不屈
今回、新たに袁紹陣営に加わった武将で、業で袁紹らを待っていた武将、軍師(の気分の子供)がいる。
そう、呂布と陳宮、及び呂布軍である。
この呂布、ちょっと本能で生きているようなところがあって、袁紹とは反りが合わない雰囲気満点である。
「臧洪さん、どうもありがとうございました」
無事呂布らを業に連れてきてくれた臧洪に、一刀が感謝の意を表している。
「何でもないことです。
洛陽での活動も無事終えられたようでなによりです」
「はい、呂布さんがいなかったので洛陽に簡単に突入することができましたし、陛下の御身も無事確保、董卓・宦官は殲滅しました。
洛陽が燃え落ちてしまったのが予想外でしたが」
「これで、漢が落ち着けばよいのですが」
「そうはならないでしょうねぇ」
「はい」
と、臧洪に謝意を述べてから、呂布を袁紹に引き合わせる。
…………うまくいくだろうか?
一刀ですら不安を抱えている。
「麗羽様、呂布さんを紹介します。
こちらが、呂布さん、その軍師(?)の陳宮さんです」
呂布はこくりと袁紹に頭をさげ、それで袁紹への挨拶は完了したと判断したのか、今度は一刀の方を向き、
「月を助けてくれてありがとう」
と、一刀に声を出して謝意を表す。
呂布の中での重要度は明らかに一刀≫袁紹だ。
こうなると、面白くないのが袁紹である。
「一刀!」
「は、はい!」
「何ですか、その無礼な者は!!」
「いえ、その……」
何となく予想はしていたが、どうにも対応が難しい一刀である。
珍しく言いよどんで、冷や汗がたら~っとたれている。
「今後は一刀の部下としてしっかり面倒を見なさい!
何かあったら一刀が責任を取るのですよ!!」
と、呂布は一刀に部下として押し付けられてしまった。
あまりにあっという間の出来事に、陳宮が口を挟む隙はなかった。
呂布はそんな袁紹の剣幕に関係なく、一刀への話を続ける。
「お腹 すいた……」
やっぱり、呂布だった。
それからというもの、呂布はほとんどいつも一刀と行動を共にするようになってしまった。
尻尾があればうれしそうにぶんぶん振っていそうな雰囲気だ。
「恋殿!そのようなものに付き従う必要はありません!」
呂布命の陳宮が、呂布をとられたように感じているのか、かりかりしている。
「ご主人様…いい人」
「しかし、いつも行動を共にするというのは問題です!!」
「そうそう。別に自由に行動していいから」
と、一刀も呂布を引き離そうとするのだが、
「ご主人様…いつも一緒」
呂布、難攻不落である。
ほとんどいつも一緒ということは、ほとんどいつも一緒ということだ。
「ね、ねえ、呂布さん」
「恋」
「え?」
「呂布じゃない」
「ああ、真名で呼べということね?」
呂布はこくりと頷く。
「じゃあ、恋さん」
「さんもいらない」
「……じゃあ、恋」
呂布は「何?」という雰囲気で小首を傾げる。
「あの風呂に入りたいんだけど……」
「一緒」
「いや、あの、それはまずいから。
じゃあさあ、俺が出るまで入り口で番をしていてくれる?」
呂布は「わかった」という雰囲気でこくりと頷く。
と、風呂はなんとかなったのだが………
「ねえ、一刀。これは何?」
一刀の部屋で質問をする田豊がいる。
「えーっと……呂布さん」
一刀の閨ですーぴーと安心しきって眠っている呂布であった。
「どうにかならないの?」
「どうにもならなかった。
説得は全く意味がなかった。
静かに部屋を出ようとしたら、いつの間にか後ろについていた」
「……今日は自分の部屋で寝ることにするわ」
「怒ることないじゃん」
「それほど怒ってはいないわ。
でも、呂布の隣でするの?」
「………………………………………………………うーーーーーーん...」
嫉妬よりも難題であった。
呂布は、基本的には一刀の命令は素直に聞いた。
軍事訓練をしろといわれれば、その通り素直に軍事訓練に従事した。
一人で風呂に入れといわれれば、その通り素直に一人で風呂にはいった。
でも、食事はいつも一刀と一緒。
おやつも一刀と一緒。
寝るのも一刀と一緒。
これだけはどうにも回避できなかった。
さて、業に戻ることを心待ちにしていた女性がいる。
顔良である。
続きは帰ってから、と言っておいたので、続きをやろう!と思ったのだ。
が、事を起こす前に色々ショッキングな出来事があった。
「え~~?文ちゃん、一刀さんとやったの?」
「うん、まあ、なんというか……
洛陽が燃えちまったときに慰めてもらっちまった」
「そーんなー!」
先を越されたことにショックを感じる顔良である。
「負けないんだから!」
という顔良のところを訪れるものがいる。
「あの、顔良さん」
「あ、董卓さん。どうしたんですか?」
「その……一刀さんのことを色々教えてもらえますか?」
「えっ?!」
何となく質問の背景がわかってショックを受ける顔良であるが、それでもここにきたときのことから丁寧に一刀の説明をする。
董卓が一番反応したのは、正室っぽい二人がいるというところだった。
「そう……ですか。
ご正室がいらっしゃるんですか」
落胆する様子の董卓。
「それに側室を狙っている人も何人か……」
それは自分だろう!
「そう……なんですか」
更に落胆する様子の董卓。
「もしかして、董卓さん、一刀さんのことを……」
と、およそ分かってはいるが質問する顔良に対し、董卓は顔を真っ赤にし、顔を隠すことで答えとする。
言葉がなくとも明らかだった。
敵は董卓、儚げな美少女である。
「負けないんだから!」
不屈の顔良である。
「菊香、清泉。今日は一刀さんと一緒に寝ないんですか?」
「まあ、ちょっと……色々あって………」
「それじゃあ、私が一緒に寝ちゃおうっかなぁ?」
「……できるのでしたらどうぞ」
あの二人が一刀を独占しないとはラッキーと思いながら一刀の部屋に向かう。
「一刀さん……」
「あ、斗詩さん」
「この間の続きを………………」
といい始めてから目に入ったものは、すーぴーと気持ち良さそうに寝ている呂布。
田豊、沮授の態度の理由が、今ようやくわかった顔良である。
あの二人の様子から判断するに、呂布はどうにもどかなかったのだろう。
「ま、負けないんだから!!」
「ちょ、ちょっと、斗詩さん!!」
不屈の顔良、健在である。
「斗詩、あの状態でやったのですか?」
翌日、沮授に問いかけられる顔良である。
「うん♪」
嬉しそうな顔良を見ながらも、まだ踏ん切りがつかない沮授と田豊であった。