も普通に歩く程度は問題ない。
胸が大きくなっていないが、これは…………元々そういう体形でした。
バキッ、ボゴッ、ドガッ、ズバッ、ドスドスッ
前言撤回。体力も充分だ……イテテ。
そんな荀諶が城内をうろうろしている。
何かを探しているようだ。
彼女の表情が明るくなった……ようにも見える。
どうやら、探し物が見つかったようだ。
「く、糞野郎!」
「はいはい、なんでしょうか?荀諶さん」
「べ、別にあなたが投降の説得に成功したからって、感謝するわけじゃないんだからね!
あぁぁあなたは、当然の仕事をしただけなんだからね!」
「はいはい、分かってます」
「そそそれから、わわ私を助けに来てくれたのも、当然の行為なんだからね!
そそれを感謝することはないんだからね!」
「はいはい、それも分かってます」
「ででででも、糞野郎にしては上出来の仕事ね。
あぁぁあなたがどうしてもというんだったら、私のことを柳花と呼んでもいいわよ。
いいこと?本当にどうしても呼びたいのなら、そう呼んでもいいのよ!」
「いえ、荀諶さんでいいです」
それを聞いた荀諶の表情に怒り成分が満ちてくる。
「あんた、何聞いているのよ!
柳花って呼べって言っているのよ!
分からないの?馬鹿なの?死ぬの?」
あー、ツンは扱いづらいと思う一刀。
「はいはい、わかりました。
…………柳花」
とはいうものの、実際真名で呼びかけるとちょっと気恥ずかしい。
ちょっと顔が赤くなったかもしれない一刀である。
一方で呼ばれたほうは……
「ききき気安く人の真名を呼ぶんじゃないわよ!」
あー、やっぱり扱いづらいと思う一刀。
「じゃあ、どう呼べばいいんだよ?」
「そ、そうね……柳花さんなら許してあげるわ」
「はいはい、柳花さん。
これで、よろしいですか?柳花さん」
「そんなに何回も呼ぶんじゃないわよ!
恥ずかしいじゃない……」
「ごめん、柳花さん……」
「………」
「………」
そして、何故か気まずい雰囲気が流れる。
荀諶は、
「そ、それからあんたのこと一刀と呼んであげるから。
肥料の件も許してあげるんだから。
でも、別にあんたのこと認めたわけじゃないんだからね!」
「はいはい、分かりました」
と、そこまで叫んで去っていってしまった。
それにしても、ああは言っていても少しは俺のことを認めてくれたんだよな!と、にんまりする一刀のところに、沮授が静かに近づいてくる。
「浮気は許しません」
そして、すれ違いざま、それだけ言って、また静かに歩き去っていってしまった。
残されたのは、南極で氷付けになってしまったような一刀なのであった。
ということがあったにも関わらず、夜は今までと何も変わらないので、より沮授が恐ろしいと思う一刀なのである。
それから、荀諶がなんとなく思わせぶりな表情で一刀を遠くから眺めることがあるのだが、それを見るたびに一刀はぞーっとしてしまう。
さて、黄巾の乱の成果が認められ、一刀の環境に改善が為された。
なんと久しぶりに大浴場の使用許可がでたのだ。
庭の五右衛門風呂で我慢すること幾星霜(というほど年月はたっていないが)。
とうとう大浴場復活の日が来たのだ!
一刀は大喜びで風呂に入る。
このゆったり感がたまらない。
はぁ~~~~ っとくつろいでいる一刀である。
十分に満喫したのでそろそろあがろうとすると、丁度誰かが入ってくるのにぶつかってしまう。
男湯に入る人は誰もいないはずなのだが、と思って見てみれば、裸の荀諶。
「え?」
「えっ!」
双方相手を確認して驚きの声をあげる。
「なななななななんで一刀がいるのよ!」
「なんでって、今日から大浴場に入ってよくなったから……」
「あ……」
どうやら忘れていたらしい。
「ごめん、すぐ出るから」
と、そそくさと風呂からあがろうとするの一刀なのだが……
「待ちなさいよ……」
荀諶が一刀を引き止める。
「え?な、なんで?」
「あぁぁあんた、私の裸を見たでしょ!」
「だからすぐ出るって」
「この責任をどう取るのよ?」
「責任……って言われても。
とにかくすぐでるから」
「待ちなさいってば。
ここここの私の体を見て何にも感じないって言うの?
そうなの?そうなのね?
ああそう、わかったわ。胸がないから何にも感じないってそういいたいのね?」
「いや、その、決してそんなことは……」
「じゃあどう思うのよ?」
「え?……あの……その………」
一刀は改めて荀諶の体を眺めてみる。
荀諶も一刀に見られているのにどこも隠さず自分の身を晒している。
二人ともかなりはずかしそうだ。
「確かに胸は小さいけど……
肌は肌理細やかで綺麗だし、女らしい体つきが可愛いし、
その……可愛い。綺麗だ……」
「ほんとにそう思っているの?」
「も、もちろん」
「どうせ一刀のことだから口だけなんでしょ」
「そんなことないよ!」
「じゃあ、行動で示しなさいよ」
「行動?」
「抱けるものなら抱いてみなさいよ……」
一刀は健康な男である。
既に暴発寸前である。
こう言われると、もう沮授ストッパーも効かない。
一刀は風呂で荀諶を抱いてしまう。
風呂の入り口には男札が掲げられている。
二人の邪魔をする者は誰もいない。
そして数十分後……
「また気持ちよくしてくれなきゃ嫌なんだから……」
荀諶のデレな言葉であった。
一刀が部屋に戻ったとき、田豊も沮授も既に閨で軽い寝息を立てて寝ていた。
沮授の姿を見て(というよりやってしまって昂奮が収まった時点で)大いに後悔したのだが、もうあとの祭りである。
とりあえず今日はばれずに済んだと多少安堵するものの、この二人の間で寝るのは針の筵で寝るより辛い状況である。
一刀は、自分はこんなに節操がない人間だったろうか?と疑問に思う。
日本にいるときはこんなにがっつかなかったのに。
この世界に放り込まれたとき、ゲームのR18成分が精神に追加されてしまってこんな風になってしまったんだろうか、と思うものの、そんなことを沮授や田豊に言っても意味がなさそうなので、やはり胃が痛むのである。
それにしても……
荀諶はやっぱり女の子なんだ。
胸はなくてもやっぱり柔らかい。
何か、取り付かれたように胸を揉んでいて、荀諶もそれに快感を得ていたようだったと、反省しながらも男の一刀である。